先生の居ないアーカイブ   作:ヒオルカ

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いくつかの約束

 

 

「マグロがー!!!」

「是非お造りの形でと思ったのですが、天ぷらになってしまいましたわね...」

 

美食研究会との戦闘は、そこまで苦戦することなく終わりそうだ。

ハスミちゃんや他の正義実現委員会のメンバーの支援が厚く、安定した戦闘だったといえるだろう。

 

っていうかマグロが本当に天ぷらになってる...

てっきり火が通ってしまったものの例えだと思っていたんだけど...誰だ戦闘中に天ぷら粉付けたの!

 

「はっ!バラバラに逃げた方が生存率上がるんじゃない!?」

「なるほど、良いアイデアですねジュンコさん⭐︎では、弱肉強食ということで♪」

 

美食研究会がバラバラに逃げていく。便利屋といい、少数精鋭の部隊はやっぱり逃げ足大事なんだろうな。

 

私の背後から、頼もしい黒い影が発射される。まあ逃げきれないんですけどね...

 

そんな感じで、しっかり美食研究会を捕まえることができました。後はヒナちゃんに引き渡すだけだ。

 

 

 

あ、イズミちゃんは逃げれたみたい。良かった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「お待たせしました。死体は何処ですか?」

「お久しぶり、セナさん。」

 

ゲヘナとトリニティの自治区の境界線。美食研究会の引き渡し場所だ。

 

「はい。お久しぶりです...また怪我をされているようですね。」

「う...わ、分かります...?」

「救急医学部ですから。」

 

やっぱ分かる人には分かるもんだね...私の演技力がカスなのもあるだろうけど。

 

「少し失礼します...はい。まあ回復には向かっているようなので、大丈夫でしょう。」

「うん。ありがとうございます。」

「やはり、そのくらいの負傷であれば寝れば治ります。なので中々死体に出会う機会が...いえ、なんでもありません。」

 

漏れてる漏れてる。セナちゃんの絆イベントとかも先生好きオーラを隠さないクーデレ感たまらないよね...甘すぎで身悶えするほどだ。

 

 

「久しぶりね、シルベ。」

 

「!ヒナさん...!お久しぶりです!」

 

ヒナちゃんだぁ...!何度見ても可愛すぎる...!す、吸いたい...!

 

「それで、どうしてシルベが美食研究会の引き渡しを?」

「えっと、今ちょっと条約の件でデリケートな状況なので...政治的な問題にしないように、シャーレとして来ました。」

「なるほど。こちらも同じようなものよ。だからこそ、今回は政治との関わりが薄い『救急医学部』が来たことになっている。私はただの付き添い。」

 

ヒナちゃんも大変だ。こんなゲヘナの隅っこまでテロリスト集団の回収に...ほんと、お疲れ様です。

 

「とにかく...美食研究会はこの中?じゃあ、こっちに移してもらえる?」

「ふふっ。ヒナさん、お久しぶりですわね。」

「あら、やはり『救急医学部』の方でしたか⭐︎ちょっと私の腕の角度がありえない方向に曲がっているのですが、診ていただけます?」

 

アカリちゃんの腕がどんな曲がり方をしているかと言うと...まあ一言で言うなら、『ウロボロス』かな。

 

「えっと、シルベさんだっけ?酔い止めありがとね。」

「ううん。役に立ってよかった。」

「た、助かった...」

「あら、給食部の...今日一日見てないと思ったら、こんな所に。今学園でジュリが...」

 

ジュリちゃんは...まあ多分、また動き出す料理でも誕生させてしまったんだろう。彼女は真面目なんだ...!ただ才能が変な方向に向いてしまっているだけで...!

 

「色々と配慮していただいてありがとうございます、シルベさん。今度ゲヘナにいらした時は、何か美味しいものでおもてなし致しますね。」

「本当ですか...?じゃあ、楽しみにしてます。」

 

もしかしたらそのおもてなしに破壊や逃走がトッピングされるかもしれないが...まあ、ハルナちゃん達とご飯が食べられるなら安いもんだよね!

 

「ではまた今度〜⭐︎」

「...うるさい、早く入って。」

 

美食研究会が格納され...いや、受け渡される。

 

「...積載完了しました。出発の準備もできてます。」

「少し待ってて。」

 

ヒナちゃんがこちらを見つめてくる。かゎぃぃっ...!

 

「...シルベ。やっぱり、あなたもトリニティでエデン条約に関わっているのね。」

「その...はい。」

「まあ、あなたのことだから、何かしらで関与しているような気はしていたけど。」

 

とりあえず、彼女と現在の状況を共有しよう。

 

 

―――――――――――――――

 

 

「補習授業部...なるほど、結構複雑な状況にいるのね...いや、待って。何か今、変な場面が混ざってなかった?」

「ヒナさんもやります?水着パーティー。」

「......遠慮しておくわ。」

 

残念。だが、風紀委員会の夏合宿にはなにがなんでも連れてって貰うぞ...!アコちゃんよろしくぅ!

 

「...ところで、こんな大事なことを私に話して良いの?」

「うん。ヒナさんのこと信じてるから。」

 

...ちょ、ちょっと恥ずかしいな。これ言うの。先生はなんのけなしに言い放つんだろうな...いや事実だけどさ。

 

「...そういうのが、シルベの悪いところ。」

「ッ....!」

 

うぐぉっ...!見た!?今一瞬目を見開いたヒナちゃんの表情ッ!

ああ...!先生は何でこれ見て、

“.....?”

なんだよおかしいだろこの唐変木!

 

「お、おほん...それでね、この条約は武力同盟なんじゃないかっていう見方があるらしいんだけど...」

「...少なくとも、私はそうは思わない。あれはれっきとした平和条約。」

 

実際、発起人としてはそのような意図で作られたものではないだろう。これはミカちゃんが先生を疑心暗鬼にさせるためについた嘘。いや、私は言われてないんだけど...

 

「ティーパーティーと万魔殿全員が協力するなんて事態になれば、ありえるかもしれないけど...万魔殿のマコトは、そもそも協力なんてできないタチだし。」

 

...マコトちゃん、かぁ。

 

ある意味、私が最も手を伸ばしにくい子だと言えるんじゃないかな。

当然繋がりなんてこれっぽっちもないし、そもそも先生だってあんまり話したことないだろう。

 

「...どうしてマコトさんはエデン条約に賛同を?」

「賛同というか多分、何も考えてないんじゃないかしら。そもそも、ゲヘナ側でエデン条約を推進したのは私だったから。」

 

考えてるんだよな...ただし、悪い方向に。

 

...これ言ったら、どうなるんだろうか。古聖堂襲撃がなくなったら?アリウスの撃退が早まって複製(ミメシス)ができなかったら?

 

アツコちゃんの儀式が早まるかもしれない。

スクワッドが皆、追手にやられてしまうかもしれない。

色彩が呼べず...()()がこの世界に来れないかもしれない。

 

ああ、やだなぁ...これから起こるあの凄惨な戦場に、どう手出しして良いか全く分からない。

 

今まで戦って来た苦難とは、その規模があまりにも違いすぎる。

 

......でも、少しでもできることをしないと....

 

「...シルベ?」

「あっ...ううん。なんでもないです...えっと、ヒナさんはどうしてエデン条約を推進しようと?」

 

まあ、知ってるんだけど...

ヒナちゃんは...長年にわたるトリニティとの確執や、ゲヘナ内で頻発する問題に追われ続けて、疲れてしまったのだ。

つまり、風紀委員長の引退。

 

しかし、それは叶わない。マコトちゃんに、エデン条約を結ぶ意思が全くないからで──

 

「各学園の問題を協力して取り除くことで、両学園の確執を取り除くためよ。」

 

「......え?」

 

あれ?引退は?

 

「ゲヘナとトリニティの悪化した関係によって引き起こされる問題は多い。それを取り除くことができれば、あなたもやりやすくなるでしょう?」

「わ、私...!?そ、それはそうかもしれないけど...!」

 

ヒナちゃん...もしかすると私が頼りないせいで、引退のことを言い出せないのかな。

 

ヒナちゃんは本当に頑張っている。それは彼女にしかできないことが多くあるのだろうけど ...どうにか、少しでも楽をさせてあげたいと思う。

 

「ヒナさん...!」

「?」

 

「私...!ヒナさんがちょっとでも安心できるように、楽できるように...頑張るから!」

 

ブルーアーカイブの、最終編。

そこでは先生の元、ゲヘナ、トリニティ、ミレニアム...沢山の学園が、みんな手と手を取り合って...一つの大きな危機に立ち向かっていた。

 

あの未来であれば、きっとヒナちゃんの重荷も少しばかりは...減っていると信じたい。

 

必ず、たどり着いて見せる。あの未来に。

 

「そう...期待しているわ。そうね、暇になったら、シャーレに参加するのも良いかもしれない。」

「!?」

 

しゃ、シャーレに...!?

 

 

「風紀委員会の立場を忘れて...あなたと二人、いろんな学園の問題を解決するの。そうしたら、あなたが先輩になるわね。」

 

 

ヒナちゃんが少しこちらを上目遣いで見つめ...微笑む。

 

 

ぐあああああッ!な、なんだこのッ...!?なんだ!?

溶ける!尊みで液状になる!ひいいぃぃ!

 

「風紀委員長、まだですか?」

「...ええ、今行く。」

 

ひぃ...た、助かった...!救急医学部の部長は、私の心のバリアも治療してくれるようだ...

 

「じゃあお疲れ様、シルベ。また...」

「お...お疲れ様、です...」

 

ヒナちゃんが踵を返して、車に向かう。

 

「......」

 

足が止まり...振り返った彼女の視線が、私を捉える。

 

 

「...補習授業部のことは、あなたが守るのよね?」

 

 

「うん。任せてください。私が絶対に守るから。」

 

「...そう。じゃあ、またね。」

 

 

ヒナちゃんと別れる。ふぅ...一度に大量にヒナちゃんパワーを浴び、全身の細胞が活性化しているようだ。

 

...さて。ヒナちゃんと交わした約束を守り切るため、気合を入れていこう。

 

次は、二次試験だ。

 

 





ヒナちゃんの
神名文字が
落ちません
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