UAが150000を突破いたしました。大体隔日で4000字も読んでくれる読者さんが沢山いるという事実に恐れ慄きます。これからもよろすく...
最後の一発。
彼女のそれは、私のこめかみから逸らされ...陽の光の中に吸い込まれていく。
「............あ...」
「ミカさん...!」
倒れ込んできたミカちゃんをどうにか受け止める。よく見れば、彼女の手には血が滲んでいた。
「気絶、してる?」
乗り越えた...のかな?
...うん、息はしてる。大丈夫そうだ。
良かった、本当に。
きらきらと光るミカちゃんの髪を撫でる。
「よく頑張ったね...」
ミカちゃんの体をキュッと抱きしめる。ああ、彼女を信じて良かった。
「よっ......!」
ミカちゃんをベンチに寝かせて救護騎士団に電話する。申し訳ないけど、後は彼女達に任せよう。
目を覚ましたら彼女は...きっと、全てを話してくれるはずだ。
「えっと...第19分館...けほっ...」
彼女に上着をかけてから、目的地に向けてちょっとずつ歩く。時間はまだある。
「...おっと。」
転んで地面に倒れ伏す。はは、そういえば服が血まみれだ。着替えないと、ビックリされちゃうかな。
頭がぐるぐるする。でも、絶対行かなきゃ...
まだ、終わって...
............
―――――――――――――――
「──ちゃん...!シルベちゃん!」
「あ...ハナコちゃん...」
誰かに抱きしめられている。やわらか...
「ひどい怪我です...!」
「へ、平気...だから...」
気絶してた...?時間は大丈夫かな。
えっと、撃たれた箇所はお腹と脇腹、肩と左腕...うん、右手が無事ならテスト受けられるね。
「シルベちゃん!すぐに救護騎士団を呼びますので...!」
「ダメっ!」
端末を取り出した彼女の手を掴む。あと、ちょっとなんだ。
「テスト、受けなきゃ。」
「どうして...!?テストに合格しなくとも、特別校舎送りになんてなりません!いえ、私がそんなことはさせません!ですから...!」
たしかに、そうかもしれないけど...
「お願い、ハナコちゃん。私すっごい楽しかったの。みんなで勉強して、遊んで...私の青春はここにあるんだって思った。」
「それは...私も、私も一緒です...!」
ろくな高校時代を過ごさなかった私にとって、本当に...補習授業部は、青春だった。
「私、最後までやりたい...!この補習授業部を、100点満点で終わりにしたいの!」
「...シルベ、ちゃん...」
原作...美しい補習授業部のお話を守りたい。それ以上に、私のいた補習授業部を...完遂したい!
「っ...分かり、ました。テストが終わり次第、すぐに救護騎士団に連絡をします。それだけは...お願いしますね...?」
「うん...!ありがとう、ハナコちゃん。」
彼女の手を借りて、もう一度立ち上がる。
テストを受け切るまで、ぶっ倒れてなんかやるもんか...!
―――――――――――――――
「シルベちゃん...!良かった、無事合流できましたね!」
「お待たせ。ヒフミちゃん、コハルちゃん、アズサちゃん。」
試験開始5分前。どうにか会場まで辿り着けた。
ハナコちゃんにジャージを借り、彼女達の前になんとか立っている。
「し、心配したんだから...!テストの方は、大丈夫なの?」
「うん、古代語もバッチリにしてあるよ。」
指定された教室に入る。もうすぐ試験の開始時間だ。
「...?待ってシルベ、足取りが───」
「アズサちゃん...それは、テストが終わってからにしましょう。」
「で、でも───」
用紙は、ちゃんとある。ナギちゃんは受けさせる気なんてなかったくせに、律儀に監督用のカメラも用意してある。
チャイムが鳴った。テスト開始だ。
────。
―――――――――――――――
「........!」
「...良かった、来てくれて。」
先生以外、誰もいない教室。
夕陽が差し込んできて...少し、眩しい。
「なんでいるの。」
「なんでって...補習授業の日だからだよ。」
確かにそう。でもその開始時間なんてとっくに過ぎている。
「他の奴らが来たわけじゃないんでしょ。」
「はは...残念ながらね。」
当然だ。赤点常連のあいつらは一度だって来たことはないだろう。
「じゃあ、補習授業を───」
「なんで、待ってたの。1時間も...」
暇なのか?暇なんだな。
「それは...」
「......」
「
「は...?」
何を言い出すかと思えば。
「私が来るって、信じてたって言うの?」
「そうだね。」
くだらない。後からなんとでも言える言葉。
「じゃああいつらのことは?信じてた?」
「信じていたよ。」
なら、裏切られてるじゃん。
「じゃあ、もう信じないほうが良いね。学習したら?」
「...そうかな。私は先生だから、生徒のことを信じるよ。」
いつもそうだ。耳触りのいい言葉ばっかり言って、その通りに動いて、いっつも損をしている。
「意味なんてないじゃん、『信じる』なんて言葉。結果が出てからならなんとでも言えるよ。」
「言葉に意味はなくても、行動の指針にすることには意味があると思うよ。」
それを指針にした結果、裏切られてるくせに?
「例えばほら、君が来てくれた。」
「......私は、忘れ物を取りにきただけ。これで先生の信頼は全滅だね。どうせ先生の『信じる』に根拠なんてないでしょ。」
そう言うと、あいつは懐から、一枚の紙を取り出した。
「どうかな...ほら、これとかどう?」
「...私の赤点用紙じゃん。それが何?」
問題を一個、指差す。
「これ、この間解説したやつだよ。○になってる。君はあの時突っ伏して寝たふりをしていたけどね。」
「っ...偶然でしょ。」
......。
「別に、意識するようなことじゃないよ。先生が生徒を信じるのは、当たり前だから。」
「...じゃあ、私のやる気がないって言うのも信じてよ。」
いつもこいつは、私の『言葉』を信じてくれない。
「じゃあ...君が嘘をついているのだと、信じるよ。」
「都合のいいことばっかり言って...」
駄目だ。こんなのに付き合っても疲れるだけ。
「まあ、今日はもう遅いし...帰ろうか。はい、これ。」
「...なに?」
私の解答用紙と、もう一枚の紙を渡される。
そこには赤ペンで...私が間違えた問題の解説が沢山書いてあった。
一問一問、丁寧に。
...ここの問題、そういえばあいつに習ってたっけ。
......ここもか。
ああ。
なんだろ。
ちょっと。
ほんの少し。
ほんのちょっとだけ、悔しいかも。
―――――――――――――――
静かな教室で、ペンの音だけが響き渡る。
......。
眠い。
血が足りない。
.......。
時計を見る。もう時間がない。
これ、なんだっけ。『Gaudium et Spes』....
あと、数分しかない。
最後のページ...
ああ...これは、えっと...
そういえば、さっきの問題...漢字違ってたような...
......あ。
チャイム、鳴っちゃった。
「お、終わりました!...って、あれ?シルベちゃん...!?」
「シルベ!?ちょ、ちょっと...大丈夫!?」
全然力が入らなくなって、椅子から転げ落ちる。
「シルベ!やっぱり...!」
「落ち着いてください!すぐに救護騎士団が来ますので、それまで...!」
えっと、あそこの問題が2点で、あれは...
ああ、ダメだ。何回計算しても89点。
「シルベちゃん!しっかり───!」
ここまで来たのに...最後が締まらないんだから。
「──っ!────!」
ごめん、ヒフミちゃん。コハルちゃん。アズサちゃん。ハナコちゃん。
「────」
悔しい。
「─────」
悔しいなぁ......
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補習授業部
第三次特別学力試験、結果──
ハナコ:100点
アズサ:97点
コハル:93点
ヒフミ:94点
シルベ:90点
補習授業部、全員合格!