「さて、どうしよっか?とりあえずカイザーを止めなきゃいけないよね?」
ビルから出てドローンを飛ばし、カイザーの動向を探る。
結局のところ、ここからは力比べだ。
カイザーを押し返せるのであれば、後は連邦生徒会に。
負けてしまえば...全てを隠蔽され、アビドスはカイザーのもの。
ブラックマーケットの取引や3000%の利子など...今回の騒動で得ることのできた証拠をいくつかリンちゃんに送ってある。それと、ホシノちゃんが攫われたとも伝えた。実際には未遂に終わっているが、捜査のきっかけにはなるはずだ。
もしかすると、最後の生徒会メンバーであるホシノちゃんがこちらにいる以上、彼女さえ守ればアビドス存続の訴えはできるかもしれない。
「そうだね。いくつかの証拠と一緒に連邦生徒会には連絡したから、ここを越えれば...きっとアビドスは、この窮地を脱出できるよ。」
でも、それが...私たちのアビドスを奴らに蹂躙されていい理由にはならない。
「そうなの?...まあシルベちゃんが言うならそんな気がしてきたよ。よ〜し、おじさんちょっと本気出しちゃおっかな?」
「私は...ちょっと他のところに行ってくるよ。助けてくれる人たちのアテがあるんだ。」
すっかり登った太陽は、それまで鬱屈としていた私の心を溶かしてくれる。
「...あ、みんなからのメッセージだ。凄い量...うへ〜、おじさんみんなに会うのが怖いよ〜。」
「それは仕方ないよ。いっぱい怒られてあげよう。」
ホシノちゃんが盾を持ち直す。
「おじさんみんなに会うのが怖いから、ここからカイザーの横を叩こうと思うんだけど...どう?」
タブレットに映し出されたカイザーの軍隊を見ると...
確かにこの場所から軍に向けて真っ直ぐ進み、その横っ面を叩いた方が良いかもしれない。
...彼女の表情は、昨日見た諦めのそれではない。
だったら。
「分かった、気をつけて。必ず戻るから。」
「うん。シルベちゃんも気をつけてね。」
二人は別の道を歩く。
それでも、私たちは一人じゃない。
―――――――――――――――
全速力でゲヘナ学園の校門をくぐり抜け、目標に向かって突撃する。
「こんにちはイオリさん!ヒナ委員長にお会いしたいのだけど!!!」
「ん?ああ、あんたシャーレの...それだったら、向こうの事務室でアポを...ってうわ、何!?何だよ!」
!?
...と、止められたッ!?
足を一歩引かれ、手で頭を抑えられる。いくら舌を突き出しても後一歩、届かない。う、嘘だ...こんなことが、こんなことがあっていいのか...!?
「.......っ!...っ!」
「いやホント何!?この...っ!と、止まれ...!」
全力で前進しようとするが、全く進まない。
い、イオリちゃんの御御足が目の前にあるというのに...舐められないだと!?
「何だか楽しそうね?」
「い、委員長...!?こ、コイツを何とかして!」
「あっ...!ヒナさん...!?あのっ...手伝って欲しいことがっ...あるんだけどっ...!?」
も、もしかして原作の先生は、彼女の足を舐める時だけ発動するAGIバフを所持しているのでは!?くそう...先生助けて...イオリの足が舐められないの...
「...もしかして、アビドス?分かった。私の力が必要なのね。」
「うんっ......!前教えて貰った砂漠でね...っ!今っ...!みんなが...っ!」
「委員長!これ...っ!止めてからっ!話して欲しいんだけどっ!?」
ダメだ。流石にイオリちゃんのパワーには勝てない...
断腸の思いで引き下がる。
「はぁ...はぁ...な、何してんだアンタ...!?」
「え...?イオリちゃんは...足舐めたらなんでもお願い聞いてくれるんじゃ...」
「誰だよそんな噂流したやつ!?取り締まってやる!!!」
はぁ...私のキヴォトスに来たらやりたいことリストの一つが未遂になってしまった。ショック!
「...それで?どこに行けばいい?」
「えっと...この地点!あと、こっちにも...」
「分かった。アコ聞こえる?出動。3000枚の反省文はナシにしてあげるから、急いで風紀委員を集めて。」
あれ、反省文三倍になってる...バタフライエフェクトかな...それに、原作では来てくれたのはネームドの三人だけだった気がする。
「ありがとう、ヒナさん。」
「約束したから。あなたの...アビドスの助けになるわ。」
さて、私も対策委員会に合流しよう。ナギサ様には...絶対にヒフミちゃんから連絡した方が良いし...うん。
「じゃあ、私も戻るね。イオリさん、絶対また来るからね...!」
「もう来んな!」
絶対リベンジしてやる...足洗って待っててねイオリちゃん!!!
―――――――――――――――
「......」
「.........」
...対策委員会と合流する途中で、何だか隠れてひそひそしている四人組を見つける。
(...どうするのアルちゃん?)
(はぁ...ラーメンを食べに来ただけなのに、道中でカイザーの軍に出くわすなんて...)
(どうします...?や、やっちゃいます...!?)
大きいゴミ箱の影に隠れているのは、便利屋68のみんなだ。
「こんにちは、便利屋のみんな。」
「ひゃっ!?」
「あれ、シャーレの...シルベちゃんだっけ?こんなところでどうしたの〜?」
時系列的には...うん、もうよく分かんないな...屋台になった柴関で食べてきた後?それともその前?
「これからアビドスと合流してカイザーと戦うの。えっと、アルさんたちは...?」
「え?私たちはその、ラーメンだけ食べて帰──」
「待って。みなまで言わなくていいよ。うん、アルさんはハードボイルドだもんね...?」
「...え!?」
「...じゃあ私、対策委員会に合流してくるね!あと関係ないけどこの地点に爆弾埋めると効果的かも...?じゃあまたね!今度ラーメン奢らせて!」
それだけ言って走り去る。
「...え?えっ...?」
「へぇ、やっぱそういうつもりでこのルートを選んだんだ、アルちゃんさっすが〜!」
「はぁ...なんだか損してばかりだけど、仕方ないね。」
「流石ですアル様...!」
「ふ、ふふふ!と、当然じゃない!私に着いてきなさい!!!」
ドローンの集音機能から楽しそうな声が聞こえる。あとアルちゃんの心の声も何故か聞こえてくる気がする...
(い、言っちゃったー!ラーメン食べたら帰るつもりだったのに!で、でも奢るって言われちゃったし、一回アビドスの子と背中を合わせて戦ったし...!)
「くふふ...!シルベちゃん、中々やるね...?」
―――――――――――――――
「この...!負けないんだから!」
「ここは通しませんよ〜!」
着いた!アビドス高校に通じている道路で、対策委員会とカイザーの軍が衝突を始めたところみたいだ。
ああ、疲れた...鉄道があるとはいえ、ゲヘナからアビドスまでこんな短時間で行ったり来たりするのは凄い大変だった...
「はぁ、はぁ...み、みんな...!」
「!シルベ...!」
戦況は...どうだろうか。指揮がない分、原作よりは少し押されているかもしれない。
でも大丈夫。増援の量は原作よりも減っているはずだ。
「シルベちゃん!無事でよかったです...!ホシノちゃんは、本当に大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫。別働で戦ってくれてるよ。」
『よ、良かった...あの手紙を見た時はどうなることかと...』
対策委員会のみんなには、事情を一通りメッセージで伝えてある。
「なら、こんなところで止まってられないわね!とっとと押し返して、早くホシノ先輩の元へ向かわないと!」
ドローンを飛ばし、目標を定める。
何だかドローンの調子も良い。みんなもいる。
これは...負ける気がしないね?
―――――――――――――――
「よっと...!さて、どう突破しようかな〜?」
目の前には、奇襲を受けて混乱状態にある後方待機の軍。ここを突破すれば、カイザーの補給部隊がいるはず。
「さぁて...ん?」
数度目の攻撃を盾でやり過ごし、切れ目を狙って飛びかかろうとしたその時、カイザーの私兵が...何者かによって薙ぎ払われた。
「ゲヘナの...風紀委員長ちゃん?」
「...ここで戦っていたのはあなただったのね、小鳥遊ホシノ。」
ゲヘナの風紀委員長だ。名前は、えーっと...
巨大な銃を軽々と担いだ彼女は、砂埃を掻き分けこちらに近づいてくる。
「どうしてこんなところに?うへ〜、もしかしてお散歩?」
「...一色シルベから支援の要請を受けてこの座標に来た。これはアビドス自治区での戦闘行為だけれど、許可は得ているものとしていいわね。」
「そっか、シルベちゃんか。いやぁ...助かっちゃうな〜。」
彼女の銃撃で敵の兵士が軽々と吹き飛んでいく。
「向こうに敵の補給部隊がいるからさ。突破しちゃおうかなって思うんだけど、どうかな?」
「分かった、援護するわ。小鳥遊ホシノ。」
―――――――――――――――
「牽引式榴弾砲です!す、すみません、これぐらいしかお役に立てず...」
「ううん!ありがとうヒフミちゃん!」
「ファウストです!ヒフミではありません...!」
「ありがとうございますファウストちゃん!」
「すみませんファウスト様!後はこのブラックめにお任せください!」
「あ、あうう...」
――――
「ここは私たちに任せて、先に行きなさい!」
『便利屋のみなさん...!』
「確かに、ここが一番戦車の通りやすい道だね...これもあなたのリサーチ?」
「ん。中央銀行に向かう現金輸送車の護衛もしやすい道。」
「ありがとう!ハルカさんも、いい爆破だったよ!」
「そ、そうですか...!?お役に立てて良かったです...!」
――――
「送られてきた座標はここだな...?よーし、開発だあああ!!!」
「!?だ、誰?」
『えっと...え!?ゲヘナの温泉開発部みたいです...!ど、どうしてこんなところに!?』
「だ、誰が呼んだんだろうなー?」
「ん、なんでも良い。使えるものは使おう。」
――――
「傭兵さんたちも、ありがとう!」
「貰った分働いているだけさ。あとこれも持ってきな。頼まれてたブツだ。」
「ホント!?見つかったの!?」
「シルベちゃん、それはなんですか〜?」
「それ...卒業アルバム?誰の?」
「あ、いやその...シャーレの業務に必要で...!」
―――――――――――――――
「...ねえ、風紀委員長ちゃん。」
「...何?」
不意を突かれたカイザーの補給部隊はほぼほぼ壊滅状態。後は挟撃しつつみんなの元へ向かうだけ。
「『先生』って知ってる?」
「...シルベが憧れている人、それくらいしか知らない。情報部でも調べてみたけど...それらしい情報は出てこなかったわ。」
黒服と対峙した際に見せた、シルベちゃんの慟哭を思い出す。彼女の背に乗っているその何かを...私はまだ知らない。
「そっか...あの子、その人を探しているんだって。その人の代わりに...重いもの背負って、戦ってるみたい。」
「......」
「どんな人なんだろうね?」
「...あの子は素晴らしい人だと語っていたけれど、あまり良い印象はないわ。まだ一年生の彼女を、ここまで駆り立てているのだから。」
巻き上がった砂煙がもう時期晴れる。後一押しかな。
「いつか会ってみたいねぇ。」
「そうね...会わせてあげたい。」
視界が完全に開く...その前に突入する。周りの雑兵は既に、彼女の銃撃によって一掃された後だ。
「行くよ!」
「了解。」
―――――――――――――――
「何故だ...!何故だ!北と東の軍から連絡がない...これでは...!」
「カイザー理事、これで終わりだよ。」
思えば会うのは初めてか。あの肩幅のデカいロボがカイザーPMC理事だ。目の前にすると威圧感がすごい...だが、この状況では、もう怖くなんてない。
「貴様...『シャーレ』!なんなんだお前は...データでは全く脅威にならなかった存在だったはず!」
「私じゃないよ。あなたが生徒の...ホシノちゃんたちの覚悟を見誤ったんだ。」
多方面からの増援により、カイザーの兵力は大幅な分断を強いられ...もはや壊滅状態だ。
「よっと。みんなお待たせ〜。」
「『ホシノ先輩!!』」
ホシノちゃんも合流だ。これで対策委員会も勢揃い。
「おかえり。えっと、ヒナさんは?」
「ただいま〜。北の援護に行くって言ってたよ。」
「な、アビドスの副会長!?おのれゲマトリアめ、捕らえたのではなかったのか...!?」
これまでの、ブルーアーカイブのメインストーリーVo.1を駆け抜けた間に、それはもうたくさんの困難があった。
でもその困難が私と...色んな人を繋いでくれた。便利屋68、ゲヘナ、トリニティ...そして、対策委員会。
私に...この世界に足りないものを埋めてくれるカケラたち。その全てが揃った今。
対策委員会編最後の戦いは、なんの不安もなく...私たちの青春の、勝利で終わったのであった。
メインストーリーVo.1 対策委員会編、次回で終了予定です。