先生の居ないアーカイブ   作:ヒオルカ

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ちょいとショッキングかもしれません。ご注意を。




結末

 

 

 

「...報告が来ませんね。」

 

スクワッドから、一色シルベ殺害の報告がない。失敗にせよ成功にせよ連絡入れるように言ってあります。

 

つまり、返り討ちに遭ってやられたか...まだ戦闘中なのか。

 

「通達を。潜伏させている、対正義実現委員会と風紀委員会用の兵力を1割、一色シルベ殺害に向かわせなさい。」

 

あれ単体での戦力がないのは確認済み。今は古聖堂に大方の戦力が集まっていますので、大した支援もないでしょう。

あの区域はアリウスが掌握した場所。そこかしこにアリウスの拠点がありますので、増援はすぐ到着できるはずです。

 

 

「ふふ...」

 

子供とは、大人の道具。どこまで行こうと、どんな立場にいようとも、一色シルベもその一つに過ぎません。

 

そう考えると...あれも『先生』の駒の一つ。案外あれが死んだとしても、姿を見せないかもしれませんね?

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「げほっ...!はぁ...はぁっ......!」

 

がむしゃらに走る。

車がどのルートを通ったかは覚えていたので現在位置は分かる。記憶を頼りに、とにかく学園へと向かう。

 

調印される時間までまだあるし、普通に走れば余裕で爆発の範囲外には出られるはず。だけど...

 

「いたぞ!」

「っ......はぁ...くっ...!」

 

行く先々に、アリウスの生徒がいる。彼女らを避けて走るのに、だいぶ時間を取られてしまう。

 

「こっちだ!撃て!」

「っぅ...!」

 

彼女たちの弾丸はスクワッドと比べれば大したことはないが、それでも痛いものは痛い。

 

でもこの痛みのおかげで、襲いかかってくる謎の眠気に争うことができているのかもしれない。

 

少しでもアリウスの生徒と距離を取るために路地裏を駆ける。

 

「ぐ......し、シルベ...!」

「あ...ヒナ...?起きた...?けほっ...」

 

腕の中で、ヒナちゃんがうごめく。よかった、意識戻って。

彼女にヘイローは未だ健在。幸いにも直撃しなかったみたいだ。

 

「...っ!」

 

前からアリウスの生徒が飛び出してくる!

 

どうにか体を捻ってヒナちゃんではなく私に銃弾が当たるように動かし、ドローンで突き飛ばす。

 

口に溜まった血を吐き出しながら、角を曲がる。やば、今ので頭の地図吹っ飛んだかも...

 

「しる、べ...!私を置いて、逃げ...て......っ!」

「...はぁ...はぁ......」

 

ヒナちゃんを強く抱きしめる。ここどこだ?どっち行ったら良いんだ...っ!

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「...遅いですね、委員長。」

 

委員長が突然車から飛び出してからまだ戻って来ません。なにかあったのでしょうか...?

 

「おい風紀委員!ヒナはどうした?」

「げ、マコト議長...委員長は今所用で少し外しています。あなたこそこんなところで何を?もうすぐ調印式が始まりますよ?」

 

ついでに万魔殿にいびられる。これはいつものことですが。

 

「チッ...ヒナは居ないのか...運のいい奴め。だが私の計画に狂いはない!キキキッ!」

 

マコト議長が訳の分からないことを言いながら何処かへと去っていく。これもいつものことですね...

 

 

 

「行政官!あの、古聖堂の警備にあたっていた風紀委員が裏口でぶっ倒れてました!背後から突然やられて、犯人は確認できていないと...!」

「はい!?もう...!なんなんですか一体...!」

 

正直完璧にうまくいくとは思っていませんでしたが...とにかく、このエデン条約締結はヒナ委員長の大願なんです!邪魔をさせるわけにはいきません...!

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「この...!」

「ひえっ!?こ、この四人組、そこいらの不良なんて目じゃないくらい強いですよ!?」

 

正体不明の四人組は、互いの弱点を補いながら攻撃を仕掛けてくる。

かつて戦ったトリニティ中等部の不良たちなんて比較にもならないほどのつよさだ。

 

「宇沢下がって!私が前を張る!」

「は、はい!」

 

でも、こっちだって負けてない!私たちだって共闘はほとんどしていないものの、お互いの戦い方は熟知している。

 

防戦だけなら、なんとか...!

 

 

 

 

「...!?うっ...!」

「ぞ、増援!?」

 

 

背後から予期しない一撃が飛んでくる。な、何...!?

 

「来たか。」

 

三人、五人...十人...!

 

ガスマスクをつけた正体不明の生徒が、そこかしこの路地から現れる。

こいつら、どれだけの戦力を...?

 

 

「あ、危ない!」

「っ...宇沢!」

 

 

一瞬意識を逸らした瞬間に撃たれた弾丸から、宇沢が庇ってくれる...!

 

 

「大丈夫...!?しまっ...!」

「行くぞミサキ!」

 

 

まずい、隙をついて二人が抜ける...!

 

 

「待てっ...!」

 

「す、すみません!ここは通せんぼさせてもらいますね...!」

「......。」

 

 

残った二人と、たくさんの生徒。これは突破できないかな...

 

「くっ...宇沢、立てる?」

「は、はい...!」

 

 

 

シルベ...きっとあの怪我じゃ、そう遠くには逃げられない。

 

 

 

 

 

どうする、どうするどうする...!

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ナギサ様、その...」

「何かありましたか?」

 

もう間もなく調印式が始まる。ゲヘナとトリニティの間で重荷となっている確執を取り除く、最後の手段。

 

ここまで辿り着くのに、多くの困難があった。沢山の人に辛い思いもさせてしまった。

だからこそ、成し遂げなければならない。彼女たちに報いるためにも...必ず。

 

「今トリニティから連絡がありまして、ミカ様がお目覚めになったようなのですが...」

「!?ミカさんが...!」

 

それは...良かった。もしかするとこのまま目覚めることはないんじゃないかという考えも頭をよぎったことがあります。

 

帰ったら、彼女とも話をしなければなりません。裏切りと疑心暗鬼が交錯したあの日々の謎を解き明かすため...

 

そして、私たちの未来のために。

 

 

「それが...」

「...?」

 

 

なんだか言いづらそうに話す彼女。一体なぜ───

 

 

 

「目覚めた途端、病院の壁を素手で破壊して一直線にここに向かったとのことです...」

「.........はい?」

 

なんて?

 

「他の派閥の方から『まだ洗脳されてるんじゃないか』とか、『本当は洗脳とかされてなかったんじゃないのか』といった意見が飛び交っているようで...」

 

 

.........

 

 

「あの、万魔殿の方が誰もいらっしゃらないのですが...」

 

 

..........

 

 

ああ、これは天罰でしょうか。こうも全てがうまくいかないとは。

 

 

「...調印式の準備を。既に必要なサイン等は済んでますので、誰か代役でも────

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

あっちにも、アリウス。こっちにも...

 

もう限界なんてとっくに超えている。血も、体力も、何もかも足りていない。

 

...あの建物があるってことは、現在地は...駄目だ。古聖堂から大して離れられていない。

もっと遠くに逃げないと────

 

 

 

 

 

「......あ」

 

 

 

 

 

背中に走る衝撃。この、威力は...

 

 

「追いついたぞ。」

「あの怪我でここまで動けるなんて...」

 

 

サオリちゃんと...ミサキちゃん...!

 

「ぐ...うあぁっ!」

 

防御に入ったドローンをサオリちゃんが弾き、ミサキちゃんの弾丸が突き刺さって...地面に倒れ伏す。

 

 

 

 

もう、立てない。

 

 

 

 

「チェックメイトだ、一色シルベ!」

「ぅぅうううっ!」

 

 

 

ヒナちゃんの上に覆いかぶさる。私が今できるのは...ただそんなことだけ。

 

 

「や、やめて...っ!シルベっ...!し、死んじゃう...!」

「...ぎ.......」

 

 

 

どうすればいい?どうすれ、ば...

 

 

 

ヘイローが軋む。

 

 

 

足は当然、腕ももう動かない。目も見え█い。全身からいろんな機能が失われ█いくのを感じる。

 

 

思考も、刈り取られて█く...!

 

 

 

 

 

いや...だ......ヒナちゃん█、殺さ█ちゃう...!あの子たちを...人殺しになんか、させた、く...な...

 

 

 

██........█......

 

 

 

........あ...█...

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

銃声が止む。

 

「...し、シルベ...?」

 

私の上に覆いかぶさった彼女の。

 

 

 

 

 

鼓動が止む。

 

 

 

 

 

「げほっ...待って...やだ、シルベ...!?そ、そんな...っ!嫌ぁっ!」

 

 

 

 

 

 

息をしていない。

一切動かない。

 

 

 

 

 

 

「シルベっ...!死なないで、お願いっ...!」

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女のヘイローが、消滅している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

一色シルベが倒れ伏し、そのまま動かなくなった。

 

 

死んでいる...いや。

 

私が殺した。

 

 

【先生を殺した。】

 

 

「っ...!」

「ようやく終わった...リーダー?」

 

人を殺した。

 

...私はアツコのためであれば何でもすると誓った。それは今でもそうだ。

 

それでも、人を殺したのに妙に現実感がない。彼女の死を目の前にした瞬間、妙に思考がはっきりとして...

さっきまで頭の中を埋め尽くしていた何かが、一切居なくなって。

 

 

 

ああ。

 

 

 

人殺しになって、頭がおかしくなっただけか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...待ってリーダー。あれ、何?」

「......?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「...何者だ?」

 

 

 

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