誤字報告大変助かっております。本当...本当に...
「これはえっと...こう、よね?」
「そう!そこまだ解説してないのに...凄い!」
覚悟しようがしなかろうが、時は流れる。
最終日までもう大した時間は残っていないが…しかし、できることは目一杯やったつもりだ。
「ヒフミちゃんはどう?」
「は、はい!今までは教える側でしたので、教わる側になって少し不安でしたが...シルベちゃんとハナコちゃんの教え方が上手なおかげでなんとか...!」
今のところはテストに関して言えばそこまで不安はない。
重要なのは、私たちが無事に受験できるかどうかだ。
「...よし、今日はこのくらいにしよっか。あんまり根を詰めてもいけないから。」
「うう、でも不安...本当に90点なんて取れるの...?」
「着実に点数は上がっている。このまま順当に行けば、問題ないはずだ。多分。」
...私も、古代語を完璧にしないといけないね。
「...その、ハナコちゃん。ちょっといい?」
「!...はい。」
―――――――――――――――
「まず...この間はごめん。ちょっとその、気が動転してたと言うか...」
「いえ...私も、強引に聞こうとしてしまいましたし...」
先日、ハナコちゃんをぶっきらぼうに突き放してしまった件を謝る。
あれだけネガティブ思考に陥ったのは初めてだった。状況が状況だったとはいえ...私のメンタルの弱さにはほとほと呆れ返るばかり。
ホシノリラクゼーションによって正気を取り戻した私は、結局ハナコちゃんに協力を仰ぐことにした。
「それで、最後のテストなんだけど...まあ分かってると思うけど、無事に受験とはいかないの。」
「それは...ナギサさんの邪魔が入るということでしょうか?」
もうここは最終局面。先生の居ない分、なるべく早く彼女には打ち明けておくべきだと思う。
「それもあるんだけど、戦闘があるの。それも...ナギサさんを守りながらのね。」
「ナギサさんを守る...?詳しく、伺ってもいいですか?」
最終日に起こる戦闘のことを話す。アリウスの急襲に、正義実現委員会の機能停止...そして、ミカちゃんのことも。
アズサちゃんの件に関しては言わないでおいた。あの告白は...彼女が青春で掴んだ、勇気そのものだから。
「なぜ、この事態をご存じなんですか...?」
「セイアさんに聞いたの。」
嘘です聞いてません。ごめん。
「信じてくれると...嬉しい。ハナコちゃんにしか頼めないことなの。補習授業部を...みんなを守ってください。」
「......」
ハナコちゃんは、しばらく黙って思案する。
「...分かりました、シルベちゃん。私はあなたを信じます。」
「ほんと...!?」
よ、よかった...!
「気づいていましたか?昨日のシルベちゃん、ものすっごく酷い顔をしていましたよ。」
「そ、そうだったの?」
ろくに隠し事のできない私だ。メンタルが低迷しているのもさぞ分かりやすかっただろう。
「でも今は違いますね。ただ...別の意味で不安です。シルベちゃん...さっきの戦闘の話で、『自分を戦力に入れてはいけない』というのはどういう意味ですか?確かシルベちゃんは正義実現委員会の訓練に参加されていると聞いていますし、戦えないというわけでは...」
「私はその、別でやることがあるの。だからその間みんなをお願いしたくて...いや、怪しいことじゃないよ!?ほ、ほんとに...!」
そこを疑われると辛い。だけど、これは私一人でやらなきゃ意味がないんだ。
「大丈夫ですよ。騙そうというのであれば...普通は戦力として参加すると言っておいて居なくなります。私はまた、シルベちゃんが一人で無茶をするのではないかと心配で...」
「ええっと...」
無茶、か。
正直言って無茶な作戦だと自分でも思う。なんだったら作戦とすら呼べないかも。
「するかも、無茶。」
「っ......」
でも、そもそも原作にない現象に対して私が取れる選択肢なんて...これくらいだし、これを貫きたいとも思う。
「でも私にはね、最強の味方がいるの。」
「味方...ですか?」
そう。全ては彼女次第なんていう、酷い作戦。
「私はその子を信じる。それが一番の選択肢だと思うし、私の一番やりたいことなの。」
「......分かりました。こちらは任せていただいて大丈夫なので...必ず、戻ってきてください。いいですね?」
大きく頷く。
「じゃあ私はちょっと出かけてくるね。」
「どちらに?」
「正義実現委員会のところ。1時間くらいしたら戻ってくるよ。」
ギリギリまで、出来ることはしておこう。
「ふふっ、もはや補習授業抜け出しの常連さんですね。」
「うっ...ナギサさん見逃してくれるよね...?ちょっと不安だな...」
―――――――――――――――
「私は、ナギサを守らなきゃいけない。」
最終日。
アズサちゃんの...決死の告白を聞く。
自分はアリウスから入学してきた『トリニティの裏切り者』だということ。
今まで友達を騙し続けて過ごしてきたこと。
彼女達のピンチは自分がこの学園に来たせいであること。
これから起こる、戦いのこと。
「本当にごめん。私のことを恨んで欲しい。今この状況は全て、私がもたらしたことだから...」
「ううん、アズサちゃん。」
何事にも動じないような、そんな印象を持たれがちな彼女だが、こんな状況に置かれて...この告白をする決心に至るまで、どれほどの恐怖があっただろうか。
「大丈夫。みんなアズサちゃんを信じてる。」
「シルベ...?」
彼女はまだ、高校生の女の子なんだ。
「補習授業部のみんなを信じきれなかったナギサさんも、きっと話せば信じてくれるよ。」
先生もそう言っていた。みんながお互いをもっと信じられていたら...こうはならなかったと。
ハナコちゃんが、ゆっくりと口を開く。
「...補習授業部は、裏切り者を見つけるためのもの。それが分かった時点で、抜け出すタイミングはいくらでもありました。でもアズサちゃんはそうしませんでした。」
「アズサちゃんは...補習授業部での時間が楽しくて、抜け出せなかった。そうでしょう?私も、同じ気持ちです。」
「ハナコ...」
「どこかの誰かは、誰にも本心を話すことができず、誰にも本当の姿を見せることができないまま...学校を辞めようとしていました。」
「......!」
いや泣く。大事な場面だから全力で耐えるけど。
「私も、この補習授業部で学びました。それでもまだ足りません。アズサちゃん、もっと学びたいでしょう?もっと知りたいでしょう?」
さあ、号令の時間だ。補習授業部の...反撃の狼煙を上げる時。
「桐藤ナギサさん...彼女を、アリウスの襲撃から守りましょう。そして、私たちは私たちで無事に試験を受け、合格するのです!」
―――――――――――――――
「......いた!」
補習授業部と別れ、目的地へと駆ける。
ハナコちゃんからいくつか聞いておいた体育館へのルートをドローンで捜索すると...簡単に見つけることができた。
既にアズサちゃん達がナギサちゃんを安全なところへ隠しているはずだ。脳を破壊され、至近距離で5.56mm弾を一弾倉分喰らってぶっ倒れている。
...いや、だいぶ可哀想だな!
アリウスの生徒は既に体育館へと向かっている。先生が居ないから、ハナコちゃんたちも大変なはずだ。こっちの策が失敗に終われば、向こうも終わり。
...目標は、一人でいる。最悪他のアリウス生徒と一緒にいる可能性もあったから、それはよし。
一度、深呼吸をする。
......よし、じゃあ行こう。
この作戦は、全部彼女にかかってる。
ならば、上手くいくまで、私はがむしゃらに頑張り続けるだけだ!
信じてるよ!私の最強の味方...ミカちゃん!
―――――――――――――――
事前に準備しておいた体育館の備品を盾に、籠城する作戦。今の所は有効に働いているようです。
「ど、どう...!?」
「戦力的には拮抗してる。トラップはまだあるし、まだ保つ。」
「この後アリウスの増援部隊が到着するでしょう。ですが、私たちは時間を稼ぐだけで大丈夫です。」
「えっと、ハスミ先輩には連絡しておいたから...!」
...シルベちゃんの情報が正しければ、正義実現委員会は動くことができないでしょう。ですが、シスターフッドに要請は済ませてありますので...こちらは、大丈夫なはずです。
「あの、シルベちゃんは...!?」
「...彼女は今、私の作戦で別の場所に行っています。全てが片付き次第、テストを受けるため合流する予定です。」
「だ、大丈夫よね...?」
増援の足音が聞こえます。
アリウスの全生徒のうち半数ほどいるらしい戦力。
「アズサちゃんはトラップの作動を!ヒフミちゃんとコハルちゃんは遮蔽物の修理を今のうちに!」
「は、はい!」
「分かった…!」
シルベちゃんからの情報がなく、『トリニティの裏切り者』が『彼女』であったならば...この戦いは相当苦しいものになっていたでしょう。
そしてきっと。今彼女はその『裏切り者』と対峙している。
お願いします、シルベちゃん。
必ず帰ってきて、全員で試験に合格しましょう...!
―――――――――――――――
「...なんで。」
「こんばんは、ミカさん。」
月明かりが、静かな通りを照らす。
キラキラと輝く彼女...聖園ミカの立ち姿は、まるで絵画のお姫様のよう。
「ふふっ...この前暴力を振るわれたのに、よく私の前に立てるね?もしかして忘れちゃった?」
「ううん、覚えてるよ。」
覚えてるとも。
「私を撃つ寸前で、ちゃんと止まってくれたこともね。」
「.........」
彼女は、右手に持った銃を握りしめる。
「それで?どうせもう分かってるんでしょ?トリニティの裏切り者が誰なのか。」
「うん。止めに来ました。」
二人は他に誰も居ない通りの真ん中で、対峙する。
「もしかして...勝てると思われてる?私って結構強いんだよ。増援がいるかと思ったんだけど、一人みたいだし...」
「私は...戦わない。」
そう。戦う必要なんてない。彼女はあのことを教えさえすれば...ちゃんと、止まってくれるんだ。
「はぁ...何しに来たの?何もしないなら、邪魔だから退いてよ。」
「ミカさん、まだ間に合うんだよ。」
彼女の瞳が、私を睨みつける。
「間に合う...?適当なこと言わないで。何も知らないくせに...早くどこかへ行ってよ...!」
「確かに、私はミカさんのことはあんまり知らないかも知れない。でも、あなたが優しい人だってことはわかるよ!」
彼女は強く、銃を握りしめる。
「優しいって...ふざけないで!私が今何をしているか──!」
「今だって、私を撃たないように必死で銃を握りしめてる!」
「...っ!」
...やっぱり、あの衝動は発動している。あの時ミカちゃんを操った何か。
そしてミカちゃんは今、それを抑え込んでいるんだ。
「そんな...そんなんじゃない!だって私は、人殺しなんだから───!」
「違う...!」
彼女はちゃんと、踏みとどまれる...!
「セイアさんは生きてるよ!」
「────え?」
彼女の心が壊れた原因。友人の死。
これが嘘であると伝えられれば...聖園ミカは、踏みとどまることができる。
「セイアちゃんが、生きてる...?」
「そう。今はミネ団長が誰も知らない所に匿ってるの。」
彼女の手が、緩む。
「ほん、と...?」
「本当のこと。セイアさんが未来を見れるのは知っているでしょ?」
...このまま、ミカちゃんには自首をしてもらう。シスターフッドに逮捕されるのではなく、自分から。
それが原作通りで...かつ、少しでも彼女の背負うものをほんの少しでも減らせるようにと考えた策。
そのために、ここにいるのは私一人じゃなきゃいけない。正義実現委員会にも、シスターフッドにも知られないように。
ただ...私の知らない何かのせいで、一筋縄ではいかないだろうけど。
「ミカさん。ナギサさんやセイアさんのとこに、謝りに行こう?」
「謝...る...?」
一歩ずつ、彼女に近づく。
「大丈夫。きっと許してくれる。二人とも...友達を見捨てたりはしない人だって、知ってるでしょ?」
「......」
「私も一緒に行く。みんなの誤解を解いて、みんなで信じ合えるような関係に、なれるよ。」
「......あ...」
「そしたら今度は私に、ミカさんのことを教えて欲しいな。一緒に...前に話したケーキのお店に、行こう?」
「私....は......っ!」
「私.........っ!?」
████──███─────。
なんの前触れもなく、響く銃声。
気がつくと...ミカちゃんが私に銃口を向けていた。
「ぐぅっ...!」
二発目が放たれる瞬間に花壇の裏に転がり込む!
「あ、あれ...!また、私...!?」
「大丈夫っ!ミカさん!落ち着いて!」
肩から血が滲む。こ、これがミカちゃんの銃撃か...!今まで受けたものとは桁違いの威力だ...!
「わ、私...!ようやく...!それなのに、こんな...!」
「ミカさんっ!」
さあ、ここからは根比べだ。私の...作戦とは到底呼べないような、対抗策。
でも、信じる。それが今の私がやりたいこと...!
さあ来い!聖園ミカは、そんなものに負けたりはしない!