諸事情によりちょいと短め?
「ふぁ...」
カーテンを開けると、目覚めには良い日差しが差し込んでくる。
あれだけあった傷もこの三日間でみるみるうちに塞がり、明日には退院できるくらいの調子になってきた。
重体から半日寝ただけで完治する正義実現委員長とまではいかないが、やっぱりキヴォトス人の体は丈夫だな...
まあ傷がちゃんと治るまではゆっくりしましょうか...なんて、そんな余裕は私にはない。この余った時間で、これからどうしていくべきかをずっと考えていた。
対策委員会編ももうすぐクライマックスといったところ。直近で考えるべきなのは、やはりホシノちゃんのことだ。
先日リンちゃんに問い合わせた電話の内容を思い出す。
悩みの種は、一向に減る気配を見せない...
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『この間の件ですが...残念ながら、シルベさんを対策委員会の『顧問』とすることはできません。』
「や、やっぱり......どうにかなりませんか?」
...正直予想はしていた。ただのシャーレ所属の生徒が部活動の顧問になることはできない。キヴォトスでは『先生』と『生徒』という概念には言葉や立場以上の壁が存在するようだ。
それでも...この権限が有るのと無いのとでは、大きな差が生まれる。ホシノちゃんを救った『あの手』が、使えなくなってしまう。
『いくつか規則の抜け道を探しては見ましたが...残念ながら、こればかりはどうにもなりません。』
「そうですか...分かりました、ありがとうございます。」
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どうしよう。
対策委員会に顧問が付かないということは、生徒本人のサインだけで去就が可能になってしまうということだ。先生は対策委員会の顧問になることで、黒服とホシノちゃんの契約を無効にしたのだけど...その方法が使えない。
つまり、ホシノちゃんの契約自体を止める必要がある。
でも、カイザーがホシノちゃんを捕らえられなかった場合、カイザーの理事が生徒誘拐犯として指名手配されることもなくなり...どうなるんだ?
確かカイザーに連邦生徒会の手が入ったのはブラックマーケットの違法取引がバレたからだったと思うし、関係ない...?
もしかするとその誘拐騒ぎからその違法取引が明るみに出た可能性もある。もう分かんないよ...
...こんなとき、先生がいたらどう動くのだろう。
ここのところずっとだ。先生がいたら、とか先生だったらどうするか、みたいなことばかりを考えてしまっている。
実際のところ問題はそれなんだ。戦闘も契約も、先生がここにいれば全て解決するんだけど...
「はぁ...」
タブレットのメモ帳アプリを閉じる。私がシャーレに所属してから急いで書き連ねた、キヴォトスの未来が書かれたメモ。
この道筋をどうにか保ち、時間を稼ぐのが私のやるべきことだと...そう思っていた。でも、本当にそれだけでいいのだろうか?
この他にもう一つ、考えていたことがある。それは、『なぜ先生はキヴォトスに来ていないのか?』ということだ。
そういう設定の二次創作なんですーっ!ってことなら私がただ野垂れ死にするだけなので、その線は考えないことにする。つまり、何かしらの障害やトラブルのせいで先生が来られていないのではないかと。
私がここで耐えるよりも、それを解決して先生に来てもらうことこそ最善なんじゃないか?
そうすれば、私が無茶をする必要もなくなる。といっても、どこに原因があるかなんて分からないし...
先生の行方を知ってそうな、人物なんて...
...あ
......『一人』いるかもしれない。
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コンコン
病室の扉がノックされる。誰かな?対策委員会のみんなは午前中に来てくれたけど...
「どうぞー?」
「し、失礼するわ。」
あら、アルちゃんに...便利屋のみんなだ。
「便利屋のみんな、お見舞いに来てくれたの?」
「え!?いやその、お見舞いというかお礼参りというか...!ツラを拝みに来たというか...!」
「社長。」
「う...そ、そうよ...その、うちのハルカが爆発させちゃったみたいだし...」
それを気にしてここまでお見舞いに来てくれたんだろうか?なんとまあ良い子たちだ。
「ごごごごめんなさいシルベさん!!!私が、私がちょっとびっくりしてしまってボタンを押してしまって...!ここはハラキリしてお詫びを...!!!」
「ハルカちゃんここ病院だから、武器はしまおう?」
「大丈夫だよ、ハルカさん。一応その、私爆弾を撤去しようとしてたわけだし...それにほら、もう全然元気だから!」
実際前に会った時は対策委員会と一緒にいたし、敵対者としては正しい反応な気もする。まあ店やアルちゃんたちごと吹っ飛ばしたのはアレなんだけど...
「とにかく、何かお詫びがしたいわ。私たちこれから事務所を別の場所に移すし、その前にと思って。その、お金はラーメン屋さんに置いて来てしまったから、それ以外でお願いしたいのだけど...」
「そんな、いいのに...」
便利屋に頼み事...多分この子たちは、私が頼まなくてもきっとアビドスを助けてくれると思うし、他に頼むことは...
あ、そうだ。
「もし、キャップを被ってる長い青髪の子...『サオリ』を今後ブラックマーケットで見かけることがあったら、ちょっと気にかけてくれると嬉しいな。」
アリウススクワッドのメンバー、『サオリ』。
彼女は後ほど色々な経緯で、ブラックマーケットで暮らすこととなる。その際、賃金や契約書などの知識がなく...騙されて結構酷い目に遭うのだ。
絆ストーリーでボロボロになったサオリちゃんのメモロビ見せられた私の情緒
「サオリ...サオリね?分かったわ、このブラックマーケットを裏から支配する予定のこの私に任せておきなさい!」
アルちゃんがドヤ顔で胸を張る。可愛いなぁ...そういえば、戦闘ばかりで落ち着いて便利屋を見る機会はあまりなかったかな。
この子たちは見ているだけで、先程までの考え事でこわばった私の表情をほぐしてくれる...
「じゃあねシルベさん。何かあったら便利屋68に依頼してくれてもいいのよ?高くつくかもしれないけどね!」
「また会おう。あなたの作戦は見事だったよ。」
「ばいば〜い!」
「ま、またお会いしましょう...!」
こうして便利屋のみんなとお別れをした。
考えることもやることも山積みだけど...彼女たちがのびのびと、自分にやりたいことを貫ける楽園を守るために、私にできることをしよう。
明日は、退院の日だ。