先生の居ないアーカイブ   作:ヒオルカ

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最終編が終わったので、しばらくは公式に後ろから刺される恐怖がなくて安心!



視線の先

 

 

「ここは例えば、そうですね...『弱くて敏感な部分を寄せ合う』、という形でいかがでしょう?」

「...?」

 

ついに来た。この時が。

 

「いきなり何言ってんの!?下ネタはダメ!禁止!死刑!び、敏感な部分って、何をどう寄せ合おうっていうわけ!?」

 

心のシャッターを調節する。一秒たりとも見逃さぬように。

 

「ああ、ちょっと分かりにくかったですか?では、実際にやってみせましょうか。もう少しこう、足を開いていただいて...」

「...え?えっ!?」

 

ハナコちゃんがコハルちゃんへとにじり寄る。ついに見られるのか、このシーンが...!

 

「や、やめて!近づかないで!知らないし分かりたくもないしまだ早いからっ!!」

 

原作ではブラックアウトしてなんにも見えなかったこの場面。だが私は今ここにいる。つまり、そういうことです。

 

「えいっ♡」

 

うおっ...!ああ、そんな!押し倒されて顔を真っ赤にしたコハルちゃんに手足を絡ませるハナコちゃ――

 

「ぐはぁ!?」

「シルベちゃん!?」

 

ぐおおお...センシティブ・エモーションが強烈過ぎて傷口が開いた。いってぇ...

 

「なるほど。一見無駄のある制圧術だが、それに気を引かれたもう一人の敵の意識を撹乱するという役割もあるのか。勉強になった。」

「シルベちゃん!気を確かに...!」

 

...はい。キヴォトスに来たらやりたいことリストにある『ゲームだと暗転していたハナコ×コハルを見る』を達成したのだけど、そういえばエデン条約編ってここのシーンから始まってたよね。

いや、ほんとの最初はセイアちゃんの長話ドリームからだったっけ?でも毎晩枕の下にセイアちゃんの写真挟んでるけど、一向に現れてくれません。

まああれの時系列よく分かんないし...でも結構高かったんだぞこのブロマイド。

 

とにかく、ただ今ぶっ倒れつつヒフミちゃんに抱きかかえられている私は、元気...です。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「...というわけで、ヒフミさん。シルベさんをお手伝いすると共に、補習授業部を導いてくださいませんか?」

「はい!?わ、私がですか!?」

 

私がトリニティに帰還してから一ヶ月ほど。

私とヒフミちゃんはティーパーティーにお呼び出しを受けていた。

 

理由は言わずもがな、『補習授業部』の件である。

 

 

 

あれ、私も?

 

 

「あの、私も補習授業受けるんですか?一応この間のテストは平均96点で...」

「出席日数が足りてません。」

 

 

 

あー.......

 

 

 

「本来であれば出席日数不足は成績の優劣に関わらず落第なのですが...シルベさんは学力に問題はなく、連邦捜査部『シャーレ』での活動ということもありますので、このような措置にさせていただきました。」

 

ま、まあ確かに結構な間アビドスに行ってたし...

どうせ補習授業部を手伝いに行く予定だったから、こっちの方が良いかもしれない。

 

先生を目指すものとしては補習授業部所属ってどうなの...とは思うけど!

 

「お二人の学力は問題ありませんので、補習授業部の他のメンバーをサポートしていただきたいのです。それに今度はお二人から私に『愛』をお返ししていただく番...ですよね?」

 

「そ、そうですね...頑張ります!」

「あ、あうう...」

 

ナギサちゃんには対策委員会編でも助けてもらったし、断る理由もない。無事みんなの学力を向上させて、全員で補習授業部の卒業を...

 

 

...いや、あれ?これもしかして私も容疑者?

 

 

「それでは、よろしくお願いしますね。...ああ、シルベさんは少し残ってもらえますか?シャーレの件で少しお話がありまして。」

「は、はい。」

「うう...では、私は先に戻ってますね...」

 

 

ナギサちゃんと二人っきりになる。まあアコちゃんもシャーレは怪しい匂いがするって言ってたし...疑われてもしょうがないのかも...

 

「さて、シルベさん。シャーレの活動は問題ありませんか?この間はアビドス高等学校の廃校問題解決に取り組まれていたとか。」

「はい、おかげさまでカイザーローンの不正取引きを摘発することができまして...お世話になりました。」

 

そのお礼に愛を欲しいというのであれば、いくらでもプレゼントしよう。私の愛を受け止める覚悟はあるかナギちゃん?

 

「それは何よりです……ところでシルベさんは、何故シャーレに?確か所属される前日にD.U.での事件に巻き込まれてしまったようですが、そこで連邦生徒会と交流を?」

「は、はい。連邦生徒会の人に助けていただいて、それで私もそこで活動してみたいなと...」

 

なんか面接してるみたいだ。これまでも何度かこの質問をされたけど...そういえば『先生』はどういう経緯で先生をやることになったのだろうか。

『先生』ってキヴォトスに来る前は何やってたんだろうね。まあソシャゲ主人公の設定なんて薄いくらいがちょうどいいのかもしれないけど。

 

 

それからナギちゃんに、シャーレになった経緯やアビドスでの活動などを根掘り葉掘り聞かれた。これめちゃくちゃ疑われてるよ!

 

「...分かりました、ありがとうございます。私からはこれで以上ですが...何か質問などはございますか?」

「あ、じゃあ一つ。この補習授業って、三回のテストでボーダーを超えられなかったらどうなるんですか?」

 

気になっていた部分を聞く。私は補習授業部の部員であって担任ではないのだ。

つまり、この部活にはシャーレの権限が使われていない。

 

「...さすが、良い着眼点をお持ちですね。助け合うことができず、この補習授業のボーダーを達成できなかった場合は...落第と共に、一年間の特別校舎での生活を行なってもらいます。」

 

「...特別校舎?」

「はい、外出や連絡の制限がある特殊なクラスです。」

 

特別校舎に、一年間か...

退学にこそならないけど、その代わりガッツリ監視下に置かれると言った感じかな。

結構強引な手だけど、シャーレの権限が使えず退学にできない以上...そのくらいしか手はないってことか。

 

「大丈夫です。成績の優秀な方がお二人も揃っているのですから、きっとすぐ達成できるでしょう。それでは、ご健闘をお祈りしておりますね?」

「は、はい...」

 

トリニティの裏切り者の件は...教えてくれないだろうな。容疑者にわざわざそんなことは言わないよね。

確か原作でゲヘナにテストを受けに行った時も監視してるみたいなことは言っていたし、先生が居なくても情報を得る手段はあるのだろう。

 

「...あの。ちなみに、ミカさんは....?」

「ミカさんですか?彼女は今日用事があるとのことで...来れるかどうか分からなかったのです。」

 

まあ、ヒフミちゃんとナギサちゃんの会話シーンではミカちゃんいなかったし...

でも、会ってどうすればいいんだろう。

 

彼女を止めること自体は、きっと簡単だろう。『セイアちゃんは生きている』と。そう告げれば、彼女は止まる。

 

確かに彼女は多くの傷を負うことになる。だけど、得るものがなかったわけじゃない。

 

もちろん、いじめは私がこの学園にいる限りはさせはしない。

 

けれど、セイアちゃんやナギサちゃんとの対話や、コハルちゃんとの出会い。そして...サオリちゃんを、自分を許すという勇気。

 

青春は、きっと優しいものだけじゃない。

 

...どちらにせよ、彼女によるセイアちゃん襲撃は実行されてしまった。

 

ああ...転生をした最初の私を恨む。憧れを忘れ...ただ時間を費やした日々。あの時点であれば...どうすればいいか見当もつかないが、ミカちゃんとアリウスの繋がりを断つことができたのだろうか。

 

でもそれは、正しい選択なのだろうか?

 

 

分からない......

 

 

「...シルベさん?」

「あっ...!ごめんなさい!えっと、じゃあこれで失礼しますね...!」

 

とりあえず、生徒会室で考え事はやめておこう....

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

『一色シルベ』

 

神歴20XX年X月X日生まれの15歳。

トリニティ総合学園の一年生である彼女は、この学園の新入生の中でもトップクラスの学力を持ち、連邦捜査部『シャーレ』に所属する生徒。

時々奇行に走るらしいですが人当たりも非常に良く、クラスや部活の垣根を越えてよく人助けを行ったり相談に乗るなど...極めて他の見本となるべき生徒と言えるでしょう。

 

 

それが、()()()()()()()()()()()()()の彼女。

 

 

それ以前の彼女は...こう言ってはなんですけれど、特にこれといって特徴のない生徒でした。

入学時と一ヶ月後の小テストの成績は平均点と全くの同値。身長も体重も平均...調査によれば、交友関係はクラスの友達くらい。それ以外に何か特徴的な情報は一切入ってきません。

 

あまりにも『普通の生徒』。

思えばこれも怪しい。全く特徴がなさ過ぎて、まるで存在感を完璧に消そうとしているスパイのよう。

 

そんな生徒が、いきなり連邦生徒会関連組織に所属して、他校へと出張?

 

...ありえない。途中で人が変わったとしか考えられません。

だとすればどちらが?以前の彼女?それとも今の...

 

...あまりにも、不確定な要素。報告の上がっていた学園内の不穏な動きは...彼女なのでしょうか?

 

結局結論を出せなかった私は、彼女を補習授業部へと加入させることに決めました。

 

不安要素は、必ず排除しなくてはなりません。セイアさんがいない以上...私がもし殺されてしまった場合、ミカさんにかける負担を少しでも減らせるように──

 

 

――――

 

 

「...あら、ミカさん?」

 

生徒会室を出ると、ミカさんが扉の前で佇み...誰もいない廊下の先を見つめていました。

 

「用事は終わったのですか?補習授業部の件でしたら、たった今終了してしまって...」

「ねえナギちゃん。」

 

ミカさんは、こちらを向かない。

 

 

 

「あの子、誰?」

 

 

 

「え?ああ、先ほど出て行かれた方なら、補習授業部に入ることになった一色シルベさんです。」

「...ふ〜ん。」

 

...?

 

「あの、ミカさん?」

「あ、ごめんね?ちょっと忙しくって遅れちゃった。それより、補習授業部だっけ?詳しく聞かせてよ。」

 

ぱっと振り向いた彼女は、いつも通りの笑顔を見せる。今少し様子が変だったような...気のせいでしょうか。

 

 

ともかく、容疑者は集まりました。

監視を続け、尻尾を出さないようなら...ええ、このトリニティのために。

 

 

 

分別などせず、まとめて捨ててしまいましょう。

 

 

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