先生の居ないアーカイブ   作:ヒオルカ

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雑草根性

 

 

「皆さん、色々とありがとうございました。」

「変なことに巻き込んでごめんなさい、ヒフミさん。」

「あ、あはは...」

「今度遊びに行くから、その時はよろしく〜。」

 

ヒフミちゃんを見送る。

持ち出した書類を確認した所、アビドスが返済していた借金は、原作通りカタカタヘルメット団の資金として流れていた。ヘルメット団の背後にいるのは...やはりカイザーローンだ。

 

「帰ったらこの事実をティーパーティーに報告します!それと、アビドスさんの現在の状況についても...」

 

...さて。ずっと考えてきたが、これを止めるべきだろうか。

 

ヒフミちゃんがシャーレのことをティーパーティーに報告すれば...彼女達が来る。ゲヘナの『風紀委員会』だ。

 

原作通りの戦力がこちらにあるとしたら、このままにしておくのが最適だろう。後で彼女達の助力を得ることができる。

だがこの戦い、先生の指揮があってさえ...圧倒的な物量に敗北しかけていた。

そして、この戦闘にホシノちゃんはいない。

じゃあ風紀委員とぶつかるのを回避するのかというと、結局のちの戦力不足に繋がるだろう。

...やっぱり、止めちゃいけない気がする。どうにかあの戦闘をやり過ごすしかない。どうにかヒナちゃんが来るまで持ち堪える方法はないかな...

 

「まー...ティーパーティーはもう知ってると思うけどねー。」

「えっ!?」

「あれほどの規模を持つ学園の首脳部なら、それくらいはとっくに把握していると思うんだよー。みんな遊んでばかりじゃないだろうしさ。」

 

セイアちゃん達は...まあ十中八九知っているだろう。そして手を差し伸べることはないこともわかる。彼女達にはそんな余裕も、利益もない。悪意を持って接触してくることもないだろうけどね。

 

「トリニティとかゲヘナみたいなマンモス校からのアクションをコントロールできる力がないんだよー。」

「...サポートするという名目で悪さをされても、それを阻止できない...ってことですよね。あうう...政治って難しいです。」

 

アリウスに対するミカのような、そんな存在がアビドスにいたら...何か変化はあっただろうか。良し悪しはともかく。

 

 

「えっと...本当に、1日でいろんな出来事がありましたね。」

「そうだね、すごく楽しかった。」

「楽しかったのはシロコ先輩だけじゃないの?」

「あ、あはは...私も楽しかったです。」

 

私もすっごい楽しかった。対策委員会と共に行くだけで、ブラックマーケットがブルアカ体験型テーマパークに早変わりだ。

 

「いや〜、ファウストちゃん、お世話になったね。」

「その呼び方はやめてください!」

「よっ!覆面水着団のリーダーさん!」

『皆さん...ヒフミさんが困っているじゃないですか...』

 

ぬいぐるみを買いに来たら銀行強盗犯のリーダーになってしまったヒフミちゃん。これもキヴォトスのため...犯罪とは言うまいな。いや犯罪か。

 

「と、とにかく...これからも大変だとは思いますが、頑張ってくださいね。応援してます。シルベちゃんも、またトリニティでお会いしましょう!」

「うん。またねヒフミちゃん!」

 

ヒフミちゃんに手を振る。私がトリニティに戻る時はアビドスがどうにかなった後だろう。戻ったら戻ったで今度はエデン条約編の対策をしなければならない。忙しー!

 

私とヒフミちゃんの、大波乱の一日はこうして終了した。さて...どうしよ。風紀委員会...

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「ただいま戻りました。」

「お帰りハルカ、お疲れ様。」

「主要ポイントに爆弾を埋めておきました。後はこのボタンを押すだけで...」

「はぁ...」

 

覆面水着団...じゃなかった、アビドスから貰った一億円を元手に傭兵を雇い直し、クライアントの依頼であるアビドス襲撃の手筈を整える。

 

「なぁに死にそうな顔してんの?それなら最初から、例のクライアントから手付金を貰って、それを資金に充てれば良かったじゃん。」

「...手付金は貰わない、それがうちの鉄則よ。」

 

クライアントから手付金を貰ってしまえば、目標だけでなく手段などにも口出しをされてしまうリスクがある。だから報酬は全て依頼の完遂後に全額受け取る...それが私たち便利屋68のモットーなのだけど。

はぁ、だからといってアビドスから貰った一億円で...これがハードボイルドと言えるとは到底...

 

「そこまでプレッシャーを感じてるなら、全部投げ捨ててゲヘナに帰るのも手だよ、社長。」

「はぁ!?ぷ、プレッシャーだなんて言ってないわよ!ただ...ちょっとだけ...」

「うーん、今更帰るのは無理なんじゃ?風紀委員の奴らが黙ってないよ。」

「風紀委員会か...確かに風紀委員会は、私たちを目の上のたんこぶみたいに思ってはいるけど...今の私たちは、やつらから逃げてきたわけじゃない。」

 

風紀委員会...うう、ヒナめ...!私を指名手配するのはまあハードボイルドだから良いとして、口座を凍結するなんて...!まだ数万円くらいは入ってたのに...!

 

「そもそもうちの風紀委員会が時にキヴォトス最強とも言われている理由は、風紀委員長のヒナの存在があるから。言い換えれば、ヒナ以外の風紀委員は大したことないってこと。」

「そうなの?カヨコっち、そこまで考えてたんだ?」

「いつか必ず相まみえることになるだろうから。ヒナ抜きの風紀委員会なら...大体今のアビドスと同じくらいかな。計画さえ練れば、勝算はある。」

 

ゲヘナに戻る...?そんなのダメよ。せっかく一念発起して起業したっていうのに、逃げ帰ってきたみたいじゃない!

 

「...いえ、今更ゲヘナに戻るって選択肢はないわ。かと言って...はぁ...」

「一体何が引っかかってるの?」

「わかったわかった。つまらない話はこれくらいにして、アルちゃんご飯食べに行こうよ。ラーメン屋にする?」

「また?」

「まあ美味しかったしね。とにかく社長を元気づけないと...」

「じゃあ決まりー。行こ行こ。」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「よいしょっと...うおお...!?」

 

対策委員会の部室に入ると、そこではホシノちゃんがノノミちゃんに膝枕をしてもらっていた。うああっ...!原作では一枚絵のなかった光景が目の前で繰り広げられている。たまらん!

 

「あ、シルベちゃんだ。おはよ〜。」

「あら、シルベちゃん大丈夫ですか?そのお荷物は...?」

 

危うく落としかけた荷物をどうにか机に置く。

 

「だ、大丈夫。これ連邦生徒会から送られてきた弾薬だから、後でみんな来たら配っておいてくれる?」

「おお、ありがたいねぇ〜。でもこの間送られてきたばかりじゃなかったっけ?」

「それはその、あるに越したことはないから...」

 

アビドスに出張をしてから定期的に送ってきてもらっていたが、今回は特別に少し早めて送ってもらった。それは当然、もうすぐ彼女達との戦闘が待ち構えているからである。

 

「とにかくシルベちゃんも来たことだし、他のみんなもそろそろじゃない?そんじゃ、わたしゃこの辺でドロン。」

「あら、先輩どちらへ?」

「うへ〜、今日おじさんはオフなんでね。適当にサボってるから、何かあったら連絡ちょーだい、ノノミちゃん。」

「あ、私もちょっと今日は用事があるからお休みするね。」

「あら、そうなんですか?」

「うん。今度私も膝枕してね!それじゃ!」

 

部屋を出る。ここでホシノちゃんがノノミちゃんに膝枕されていたということは...やはり、今日だ。急がなければ。

 

「うへ〜、じゃあねシルベちゃん。」

「あ...うん。」

 

...きっとホシノちゃんはこの後、黒服に会いに行くのだろう。

止める?でもどうやって?未来を知っていると、そう言うのか。

それに...きっとホシノちゃんも分かっている。アレの言うことを聞いたとしても、きっと碌なことにならないと。それでも、アイツの『拒めない提案』に脚を取られている。

...私が介入した先の未来は分からない。ここで早々にホシノちゃんを取り返した結果、カイザーが隙を見せることなく最後の侵攻を取りやめるかもしれない。そうなれば、アビドスはじわじわと削り取られて終わる。

 

取り戻すタイミングは...最後だ。カイザーが、ホシノちゃんを無力化したと判断し攻めてくる、その後しかない。

 

「...いってらっしゃい、ホシノちゃん。」

「...?うん。」

 

原作ではここでホシノちゃんは契約しない。であればその通りに。それでも、目の前で...悪い大人の元へ向かうその小さな背中を見送るしかないこの状況に、奥歯を噛む。

 

...私にはやることがある。もう風紀委員会が来るまで時間はない。自分の最善を、貫こう。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

わ、分かんないな...これかな...?

 

ただいま私は柴関ラーメンの裏手で草むしり...ではなく、あるものを探しております。

それは...ハルカちゃんの仕掛けたC4爆弾。これを取り除き、柴関ラーメンの爆破を阻止するんだ。

 

さっき原作通りとかなんとか言っておいてなんだけど、これは対風紀委員会として必要なことだ。

そもそも風紀委員会戦の前に、アビドスと便利屋68は交戦をしている。それによって消耗もあったはずなので、柴関ラーメンの破壊を防ぎ便利屋とアビドスの対立を少しでも解消するのが狙いだ。

 

つまり私の作戦としては、補給の万全なアビドスと便利屋68、そして()()()()()()()によって、どうにかヒナちゃんが来るまで耐え切る。これが私の頭で考えられた限界の策だ。

 

...しっかし雑草ばかりでよく地面が見えない。

爆弾なんて使ったこともないからちょっとネットで見た目ググっただけだし...ドローンのスキャンとか使えばなんとかなるかもしれないけど、残念ながら別働中だ。

 

あ...これかな?これっぽい。C4爆弾。えっと...外し方は確か...

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「はぁ...」

 

柴関ラーメン。とっても美味しいしお財布に優しい、素晴らしいお店。

だけど何かが引っかかる...考えても分からないし、お腹も空いてきたから、とりあえず食べてから考えようかしら...

 

「...アル様。」

「ん?どうしたの?ハルカ。」

「私が爆弾を仕掛けた目印にしていた雑草が、少し倒れています。」

 

ざ、雑草?ハルカはそれを目印にしてるの?よく分かるわね...

 

「動物でも通ったんじゃない?」

「...私ちょっと見てきますね。」

 

ハルカは駆け出す。心配性ね...まあすぐ帰ってくるでしょう。

店に入って席に着き、ラーメンを注文する。

 

「アビドスさんとこのお友達だろう。替え玉が欲しけりゃ言いな。」

 

朗らかな雰囲気、気のいい大将。

 

...もしかして、私が引っかかっていたのは、この店...!?

 

これだわ!こんなよくしてくれる店があるから、私のハードボイルドが乱れるのよ!

宣言してやらなきゃ!私たちはアビドスと友達なんかじゃないって事を!

 

「...じゃない。」

「ん?」

 

「友達なんかじゃな───!

 

 

しかし、私の大宣言は...あるものにかき消された。

 

 

というか唐突に起きた店の大爆発によって、私たちがかき消されたのだった...

 

 

 

 

 

どうなってるのよおおおおおおお!?

 

 

 

 

 





ナギサも引く、トキも引く、正月便利屋も引く。完璧〜な作戦。
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