スクワッドが一歩、後ずさる。
「...ゲヘナの風紀委員長。正面衝突は危険だよ。」
「ど、どうしてこんなところにいるんでしょうか...!?」
ヒナちゃんが、私の前に立つ。
「アリウス分校...?いや、なんでもいい。絶対に許さない...!」
大きく深呼吸をし...訴えを続ける痛みを無視して、思考を再稼働させる。
なんでか分からないけどヒナちゃんが来てくれた...?
こ、こうなったら...ここでアリウスのみんなをどうにか捕まえるのが一番かもしれない。
アズサちゃんとサオリちゃんの戦いはできなくなるけど...それでもどうにか、捕まえた後に洗脳を解いて───
「覚悟しなさい...!」
「散開しろ!」
銃撃戦が始まる。ヒナちゃんはスクワッドからの銃撃を全く意に介さず、大薙ぎにデストロイヤーを発射する。
「ひゃあ...!?うぐ...こんな人と戦わなきゃいけないなんて、やっぱり辛いことばっかですね...」
スクワッドに命中しなかった弾丸が壁にぶつかり、煙が部屋を埋め尽くす。
「邪魔をするな!」
土煙から飛び出してきたサオリちゃんが、ほぼゼロ距離でヒナちゃんの頭に向けて発砲した。
「無駄...!」
銃弾はそのまま命中するも、彼女にダメージを与えることはない。そのままデストロイヤーの銃身で大きくサオリちゃんが吹き飛ばされた。
「...何あれ。化け物?」
「休まず撃ち続けろ。」
ヒナちゃんはその場から動かず、スクワッドの銃撃をその身で全て受け止めながら、反撃をする。
彼女がスクワッドの攻撃を避けないのは、背後に私がいるから...?そもそも全然効いてなさそうだけど...
「......!」
「ぜ、全然ダメージ入ってませんけど...ど、どうしましょう...!?うわわっ!」
ヒナちゃんの銃弾は的確にアリウススクワッドの戦力を削いでいく。
「くっ...どうする?リーダー。もう一色シルベは動けないだろうし、撤退も...」
「駄目だ。【一色シルベは必ず殺す。】」
「......」
ヒナちゃんの羽がはためく。彼女たちの体勢が崩れた瞬間、ヒナちゃんの銃が甲高い音を立て始める。
「これで終わり...!」
デストロイヤーから紫色の弾丸が扇状に発射される。一発一発がとんでもない火力の一撃になる攻撃だ。
「......ふっ!」
「リーダー...!?」
サオリちゃんが飛び出し、 弾丸の雨の中を突っ切っていく。
彼女はヒナちゃんの銃撃を受け、血を流しながらも肉薄し...
彼女に向けて、何かを放り投げた。
彼女の手には、小さな...
「くらえ...!」
「そんなサイズの爆弾で、私に勝てるとでも...!」
小型の、爆弾が─────
「ヒナ!避けてッッッ!!!」
「!?......っ!」
閃光。
大した爆発も起こさないそれは。
神秘を死へ導かんとする...光を放つ。
―――――――――――――――
「ヒナぁ!お、起きて...っ!」
「.......ぁ............」
煙が部屋に立ち込める。
「ヘイロー破壊爆弾...ゲヘナの風紀委員長に使えたのなら、上々の戦果だね。」
「...いや、寸前で直撃は避けたようだ。」
「す、すごい反射神経...でもそれで余計に苦しむだなんて、悲しいですね...辛いですね...」
最悪だ。あれは『ヘイロー破壊爆弾』
並々ならぬ耐久を持つキヴォトスの生徒。
その根幹を支える『ヘイロー』に対して...直接ダメージを与える、特別性の爆弾。
圧倒的優位も、時間も必要としない『反則』
ああ...そうだ。三章には出てこなかったが、アズサちゃんが持っていたものとは別に、四章でサオリちゃんが先生に渡したものがあった...っ!
「でももう動けない。ここでトドメを...」
「避けろ!」
ヒナちゃんが壊してくれた穴からドローンを飛び込ませ、もう一度煙を舞わせる。
息はまだある。今動かないでいつ動く...!
「...逃がさん。」
梯子は登れないので、ヒナちゃんを抱えながらドローンにしがみついて上へと運んでもらう。
穴から這い上がって廊下を駆ける。
いや、走れてなんかいない。ろくに動かない人体の動きを全部ドローンで補う。
転びそうになれば前から支え、倒れ込みそうになれば押し上げる。
ヒナちゃんだけは、絶対離さずに。
「す、すみませんが...止まってください...!」
長い一本道の廊下、狙撃がくる...っ!
ドローンを回して防ぐ...けど、その衝撃でバランスを崩す。
「ぁう...っ!」
アパートの外に、倒れ込むようにして転がり出る。
す、すぐに立たなきゃ!
ドローンで体を押し上げ...っ!まずい、また狙撃がく────!
「わぁっ!?」
ヒヨリちゃんの銃口が火花を散らすその瞬間。
倒れ伏した私の目の前に躍り出た誰かが、その銃口を撃って逸らす。
「...また増援か。」
「シルベ...流石にもう、見逃せるレベル超えてるって。」
黒いパーカーの彼女は、怒りを孕んだ声色で、呟く。
「私の友達にこれ以上手を出すなら、全員シメてやるから...!」
―――――――――――――――
「何者だ?」
「データは...いや待って。あの実力に、あの銃...確証はないけど、『キャスパリーグ』の可能性がある。」
カズサちゃんが、どうして...ここに...
「ごめん。あんまりにも毎回怪我してくるもんだから心配になって。でも来てよかった。」
カズサちゃんとスクワッドは、互いに銃を構えたまま睨み合う。
「......?」
「去年までトリニティを震わせていた伝説の不良。」
「で、伝説の不良...!?そ、そんな人と戦わなきゃいけないなんて...」
ぐっ...!た、立て...!これが、最後のチャンスだ...!
「シルベ。大変だと思うけど、その人を連れてなんとか逃げて。コイツらとは...守りながら戦える気は、しないから。」
「...ありがとう。一個だけ...約束して。」
ヒナちゃんを抱え、気合いで立ち上がる。次に倒れたら...もう立ち上がることはできないだろう。
「けほっ...彼女たちが逃げ出したら、全力で学園の方まで走って。それと...絶対、死なないで...」
「...二つじゃん。でも分かった。」
「相手が誰であろうと関係ない。邪魔者は片付けるまでだ。」
信じるしか、ない。こんなところまで助けに来てくれた、彼女の勇気と友情を...っ!
「消えろ。」
「逃げて!」
走る。走れてる?でもとにかく、前に進む...!
―――――――――――――――
シルベが走り出すと共に、戦いが始まる。
長身の女が発砲した瞬間に身をかがめ、突進する...!
「...ヒヨリ!一色シルベを狙え!」
私が開けた射線に狙撃銃を通そうとする、緑髪の狙撃手に────
散弾が割って入る!
「わわっ!?ま、また妨害ですか...!?」
「とぅ!」
「...伏兵か。」
よし。タイミングは、バッチリ!不意を突いたついでに一発くれてやる...!
「やぁっ!」
「無駄だっ...!」
私の銃撃は回避され、こちらも反撃を飛び退いて躱す。
再び膠着状態へと戻り...彼女が駆け寄ってくる。
「トリニティの守護天使!宇沢レイサ、ここに参上です!」
彼女の不意打ちによって稼いだ時間で、シルベは路地に逃げ込みその姿をくらました。
「トリニティの守護天使...!?」
「...該当データなし。」
「なんと!このトリニティの一番星を知らないとは、さては貴方たちモグリの不良ですね!」
それは毎回あんたが名乗りを変えてるせいでしょ。
「杏山カズサ!急にスイーツ食べに行こうとか言い出すのでウキウキしながら呼び出されてみたらなんですかこれは?」
「何もなければその予定だったんだけど...お願い宇沢、手伝って。私だけじゃ多分持たない。」
「...厄介だな。早々に突破して、一色シルベを追うぞ。」
アイツらがもう一度銃を構える。今度こそ本格的な交戦だ。
「宇沢、本当に危なそうだったら逃げて。」
「は、はい!大丈夫です!シルベさんには以前お世話になりましたから、ここでそのご恩を返します!」
...お願い、シルベ。なんとか逃げ延びて───!
特に接点のない推しvs推しが見られるのは、二次創作だけ!