先生の居ないアーカイブ   作:ヒオルカ

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青春は平穏に在らず

 

 

「揺らぎはあったものの...ロイヤルブラッドの生命に支障はないか。」

 

暗いカタコンベで、神秘と恐怖が鼓動するのを感じる。

私の実験は『先生』なる存在に妨害される可能性も考えていたが...何事もなく、『成功』に近づいていると言える状況だ。

 

「実験は滞りなく進むであろう。太古の教義...その受肉によって顕現する、人工の天使──」

 

 

 

 

 

────いや。

 

 

 

 

これは......

 

 

 

 

「...混ざり物か。」

 

 

違和感に気づく。造形に、私の意図しない意味が込められている。

 

顕現しかけていた神性の怪物が、そのあり方を捻じ曲げられていく。

 

教義をその身に体現する意味。綿密に練り上げられた経典の再現性。

美しく、芸術的とさえ言えるその配置は...

 

 

ただ恐怖の複製(ミメシス)として、その権能を埋めていく。

 

 

「...これは、失敗作と言うほかあるまいな。」

 

 

この在り方は...強いていうのであれば、ベアトリーチェの『兵器なりの機能美』に当て嵌まると言えるかもしれないが...彼女に定義をねじ曲げる力はないだろう。

 

第三者の介入があったと。

 

「さて、ならば後は好きに使うが良い。招かれざる客も、此処に向かっているようであるからな。」

 

どうせ見せる相手も居ないもの。介入を許した以上、これは私の芸術たり得ない。

 

仮に『先生』なるものが居たとしても、この有様では...理解者になるどころか、私の意味すら伝わることはないだろう。

 

「......」

 

 

 

 

 

人形は、少し肩を落としながらカタコンベに背を向ける。

 

 

人工天使『ヒエロニムス』。

ゲマトリアが『崇高』に対する神秘の入手に失敗した後、別のアプローチで神秘を求めた太古の教義。

 

今その意味と色が反転し、隙間を恐怖が埋めていく。

 

 

 

……嗚呼。かの福者は果てに陥落し、傀儡となり、その証として奇跡を起こさんとせん……

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

 

「い、いっぱい居るなぁ...!」

「ゆっくり...移動しましょう。」

 

ガスマスクを付けたシスター服の集団があちこちを彷徨いている。彼女たちこそ、楽園を守護せし亡霊...『ユスティナ聖徒会』だ。

 

正直強さ的にはよく分かっていないのだけど、厄介なのは彼女たちが不死身であるということ。

補習授業部と彼女たちとの直接的な戦闘描写はないが、先生の指揮なしで戦闘を行うべきでないと思う。けど...

 

 

 

「...!見つかった!」

 

だだ、避けようにも数があまりに多い。

 

 

 

「っ...!ペロロ様、お願いします!」

 

ヒフミちゃんがフリスビー型の立体映像装置を投げる。EXスキルのアレだ。

 

ユスティナ聖徒会は意思を持って活動しているわけではないため、このようなデコイは機能する。

ただ...鎮圧対象でないと判断するのか、そう長くは引き付けておけないけど...!

 

「こっちです!此処をくぐれば、聖徒会も追いかけてこれないはず...!」

 

愉快なメロディを奏で始めたペロロ様に群がる聖徒会を尻目に、不安定な足場を乗り越えて進む。

 

っ...ダメージが治りきってないせいか、ちょっとふらついて───

 

 

 

「...うわっ!?」

「シルベ!?」

 

 

 

足場が一つ、崩れた...!

 

 

 

「...!シルベちゃん後ろ!」

「っ!」

 

 

咄嗟に身を屈めたその真上を、弾丸が通り抜ける。

せ、聖徒会がもう追いついてきたのか!

 

時間がない…!

 

「みんな、先に行って!」

「...!そんな、嫌です...!」

 

ただでさえ、原作でもミサイル着弾からどれくらいの時間が経っているか分からない。なるべく早く駆けつけないと...!

 

ドローンを構える。なるべくアイツらを遠くへ吹き飛ばしてから、迂回できる道を探して───

 

 

 

 

「......!」

 

 

 

 

銃声。

 

一発の弾丸が、聖徒会のスナイパーライフルを弾き飛ばす。

さらに別方向から弾丸の雨が降り注ぎ...聖徒会が倒れ伏した。

 

だ、誰が───?

 

 

 

 

 

 

「ふぅ...久しぶりに撃ちましたが、案外体は覚えているものですね。」

「シルベさん、ご無事ですか?」

 

 

 

 

 

瓦礫の影から現れた、二人の少女は...

 

 

 

 

な、ナギサちゃんにサクラコ様!?

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

 

「...ここね。」

 

「......」

 

シルベから貰った地図を頼りに、目的地へと辿り着く。カタコンベの内部構造が大まかに描かれた地図。

 

 

 

「わお、正義実現委員長に風紀委員長だなんて...豪華なメンバーだね⭐︎」

 

「......」

 

 

 

一度目の作戦が成功した後、他のメンバーは地上で怪物の対処にあたり、私はこちらで特別な作戦に参加するよう伝えられている。

 

「うぁぁぁあああ...?」

 

「......」

 

 

 

 

 

でも。

 

 

 

 

 

「それで、あなたも頼まれたの?陸八魔アル。」

 

 

 

 

 

 

どうして私がこんなメンバーに混ざってるのよぉぉぉおおおお!?!?!?

 

 

「ふ、ふふふ...もちろん私は彼女に依頼を受けてここに来たのよ。さ、最強のアウトローの力を借りたいって...ね?」

 

「誰?この子。」

「きひぇええええええ!」

 

 

おかしいでしょう!

正義実現委員会のトップと風紀委員会のトップよ!?

それにあの人ティーパーティーじゃない!?そもそもティーパーティーの人って戦えるのかしら...?

 

 

「...!ここの扉の先、圧力を感じる。油断しないように。」

 

わたわたしてる間に、何かありそうな扉へと辿り着く。何よ圧力って!なんも感じないけど!?

 

 

「ふ、ふふ...何が来ようと関係ないわ。」

 

 

...ああもう、なんでも良いわよ!一応全員味方みたいだし、すぐに片付けて報酬貰って…一刻も早くこの場から逃げてやるんだから!

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

「シルベさん。ここは引き受けますので、目的地へ向かってください!」

「な、ナギサさん...!」

 

 

まさかこの二人が助けに来てくれるとは!原作では事態が解決するまで気絶していたはずだけど...

えっと、あれか!古聖堂の爆弾を除去したから、受けたダメージが軽減したのか...!

 

でも、ナギサちゃんって戦えるのかな?ここにはL118榴弾砲はないし...

 

「で、でも...避難していた方が...!」

「シルベさん。」

 

ナギサちゃんが振り返って、微笑みかけてくれる。

 

「私たちはあなたたちから多くのことを学びました。」

 

「あなたが今走っている理由を私は知りませんが、私は信じることにします。私たちに信じる心をくれたあなたなら、きっと未来を切り開いてくれるのだと。」

 

 

 

彼女は私の手を握る。

 

 

 

「行ってください、シルベさん。トリニティを...お願いします。」

 

「...!」

 

 

伝わってくる。

疑心暗鬼の闇の中にいた彼女...その内から一歩と外へ踏み出す勇気が。

 

「...はい、お願いします!ナギサさん、サクラコさん...ありがとう!」

 

不安定な足場を乗り越えて、補習授業部と合流する。

 

 

 

アズサちゃんのところまで、あとちょっと...!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...よろしいのですか?怪我もあることですし、どこかに隠れられたほうがよろしいのでは?」

 

「怪我で言えばサクラコさんも同程度でしょう。大丈夫です、私も戦いますよ。」

 

 

ティーパーティーとシスターフッドのトップが、誰も知らぬところで肩を並べる。

 

 

「あなたこそ、大丈夫なのですか?あの敵は───」

 

「ええ、ユスティナ聖徒会...シスターフッドの前身。」

 

 

 

歴史に残らない、共闘。

 

 

 

 

 

 

 

「シスターフッドの代表として、先輩方に挨拶をしないままでは...失礼ですので。」

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

「...アズサ。」

「私は、サオリを止めてみせる。刺し違えてでも。」

 

崩れた古聖堂の跡地で、スクワッドと対峙する。

混乱は至る所に広がっている。今ここでサオリと決着をつける以外に、道はない。

 

「お前にそんなことができるのか?この地獄の苦しみを、耐えることができるとでも...?」

「たとえもう、あの世界に戻れないとしても...人殺しになったとしても...!」

 

互いに銃を向ける。勝算は薄いが、ヘイロー破壊爆弾さえ当てられれば...!

 

「私はもう人殺しだ...!ならば行くところまで、行くしかないんだ!」

「サオリ...っ!」

 

 

 

同時に駆け出す。

 

 

 

両者の銃撃は的を外し、お互い岩陰に隠れ込む。

この位置は...

 

「くっ...!」

 

やはり一箇所はダメだ!圧倒的に相手の数が多い。隠れつつも場所を転々としなければ、すぐに射線を通されてしまう...!

 

「なっ...!ユスティナ聖徒会まで...!」

 

いつのまにか背後に出現していた聖徒会の弾丸を避けるため、大きく回避行動をとる。

 

「終わりだ、アズサ...!」

「しまっ...!」

 

隙をついたサオリの銃撃で後方に大きく吹き飛び───

 

 

 

 

...?

 

 

 

 

誰かに、受け止められる。

 

 

 

 

 

「...なんだ、お前は。」

 

「普通の、トリニティの生徒です。」

 

 

 

 

ひ、ヒフミ...!?

ヒフミが私を受けて止めてくれた?よくみれば…ハナコにコハルも居る。

 

だ、ダメだ!こんなところに普通のみんなが来てしまったら、し...シルベみたいに...っ!

 

 

 

「ヒフミ、すぐに離れて─────?」

 

「や、アズサちゃん。」

 

 

 

 

...?

 

 

 

「し、シルベ...?」

「...?どしたの?」

 

どこからどう見ても、シルベだ。生きている...!

サオリが勘違いを?しかし、彼女の観察眼でそれは...

 

 

「!?...な、何故だ...!何故お前は、生きている!?」

「んー...誰かさんが手加減してくれたんじゃないかな?」

 

 

...いや、なんでもいい!シルベが生きているのなら、なおさら彼女たちをここに居させるわけには...!

 

 

「みんな...ここはヒフミみたいな、普通の人が来るべきところじゃ...!」

「はい、確かに私は平凡です。先日見せてくれたガスマスク姿が、本当のアズサちゃんなのだと。そのことも理解しました。」

 

 

 

 

「でも!アズサちゃんは一つ、大きな勘違いをしています!」

 

 

 

 

!?

 

「今ここで、私の本当の姿をお見せします!私の正体、それは...!」

 

 

 

 

 

 

「覆面水着団のリーダー、ファウストです!!!」

 

 

そう宣言して、ヒフミは『5』と書かれた紙袋を被った。

 

 

 

 

 

...え?

 

 

 

 

......え?

 

 

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