あれから数日。アビドス対策委員会の一日は、今日も慌ただしい日々が続いています。
あの後、対策委員会は連邦生徒会の公的な認証によって、アビドス高等学校の正式な委員会として承認されました。
つまり、正式にアビドスの生徒会としての役割を担うことになったということです。
シルベちゃんや協力をしてくださった皆さんのお陰で、ホシノ先輩の件は解決しましたが、アビドスの借金は相変わらず9億円のままです...まあこれは最初とあまり変わらないのですが。
カイザーローンは、ブラックマーケットの不法な金融取引がバレて、連邦生徒会の捜査が入るとのことでした。
カイザーPMC理事はあの後、生徒誘拐未遂事件の容疑者として、連邦生徒会に拘束されました。カイザーコーポレーションは、自分達とは関係ないと主張するために、即座に解雇処理を行ったそうです。
アビドスとカイザーの土地取引自体は違法ではなかったため、アビドス自治区の大半は相変わらず、カイザーコーポレーションが所有したままとなっています...
そういえば、カイザーは私たちとの交戦を少しでも隠すため、幾つかの土地を手放しました。
その土地には先日カイザーの軍と衝突した地点が含まれていたのですが、なんとそこから温泉が湧き出てきまして...
現在、ちょっとした温泉施設を建設中です。これをきっかけに、学外からお客さんが来てくれると嬉しいですね。
「シルベちゃん、もう行ってしまうんですか?」
「うん。名残惜しいけど、一応私、トリニティの生徒だから...学校通わないとね。」
「うへ〜、せっかく負担が減ったことだし、ちょっとゆっくり昼寝でもしてったら?」
私たちの手紙を読んで、遠くの学校から私たちを助けにきてくれた、『シャーレ』のシルベさんは、委員会の承認や活動の平常化が完了すると共に、トリニティへと帰ってしまうみたいです。
「大変お世話になりました、シルベさん。シルベさんが来てくださらなかったら、きっと私たちだけでは乗り越えられなかったと思います。」
「役に立てたなら良かった。私もみんなに支えられて、一回り成長した気がするよ。これからもアビドスの復興、頑張ってね!」
そういって朗らかに笑う彼女は、とても大人に見えて...まるで代理ではなく、『シャーレの先生』そのもののようでした。
「そうだセリカちゃん。あのさ、前にあげた幸運のブレスレットなんだけど...あれ、実はその、嘘なんだよね...」
「ふん、私を舐めないでよね!そんなの知ってるんだから!」
「!おお...!」
「それに、幸運っていうのもあながち間違いじゃないわ!みんな、仮想通貨って知ってる?」
「...ん?」
「この間ネットの広告で見てやってみたんだけど、私の一か月のバイト代が、三倍になったの!」
「うーん......」
「だからね!このまま全部突っ込んだらあっという間に9億に...!」
「「「そこで辞めとこう!」」」
私たち対策委員会の日常は、あんまり変わらず...騒がしいままです。
―――――――――――――――
「よっと。こんな感じかな?」
随分長いこといたこの校舎を後にするために荷物をまとめていると、シロコちゃんが話しかけてくれる。
「ん...シルベ、また遊びに来て。また一緒に銀行...いや、ツーリングとかしよう。」
「......うん。」
近づいて、少し崩れていた彼女のそれを治す。
「...?」
「シロコちゃん。そのマフラー、無くさないようにね。」
「?...うん、無くさない。大事なものだから。」
シロコちゃんには、私の知らない秘密がある。彼女だけじゃない、この世界のことだって。
それは私のこれが未来予知なんかではなく、限りのある知識であることの大きな問題点。
「シロコちゃん。あなたは一人じゃないから。」
「...?ん...」
彼女を一度、強く抱きしめる。
彼女の恐怖。テラー。アヌビス。
この世界は...あの最悪の未来ではないと思いたい。シロコちゃん以外の対策委員会が皆帰らぬ人となり、先生も目を覚さない、そんな未来では、決して。
それでも...原作の通りであれば、いずれその残滓が彼女の元に訪れるだろう。
どうか、彼女の未来が...黒く潰されることがありませんように。
――――
メロディーと共に、列車がホームに入って来る。これからちょっと長めの電車旅だ。
「じゃ、みんな...またね!」
「またいつでも遊びに来てくださいね〜!」
「ありがとうございました!またお会いしましょう!」
ああ、すっごい寂しい。もう家族のように過ごしたみんなと、しばしのお別れだなんて。
彼女たちと過ごしたこの期間は、大変なことも多かったけど...それでも、とっても楽しかった。この経験は、私の青春の1ページだ。
「...シルベちゃん!」
「!...ホシノちゃん...」
「何かあったら、いつでも私たちを呼んでよ。私たちはさ、一人じゃないから。ね?」
「...うん!ありがとう。その時はきっと呼ぶよ、みんなのこと!」
こうして私は、アビドスを離れた。沢山の思い出と、仲間たちの笑顔を...胸いっぱいに抱えながら。
―――――――――――――――
「...ふぅ。」
人のほとんどいない列車に揺られる。アビドスを行き来するこの電車は、いつ乗っても確実に座れてしまう。
窓の外には...夕日に照らされた...人のいない町が映る。
でもそれは、これからアビドスが徐々にでも輝いていけると...そう言っているように思えるのは、私の心がアビドスの未来を信じているからだろう。
「ふぁ...」
ゆっくりと沈む日の光と、心地よい電車の振動で...ああ、眠くなってきた。
Vo.1対策委員会編。一か月ほどの滞在ではあったが、あまりにも濃密な時間だった。
良くも悪くも、張り詰めた日々。それが一区切りついたというのだから、体から力が抜けるのも無理はないだろう。
トリニティに着くまでまだ時間はある。少し目を閉じて、休んでもいいか...
…………
――――
「シルベ先生、こんばんは。」
「ふぁ...!?は、はい、こんばんは...?って」
「クク...お目覚めですか?」
「うわあああああっ!?え!?黒服!?!?」
目が覚めたら隣に黒服が座ってました。心臓止まるって!
―――――――――――――――
「で、なんでこんなとこにいんのさ...」
「驚かせてしまったようで、申し訳ありません。今回は先生がアビドスを離れられる前に、少し忠告をと思いましてね。」
どうにか心を落ち着かせて黒服の話を聞く。めっちゃ席空いてるのに女の子の隣に座るスーツ男はヤバいからやめた方がいいよ。
「忠告...?」
「はい。あなたがお持ちの、『カード』のことです。」
...あの『カード』。
コイツは『大人のカード』ではないと言った。これはリンちゃんに貰ったものだし、私は『大人のカード』だと思っていたんだけど。
「このカードの正体、分かったの?」
「いえ。しかしシルベさん。そのカードは...使うべきではありません。」
「...それは使われたらアンタらが困るからじゃなくって?」
「ククク...それもありますが。しかし貴方にとっても...この
私にもデメリットがあるのは大人のカードも一緒だけれど、
「どういうこと?」
「先日。空に亀裂が観測されました。」
「?」
「肉眼では観測できないほど小さいものです。そしてその亀裂は...シルベ先生、あなたがカードを
ええと、つまり...
「私がカードを使ったら、空に穴が開くと?」
「その通りです。使おうとしただけで亀裂が走ったのですから...ええ、大体三回から四回ほどの使用で、キヴォトスは完全に崩壊するでしょう。」
なっ...!?
「ほ、崩壊!?崩壊って...そ、そんなカードなの!?ていうかどんな効果があってそんなことに...!」
「そのカードを使用することでどんな効果をもたらすかまではまだ分かりません。ああ、通常のクレジットカードとしての使用は問題ありませんよ。」
当たり前だ。お昼に買ったチキンサンドで世界が滅んでたまるか!
「...分かったよ。私だって使いたいと思ってるわけじゃないし。というかアンタたちゲマトリアが大人しくしてくれれば使うこともないんだけど!」
実際、あの時このカードを使おうとした時、並々ならぬ寒気を感じたのは確かだ。
「クク...こればかりは、私もゲマトリアとしての立場がありますので、他の三人に干渉することは難しいですね。」
ここでベアトリーチェを止められたらなんと楽なことか。
そしたらもう一人のシロコが来ずに他の二人が暴れ出すだけか...はぁ、厄介な奴ら。
「ああ、それともう一つ。『先生』についてです。」
「!...まさか、見つけた!?どこにいるの!」
「ええ。私がその存在を感じたのは...あなたが空に付けた亀裂の先です。」
亀裂の先...それはつまり、キヴォトスの外ってことか...?
「まだ亀裂ですので、物質や人を通すことはありません。通ってきたのはその情報だけ。あの亀裂の先に、『先生』がいます。」
やっぱり。先生はキヴォトスの外からここに来ることができていないんだ。一体どんな理由があるのかわからないけど...
(次は、トリニティ自治区、トリニティ自治区です。お降りの際は―)
「クク、どうやら目的地のようですね。」
「はぁ...一応聞くけど、先生をこの世界に連れてくることはできないんだよね?」
「はい。どうやらあの亀裂の先は、我々の知るキヴォトスの外とは少し違っているようですので。」
そうか...どうしたらいいんだろう。カード使って穴を広げる訳にもいかないし...
いつの間にやら、駅に着く。
「とにかく、まあ忠告は受け取ったよ。あとはなるべく大人しくしてて!」
「クク...ええ、出来る限りは。」
開いた扉を抜けて駅に降り立つ。てかコイツはどこに行くんだよ。私と話に来ただけなのか?
「シルベ先生、最後にもう一つだけ。『先生』の存在を感じたのは私だけではありません。」
「...何が言いたいの?」
「クク...では。ご健闘をお祈り致しておりますよ。」
それだけ言って、黒服を乗せた電車は次の駅へと発車していく。
なんかシュールだな...手を振るな手を。
―――――――――――――――
なんか最後にどっと疲れたけど...とにかく、私はアビドスの廃校をなんとか阻止して、トリニティ総合学園に帰ってきました。
最初にこの門をくぐった時を思い出す。
呑気に、ただこのブルーアーカイブの世界を楽しもうと、いろんな計画を練っていたっけ。
今でもその気持ちは忘れていない。この素晴らしい世界に息づく、沢山の奇跡たちを...この目で見てみたい。
だからこそ、守らなきゃいけない。彼女たちの青春は、彼女たちのものだから。
まだまだ危機の予定は山積みとなっている。だけど、一つずつ。みんなと力を合わせれば、きっと乗り越えていけるはずだ。
大きく伸びをして、来た方向を振り返る。西陽に照らされて見えないその町は、きっと太陽よりも輝く星に成長するだろう。
そんな訳でメインストーリーVo.1 対策委員会、これで完了!
私、頑張りました!やったね!
大体八万字近く。ろくすっぽ書き溜めのなかったこの小説で、二日に一度投稿をここまで続けてこられたのは、ひとえに応援してくださった皆様のおかげです。心より感謝申し上げます。
今後に関しては、流石に書き溜めしないとひでぇことになりそうなので、ちょっとお時間いただきます。(ユウカ並感)
多分エデン条約編になるのかな...?ちょっとパヴァーヌは私の腕では書けそうにない気がします。というかVo.2は純粋な指揮以外に先生の出番あんまり無(ry
とりあえず、ちょっと貯めて我慢できなくなったら続きを投稿していこうと思うので、今しばらくお待ちいただければ幸いです。
その間に、対策委員会編が終わった感想や評価等をいただけると、私がヒマリアコのバフが乗ったミカみたいになります(?)
繰り返しになりますが、ここまでお付き合い頂きありがとうございました。
今後ともシルベちゃんをよろしく!