先生の居ないアーカイブ   作:ヒオルカ

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お久しぶりです。

四月、何かと変化の多い季節です。つまりそろそろ我慢できなくなってきたので投稿を再開します。
とりあえず予定通りエデン条約編からのスタートとなりましたので、どうかこれからも見守っていただけると幸いです。



エデン条約編
足音に備えて


 

 

 

『先生。ええ、これは最善の選択肢であったと言えるでしょう。我々()()()()()()()()()にしか取れない選択肢です。』

 

“......”

 

幾つもの可能性が交差する空間で、四つの影が揺らめく。

 

『ですが...ククク、残念です。あなたでは、嚮導者のカードと死の神には勝てませんでした。』

 

“......”

 

肩で息をしながら壁にもたれかかる彼に...死の神は、銃口を向けることはなかった。

 

『嚮導者の持つシッテムの箱が、貴方を()()()()()。その一手によって、貴方の取った手段は崩壊します。』

 

彼は背中に誰も居ない端末を庇いながら、通信を続ける。

 

「...先生。もう、諦めて。これは無駄な足掻き。きっとすぐに途絶える。」

 

“...まだだよ。”

 

先程まで彼の腹部に空いていた穴は、すでに流血を止めている。

 

 

“.....、.......。”

 

 

彼は小声で、通信相手に何かを語りかけた。

 

『...それは、しかしどうやって?あなたのカードにそのような力が残っているとでも?』

 

“可能だよ。”

“黒服、あなたなら。”

 

通信越しの男は、一瞬考え込んだように間を置き...

 

 

『...!クク、ククク。ええ、確かに我々であれば可能でしょうね。流石です、先生。』

 

「...?何を...」

 

彼はただ見据える。死の神を。嚮導者を。

 

『本来であれば代価をいただくところですが、相手が相手ですので...ええ、お任せください。』

 

“......”

 

「先生、何をしても無意味。」

 

死の神が、近づく。

 

「ここは宇宙。誰も辿り着けないし、もし来れたとしても...先生の指揮がないのなら、私が出るまでもない。」

 

“......”

 

()()は絶対に成立しない。先生が居ないということの意味を、誰よりも私がよく知っている。」

 

 

“...シロコ。”

“私は生徒を信じている。”

 

「......」

 

 

 

“必ず君を、助けるから。”

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

お久しぶりです。転生したら先生がいなかったので必死こいて代わりをやろうとしている、トリニティ総合学園一年生且つシャーレ所属の一色シルベです。

 

 

アビドス高校を襲った、カイザーコーポレーションとの戦いからしばらく。私は本来の所属であるトリニティ総合学園へと戻ってきた。

 

ついこの間のことだけど...対策委員会のみんなと絆を育み、黒服やカイザーの陰謀を死に物狂いで突破した日々が濃密すぎて、まるで昔のことのようだ。

 

ちょっと向こうで青春しすぎたせいか、トリニティの門をくぐるのに若干新鮮味を感じてしまうほど。

 

それはつまり二回目の聖地巡礼が捗るということで、思う存分一般トリニティ生徒生活を満喫しようと...

 

 

 

 

 

 

 

「これは?」

 

「ええっと、これはこっちの系列で...ここ間違えやすいかな?教え方は...」

 

と思っていたかバカめ!油断したな!

前世で私が学んだことは、忙しくない時にやれることはやっとけということだ。

 

試験勉強もレポートも、余裕が大事。負債が山盛り状態では身動きも取りづらい。

 

そんな訳で私はただいま猛勉強中です。

 

「シルベ、ここちょっと分からないんだけど...」

「うん、それはね...さっき使った公式を...」

 

...別にテストの点が落ちたとかじゃないよ?

 

これから始まる『エデン条約編』では、先生は補習授業部を導くという役割をしていたのだ。

だから、助っ人的な形でワタシも補習授業部に関われたらなと思っている。

 

 

そもそも何故エデン条約編が始まると言い切れるのか...それは、私がアビドスからトリニティに帰ってきた数日後、急遽ティーパーティーのホストがセイアちゃんからナギサちゃんに変更になったというお知らせが掲示されていたからだ。

 

この掲示に理由は書かれていないけど...これは、セイアちゃんの襲撃事件が起きてしまったということ。

セイアちゃんは...無事なはずだ。原作では、アズサちゃんがカモフラージュのために爆発させただけで、生きてはいる。

 

...正直、どう関わっていいのか分からない問題がある。それは、この襲撃事件を指示してしまった彼女のこと。

 

『聖園ミカ』。ティーパーティーの一人である彼女には、未だ会えていない。

そもそもティーパーティーの三人は寮が別だ。警備も厳重で、アズサちゃんくらいの力量がなければティーパーティーの部屋には辿り着けない。

それにミカちゃんは、どうやら私がトリニティに帰ってくる前から公務で出かけているみたいで、ほとんどトリニティにいない。

 

...多分、アリウスと接触している。いつからかは、分からないけど。

 

今接触できるティーパーティーは、ホストのナギサちゃんくらい。

彼女に事件の真相を話したとて、信じてもらえるとは思えない。ミカちゃんのために補習授業部を作った彼女は、結局最後までミカちゃんを疑うことはなかった。

多分、そのままトリニティの裏切り者認定されそうだ...

 

...ミカちゃんはこの事件の中心人物であり、多くの間違いと不運と...悪い大人に踊らされた少女。

この事件を経て、彼女は様々なものを失うことになる。

 

....彼女を止めることによって変わるものも多い。

補習授業部は、原作通り絆を深めることができるだろうか?

アリウスの裏工作が失敗すると、スクワッドはどうなってしまうのか?

 

周りだけではない。彼女自身も。

彼女の苦難に満ちた茨の道は、彼女に何ももたらさなかったわけじゃない。

 

...分からない。変えていい未来なのか?今言えることは、何があっても彼女に対する『いじめ』は止める。それ以外に、私は彼女の歩みにどう関わるべきなのだろうか...

 

まだ答えは、出ていない。

 

「なるほど、分かった。やっぱシルベって教えるのうまいね。」

「...へへ、そうでしょ。」

 

分からないなりに、とりあえず今できることをしようと...カズサちゃんと共に、勉強を教える勉強、みたいなことをしております。

 

「...シルベは先生になりたいんだっけ。それで急にシャーレに入ったの?」

「うん。なんか、元々先生がやってる部活だったみたいで...」

 

最初のボーダーである60点以上であれば彼女たちだけでもできそうだが、90点となると...流石に先生の力がなければ成し遂げられなかった点数だろう。

どうにかして先生並の授業力を身に付けなければ...

 

 

「...ねぇ、シャーレに入った理由って、本当にそれだけ?」

「...え?」

 

カズサちゃんの視線が、真剣なものに変わる。

 

「そ、それだけって...?」

 

な、なんだろう。嘘を言ったつもりはないけど、隠し事がたんまりあるのも事実だ。

 

「もしかして...」

「え、そ...その...」

 

カズサちゃんにジーッと見つめられる。

ヤバい顔がめっちゃ良い...好き...じゃなくってなんかバレてる?何がバレてるのか全然分かんないけどなんかバレてそう!?

 

 

 

「あ、あのっ...!?」

 

「あの時やってたドラマでしょ。」

 

 

 

...はい?

 

「少し前にやってた、熱血教師が不良生徒を更生させていくやつ。あれに影響受けたんだ?」

 

良かった勘違いだった!

 

「違うよ!ドラマ観ただけでこんなに成績上がったら感受性豊か過ぎるでしょ!」

「そっか、そうだと思ったんだけど。」

 

はぁ、焦った。確かにモブ目な一年生が、急に連邦生徒会関連の組織に一人で入りましたっていうのは中々変な話だ。

 

まあとにかく、うまいこと誤魔化せてよかった。私は観てないけど、その過酷そうなドラマに感謝だ。

 

 

 

「.........」

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

最近、友人の様子がおかしい。

 

人が変わったよう...というのは言い過ぎかもしれない。それ以前のことも覚えているし、一歩遅めの高校デビューの可能性はある。

 

 

彼女はある日を境に、普段より明るく...色々な人と関わるようになった。

私ともそうだ。私と彼女は同室だけど、まあ仲は普通くらいの友人だった。それが急にグイグイ来るようになって...いや、私も楽しいからいいんだけど。

 

それから、成績が急上昇した。今までは平均点くらいだったのに、今やそこそこの割合で満点をとっている。

 

そして極め付けに...ある日彼女は唐突に、連邦生徒会の組織『シャーレ』に所属したと告げてきた。

 

勿論、いいことだ。文句のない優等生。

自らの人生の目標を見つけ、それに邁進する...友人として、それを応援する以外の選択肢なんてない。

 

それでも、あんまりに突然過ぎるのが気になって、適当にカマをかけてみる。

すると彼女があまりにも分かりやすく狼狽えるものだから...結局、適当なことを言って話を終わらせた。

 

知りたいけれど、深く聞こうとは思わない。誰にだって知られたくない秘密はあるものだ。私にだって、苦い過去がある。

 

 

 

...でも。

 

 

 

私に話せないことだったとしても。

 

 

 

遠出をするたびに増えていく...袖の下に隠した傷跡だけは、もう増やさないでほしい。

 

 

 






書き溜めはどのくらいできたのかって...?


.........投稿間隔は変動する場合がございます。ご了承下さい。


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