「せ、セイア様!?お目覚めになられたのですか...!?」
「...??」
「今は非常事態だ。トリニティの正常化を願うというのであれば、救護騎士団の手伝いでもしたらどうかな。人手は依然として足りていないからね。」
セイアちゃんの号令で、私を取り囲んでいた生徒は波が引くようにその場を去っていく。
「セイアちゃん...やっぱり、生きてたんだね。」
「私の未来視を君は知っていただろうに、私が偽装している可能性に思い至らなかったのかい?まあ、あの時の君に気付かれる訳にはいかなかったがね。」
ああ...この憎まれ口、セイアちゃんだ。
細かいことばっかり口出しして、言い方も無駄に難しくして、いつもこちらをイライラさせてくる。
...でも。
「...良くやってくれた、ミカ。これで一色シルベの、死の運命は回避されたようだ。」
大切な私の友達。
「まだお話し合いをするには、早いよね?」
「そうとも。君はまだ五体満足なのだから、罪滅ぼしも兼ねて戦いに行きたまえ。」
二人して、少し笑ってから...背を向ける。
いつも何を考えているか分からない彼女の心が今、少しだけ伝わってきた気がした。
「...?......??」
...コハルちゃんが混乱してる。
「ありがとう、コハルちゃん。今度ロールケーキでもご馳走させてね⭐︎」
「あ、えっと...?」
疑心暗鬼に陥った私たちを信じてくれた、シルベちゃんやコハルちゃん。
信じてくれた人を信じる。きっと今の私は、それで良い。
シルベちゃんにメッセージを送ってから、来た道を駆けていく。
今は信じてくれた人たちのために、戦おう。
―――――――――――――――
「こちら、緊急で作成したカルテです。」
「はい、ありがとうございます!後は救護騎士団の方で...!」
病室に担ぎ込まれる。救急医学部から救護騎士団に、引き継ぎされているようだ。
「あのぉ...なるだけ早く出発したいんだけど...」
「「「......」」」
三人に「何言ってんだコイツ?」みたいな目で見られる。ちょっと興奮するな...
「はぁ...とりあえず、ヘイローのない状態で受けた際の弾丸が二発、体内に残ってますので...それを摘出してからなら、まあ動けるでしょう。ヘイローも戻っていますし。」
弾入ってんの!?
「緊急手術ですね...!ハナエちゃん、準備を!」
「は、はい!」
救護騎士団の二人が慌ただしく準備を始める。
手術かぁ...ちょっと怖いけど、やるしかないよね...
「私は現場に戻って救助活動を続けますので、後はよろしくお願いします。」
「...ありがとう、セナさん。すっごく助かりました...!」
彼女が背を向けて去っていく。アビドスの時といい、彼女にはいつも助けられてばかりだ。
「シルベさん。」
「...はい?」
病室の扉に手をかけたセナちゃんが、こちらを振り向いた。
「既にあなたの死体は見ました。もう、必要はありませんので。」
「...!はい!」
―――――――――――――――
「ハナコ。」
「...!セイアちゃん!?」
シスターフッドの本部に足を踏み入れる。
ハナコはここで、この学園が完全に崩壊するのを、なんとか防いでくれていた。
「目が覚めたのですね...!よかった...」
「...すまない。こういった立場になることを、君は望んでいなかっただろうに。」
彼女は補習授業部に入った当時、期待を受け続けることに嫌気がさして...この学園を辞めようとしていた。
そんな彼女が今、この学園を守るため指揮を執っている。
「いえ...私にも、守りたいものができましたから。」
「...そうか。」
彼女には...補習授業部という大切な仲間ができた。きっとそれが、彼女をここに立たせているのだろう。
「後は引き継ぐ。抑えられていたフィリウス分派、サンクトゥス分派はミネ団長が解放している。君は...行くべきところがあるのだろう?」
彼女自身、ここで指揮を取ることが最善であると分かっていながらも...大切な友人を助けに行きたいと、そう思っているはずだ。
「...!アズサちゃんは...」
「まだ...無事なはずだ。一色シルベも、そろそろ手術を終えてそちらに合流できる。」
一色シルベは...きっとすぐ立ち上がるだろう。彼女はそういう人だ。
「シルベちゃん...まだ、戦うんですね...はい、分かりました。後はよろしくお願いします!」
「ああ。」
ハナコが急いで部屋を出ていく。
さて...可能な限り早く安定させて、予知夢の続きを見なければならない。
「こちらはティーパーティーのセイアだ。緊急事態につきホストの権限で指揮を取らせてもらう。全生徒は争いをやめ、指定された救助ポイントや避難場所へ───
まだ危機は終わっていないのだから。
―――――――――――――――
「...っ!」
「...何故、撃たない。」
銃を突きつける。私の弾丸をまともに浴びて倒れ伏した、サオリに向けて。
しかし彼女は...まるで抜け殻のように力を抜いている。
その姿を見て、私が考えていた...ある可能性が頭をよぎった。
アリウスは、あの大人に
「サオリ...っ!」
「......」
絶好のチャンスだ。彼女を殺さなければ、あの怪物は無限に再生する。
それでも...
洗脳が解けたのだろうか、力なくこちらを見上げる彼女を見て...一瞬、タイミングを逃してしまう。
「っ!?しまっ...!」
「......」
物陰からアツコが飛び出し、天井を撃つ。
古い建物の天井はすぐさま崩れ去り、彼女たちと私を分断する。
瓦礫に埋もれ...彼女たちの姿が、見えなくなってしまった。
「サオリ...!くっ...!」
ああ...彼女が最後までこちらに銃を向けてくれていたのであれば、これを使う覚悟が鈍ることなんてなかったのに。
私がもっと早く覚悟を決めていれば。シルベは、死なずに済んだのに...!
私の覚悟を込めたヘイロー破壊爆弾は...まだ、私の胸に抱えられたまま。
......私は。
―――――――――――――――
「ど、どうですか...?」
「...うん、動ける!行ける!」
あれから1時間ちょっと。手術が終わり、目を覚ます。
キヴォトス人の体ってば丈夫なもんだから、手術も早い。麻酔が切れるのも早い。
とにかく一分一秒が惜しいので、非常にありがたいことだ。
「じゃあ、行ってきます。本当にありがとね、セリナさん、ハナエちゃん!」
「ほ、本当に無茶しないでくださいね...!?」
「頑張ってください...!」
急いでトリニティの正門へと向かう。
友達が、生徒が、待ってる。
「...みんな。」
「シルベちゃん...」
ヒフミちゃんに、ハナコちゃんに、コハルちゃん。
みんなが、当然のように集まった。
「アズサちゃんが、一人で戦いに行っちゃいました。一人で、ずっと...居場所が違うんだって...」
「......うん。」
アズサちゃんは...スクワッドと戦っているはずだ。全ては自分が招いたのだと、そんな責任を感じて。
だけど、それは違う。そもそも、そんな責任を...生徒が負うべきではない。
「もう、私みたいな普通の学生にできることなんて...」
「それでも、放っておく訳にはいかないでしょ...!」
コハルちゃんが、声を上げる。
「立ち位置なんて関係ない!私は知ってる...!一人でいることとか、置いてかれることがすごく悲しいことだって!」
「...はい。そういうのは、寂しいですからね。」
「コハルちゃん、ハナコちゃん...」
ここから先は、彼女たちの力が必要だ。
なんてことない青春を取り戻すためには、自称平凡な彼女と、それを支える仲間たちの力が。
「ここまでずっと、ヒフミちゃんが引っ張ってきてくれたよね。あなたはたとえ平凡でも、自分たちの目指すものを諦めなかった。」
「シルベちゃん...」
「一緒に悩んで、相談して、解決できる。私たちは...それを補習授業部で学んだ。そうでしょ?」
「...はい、ありがとうございます。そうですね、学びました。私は、私に出来ることを...!」
彼女は一息吸って、宣言する。
「...アズサちゃんを助けに行きます。」
「では、みんなでいきましょうか。」
歩き出す。目指すは古聖堂だ。
「う、うん!友達を助けないと...!」
友達を助けるため。
「うん、行こう!」
言わなければ伝わらない言葉を、伝えるため!
「救護騎士団の方に救急サバイバルキットを貰っているので、皆さん持っておいてくださいね?」
「ありがとうございますハナコちゃん。ところでシルベちゃん、手術衣のまま行くんですか?絶対動きづらいと思いますけど...」
「あっ...忘れてた...」
「私の制服を着ますか?私は中に着ている水着でも構いませんが...♡」
「き、着替えてくる!大丈夫だから!」
「し、締まらないわね...!」