先生の居ないアーカイブ   作:ヒオルカ

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ブルアカオンリーに初めて行ってきました。あれは...いいものだ...



効率的な襲撃

 

 

最後の弾丸が、彼女に吸い込まれる。

 

「う...くっ...」

「もう終わりにしよう、サオリ。」

 

一対一で撃ち合った彼女の銃さばきは、あまりにも精細を欠いていた。

こちらの急所を正確に狙った銃口が、発砲の直前にブレる。

 

「アズ、サ...」

「......」

 

力尽きて膝をついた彼女に、マスクの割れた少女が寄り添う。

 

「...私たちの負けだよ、アズサ。」

 

──!

 

「だ、ダメだ姫!喋ると、彼女が───!」

「大丈夫、もう終わりだから。」

 

アツコはこちらに向き直って、問いかけてくる。

 

「アズサはきっと、気づいたんでしょう?これが私たちの憎しみなんかじゃないってことを。」

 

嬉しそうに、悲しそうに...久しく聴いていなかった彼女の声が、私の心を揺らしていく。

 

「だからサオリ...逃げよう。」

 

彼女がサオリの手を取って、肩を支える。

 

「この場から、アリウスから...私たちのものじゃない、憎しみから。」

 

スクワッドが...歩き出す。

 

「ま、待って...!」

「アズサ。」

 

ゆっくり振り向いて...アツコは少し、微笑んだ。

 

「あなたはあなたの居場所を見つけた。だから...」

 

 

「どうか、幸せに。」

 

 

彼女たちの姿が、消えていく。

 

これから、スクワッドはどうするのだろう。今彼女たちを追って、私に何ができるのだろうか。

 

 

 

彼女たちも、自分の居場所を見つけることが...

 

 

 

 

 

 

......!?

 

 

今の、銃声?

 

 

微かだけど、カタコンベの外から...!

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「はぁっ...はぁ...」

 

立っているのもやっと。もはや銃を持ち上げる力すら残っていない。

 

だけど...

 

「ふぅ...何とかなった、かな?」

「お、終わったの!?」

 

一体何発の銃弾を叩き込んだだろうか。

倒れ伏す気配を見せなかった怪物は、呻き声を上げながらその肉体を崩壊させていく。

 

勝っ...た......

 

「大丈夫〜...な訳ないか、よっと。」

 

小鳥遊ホシノに、倒れ込みそうなところを支えられる。

 

「...小鳥遊ホシノ。」

「ん?」

 

外はどうなっただろうか?風紀委員会は?ユスティナ聖徒会は?シルベは…

気になることはいくつかあるけれど、流石に体に鞭を打ちすぎた。

 

次意識を失ったらいつ目覚めるか分からない気がするから、今のうちに言っておく。

 

 

 

「『先生』に、会った。」

 

 

 

「!?...どんな、人だった?」

 

どんな人、か...

 

「只者ではなかった。身体能力は大したことないけれど、戦場の全てを見透かしているような...それに。」

 

短い時間だったけど、彼と話した時のことを思い出す。

 

「誠実そうな、人だった。シルベを危険に晒していることを...とても、悔やんでいたわ。」

「...そっか。」

 

彼女の表情を窺い知ることは、できない。

 

力が抜ける。

 

「...そう、だよね。だってあのシルベちゃんの、先生なんだから。」

「......」

 

 

 

私の意識はとうとう、深い暗闇へと落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...!?こ、この気配...っ!」

 

 

「...?えっと、ティーパーティーの人、どうかしたの...ってうわ!?壁壊しながらすごいスピードでどこか行っちゃったわ...」

 

「...うああ?」

 

「...正実の委員長、全然驚いてないわね...トリニティの人ってみんなそうなのかしら?」

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「ちょ、ちょっと!?し、シルベの仲間なんでしょ!?何してるのよ...!」

 

いつのまにかそこに現れてシルベちゃんを撃った少女は、意識を失った彼女を奪い去る。

今の銃撃...恐らくですが、最低でもツルギさん以上の実力者...!

 

「...シロコちゃん、じゃないですね...!?あなたは一体...!」

「ヒフミ...懐かしいね。」

 

彼女は何の気なしにそう呟く。全てがどうでも良いと...そういった風に感じられます。

 

そして...

 

銃口を、ぐったりとして動かないシルベちゃんの頭に向け──!

 

「や、やめて下さい!」

「......」

 

膠着状態。

トリガーにかかっている彼女の指先は...

 

しかし、いつまで立っても引かれることはなかった。

 

 

「...やっぱりダメだね。外の私が殺したら、この世界の証明を後押しすることになる。」

 

 

彼女がそう呟くと、銃口が下される。世界の、証明...?

 

とにかく、すぐにシルベちゃんが殺されることはないようです...今は情報を──

 

「なら、この世界の人に殺してもらうしかない。」

 

...!

彼女の背後に、何か...ゲートのようなものが現れました。

一体どこに繋がっているのか...

 

「ま、待って──!」

「...っ!!」

 

視界の外から弾丸が飛び込んでくる。この弾は──

 

「シルベ!」

 

アズサちゃんが戻ってきてくれました。ですが、それでも...

 

「アズサちゃん!し、シルベちゃんが...!」

「あなたは...?とにかく、シルベを離して!」

 

「......」

 

彼女は無言で、シルベちゃんと共にそのゲートを潜っていく。

 

「...っ!」

「アズサちゃん...!?」

 

彼女が潜って閉ざされようとしたそのゲートに...アズサちゃんが、飛び込んだ。

 

「あ......」

 

 

 

そうして、その場には元から誰も居なかったかのように...三人の姿はかき消えてしまいました。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

...なんだ、あの少女は?

予知夢には居なかった...つまり、また未来が変わったということ。

 

あの現象に属する何かなのだろうか?とにかく...彼女の位置を探って、誰かに伝えなければ...!

 

 

彼女は特殊な力で移動を繰り返しながら...カタコンベを深く進んでいく。

 

 

 

経路を見るに...あの、ゲマトリアの元か!すぐに誰かに知らせ───!

 

 

 

 

『どうやら、ネズミが潜り込んでいるようですね?』

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「チッ...!」

「早すぎるね...」

 

アズサに別れを告げた後、4人で脱出を図る。

しかし用意していた脱出経路には、既に多くのアリウス兵が配置されていた。

 

「動くな。ロイヤルブラッドを渡してもらう。」

「...随分、手が早いな。」

 

傷だらけの私たちが逃げられたのは、ほんのわずか。

気がつけば...包囲されてしまっている。

 

 

「も、もう終わりですかね...全然逃げられませんでしたけど...」

「......どうかな。」

 

 

アリウスの兵力がこんなにも残っていたとは。

これだけ居れば地上の戦闘で増援として出すこともできたはずだが...既に、私たちは見捨てられていたということだろう。

 

...銃を握りしめ、もう一度地面を踏み締める。

このくらいの兵力であれば、なんとか突破して───

 

 

...?

 

 

 

なんだ、あれは?

 

 

 

シスター服にガスマスク...ユスティナ聖徒会?

 

いや、所持している武器も格好も違う。それに...

 

 

 

 

あまりにも格の違う、威圧感が───

 

 

 

 

 

 

「皆散開しろッ!」

 

 

 

 

 

その怪物の両手にある大型の銃器が、私たちに向けて光を放つ。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

突如気配もなく現れた少女によって、シルベちゃんが攫われてしまいました...

それを追って、アズサちゃんも...

 

「ど、どうしたら...!彼女はどこへ行ったんでしょうか...!」

「は、ハスミ先輩に連絡して捜査を...!」

 

今は地上も混乱しています。正義実現委員会もすぐには動けないでしょうし、何か手立てを考えなければ...

 

...あれはまだ使えるでしょうか?

 

「...!みなさん、これを見てください。」

 

携帯端末を取り出す。どうやら無事機能しているようですね。

 

「これ、位置情報?」

「はい。彼女の持っている発信機のものです。」

 

トリニティを出発する前にこっそりと、彼女に渡した医療キットの中に入れておいたもの。

 

「な、何で発信機なんて...?」

「実はシルベさんが元々持っていたものなんです。2個入りの発信機入りブレスレットのようで...今一個は何故か先ほどのアビドスのセリカさんが、もう一個はシルベちゃんが持っています。」

 

補習授業の期間中、偶然見つけたこの発信機の電波帯を覚えておいたのが幸いでした。ですが...

 

「カタコンベの中は、奥に行けば行くほど電波が悪くなります。一度電波を失ってしまえば、再度捉えることは難しいでしょう。」

「わ、分かりました。ならすぐにカタコンベに...うわっ!?」

 

銃撃...!

 

あれはユスティナ聖徒会!?

戒律の矛盾によって、新しく発生することはなくなったはずなのに...!

 

「ひゃあっ!」

「っ...!」

 

それに、混乱して互いを攻撃することもない。これは一体...!

 

混乱するばかりの私達に襲い掛かろうとしたユスティナ聖徒会は...不意の一撃で薙ぎ払われた。

 

「っ...!?浦和ハナコ...!シルベちゃんは!?」

 

「...!ミカさん!」

 

カタコンベの入り口から、ミカさんが飛び込んでくる。

 

「なんか今、凄い嫌な気配がして...!」

「シルベさんが攫われました!ワープのような能力を使う少女で...!」

 

 

彼女の助力で一時的に押し返すことができたものの...敵の数は一向に減る気配を見せない。

端末に表示されている電波は、どんどん弱くなってきている。

 

ここでユスティナ聖徒会を相手にしたところで何も解決はしない。

ここは...これが最良の選択肢でしょうか。

 

 

 

「ミカさん!このマーカーがシルベちゃんの現在地です!彼女をお願いします!」

 

携帯端末をミカさんに手渡す。

 

「発信機...いいの?私に託して。」

 

「はい。調印式の際...あなたがシルベちゃんを助けてくれたのだと、セイアさんから聞いています。ですので...あなたを信じます。」

 

「...分かった。任せて、浦和ハナコ!」

 

そう言うと彼女は包囲をこじ開けて、再びカタコンベに潜り込んで行く。

 

「...今です!」

「やぁっ...!よし、こっちよ!」

 

ヒフミちゃんがデコイで注意を引いた瞬間に、コハルちゃんが包囲の穴を開け...私たちも抜け出す。

 

あとはトリニティに戻り、増援を要請するほかありません。

 

 

どうか...シルベちゃんをお願いします、ミカさん、アズサちゃん...!

 

 

 

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