先生の居ないアーカイブ   作:ヒオルカ

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お待たせしました。エデン条約編三章開幕です。




甘露を銃に込める

 

 

『先生』

 

その名を思い浮かべるだけで、地獄のような怒りが沸々と湧いてくるのを感じます。

 

何者なのか、何をされたのか、一切の情報はありません。

 

ただ突如として発生した感情は、その者の死を求める。

敗北の記憶。屈辱の記憶。

 

 

...『一色シルベ』。

 

 

あの者ではない。あのような矮小な存在に私が負けるはずがありません。

 

彼女の背後にいる何か。私の感情を揺り動かしているのはそれでしょう。しかし、その彼女でさえ...排除しなければ気が済まない。

 

 

 

...あの子供を切り裂き、はらわたを引きずり出せば、その『先生』は現れるはずです。

 

 

私は応えましょう。この不可思議な憎悪に。

 

 

必ずや『シャーレ』共に、地獄の苦しみを───!

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「あ〜ん。うまー。」

「あ、クリーム付いた。ほら、じっとして...」

 

 

 

こんにちは一色シルベです。

私は今、入院しているのにかこつけて、カズサちゃんにスイーツを食べさせてもらってます。

 

Oh…

Happiness…

 

「これ凄いね。ふわふわのピスタチオクリーム...いくらでも食べれそう!」

「でしょ。こないだ見つけてね、でもその時シルベは補習授業で別館にいたから...」

 

このご褒美があればいくらでも戦える。カズサちゃんのあーんが主食で良い!

 

「...それにしても、今度はトリニティから出ずに大怪我してくるなんて。」

「いやぁその、アリウスがね...?はは、生きててよかったよ。」

 

すまんアリウス...エデン三章が終わったら助けに行くから...

 

「それで、今度はエデン条約の調印式に出るの?そんな怪我してるんだから、休んでなよ...」

 

正直、出席自体はしなくとも良い。だけど、やらなきゃいけないことがある。

そんな訳で調印式には行きます。

 

「大丈夫だよ!調印式なんて座ってるだけだし...!もう歩けるもん。」

 

さすがキヴォトス人体の神秘、もうなんともないぜ...とは流石にいかず、今回はちょっと入院が長引いている。

ぼんやりしてるうちに調印式は始まってしまうので、なるだけ早く退院したいところなんだけど...

 

 

「...あのさ、ちょうどその日に限定のスイーツが古聖堂付近で販売するらしくって。その、私も一緒に───」

「え...!?だ、ダメ...!」

 

それはいけない!

元々原作では放課後スイーツ部はミサイルの被害に遭っていない。みすみすそれを見逃す訳には..!

 

「...ダメなの?」

「あ、そのぉ...私が買ってくるから大丈夫だよ!調印式って結構暇なんだよね!あはは...楽しみに待ってて!」

「......そう。」

 

ふぅ...危ない...余計な被害を出すところだった。

 

 

「.........。」

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「...シルベ。」

「はい...?ってヒナさん!」

 

病院の広場にあるベンチで、思いもしない出会いをする。

 

その辺をうろつくことは許可されたので日向ぼっこでもしようかと外へ出てきたところ、お見舞いに来てくれたらしいヒナちゃんが姿を見せてくれた!

 

「体は大丈夫なの?」

「はい。もうバッチリで、すぐにでも退院したいくらいなんですけど...」

 

もう平気だと言っているのに、セリナちゃんは一向に聞いてくれません。頑固なセリナちゃんもかわいいネ...

 

 

「...ねぇ、シルベ。ゲヘナに転校する気はない?」

「はい...ってえ!?」

 

!?

 

「私、怪我していない状態のあなたと会ったことないわ。会うたびに満身創痍というか...」

「それは、その...」

「ゲヘナに来れば、私が守ってあげられる。どう?」

 

う、うーん...ゲヘナか。まあゲヘナで過ごすのも楽しいだろう。

けれど、とりあえずエデン条約編第四章が終わるまでは...トリニティに居たいと思う。

それに、補習授業部や放課後スイーツ部の友達も居るし。

 

「ごめんなさい。私まだここでやることがあるから。」

「...そう。分かったわ。」

 

それでも、私のことを心配してくれているのはすごく嬉しく思う。

 

「ありがとう。私のやりたいこと、応援してくれて。」

「応援だけじゃ意味ないと思うけれど。」

「ううん。否定しないで、 頑張れって言ってくれるの...凄い嬉しい。」

 

背中を押すという行為は、案外勇気が要るものだ。

そんなことないと分かっていても、もし失敗した時に責められるんじゃないかと感じる。この行為は無責任なのではないかと。

だから否定の方が楽だ。結果が出ないのだから。

 

そんな人に、沢山会ってきた。

 

それでも背中を押してくれるその人は、多かれ少なかれ...『信頼』を贈ってくれているということだ。

 

「ありがとうございます。私のことを信じてくれて。」

「シルベ...」

 

そんな人が一人でもいるならば、それはとっても心強いと感じるよ。

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 

「もう少しここに居たいけど、残念ながら仕事がある。あんまりトリニティに長居しても良くないし...次は調印式で会いましょう、シルベ。」

「うん。ヒナさん、またね。」

 

ヒナちゃんを見送る。忙しい中でお見舞いに来てくれて感謝だ。

 

「あ、ちょっと待って!」

「...?」

 

お見舞いが嬉し過ぎて大事なことを忘れていた。

 

これから訪れる悲劇の...1番の壁。

その対策が必要だ。

 

「ヒナさん。お願いがあって────

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

病院から出れました。やっほい!

しばらく通院だけど、自由の身である。

 

「それでは、シルベちゃんの退院祝い兼補習授業部の打ち上げを開催します!」

「いえーい!」

「うん。虚しくとも、大切な時間だ。」

「ふふっ♡ところで今からでも兼水着パーティーということにしませんか?」

「しないから!二回目はないって言ったでしょ!脱ごうとするな!」

 

なんなら退院祝いと合併したおかげで日程が早まり、先生も参加できなかった打ち上げが見られる。

 

はぁ...平和だ。いやこれから酷いことになってしまうのだけど。

それでも、この平和と楽しむことは私にとって大事なことだ。

ブルーアーカイブの世界は楽しく、美しく、素晴らしいものだと知れば知るほど...それを守るための力が湧いてくる。

 

「あら、ジュースが切れてしまいましたね?」

「あ、じゃあ私買ってくるよ。あそこのコンビニ最近行けてなくって、新商品見たかったから。」

「それじゃあ私も───」

「ヒフミはあそこに行くとモモフレンズのくじをラストワン賞まで引くからダメだ。私が行こう。」

「あうう...」

 

 

 

 

 

アズサちゃんと二人で、夕暮れの街を歩く。

街を照らす光は...彼女の綺麗な羽に反射して、きらきらと輝きを放つ。

 

「...シルベ。一つ、聞いても良い?」

「どしたの?」

 

道中...彼女は私の歩調に合わせながら、少し真剣なトーンで話し出す。

 

「シルベは最初、補習授業部に入ったら学校が楽しくなると...そう言った。それで、その通りになった。」

「...うん。そうなってくれたなら、良かった。」

 

最高の友達。最高の青春。足掻き続けた彼女が手にするべきもの。

 

「でも、シルベは私たちの知らないところで戦っていた。あの日シルベと戦っていたのは、きっとアリウスに操られた聖園ミカだろう。アリウスは特殊な技術を使えるから...」

「それは...」

 

補習授業部には、ミカちゃんが何者かに操られてアリウスを招き入れたということは説明されている。

ただミカちゃんを操っていたのはアリウス...ではないと、思う。もっと、遠くからの───

 

「他のアリウス生徒からの報告で、シルベは補習授業の期間中も正義実現委員長と訓練していたと報告を受けている。シルベは、彼女やアリウスと戦うことになると知っていたんじゃないか?」

「...!」

 

頭いいなぁ、アズサちゃんは...!

 

「シルベ。もしかして...百合園セイアのように、未来が見えているのか?」

 

...どう、答えようかな。

正直、言ってもいいと思う。言いふらしたりなんてしない子なのは分かってる。

 

ただ、未来の内容だけは言っては行けない気がする。私がここにいる時点でアレかもしれないが、少しの意識の違いが致命的な問題を生むかもしれないから。

 

でも。

 

 

「未来が分かるのなら...教えてくれ。私には救いたい人がいる。」

 

 

不安だよね。

 

 

「アリウスの生徒...アリウススクワッドのみんな。彼女たちを、なんとか...!」

「...ごめん。」

 

 

でも、言えない。

 

 

「...そう、か...」

「でもね。」

 

彼女の手を握る。彼女の未来を...私は知っている。

 

「私も頑張るよ。私は先生代理だから...トリニティだけじゃない。アリウスのみんなも、救いたいと思ってる。」

「シルベ...」

 

これから、彼女は陰鬱で、酷く暗い道を歩くことになる。

それを私は止められない。きっと、サオリちゃんたちはアズサちゃんと戦うことでしか、アリウスの洗脳を解くことはできない。

 

「信じて。みんなを。」

 

でもさ。エデン三章の先生、結構寝てたんだよ?先生は最後に、ちょっと後押ししただけ。

どんなに苦しい茨の道だったとしても、先生が来るまで...誰も、足掻くことをやめなかった。

 

「大切な友達と過ごした日々を、忘れないで。」

 

こんなのはただの言葉だ。銃弾の一発も防いではくれない。

それでも...伝えたい。

 

「...分かった。みんなを信じる。そうやって足掻いた結果、今私はここに居るから。」

「うん!」

 

...話し込んでいると、コンビニに着く。

 

せっかくだから一回モモフレンズくじでも引いていってみよう──────?

 

 

 

「「あ。」」

「!?」

 

 

目の前には、コンビニスイーツで買い物カゴを全部埋めたハスミちゃんの姿が。

 

「「......」」

「その、これはですね...」

 

 

 

 

 

 

 

「うん。信じるという行為もやっぱり虚しい。だけど足掻かない理由にはならない。」

「そうだよどうせ全部お腹じゃなくて胸に行くんだから結果オーライだよヴァニタス!」

「何の話ですか!?こ、これは差し入れ用で───!」

 

 

 

ゔぁにたす。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「はい...ええ、任せてちょうだい?それじゃあね。」

 

「社長、依頼が入った?」

「ようやくだね〜。もう少しで事務所を追い出されるところだったよ?」

「ふん、この依頼...バッチリ成功させるわよ!それで、ハルカ!」

「は、はい...!?」

「一応みんなでやる部分もあるけど、今回はあなたをご指名よ!便利屋68の力を見せつけてやりなさい!」

「...えええ!?わた、私ですか!?!?」

 

 

 

始まる。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「あの、本当ですよ...?本当に差し入れで...」

 

「分かってます。ええ、分かってますとも...えっと、それとは別に、これをツルギさんに渡してもらえませんか?」

「手紙...?はい、分かりました。あの、本当に──」

 

 

 

 

楽園崩壊の足音が聞こえる。

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「.........」

『────!───、───?』

 

「そう、その日。その店にちょっと付き合ってくれない?」

『──!───、──!』

 

「うん。じゃあそこ集合でね。」

 

 

 

ゆっくりと迫る、暗雲。

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「行くぞ、ミサキ。」

「了解。」

 

「......」

「上手くいくでしょうか...不安ですね...」

 

 

 

 

始まる。

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「...ミカちゃん。」

「......」

 

 

「必ず、平和な世界にしてみせるから。」

「......」

 

 

「その時は一緒に、ケーキ屋さんに行こうね。」

「......」

 

 

 

すやすやと眠り続ける彼女の手を握って、窓の外を眺める。

 

証明できない楽園への挑戦が...今、始まる。

 

 





感想、評価等極めて励みになります。めちゃ感謝です!
ところでついに実装された宇沢のモーション可愛すぎませんか?編成画面のつまみモーションとか一生見てられるぞ宇沢ァ!

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