私が掴む手
私が連邦捜査部『シャーレ』所属の生徒になって数週間ほど。
どうしているかというと……原作の先生よろしく、書類の山に埋もれております。はい。
「はぁ......」
サンクトゥムタワーの如く積み上がった書類をちらりと見て、ため息をつく。
とにかく書類の量が多い!原作の先生はこれをくぐり抜けながら、絆ストーリーで様々な生徒と交流を深めていたのか?
全くもってそんな余裕はない。せいぜい書面上で解決できそうなお便りをどうにかするくらいで、自分から突撃していくことはちょっとできなさそうだ……
出来上がった書類を纏めて、分かりやすい場所に置いておく。
やっと一山終わって、あと二山くらいある。先は長いぞ……?
アロナちゃんとか手伝ってくれないかな?と、シッテムの箱を突いてみるが、ただ無機質なシステムの文言が揺れるだけ。何も答えてはくれない。
結局あの日以来、アロナちゃんが出てきてくれることはなかった。
アロナちゃんが動かしてくれなければ、ただ機能が制限されたシッテムの箱のシステムを使える、高性能タブレットだ。
これ以外にも原作との乖離は所々に見られるし、これらの対処を考えることは必須事項だろう。
あの時私が躊躇っていたせいで、この部室は不良生徒によって荒らされまくってたし……
掃除も大変だった。部屋の惨状を見た時はリンちゃんと二人して深いため息をついたものだ。
それとサンクトゥムタワーの制御権だが、どうにか機能制限されたシッテムの箱でも移動させることができた。手動で丸二日かかったけど……
あれを数秒でやってしまうアロナちゃんはさすがシッテムの箱のメインOSちゃんだ。寝ぼけながらデカグラマトンを逆ハッキングできるだけのことはある。
「……?」
テーブルに置いていた携帯端末が震える。
どうやらリンちゃんからの電話みたいだ。
『シルベさん、先日提出いただいた書類ですが、いくつか書き方が間違っている点がありまして』
「ああ、ごめんなさい!すぐに訂正しに……!」
『いえ、大丈夫です。こちらで直しておくので。ただ三枚目の書式は別の形式ですのでお間違えのないよう───』
……やっぱりなんだか原作よりみんなが優しい気がする。
これは私が生徒で、それも一年生だからだろうか。原作の先生は連邦生徒会に呼び出されて書き直させられていた記憶がある。
それは良いことかもしれないが、裏を返せば頼りない存在に見えてしまう可能性がある。出来るだけ彼女達に頼りきりにはならないようにしないと……
ふぅ...あとちょっとかな。
書類トゥムタワーがようやく崩壊し始めた。あと一息を乗り越えるために伸びをして、次の書類に手を伸ばす。
えっと、これはどこにハンコを……
「……あ!」
一枚の手紙を手に取る。中には、見たことのある人の名前。
──連邦捜査部の先生へ
こんにちは。私はアビドス高等学校の──
これは!アビドスからの支援要請だ!!!
―――――――――――――――
「出張……ですか?」
「はい。アビドス高等学校が廃校の危機らしいので、行ってきます。あとおまかせしても大丈夫ですか?」
「はい、分かりました。ではこちらをお持ちください」
書類仕事も大事だけど、メインはこっち。これからブルーアーカイブのストーリーが始まるのだ。
そんな訳でリンちゃんにアビドスへ向かうことを報告すると、あるものを渡される。
「こちらはクレジットカードのようなものです。連邦生徒会長から、シャーレが始動した時お渡しするように言われていましたので。使用額はシャーレへの経費となります」
「……!」
これは……!
もしかして先生の持つ『大人のカード』!?
こ、こんなデザインしてるの?なんか……色鮮やかというか、すっごいカラフル。あんまりクレカっぽくなさそうだし、店で出したら一瞬困惑されてしまいそうだ。
大人のカードっていうよりおもちゃのカードみたいな……とりあえず配色が目に悪い。
唯一見たことがあるのはあの人が持ってたカードだけど...まあ汚れてたし、キレイだったらこんなデザインだったんだろうか。
原作では先生と生徒達だけではどうにもならなくなった時に、切り札として使われるこの『カード』。
実際にどんな効果を持っているのかは全く明かされていないアイテムだ。
リンちゃんはクレジットカードとしか言わなかったけど……うん、確かになんだか力を感じる。使おうと思えばちゃんと『使う』ことができそうだ。
もしもどうにもならなくなった時はこのカードを使うことも視野に入れておこう。
というか私大人じゃないんだけど『大人のカード』使えるのかな……?
「あ、ありがとうございます!それと、後で何度か補給品の要請を行うと思いますので……」
「はい、準備をしておきます」
出発の準備を整える。これからアビドスだ。
正直、アビドスから救援要請が来る前に支援をしに行こうかと思ったこともあるけど……何もなしに補給品を持って訪れたら、ホシノちゃんに警戒されてしまいそうだと思い躊躇っていたのだ。
あと、これも忘れてはいけない。サンクトゥムタワーの騒動でクラフトチェンバーが作り出した、特別なドローン。
あれ以来クラフトチェンバーはうんともすんとも言わない。ゲーム的には困るが、ストーリーで先生がクラフトチェンバーを使っているところは見たことがないので、まあ大丈夫かなと思うんだけど。
とにかく、銃をまともに使えない私にとっては戦闘がこのドローン頼りだ。掃除の時にも銃を持ち歩くアズサちゃんではないが、なるだけ肌身離さず持ち歩かないといけない。
「よし、行くぞぉ……!」
では、いざ行かんアビドス!メインストーリーVo.1『対策委員会編』の始まりだ。ホシノちゃん達に会いに行こう。
―――――――――――――――
迷った。
アホなのかな?ブルーアーカイブVo.1第一章第一話を読んでさえいれば、回避できる展開だろうに!
すっっっっっかり忘れていた。そういえば第一話で街のど真ん中で迷うと言ってくれてたのはアロナちゃんだったか。うう……シッテムの箱、なんか喋って……
お腹も空いたし喉も乾いた……もうダメかも。
出立して早々もう死にそうだ。食料と水の摂取を長期間に渡って断つ……これぞアリウス式殺法の三つ目か四つ目あたりの──
「……大丈夫?」
「!!!」
……この、透き通るような声。
あまりにも。あまりにも聞き覚えのある声に、気力を振り絞って顔を上げる。
「強盗にでもあった?」
シロコちゃん!!!
我らがメインヒロインの砂狼シロコちゃんじゃないか!やはり事象は収束するのか?ちょうど私が倒れたところに来てくれるなんて!
「あ、アビドス高等学校に用事があって来ました……助けて……」
「うちに?珍しい。立てる?」
ああ、これぞブルーアーカイブの始まり。先生が死にかけて、シロコちゃんが助ける。感動と共に、私がここにいると言う事実が不思議な感覚を伝えてくる。
「よっと。平気?」
「超元気になりました!」
「……じゃあ歩ける?」
「嘘です運んでください……」
そうして私は原作の先生のように背負われて、彼女の頼もしい背中と共にアビドス高等学校へと運んで貰うのでした。
―――――――――――――――
「わぁ!シロコちゃんがトリニティの生徒を拉致してきました!」
「拉致!?もしかして死体!?シロコ先輩がついに犯罪に手を……!」
「いや、普通に生きてる人だから。うちの学校に用があるんだって」
アビドス高等学校に到着。ああ……まさしく対策委員会の部屋だ。CGや背景でしか見れなかった場所を実際にこの目で見るというのは、何度経験してもたまらない瞬間です。
「そうなんですか?でも来客の予定なんてありましたっけ……」
「あの、私……シャーレの先生です!」
とりあえず元気よく挨拶しよう。原作通りであればすぐに忙しくなるはずだ。
「ええっ!?」
「まさか連邦捜査部『シャーレ』の先生!?」
「支援要請が受理されたんですね!あれ?でも……先生?トリニティの制服を着ておられますけど……」
「あ、その……先生代理というかなんというか。一色シルベと言います」
「代理さんなんですか?よろしくお願いします〜!」
勢いで先生と言ってしまったが先生ではないです。先生になろうとはしてたんですけどその前にこの世界来ました。
この状況を噛み締めたいところだけど。原作通りであれば、そろそろかな?
……!
来た、銃声だ!
「何!?」
「大変です!カタカタヘルメット団がまた襲撃を!」
「あいつら、性懲りも無く!」
カタカタヘルメット団……対策委員会編最初の戦闘だ。多分時系列は原作通り流れていると思う。
背負っていた荷物を下ろして解く。
「これ使ってください!連邦生徒会からの補給品です!」
「これは……!みなさん、これなら!」
「わぁ!ありがとうございます!これで弾薬の補充はバッチリですね!」
「ホシノ先輩を連れてきたよ!先輩寝ぼけてないで起きて!」
「むにゃ……おちおち昼寝もできないじゃないか〜」
「はーい、みんなで出撃です⭐︎」
ドローンを持って皆と一緒に外へと駆け出す。
シャーレとしての初戦闘だ。たとえカタカタヘルメット団が相手だとしても、油断せずに行こう!
―――――――――――――――
『カタカタヘルメット団残党、郊外エリアに撤退を確認しました!』
「やったぁ!見たかヘルメット団め!」
ふぅ...戦闘終了。まあ流石にカタカタヘルメット団に苦戦するようなことはなかった。そもそも弾薬の補給さえあれば、アビドスだけでも負けるはずがない相手だ。
相変わらず銃も爆発も怖いが、ドローンを主武器とすれば多少は後方で戦えるし、足がすくんでもそこまで影響はない。
「おつかれ〜。中々やるね〜シャーレの人」
「ん、良いドローン捌きだった」
「そ、そう……?ありがとう!」
そういえばシロコちゃんもドローン使いだった。彼女に褒めてもらえるなんて……毎日寝る前に練習した甲斐があった。一回窓割ってトリニティの寮長にバチバチに怒られました。
「とりあえず学校に戻ろうか。おじさん疲れちゃったよ〜」
『そうですね。みなさん一度学校に帰還してください』
―――――――――――――――
「改めまして、私たちはアビドス対策委員会です。私は書記とオペレーターを担当している一年の奥空アヤネです」
「私は同じ一年で会計をやってる黒見セリカよ」
「お二人は二年生のノノミ先輩とシロコ先輩です」
「よろしくお願いします〜」
「ん、よろしく」
「そして、こちらが委員長のホシノ先輩です」
「いや〜よろしくね、シャーレの人〜」
「はい、よろしくお願いします!連邦捜査部『シャーレ』所属の一色シルベです!」
ああ……目の前で、対策委員会があの部屋に集結している。なんとまあ素晴らしい眺めだろうか。守護らねばならぬ。我が命に変えても!
だが、我が命にそこまで影響力がないのが現状だ。ない知恵を絞ってどうにか原作のように進めていく作戦を練らなきゃいけない。
「シルベさん、改めてお礼を言わせてください。シャーレの支援によって、なんとか危機を乗り越えることができました」
「いえ、そんな...まだ、解決していない問題がいっぱいあるみたいですし……」
そう。この学校を襲っている問題は、戦うだけで解決できるものだけではない。
「はい……ご覧の通り、我が校は危機に瀕しています。私たちは、この学校を蘇らせるために活動する『対策委員会』のメンバーです。といっても、このメンバーが全校生徒なのですが……」
「他の生徒は転校したり、学校を退学したりして町を出ていった」
それは今朝、町を彷徨った時にも実感した。人工物はあるが、人の気配がないという違和感のある空気。これが今のアビドスの現状なのだ。
「はい、シャーレでこの学校の資料は大体拝見したので……とにかく、シャーレとしてはこの学校の問題解決に全面的に協力します!」
「わぁ!嬉しいです〜!とっても心強いですね!」
「ちょうど弾薬が尽きかけてたところだったし、良いタイミングだったよシルベちゃん〜」
「全面的にって、本当に?今までこの学校の問題は私たちでなんとかしてきたけど……」
「とりあえず当面の問題は解決しましたから。といっても、いつまたカタカタヘルメット団が攻めてくるかは分かりませんが……」
「もういっそこっちから攻めちゃう〜?」
「え?」
先生の居ない対策委員会編。正直不安だらけだけど、時間は待ってくれない。
自分で出来ることを考え続けて、無事この学校を守り抜くんだ……!
あ、この後はカタカタヘルメット団の本拠地を襲撃しました。補給が万全なアビドスの敵ではないわ!割愛!
2周年ミカガチャは4万ほどぶち込んで3天井しました。
1月のクレカ引き落とし額は見たくないです。