先生の居ないアーカイブ   作:ヒオルカ

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君にしかない武器を

 

答えの無い問題。

教科書をめくるだけでは解決しない問題。

 

得意かって言われたら別にそんなことはない。なんなら教科書を開けば解決する問題も得意じゃないけどね。

 

でも私が目指したのは、そんなものが溢れる世界。理屈じゃない、理由のない、採点のできない『子供』を導く仕事。

例えそうじゃなくっても、私たちの普段の人生だって、答えのない問題は一生付き纏ってくるんだ。

 

それに今の状況は...きっと、まだ良い方だ。なんせ『大人』の先生が歩んだ足跡がある。

だから大丈夫。不安を断ち切って、決断する。

 

権力もなく、戦う力もない。そんな私がこの状況を打開するべくとった方法は...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャーレの予算を使い込むことでした。

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「第一中隊、全滅です!退却し、再整備に入ります!」

「第三中隊、継戦可能です!」

『なるほど、大体把握できました。まあ大体こんなものでしょうか。大凡の戦況は読めました。第六中隊、後方待機を止め、突入してください。』

 

 

『風紀委員会、第三陣を展開してきました!』

「はぁ...はぁ...まだいるの!?」

「た、大したことないわよ!まだまだ戦えるんだから!」

 

追加の兵力が投入される。ドローンを高く飛ばして偵察をしてみると...今は大体、第六中隊あたりか。

はぁ...ヒナちゃんが来たのは確か...第八中隊あたりだったような...

 

『...!着弾まで三秒前!』

「...くっ!」

 

咄嗟に転がって砲弾の直撃を避ける。

風紀委員会の戦いにおいて、かなりのプレッシャーとなっているのがこの擲弾兵の攻撃だ。いつ上空から飛んでくるか分からないものに警戒して、目の前の敵への集中力が削がれる。

もう体力はとっくに底を尽きているが...足を止めれば蜂の巣。次まともに爆発でも受けようものなら、今度こそ動けなくなるだろう。

 

「げほっ...こほっ...はぁ、はぁ...」

「シルベ!くっ...!」

 

『さて、シルベさん。そろそろ降参なさっては?いくら他校の自治区とはいえ、あまり戦闘の痕跡は残したくないのですが。』

「はぁ...はぁ...もうちょっと粘ろうかなって...思うよ...」

 

もう随分長いこと戦っている。ゴールはそこまで遠くないはずだ。気合を入れて走れ!

 

「...っ。シルベさん...これ以上は危険です。ここは...降参なさった方が良いかと。」

「...ごめんね、チナツさん。もうちょっと無理させて...!」

 

ドローンを盾に遮蔽物へと転がり込む。

 

『シルベさん!もうそろそろ下がっていた方が...!』

「そ、そうです!そんな傷だらけで...って私のせいですよねごめんなさい死にましょうか死にます!」

「大丈夫だよハルカさん死なないで...それよりみんな、あと二分後に総攻撃できる?」

 

これが私の最後の仕掛けだ。もうこれ以上は土下座しかない。足も舐めるし首輪も付けますと言って時間稼ぎに徹するとか...

 

「二分後?大丈夫なの?」

『えっと...敵の砲撃の周期と合致してしまいますが...!?』

「うん。それで大丈夫。」

「...分かったわ。みんな用意するわよ!」

 

さて...仕込みが上手いこといってると良いんだけど!

 

『そろそろチェックメイトといきますか。では擲弾兵の着弾を確認後、一斉に包囲を狭めます。3...2...1...』

 

時計を確認する。あと三秒...!

 

 

 

 

 

『...あら?擲弾兵?』

 

砲撃が...来ない!

 

「みんな!砲撃は来ないよ!」

「よぉし、行きますよ〜⭐︎」

「み、みんなぶっ飛ばしちゃいます!!!」

 

「大変です!後方の擲弾兵部隊が襲撃に合いました!」

 

『擲弾兵部隊が...?後方からは侵入できる道のない地形を選んだはずですが。それにいったいどこの...?』

「それが、どうやら抜け道があったらしく...!て、敵の所属は...!」

 

後方で煙が上がる。

こちらに砲撃が着弾した後に突撃をしようと準備していた風紀委員たちは、いつまで経っても飛来しない砲撃を待って足を止めている。

 

そこにアビドスと便利屋が攻勢をかけ...風紀委員は態勢を大きく崩して後退せざるを得なくなったようだ。

 

 

 

『あれは...傭兵?』

 

 

 

「さて、ゲヘナの風紀委員相手か。割増料金も貰ったし、お前ら時間の分はきっちり働けよ!」

「よっしゃ!」

「ウチ元ゲヘナなんだ!風紀委員にはちょっとした恨みがあってよ!」

「なにしたん?」

「風紀委員会の恋愛ゲーム作ったんだけど、風紀委員長が歳上のイケメン教員にメス堕ちする展開が気に入らないって行政官に逮捕されかけた。」

「それで傭兵やってたんだ...」

「そりゃないわ、あの風紀委員長がそんなんになるわけないっしょ?」

「そうかなぁ...」

 

私の最後の切り札は、傭兵だ。

彼女たちは元々便利屋が雇っていた傭兵。私はドローンで彼女たちに接触し、便利屋の名前で指示の変更と追加報酬を渡した。

 

原作でもアビドスと便利屋がここでぶつかり合う前に、カヨコちゃんが傭兵を呼んでいたが...結局話に登場することはなかった。対アビドスで全員倒されたのか、風紀委員会相手にやられてしまったのかは分からない。

 

とにかく、よく原作を見れば使える戦力はまだ残っていたということだ。ドローンで追加報酬を渡して対風紀委員会でも戦ってくれるようお願いをして...

 

そして、ある方法でより効果的に傭兵をぶつけることができた。

 

「あれは...私たちが雇っていた傭兵?いつの間に...」

「ベストタイミングじゃない?おかげで敵の勢いも削げたわ!」

「あのルートは...シルベ、まさか...?」

「な、なんとか上手くいったかな...シロコちゃんのおかげだよ。」

 

傭兵を、風紀委員会の後方にいる擲弾兵部隊にぶつけられた理由...それは、このメモ帳だ。

 

「銀行強盗の下見メモ...!?」

「なるほど。あそこにはちょうど、アビドス第三銀行の追跡を撹乱するのに最適な隠し通路があった。」

「そう。ここから近過ぎす離れ過ぎずな位置にあるから、風紀委員会ならそこに後方支援部隊を設置すると思ったんだ。」

 

さらにこのメモには様々な逃走経路の所要時間もきっちり書かれている。徒歩からロードバイク、車まで。シロコちゃんの銀行強盗関連の精度に疑いの余地はない。

 

後はちょっと...便利屋に払った分と、傭兵への追加報酬で...カードの明細が死ぬほど怖いということだけだ。なんのことはない。私が連邦生徒会に土下座すれば良いだけのこと。

 

『...なるほど。これがあなたの策、ということですか?シルベさん。』

「そうだね...けほっ...アコさん、これで諦めて貰えないかな?」

『ふふっ...いえ、問題ありません。不意は突かれましたが、傭兵の制圧は後方待機の部隊で十分可能ですし...ただの時間稼ぎにしかなりませんよ?』

 

それでいい。風紀委員会が次に一気呵成の準備を整え切るまでは耐え切れる。

アコちゃんは知らないだろうけど、あなたの大好きな彼女が今、迫っておりますよ。

 

『第三中隊は後退、第四中隊は立て直し後に再突入の準備を...』

 

 

 

 

『アコ。』

 

 

 

 

...風紀委員会側に通信が入る。

この声は...!

 

 

『ひ、ひ、ヒナ委員長!?』

 

 

「委員長?」

「あの通話相手が...?ってわわっ、シルべ!?」

「おっと...ご、ごめん。ありがとう...」

 

安心して力が抜ける。ああ、ヒナちゃんだ。ヒナちゃんが来たということは...私たちは耐え切ったのだ。

 

『い、委員長がどうしてこんな時間に...?』

『アコ、今どこ?』

『わ、わたしですか?私は...そ、その...げ、ゲヘナ近郊の市内の辺りです!風紀委員のメンバーとパトロールを...』

「思いっきり嘘じゃん!」

「やっぱり、行政官の独断行動だったみたいですね...」

 

余裕を崩さなかったアコちゃんの声がぷるぷる震えている。かわいい。

 

『その、私、今すぐ迅速に処理しなくてはいけない用事がありまして...後ほどまたご連絡いたします!い、今はちょっと立て込んでまして...!』

『立て込んでる?なにがあったの?』

『えっと、その...』

 

通信越しの声が、鮮明なそれに...切り替わる。

 

 

 

「他の学園の自治区で、委員会のメンバーを独断で運用しないといけないようなことが?」

『...えっ?』

 

 

 

「!?」

「い、委員長...!?」

 

「...アコ。この状況、きちんと説明してもらう。」

 

我らがヒナちゃんの登場である。

その小さな体で、ゲヘナを...キヴォトスの未来を背負う、最強の風紀委員長。

 

そして原作通りこの状況を打開してくれる、救世主さんなのでした。

 

 

 

 





血みどろになって戦う女の子尊い...という性癖をお届けしたい、その一心でございます。清き(?)一票を!
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