放課後の自習時間。
補習授業部のみんなと教室に集まって勉強会を開く。
「ハナコ、この文は?」
「これは古代語を重訳したものですね。原文を理解するには辞書が無いと...ちょっと待っててくださいね。」
「えっと、ここの解き方は...?いやその、私の考えが合ってるかどうかを聞きたいだけなんだけど!」
「うんうん、それはね...」
今の所、私とハナコちゃんが二人に教える形になっている。といっても私は古代語だけは平均ちょい上程度なので、それに関しては任せっきりだ。前世にはなかった科目なもんで...
「そ、そうよね!私は分かってたけど!実力を隠してただけなんだから!」
「うんうん。さすがエリート!」
そんな訳でただいま勉強を教えているコハルちゃんだが、原作に比べてちょっとだけ素直な気がする。何でだろう...先生への反抗心だったのかな?
「ふぅ...ヒフミちゃんはどう?」
「は、はい。とりあえず60点のボーダーは超えられるかと思います。それにハナコさんはすごく頭がいいみたいですし、これならもしかして、余裕で全員合格できてしまうかもしれません...!」
「...そうだね。」
この時点でハナコちゃんを説得し、コハルちゃんとアズサちゃんの点数を60点以上にまで引き上げられたとしたら...どうなるのだろうか。
多分ナギちゃんが結果にちょっとメスを入れることになるかな...これで補習授業部解散!したら何にもならないもんね。
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───第一次学力試験、当日。
「よし、みんな落ち着いていこうね。」
「え、エリートの力を見せてやるんだから!」
「あ、あはは...頑張ります。」
「ふふっ、はい。」
「準備は完璧。」
先生が居ないため、テストの監督役はトリニティのロボ教員になる。
正直言ってこの学園の教員はちょっとやる気ない感じだ。みんな面倒ごとを嫌うし、大ごとにさえならなければいじめだって見ないふりをする。
みんながみんな、あの人みたいな先生じゃないってことは.......よく、知ってる。
「それでは、テストを開始してください。」
さて、とりあえずは自分のテストに集中しようか...
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「みなさん...!テスト結果が届きました!」
後日、試験の結果が書面で届く。
「えっと、100点満点で60点以上でしたら合格だそうです!合格できなければ合宿があるみたいですが...高得点は取れなくとも、とりあえずそのラインだけ超えられれば大丈夫です。それではシルベさん、発表をお願いします!」
「はーい。ではまずヒフミちゃん。」
ヒフミ:72点
「合格!やったね!」
「あ、ありがとうございます!なんだか無難な点数ですが、良かったです!」
シルベ:98点
「あら、素晴らしいですね、シルベさん。」
「えへへ、ありがとう。」
アズサ:32点
32点。
「......はいぃ!?」
「ちっ、紙一重だったか。」
はい。現場からは以上です。
「待ってください!紙一重っていう点数じゃないですよ!?結構足りてないですよ!?」
コハル:21点
「!?」
「コハルちゃんんんんっ!?ち、力を隠していたんじゃないんですか!?」
ヒフミちゃんのツッコミ属性が光る。覆面水着団の時もそうだったけど、押し寄せるボケの波に対応する力がすごいよね。
「やっ、その....!かなり難しかったし...」
「すっごく簡単でしたよ!?小テストみたいなレベルでしたよ!?」
コハルちゃん、ちょっと点数上がった?原作だと何点だったかな...
「あらあら...」
「うう、合格したのは私とシルベちゃんとハナコちゃん、ということでしょうか...となるとまた次の、二次試験を受けないと...」
ハナコ:2点
「2点!?!?!?!?」
ヒフミちゃんの表情がコロコロ変わる。主に青ざめる方面に。
「2点、2点ですか!?20点ではなく!?いえ、20点でもダメなのですが...!というか待ってください、ハナコちゃんものすごく勉強できる感じでしたよね!?」
「確かに私、そういう雰囲気があるみたいですね。成績は別なのですが。」
ちなみに、先日ハナコちゃんがアズサちゃんに教えていた内容は、バッチリ花丸でした。
「あぅ...」
「ヒフミーッ!」
さりげに背後にスタンバイしておき、ヒフミちゃんを抱き止める。
さあ、ここからが本番だ。目指せ90点以上!
どうにかしてコハルちゃんとアズサちゃんの学力を底上げして、みんなで東大行くぞ!
なんか、担任を持ったみたい。ちょっと嬉しいかも。
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そんなこんなで三人ともしっかりテストに落ちたので、合宿開始である。
一通り合宿所を見回り...そして、五人がかりで広い合宿所をあちこち掃除することとなった。
多分何もせずとも原作通りに進むのだろうけど...まずこの日に、私にとっての最強の壁が立ちはだかっている。
そう...
「これで濡れても問題ありませんね♡」
四方から迫り来る水着である!!!
ベッドや食堂などの必要な施設から、建物周辺の雑草抜き...そして、プール掃除まですることになったのだが、そこにプール掃除するなら水着にならねば!というハナコちゃんの一声。
そんなこんなで皆さん水着を着てプールに集合でございます。
「......」
「...っ」
ああああ....やゔぁい。なんだこの状況は?
ハナコちゃん一人でも耐え切るのがやっとだというのに、こうも囲まれてしまっては...どこ見ていいのかわかんない!
「...あら、シルベちゃんは完全防備ですか。ふふっ、恥ずかしがり屋さんですね?」
「いいいいや!ちょっとほら、肌弱くてね!」
あああ近い!視線をガッツリ逸らしているが、視界の外からでもなんとなく双丘の圧力を感じてしまう!
「どうして目を合わせてくれないのですか?もしかして...シルベさん
「そんなことは...!うお...!」
その圧力に押されて後ずさるも、背後には三人。前門の水着、後門の水着...
「『も』って何!?わ、私は別に興味なんて...!」
「あら、誰もコハルちゃんのこととは言っていませんよ?」
「うっ...!」
時にふざけ合い、駆け回ったりしながら、プールを綺麗にしていく。
このように、勉強や生活をするのに必要でない設備まで綺麗にするといった行為は...一見無駄な作業だ。
でも、無意味なことはない。
同じ目標を持って、仲間たちと共にその達成に向けて努力する。この経験は、きっと勉強の面のおいても、連帯力としてプラスに働いてくれることだろう。
まあプラスになるとか、作用がどうこうを抜きにしても、こういうのが青春だよねって話で良いんだ。
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結局、プールに水が溜まった時には日が暮れ、辺りは真っ暗となっていた。
「綺麗...」
月明かりに照らされてゆらゆらと揺れる水面は、幻想的な美しさを感じさせる。
「そうですね、真夜中のプールなんて、なかなか見られない景色ですし...」
ふと横を見ると、コハルちゃんがうとうとしている。カワイイッッッ!!!
「...みなさん、そろそろ休みませんか?明日からは本格的に勉強合宿が始まりますし...」
「うん。」
「そうですね、では今日はこれくらいで。」
みんなで、部屋に戻る。
「あ、私ちょっと明日の準備してくるから...先行ってて?」
「...?はい、わかりました。」
この補習授業部が始まる前に、出題されそうな過去問や資料はあらかじめ用意してある。明日スムーズに勉強を始められるように、印刷だけでもしておこう。
別室で紙を吐き出している、ちょっと古いプリンターを眺めていると、ドアが控えめにノックされる。
「はい?」
「あの...失礼します、シルベちゃん。」
ヒフミちゃんだ。そういえば、深夜の密会も必要なイベントか。
「今日はお疲れ様でした。その...ちょっとお話ししたいことがありまして...」
「うん、ヒフミちゃんもお疲れ様。どうしたの?」
とりあえずヒフミちゃんと話のすり合わせだ。私は先生ではなく容疑者なので、ナギちゃんにお呼ばれすることはない。
私には知らされていないはずの情報もあるのだ。
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一通りの説明をヒフミちゃんから受ける。
聞く限り、ヒフミちゃんがナギちゃんに伝えられた話は原作とほとんど違いはなさそうだ。
「はい、万が一...三次試験に落ちてしまったら...」
「一年間の特別校舎送り、だよね。」
学力試験なのに、全員一斉に合格しなければならないなんておかしな話だ。これは、ナギサちゃんがミカちゃんを守るために...頭を悩ませて絞り出した策。
「それに、その...」
「もしかして...ナギサさんに、他に何か言われた?」
「...はい。その、なんて言えばいいか...」
まあヒフミちゃんには伝えるよね。なんだかんだ言って、退学になっても彼女だけは何かしらの手段で保護していたんじゃないかってくらい、ナギちゃんヒフミちゃんのこと大好きだし。
「ナギサ様から、誰にも言わないようにと...でも、私の手に負える内容ではなくって...」
ヒフミちゃんがジャージの裾をぎゅっと握る。
「シルベちゃん、聞いてくれますか?」
「うん。誰にも言わないよ、約束する。」
本来高校二年生の女の子が背負っていい使命では、ないはずだ。
「...この補習授業の中に、『トリニティの裏切り者』が存在していて、それを見つけ出してほしいと...そう言われたんです。」
権力と陰謀の最中、彼女たちは互いの心を通い合わせていく。
そんな青春を紡ぐための合宿が、始まった。
ようやくレベルが85になりました。熟達証書おいしい...