先生の居ないアーカイブ   作:ヒオルカ

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原作が1日に詰め込まれてるので、書いていると1話分がちょっとづつ長めになる現象が...



不意打ち

 

 

 

「...よし。」

 

平和な日々はあっという間に過ぎ去る。怪我は、まあ大体は治ったんじゃないかな?

 

 

ついにこの時が来た。

エデン条約編三章。控えめに言って地獄みたいな展開になるこのお話が、今日...この日に始まる。

 

 

ブルーアーカイブ史上でも未曾有の危機であるこのストーリー。これを乗り越えるのは...当然だが私の力だけでは不可能だろう。

この世界に輝くみんなの力を借りるほかない。

 

 

まずこの話の始まり...巡航ミサイルが古聖堂に向かって発射される事件。

 

原作ではアロナちゃんバリアによって無傷だった先生だけど、私にそんな便利なものはない。

自分の耐久度がどのくらいなのかはよく分かんないけど、多分原作のナギちゃんのように全部が終わるまでおねんねルートになってしまう可能性が高いと思う。

 

じゃあミサイルを止める選択肢は...と考えてみるも、さっぱり思いつかない。

ラムジェットエンジンもよく分かっていないのに、それですらない『無名の司祭』が残した不可思議な技術で作られたものだ。誰に聞こうと無意味だろう。

 

止められないからと言って、じゃあみんなを避難させるのも無理だ。いくら私が古聖堂でジタバタしたところで、「なんだコイツ...?」って思われるのがオチ。

 

それに...あんまりアリウスの計画を止めすぎると、早々にアツコちゃんが儀式の生贄にされる可能性がある。

 

 

 

 

 

結局私が考えついたのは...逃げること。

 

幸いミサイルが発射されるタイミングは分かっている。調印がなされる瞬間だ。

 

確か学園は無事だったので、その時点で学園まで逃げる。

 

...ほんとはみんなを置いて逃げるのすっっっごい嫌だけど。でも、変な意地を張って爆破されて寝込んでいる場合でないことは分かる。

実際エデン三章で先生は序中盤倒れていたので、無理に古聖堂に残ってやるべきこともない。

 

とにかく...学園まで逃げて、ミサイルが落ちた後にUターンして救護騎士団と共に救助をしつつ、ヒフミちゃんたちを連れて古聖堂で『宣言』をする。

大まかな道筋としては、こんな感じだ。

 

 

 

「...あ、もしもし?シルベです。」

『はは、はい!ハルカです...!』

 

 

先生不在による戦力不足を補う作戦も考えてある。

そのためには、便利屋68...とりわけ、ハルカちゃんの力が必要だ。

 

『そ、その...さっき送った資料の通りにすれば、解除できるかと...す、すみません読みづらい資料で!』

「ううん、バッチリ。この後は指定の場所で...よろしくね。」

『は、はい!死んでも成功させますので...!』

「死なないようにね...あと、時間になったら爆弾が残っていても絶対に撤退すること。それだけはお願い。」

 

その作戦とは...

 

 

 

 

爆弾処理大作戦第二弾である!

 

 

 

 

みなさん覚えてますでしょうか私のVo.1での失態。無謀にも爆弾処理に挑んだ結果、抱えたC4爆弾が大爆発したのだ。

 

その件で私学びました。素人だけで爆弾処理はできません。そんな訳でプロフェッショナルをお呼びすることにしたのだ。

 

彼女たち便利屋68を呼んで解除するのは、古聖堂に仕掛けられた爆弾。こっそり動くのが得意な彼女たちを私が手引きして、古聖堂に入ってもらう。

 

原作ではヒナちゃんが言及していた、古聖堂の爆弾。事前にアリウスによって仕掛けられていたそれは、ミサイルと共に爆発して...被害を増大させた。

 

これを止めることで、みんなのダメージを軽減させる。これで先生が居ない分の戦力を少しでも埋めたいところだ。

 

 

 

そして最後に待ち受けるのは、トリニティの地下に顕現する人工の天使。神性の怪物。先生が初めて...『大人のカード』を切った相手。

 

 

 

それに関しては────

 

 

 

 

 

 

コンコン

 

 

 

 

 

 

 

「はい?」

「ティーパーティーです。お迎えにあがりました。古聖堂まで車でお送りいたします。」

 

迎え?どうやらナギちゃんが、病み上がりの私に気を利かせてくれたみたいだ。

 

結局面倒なところにあるんだよね、古聖堂。普段は誰も使わないところだから交通機関があんまり通ってなくて...

 

「ありがとうございます。カズサちゃん、行ってくるね。」

「......うん、行ってらっしゃい。」

 

 

 

ああ...緊張する。上手く行くだろうか?

 

 

 

ティーパーティー傘下の生徒に連れられて、用意された公用車に乗り込む。

 

とりあえず根回しは済んである。変なイレギュラーさえなければ...後は実力勝負だ。

さて...できれば私も爆弾処理を手伝いたいし、とりあえず爆弾処理の資料を読んで───

 

 

 

 

 

......ん?

 

 

 

 

 

...待って。

 

 

 

 

今私の隣に座っているの─────

 

 

 

 

 

.........。

 

 

 

 

 

「えっと、私ちょっと忘れ物────

「動くな。」

 

首筋に、拳銃が突きつけられる。

 

 

 

 

 

 

この子、ティーパーティーじゃない。

 

サオリちゃんだ。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「あの、シルベさんはいらっしゃいますか?」

「...えっと、シスターフッドの...?シルベなら、ティーパーティーの人と一緒に古聖堂に行きましたけど?」

「あれ、そうなのですか?確かシルベさんの送迎はシスターフッドの方で行うと...」

「...え?」

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

間違いない。変装しているが、私の右隣に座っているのは...アリウススクワッドのリーダー、錠前サオリちゃん。

左隣にはミサキちゃんもいる。そしてこっちはお腹に銃を突きつけられている。嬉しくて嬉しくないアリウスサンドイッチ状態だ。

 

運転手は普通のアリウス生徒...これ、どこ連れていかれるんだ...?

 

「あ、あのぉ...何処に行くのかな...?」

 

これは、最終編でカイザーが先生を陥れた手口と同じだ。別の機関を装っての誘拐。時期が違うとはいえ、原作で仕掛けられた罠にハマるなんて...情けない...!

 

 

「一色シルベ。」

「......はいぃ...?」

 

 

 

「今から向かうのは、お前の死刑台だ。」

 

 

 

...!

サオリちゃんのヘイローの色が、一瞬変わった!

 

み、ミカちゃんに続いてサオリちゃんも...?

どういう法則なんだ...えっと、アリウス関連?やっぱりベアトリーチェのせいじゃないこれ!?

 

「...サオリちゃん、聞いて。みんな、ベアトリーチェに騙されてるの。」

「無駄口を叩くな。」

 

 

「お願い、聞いて...!その恨みはあなたたちのじゃなくて───」

「黙れ。」

「っぁ───!」

 

0距離の銃撃。

脳が揺れる。

 

 

「......」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

揺蕩う、夢の中。

 

頭の中を掻き回していた何かは息を潜め、出てくることはない。

 

あの子と約束した。何かを。

やらなきゃいけないのに、頭に靄がかかって...

 

 

 

「......ようやく繋がったか。ミカ。」

「......?」

 

だ...れ......?

 

「私だ。セイアだ。」

「...!?セイア、ちゃん...!」

 

セイアちゃん!?やっぱり、生きてたんだ!

 

「あの、セイアちゃん。わ、私──!」

「私も君と話したいことが沢山ある。だが今は切迫した事態だ。君の手を借りたい。」

 

 

私の手を...?

 

 

「端的に言おう。このままでは一色シルベが殺される。」

 

「え...!?そ、そんな!」

 

シルベちゃんが殺されるなんて、そんなの駄目...!

 

「わ、私がどうにかできるの?」

「...分からない。だが、私が生きてきた中で未来が変わったのは三回。全て君が変えた未来だ。」

 

私が、未来を変えた...

 

「一回目は、君が一色シルベを床に叩きつけた時。二回目は、君が一色シルベを銃撃した時。」

「う...や、やっぱり私じゃない方がいいんじゃ...」

 

あまりにも...あんまりにも彼女には酷いことをしてしまった。それなのに、彼女は最後まで私のことを信じてくれた。

 

「そして三回目は、君があの呪縛を打ち破った時だ。」

「...!」

 

私はただ...彼女の手を取っただけ。シルベちゃんの信じる心が、私を止めてくれた。

 

「どれも君に現れた、あの現象が関係している。頼めるのは君だけだ、ミカ。」

 

「...分かった。どこへ行けばいいの?」

 

まだ、約束を果たせていない。彼女とした...大切な約束を。

 

「詳しくはまだ見えていないが、条約が締結される古聖堂の近くなのは確かだ。ミカ、彼女を救ってやってくれ。」

 

 

セイアちゃんの声が薄れる。一刻も早く目を覚さなきゃ。

 

 

 

 

 

シルベちゃん...絶対死なせたりなんてさせないから...!

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「......?」

「どうかされましたか?委員長。」

 

古聖堂へと向かう最中、一瞬すれ違った車が気になる。

あの車に乗っていたのは...シルベ?

 

...少し妙ね。

 

「アコ、この番号を照会して。トリニティの──」

「はい、少々お待ちください...えっと、今回の使用車リストにはありませんね。」

 

あの道は...古聖堂に行くにしては遠回り。

この時間から、別の場所に?

 

 

......。

 

 

「......運転手、私はここで降りる。後で合流するから、アコはそのまま会場に向かって。」

「えっ!?い、委員長!?」

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「降りろ。」

「...っ」

 

人通りのない裏道に入った車は、なんの変哲もないアパートの前で停車する。

 

手は縛られているけど...どうにか私が降りたタイミングで...!

 

 

「ミサキ、上だ。」

「なっ...!?」

 

 

ミサキちゃんが即座に上へと発砲、奇襲を仕掛けようとしていた私のドローンが軌道を逸らされる。だ、ダメか...!

 

「虚しい抵抗だな。入れ。」

「うぅ...っ!」

 

アパートの中へ押し込まれる。ドアは閉じられ、ドローンも閉め出されてしまう。

 

「ここ、何処...?」

 

平凡な内装のアパートに足を踏み入れる。

 

「ヘイローを壊す方法を知っているか?様々あるが...どれも圧倒的な優位と時間が必要になる。」

「それは...」

 

アリウスが唯一、『教育』をしている内容。

 

人を殺す方法。

 

「もう少し簡単な方法もあるが...貴様には勿体ない。ならば...」

 

彼女はある場所の床を強く踏む。するとその場所が凹み...入り口が現れる。

 

「ち、地下...!」

「圧倒的な優位と時間を、用意しよう。」

 

暗闇の中に、放り込まれる。受け身も取れずに地面へとぶつかった。

 

 

 

「...!せ、成功したんですね...!」

「......」

 

 

白熱電球が灯る。視界が薄く開けるとともに目に入ってきたのは、ヒヨリちゃんとアツコちゃん。

 

「アリウススクワッドのみんな...!」

「わ、私たちを知っているみたいですね...?」

「やっぱりマダムの言う通り、放置して置けない危険人物。」

 

暗い、地下。アリウススクワッドの四人...

これ、詰んだ...?

 

「みんなお願い...!あの大人の言いなりになっちゃ駄目!」

「死ね。一色シルベ。」

 

全員の銃口がこちらを向く。四方から...死の線が、私を狙っている。

 

「アズサちゃんは、トリニティで幸せになったよ...!良い友達ができた。信じ合う仲間が!そして君たちも救いたいと!」

「vanitas vanitatum。全てはただ虚しいだけだ。アズサが見ているのはただのまやかしに過ぎない。すぐに真実に気づくだろう。」

 

あ、諦めちゃ駄目だ。なんとかこの状況を脱する方法を...!

 

「お願い...!私は信じられないかもしれない。けど、アズサちゃんのことを信じてあげて!」

 

「【先生でもないのに】...知ったふうな口を叩くな。」

 

や、やっぱりサオリちゃんも先生のことを知っているみたいだ。

でも、ミカちゃんの時のように大きく混乱している様子はない。

これは、アリウスの洗脳によって...元々先生を殺すという目的を持っているから?

 

「...リーダー?」

「...いや、なんでもない。時間が惜しい、始めるぞ。」

 

 

彼女らの指に力が込められる。く、くる...!

 

 

四方から銃弾が発射される。とにかく、ツルギちゃんとの訓練で掴んだ、被弾をマシなところに誘導する防御術を...!

 

 

「ぐっ...!」

「......」

 

 

ミサキちゃんとアツコちゃんのは避けて...一発は背中に当たって、もう一発は私の腕を縛っている紐に当てることができた...!

紐が解け、腕が自由になる。でも、それだけだ。

 

「み、みんな...!話を...!」

「随分足掻くね。」

「す、すみません...これも命令でして...」

 

 

どうすれば良いんだろう。

遮蔽物も何もない空間。梯子を登って地上に行く時間なんてないし。

 

 

 

どう考えても死ぬ...よね。

 

 

 

 

「撃て。」

「ぐっ!...うああっ...ッ!!」

 

 

四つの銃口から絶え間なく弾丸が放たれ...私の体を貫く。

 

 

「っ...!っ......」

 

 

何処へ走っても逃げられない。ひっきりなしに襲ってくる激痛は、私の意識に直接ヒビを入れる。

 

 

「...........ぁ...」

 

 

力が抜け、うつ伏せに倒れ込む。もはや何処が撃たれていないのかも分からない。

 

 

 

...足音が聞こえる。

 

 

見えないが、銃口を頭に押し付けられている。

 

 

「終わりだ。」

 

 

...だめ、なのに...

 

 

 

 

彼女たちを人殺しにしちゃ、いけないのに...

 

 

 

 

 

 

 

もう、からだ、うごかな───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...!」

 

 

サオリちゃんが飛び退く。薄暗い地下室に...轟音と共に光が入ってくる。

 

天井に穴が空いている。誰が...?

 

 

 

 

「貴方たち...」

 

「!?どど、どうしてここが...!?」

「...まさか。」

「.....」

 

この、声は...

 

 

 

 

 

 

「シルベに、何をしているの...!」

 

 

 

ヒナちゃん、だ...!

 

 

 

 

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