先生の居ないアーカイブ   作:ヒオルカ

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自治区の利

 

 

『こんにちは、アビドスの皆様。私はゲヘナ学園所属の行政官、アコと申します。』

 

「アコちゃん、その...」

『イオリ、反省文の添付レポートは私の机の、左の引き出しにあります。ご存知ですよね?』

 

ゲヘナ風紀委員会の行政官、天雨アコ。

 

かなり強者感の溢れる登場シーンだ。これから彼女の号令によって風紀委員会の追加勢力が続々と参戦し...先生の指揮下にあるアビドスをも追い詰めていくことになる。

ああ...緊張してきた。大丈夫だろうか...いや、今考えてもしょうがない。

しっかりしろ私!アコちゃんのメモロビを思い出せ!ワンちゃんだぞ!勝てるぞ!

 

『行政官ということは、風紀委員会のNo.2...』

『あら、実際はそんな大したものではありません。あくまで風紀委員長を補佐する秘書みたいなものでして...』

 

そうは言うが、彼女の通信が始まった瞬間、イオリちゃん達やモブ風紀委員ちゃんの姿勢がピシッと良くなっている。

 

『...アビドスに生徒会の面々が残っていると聞きましたが、皆さんのことのようですね。五名と聞いていましたが、あと一人はどちらに?』

『今はおりません。そして私たちは生徒会ではなく対策委員会です。行政官。』

 

アビドスの生徒会。ホシノちゃんが一年生にして副会長を務め、ユメ先輩を会長とし、学校の復興のためカイザーローンに借金をしてしまった組織。

 

原作でもその内情が描かれることはほとんどなかったが...立て直しができず、砂に埋もれていくアビドスを去る時、彼女たちはどんな気持ちだったのだろう。

分からないけど...きっと辛かったはずだ。

 

責める気は起きない。そもそも、子供が大人を相手にして戦うということ自体が困難なのだ。これは彼女たちが背負うべき責ではないはず。

 

ただその子たちにも、立ち直ったアビドスの姿を見せてあげたい。そのためにも、ここで引くわけにはいかないんだ...!

 

『失礼しました、対策委員会のみなさん。私ゲヘナの風紀委員会はあくまで、私たちの学園の校則違反をした方々を逮捕するために来ました。やむを得なかったということで、ご理解いただけますと幸いです。』

『他の学校が別の学校の敷地内で、堂々と勝手に戦闘行為をするなんて、明確な自治権の違反です!』

 

さすがアヤネちゃん。アコちゃん相手にも一歩も引かないその姿勢...普段控えめな性格でもやる時はやる子だ。

 

『ふぅ、これだけの兵力を前にして怯まないだなんて...これだけ自信に満ちているのは...シャーレがバックにいるからですか?ねぇ、一色シルベさん?』

「っ...どうですかね。」

 

アコちゃんがこちらに語りかけてくる。プレッシャーすごい。

ここは余裕を見せつけないとナメられるだろうか。まあこんなボロボロの姿で虚勢張っても意味ないかな。むしろナメてもらって方が手加減してくれるかも...アコちゃん舐めて...

 

『シャーレのシルベさん、あなたも対策委員会と同じご意見ですか?』

「...便利屋を捕まえたいのはわかりますけど、ちゃんと手続きを踏まないと余計な争いが生じてしまうと思いますよ。ここは『アビドス自治区』ですから。」

『......』

 

実際アコちゃんがこれに踏み切った理由の一つとして、アビドスの生徒が極小数であるというものもあるだろう。つまりアビドスは事実上、行政が機能していないと判断した。

でもここにはまだ、アビドスを守ろうとする生徒がいる。ならばそこで生徒が生きていけるように手伝いをするのが、シャーレの役目だ。

 

「うん。それに便利屋はシルベを攻撃したし、柴関ラーメンも爆破した。このまま引き渡すわけにはいかない。」

 

ごめんそれは私のせい。ほんとごめん。

 

「そうですね、彼女たちの背後にいる方の正体もまだ分かっていませんし。先にお話を聞かせてもらいませんと。」

『そういうわけで、交渉は決裂です!ゲヘナの風紀委員会、あなた方に退去を要求します!』

『それは困りましたね...こうなったら仕方ありません。本当は穏便に済ませたかったのですが...』

 

アコちゃんは一拍置いて...無慈悲にもこう告げる。

 

『ヤるしかなさそうですね?』

「...!」

 

銃声。ただしこれはショットガンの音だ。つまり...

 

「うわぁ!?」

「ぐああっ!?」

「な、なんだ!?」

 

イオリちゃんの背後から、ゆらりと黒い影が忍び寄る。

 

「許せない...!」

「はっ!?」

「許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せないうあああああああっ!!!」

「ぐっ...!?うう...!」

 

こ、怖い...!あ、いや、頼もしいです。原作通り便利屋が奇襲に成功してくれたようだ。

 

「嘘をつかないで、天雨アコ。」

『あら...?』

「偶然なんかじゃないでしょ、最初からあんたが狙っていたのはこの状況だった。」

『カヨコさん...』

 

そういえば、アコちゃんはカヨコちゃんを高く評価していた。カヨコちゃんは便利屋に入る前は、ゲヘナ学園でどこかの役職にでもついていたのだろうか。

 

「申し訳ありません、行政官。視線を逸らされた隙に...今からもう一度包囲を...」

『いえ、大丈夫です。大した問題でもありませんし....それより、面白い話をしますね、カヨコさん。』

「風紀委員会が他の自治区まで追ってくる...こんな非効率的な運用、風紀委員長のいつものやり方じゃない。だからアコ、 これはあんたの独断的な行動に違いない。」

 

カヨコちゃんってすっごい賢いよね...実は私より先生やれるんじゃないか?

白衣を着たカヨコ先生。クールだがお人好しで、カッコよく生徒を導いてくれそう。うわ見たい...

 

「それに私たちを相手にするにはあまりにも多すぎるこの兵力。他の集団との戦闘...といってもアビドスは全生徒合わせて五人しかいない。なら結論は一つ。」

 

 

 

「アコ、あんたの目的は『シャーレ』。最初から一色シルベを狙ってきたんだ。」

「!?」

「な、何ですって!?」

 

 

 

『...ふふっ、便利屋にカヨコさんがいることをすっかり忘れていました。ですがまあ...構いません。』

 

やっぱりアコちゃんは原作通り、私...というより『シャーレ』狙いか。まあそうでもなければアビドスにまで出張しにはこなかっただろう。

 

アコちゃんが指を鳴らす。それと共に、四方から風紀委員会の更なる兵力がこちらに集結してくる。

 

「...増員。」

「まだいただなんて...それに、こんなにも数が...」

『うーん、少しやり過ぎだったかもしれません。『シャーレ』がどれほどのものか情報がなかったのでここまで用意したのですが...もう少し戦力分析の精度を上げた方が良かったですね?』

 

...これが私の限界なんだアコちゃん。

こうして実際に大部隊と衝突するといった事態では、否応にも指揮を執る人物の重要性がよく分かる。目の前が敵だらけでは、自分がどこにいるのかも見失う。

 

「包囲は抜けたと思ったけど...二重だったか。」

『...事の次第をお話し致しましょう。きっかけはティーパーティーでした。ゲヘナ学園と長きにわたって敵対関係にある、トリニティ総合学園の生徒会。そのティーパーティーが、シャーレに関する報告書を手にしている...と、うちの情報部から上がってきまして。』

 

ゲヘナ学園の情報部はとても優秀な印象を受ける。ヒフミちゃんがティーパーティーにした報告を聞きつける、というのはかなりの腕前だろう。元々ヒナちゃんが所属していたところだし。

 

『それで、チナツさんが書いた報告書を確認しました。もっとも、その時点では成立していない組織のようでしたから...戦力の分析はできませんでしたけれど。』

 

この報告書が私のシャーレ所属後だったら。一般生徒一人が所属しただけの部活だと知られていたら...脅威と見做されずに風紀委員会が攻めて来なかったかもしれない?それはそれで困るんだけども。

 

 

『連邦生徒会長が残した正体不明の組織...キヴォトスのどんな学園の自治区にも自由に出入りのできる部活...どう考えても、怪しい匂いがしませんか?』

 

それはそう。

 

『シャーレという組織は、とても危険な不確定要素に...見えたのですが。まあせっかくここまでやりましたし、一応ということで...一色シルベさん。ゲヘナ学園への転入手続きをなさるつもりはございませんか?』

「...ん?」

『勿論こちらの学園においても、何か不自由になることはありません。ただその超法規的部活に唯一所属しておられるらしいあなたが、トリニティ総合学園に在籍していることは...この先の条約において、不利になる要素の一つとして考えられますので。』

 

あ、そうなるんだ。まあ無所属の先生と違って、トリニティに在籍している生徒を連れ去ったらがっつり外交問題か...

まあどちらにせよ、ここで皆を置いて行くわけにはいかないんだ。ゲヘナ生になるのもちょっとやってみたくはあるんだけどね。

 

「ごめんなさいアコさん、私はまだここでやることがあるんです。それに転校手続きもとらずに無理矢理...となると、トリニティとの外交問題になるんじゃないですか?」

『その場合は...とりあえず、予定されているトリニティとの条約締結までは、こちらで身柄を預からせていただきます。何せここはアビドス自治区のようですし?』

 

...なるほど。ここはアビドス自治区だから、ここで行方不明になったとしてもゲヘナ学園としては白を切れるって寸法か。

勘弁してほしいくらいちゃんと考えられてるね…

 

「シルベを連れて行くって?私たちがそれで、はいそうですかって言うとでも思った?」

「......」

 

『ふふ、やっぱりこういう展開になりますか。では仕方ありませんね。便利屋とアビドスが最初から組んでいたのは想定外ですが...まあいいでしょう。それでは...』

 

さっきまで気絶していたイオリちゃんが立ち上がっている。これは風紀委員会の攻撃再開間近か。

 

『風紀委員会、攻撃を開始します。対策委員会と便利屋、そしてシャーレを制圧して、一色シルベさんを確保してください。』

「よくもショットガンの連射なんて決めてくれたな...覚悟しろ!」

『敵、包囲を始めています!突破してください!』

 

ここからはこの戦いの最大戦力とのぶつかり合いだ。とにかく耐え切ることが大事。後は彼女が何とかしてくれる。

つまりこういうことだ。

 

 

 

ヒナーッ!早く来てくれッー!!!

 

 

 





この辺であれ?ブルアカのストーリーって結構頭使う...?ってなる。
そしてエデン条約編でオーバーヒートします。横乳から排熱しなきゃ...
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