先生の居ないアーカイブ   作:ヒオルカ

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誤字修正大変助かっております。今後ともお世話になります。(犯行予告)


風紀の守り人

 

『ゲヘナの風紀委員長...空崎ヒナ。外見情報も一致します。間違いなく本人のようです。』

「......」

 

『そ、その...これは、素行の悪い生徒たちを捕まえようと...』

「便利屋68のこと?どこにいるの?今はアビドス、シャーレと対峙しているように見えるけど。」

『え、便利屋ならそこに...』

 

残念だが、便利屋68はその自慢の逃げ足で行方をくらませた後だった。まさに、こつぜんと。

すぐ近くにいた私でも、彼女たちが逃走する瞬間を見ることは叶わなかった。多分ヒナちゃんの通信が入った時点で即撤退したんだと思う。

 

便利屋68がどうにか成り立っている要因として、この逃げ足はかなりの割合を占めているんじゃないかな...

 

『い、いつの間に逃げたのですか!?さ、さっきまでそこにいたはず...!』

「......」

 

しかしヒナちゃん、すごいプレッシャーだ。身長差なんてものともしない圧力でアコちゃんを圧迫している。通信越しに。

 

『えっと...委員長、全て説明いたします。』

「...いや、もういい。大体把握した。要するに、ゲヘナにとっての不安要素の確認及び排除ってところね。」

 

ヒナちゃんはもう全てを把握しているだろう。アコちゃんが他の学校の自治区にまで乗り込んだ理由を。メインターゲットは便利屋ではなく、シャーレであったことを。

 

「でもアコ、私たちは風紀委員であって、生徒会じゃない。そういうのは『万魔殿』のタヌキたちにでも任せておけばいい。」

 

『万魔殿』のタヌキ...思い浮かぶのは、議長であるあのお方。

めちゃくちゃ顔がいいもんだから、最初に見て「キキッ!」とか言い出した時はびっくりして思考停止しちゃったよ。

 

「詳しい話は帰ってから。通信を切って校舎で謹慎していなさい、アコ。」

『...はい。』

 

アコちゃんの弱々しい返事と共に、通信が切れる。反省文の宣言は三桁に抑えておいた方がいいよアコちゃん。

 

「......」

「......」

 

私たちの奇策を受けても動じなかったアコちゃんを、あっさりとKOした風紀委員長に、皆気圧されている。

 

「...これ以上無理はできない。」

「そうですね...シルベちゃん、大丈夫ですか?私の肩に捕まってください。」

「え?...あ、うん。ありがとう...」

 

おや。原作ではそれでもなお風紀委員長に突っかかろうとする三人をアヤネちゃんが頑張って止めていた覚えがあるけど。

私の雑魚さ加減がアヤネちゃんの負担を減らせたと思うと誇らしいよ...

 

『こちらアビドスの対策委員会です。ゲヘナの風紀委員長ですね、初めまして。この状況については理解しておりますか?』

「...もちろん。事前通達無しでの他校自治区における無断兵力運用、及び他校生徒との衝突。けれど、そちらが風紀委員会の公務を妨害したのも事実。違う?」

「それはそうかも。」

 

実際のところ、この状況に出くわした際...学校間として最も安全な方策だけで言えば、戦闘はせずに便利屋を引き渡し、その後にアビドスからゲヘナ学園に正式な抗議をする...といった形が望ましいだろう。

 

まあシャーレ狙いだからそれで引き下がってもらえるかというと別だけど。

 

『うう...!便利屋の人たちもいない、あっちの兵力は変わってない...こ、こういう時にホシノ先輩がいたら...!』

「...ホシノ?」

『...?』

 

 

「アビドスのホシノって、もしかして小鳥遊ホシノ...?」

 

 

 

「うへ〜、こいつはまた何があったんだか。すごいことになってるじゃーん。」

 

 

 

緊迫した空気の中に、一際気の抜けた声が飛び込んでくる。ホシノちゃんだ。

 

「えっ!?」

『ほ、ホシノ先輩!?』

「ごめんごめん、ちょっと昼寝しててね〜、少し遅れちゃった。」

 

「......」

 

ヒナちゃんが驚いている。彼女の驚く顔は結構貴重なんじゃないかと思う。

それこそホシノちゃんに会った時と...イオリの足舐めた時くらいかな?そりゃ驚くだろ誰だって。

 

「ゲヘナの風紀委員会かぁ...便利屋を追ってここまできたの?」

「......」

「うーん、事情はよく分からないけど、対策委員会はこれで勢揃いだよ。ということで、あらためてやり合ってみる?風紀委員長ちゃん?」

 

ヒナちゃんとホシノちゃんが対峙する。ブルアカのロリは強いの古則筆頭の二人は、実際どれくらい強いのだろうか。

特にヒナちゃんが万全の状態で戦ったところなんてあんまり見たことがない。アビドス編の最後と、便利屋漫画と、ショッピングモールで水着を...

 

...水着?

 

「...一年生の時とは随分変わった。人違いじゃないかと思うくらいに。」

「ん?私のこと知ってるの?」

 

山積みになった危機と障害と書類の山で忘れていたが、もしかしたら...今後、みんなの水着を見ることができる機会が訪れるのか!?

 

「情報部にいた頃、各自治区の要注意生徒たちをある程度把握してたから。」

 

そ、そんな...スク水のヒナちゃんや、dynamite bodyなノノミちゃんの水着が見られる...?私は耐えられるのか?そんな状況に。

 

「そうか、だからシャーレが...」

「......」

 

実は私の最大の敵は水着...?見ただけで全身の細胞が弾けて混ざりゲームオーバーになる可能性が高いっ...!あ、目の前のヒナちゃんが一瞬スク水に見え──

 

「ごふぁ!?」

「ちょ、シルベ!?大丈夫!?」

 

しまった。血圧がぐんと上がったせいでちょっと体に空いた穴から血が出てきた...くらくらする...

 

「!...アビドス。私はここに戦いにきたわけじゃない。」

『そ、そうなんですか...?』

 

 

 

「事前通達無しでの無断兵力運用、そして他校の自治区で騒ぎを起こしたこと。このことについては私、空崎ヒナより、ゲヘナの風紀委員会の委員長として、アビドスの対策委員会に対して公式に謝罪する。」

「!?」

「頭を下げました...!?」

「今後、ゲヘナの風紀委員会がここで無断で侵入することはないと約束する。どうか許してほしい。」

 

た、多分良い方向に行ってると思うんだけど頭が働かない。なんだろう、今の出血がトドメになっちゃったかな...?全然力も入らない...

 

『!...とりあえず、シルベさんを病院に!』

「救急車を手配してある。それで近くの病院に搬送できるわ。」

「救急車...?」

 

...サイレンと車の駆動音が遠くから近づいてきている...?

 

 

 

「お待たせしました。死た...負傷者はどこですか?」

 

 

...!?セナちゃん!?

う、うおお!セナちゃんだ!まさか対策委員会編で会えるなんて、もうちょっと先だと思ってたのに...!

あっまた意識が...

 

「で、でも大丈夫なの?ゲヘナの車でなんて...!」

「...イオリ、チナツ。風紀委員会を全員連れて、学園に帰還しなさい。」

「...!?」

「い、委員長...」

「ついていくのは救急医学部のセナと私だけ。大きい救急車だから対策委員会も全員乗れる。これで信じて貰いたいのだけど。」

『...そうですね、お願いします。救急医学部はゲヘナの部活の中でも、政治的な関わりが薄い部活だとも聞いていますし...大丈夫だと思います。』

 

セナちゃんに支えられて、救急車に乗る。はぁ...もう情けなさしかないが、もうフラフラでどうしようもない。一応この戦いに終止符は打てたと思うし、もう、いいかな...

 

救急車内のベッドに寝かされると、張り詰めた糸がぷつんと途切れるように...私の意識はあっさり暗闇へと落ちていった。

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「.........はい。内臓の損傷は無さそうです。外傷は酷いですが...」

「...ですが?」

「寝れば治ります。」

 

運び込まれた病院で、そのままセナちゃんに応急手当てと検査をしてもらう。

どこぞの先生ならともかく、正直キヴォトス人に細かい薬は必要がないと言っていいだろう。外傷だけであれば、消毒して絆創膏を貼って寝れば治る。それが私たちの不思議ボデーだ。

 

「ありがとう、セナさん。」

「いえ、仕事ですので。」

「それと...ヒナさんも、ありがとうございます。」

 

付き添ってくれているヒナちゃんにもお礼を言おう。

 

「...これくらいはさせてちょうだい。あなたにも...申し訳ないことをした。後日シャーレにも公式に謝罪をさせてもらう。」

「ううん、大丈夫。無事に解決したし...その、何かの拍子にトリニティにバレたらちょっと面倒になりそうなので...」

 

今回は無所属の先生ではなく、一応トリニティ総合学園所属の生徒なのだ。トリニティとゲヘナ間の確執は、できるだけ取り払っておきたいところでもある。

 

「...いえ、私がもっと早く気づいて来ていれば、あなたがここまで怪我をすることはなかったかもしれない。」

 

...うーん、実は半分くらい無謀な爆弾処理の結果なんだけど...ちょっとややこしくなりそうだから黙っておこう。ごめんヒナちゃん。

 

「私にできることがあったら、言ってちょうだい。助けになるわ。」

「!...あ、えっと...」

 

これは...嬉しい申し出だ。ちょっと不安だったんだよね、対策委員会編最後の戦いで、ヒナちゃんたちが私たちに力を貸してくれるかどうか。

 

「じゃあその、もし今後アビドスがピンチに陥った時...要請したら、助けに来てくれると嬉しいです。」

「...?それは...いいけど。あなたではなく、アビドスの?」

「ああ...うん。私は大丈夫だから、対策委員会を助けてあげて。」

 

ふう、これで一つ安心材料ができた。ヒナちゃんが味方なら怖いもん無しだぜ!

 

「あなたは...」

「?」

 

ヒナちゃんはしばらくこちらを見つめた後、こう私に問いかけて来る。

 

「あなたは、どうしてシャーレをやっているの?」

「...?それは...」

 

どうして...か。それはまあ、必要に迫られてではあるんだけど。

 

「最初はトリニティからの命令か何かでシャーレの活動をしているものだと思っていたけれど...違うみたいね。あなたはこのアビドスという学校を本気で守ろうとしている。」

「......」

「どうして、トリニティの生徒であるあなたが...別の学園の自治区を救おうとしているの?連邦捜査部『シャーレ』という特殊な部活に一人で入ってまで。」

 

どう、答えようかな。ヒナちゃん相手には、変な誤魔化しも通用しない気がする。

 

「えっと。私、先生になりたいんです。」

「...先生?」

「憧れの人がいて。生徒を守る、素敵な先生。どの学校とか関係なく、生徒が...生徒らしく成長できるようにサポートする先生に。」

 

結局私は選んだのだ。

あの日、サンクトゥムタワーが襲撃された日。布団に潜り、縮こまって先生が来る日を待つこともできたけど、そうはしなかった。私の唯一の誇りだ。

 

「そう...分かったわ。」

「...?」

「いつでも言って。私があなたを助けてあげる。」

「!?」

 

な、何!?急なイケメンオーラを発してくるヒナちゃん...!これがキヴォトス最強の風紀委員長か...!

 

...病室の外から話し声が聞こえてくる。

 

「対策委員会が購買から戻って来たみたいね...私はもう行く。いつでも連絡してちょうだい。」

「う、うん。ありがとうございます。」

 

そうしてヒナちゃんは踵を返して、病室を出て行こうとする。

 

「...一色シルベ。」

「?」

「応援しているわ、あなたの目標。この世界で、学園の分け隔てなく未来を考えられる人は貴重だから...頑張って。」

「...!うん、頑張ります!」

 

こうしてヒナちゃんに随分と心強い言葉を貰い、対風紀委員会は幕を閉じたのであった。

 

 

 

 

 

数日間まともに動けなさそうな有様だけどね!

 

 

 

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