あけましておめでとうございます。
もはや誰も覚えていなさそうなこの小説ですが、エタったという悲しみの記録を残したくないがために更新再開いたします。
前書きで長々語ってもアレなので、その辺は後書きに。
とにかく、めっっちゃすみませんでした!!!!!
「やぁッ...!」
もう何度目のことか、渾身の一撃を怪物に叩き込む。
しかしその聖女は身体をよろめかせるだけで...すぐさま両手に携えた大型の銃火器で反撃を仕掛けてくる。
錠前サオリを行かせてからどのくらい経っただろう。彼女は果たして本当に...シルベちゃんを助けてくれるだろうか?
「ああ、不安だなぁ...!」
だってあの子は一度シルベちゃんを撃っている。彼女を信じきれているかと言われれば、それは嘘になる。
でも、カタコンベの構造に一番詳しいのは彼女だ。
...シルベちゃんは。
不安だったかな、私に手を伸ばしたあの時。
錯乱した私に向かって、自分を狙う銃口に向かって駆け出したあの時。
「アリウスの生徒に、ユスティナ聖徒会まで...」
不安だったに決まってるよね。前に一度攻撃されて...挙げ句、手を伸ばしている最中にだって撃たれたんだから。
そんな彼女が教えてくれた、思いもしない道。
「.....」
信じたい。
どれだけ不安だったとしても、彼女にお手本を見せてもらったから。
だから...
サオリ。私はあなたを、信じてみたい。
「ここから先は、進ませないよ。」
―――――――――――――――
磔にされたアツコちゃんと、バルバラを2体も従えたベアトリーチェ。
絶望渦巻くバシリカの奥深くで、私の前に立っているその子は...災厄の狐、狐坂ワカモその人だった。
「...ワカモ、さん?」
「はぁ...」
彼女は気だるげに息を吐く。
どうして、彼女がこんなところに?
記憶ではエデン条約編に彼女の出番は無かったし、こんなところに来るような理由だって全く思い付かない。
しかしその麗しいセーラー和服に、キヴォトスでは珍しい銃剣。
そして彼女のキュートな素顔を覆う狐の面...どこからどう見ても、ワカモちゃんが目の前にいる。
「一色シルベ。疾くお逃げになってください。もっとも...いたぶられるのが趣味だというのであれば、止めはしませんが。」
「うぇ!?は、はい!」
状況が分からず呆然とする私を、彼女がせき立てる。
なんだかよく分からないが、どうやら味方をしてくれるみたいだ。
彼女には逃げろと言われたけど...
この千載一遇のチャンスを逃すわけには行かない!
「...よし!」
「!...小癪な。」
ベアトリーチェとのお喋り中に、気づかれないようゆっくりと移動させていたドローンで...アツコちゃんを縛る蔦のような何かを引き裂く。
「はっ...!」
十字架から落下するアツコちゃんを受け止めるため、全速力でベアトリーチェの横をすり抜けにかかる!
「無意味な真似を...!」
「まったく...」
すれ違いざまに伸ばされた手は、またもやワカモちゃんの銃撃によって弾かれた。
振るわれた爪は私に届くことなく...そのままアツコちゃんへと手を伸ばす!
っ...!よし!キャッチ成功!
「ありがとうワカモさん!」
「無謀な...本当にそういった癖でもお持ちなのでしょうか?骨が折れます。」
腕に抱えたアツコちゃんは、気絶したまま。
ヘイローは消えているけど...息はしている。多分大丈夫。
「では、今度こそ逃げてくださいませ。足手纏いですので。」
「えっと...」
ワカモちゃんが跳躍し、再び私とバルバラの間に割って入る。
彼女をここに置いていっていいものか?正直彼女の戦闘能力はよく分かっていない。強いのはそうなんだろうけど、バルバラ二体相手は...
「...わ、分かった、ありがとう!危なくなったらすぐ逃げてね...!」
しかし信じる他に選択肢がない。少なくともアツコちゃんを抱えた私がここに居て、役に立てることはない。
とにかく彼女を安全なところに...っ!
────────────────
「あなたは確か...百鬼夜行連合学院の指名手配犯でしたか?どうして私の邪魔などするのです?」
「......」
本来その場にいるはずのない少女は、ただ怪物と対峙したまま佇む。
「この私が作り上げた神聖なるバシリカに、無遠慮に立ち入られては困りますね。あなたには──」
「怪物。私はお前に関して一切の興味など無いのです。」
銃剣をくるりと一回しして、少女は躊躇いなくその怪物に照準を合わせ...呟いた。
「ただ私は...愛するあのお方のために、戦うだけ。」
その声色から、目一杯の愛おしさを滲ませながら。
「あのお方...まさか。まさかお前も先生の手駒ですか!」
「先生...?あのお方に関して何かご存知なら、少しだけあなたに興味を持って差し上げてもよろしいですが。」
ベアトリーチェは控えていた二人の聖人を差し向ける。
強大な神性からくる威圧感を前にしても...彼女は一切引くことはない。
「いえ、今はロイヤルブラッドの確保が先決。一色シルベは私が直接手を下しましょう...!バルバラよ、その小娘を始末しておきなさい!」
「さぁ、私の愛を証明する時です。愛しいあなた様。」
───────────────
アツコちゃんを背負い直し、迷宮のようなバシリカを進む。
最後に休んだのは一体いつだったか、体のあちこちが悲鳴をあげているなんてレベルじゃない。まさかぶっ通しでエデン条約編3章と4章をやるハメになるとは。
おまけに気絶させられてここにきたものだから、今このバシリカに誰が居るのかも分からない。
スクワッドは今どうなった?ヒエロニムスは倒せた?ミカちゃんは...?
「はぁ...っ...」
闇雲に通路を駆け抜ける。
バルバラやベアトリーチェが追ってくる気配はない。ワカモちゃんは大丈夫かな...
「...う......」
「!あ、アツコさん...!目、覚めた...っ?」
背中でアツコちゃんが身じろぎをした。なんとか目を覚ましてくれたらしい。
「あなたは...一色シルベ?私を、助けてくれたの?」
「けほっ...体とか、大丈夫?なんとか逃げ出すから、もうちょっと...」
...!
アリウスの生徒がいる!
「っ!」
「いたぞ、一色シルベだ!ロイヤルブラッドも居る!」
背負っていたアツコちゃんを前に抱え直し、咄嗟に曲がり角を曲がる。
カタコンベの地図は...ダメだ。この辺りは近年作られたのか、古書館にあったものには記載がない...!
「...どうして?私たちはあなたを殺そうとしたのに。」
「あなたたちの意思じゃないでしょ?大丈夫、全部わかってるからさ...!」
曲がり角を駆使してなんとかアリウス生徒たちと距離を取る。
ここの構造は複雑で、どうやら彼女たちもそこまで熟知はしていないようだ。逃げる側としては案外いけるかもしれない。
何度目かの扉をくぐると、広い部屋に出る。
長い椅子がずらっと並び、壇上にはピアノが...
ここは...ミカちゃんがバルバラと戦った聖歌隊室か?
しばらく息を潜めていると、アリウス生徒たちがドタドタと別の通路へと走る音が聞こえてきた。
撒けた...かな?
目が覚めたばかりのアツコちゃんもいることだし、ちょっと休憩しないと...
「よっ...と、けほっ...アツコちゃん、大丈夫?体調とか....」
アツコちゃんを降ろして様子を見る。
ただ気絶させられていただけならまだいいけど、アイツに何かされていないとも限らない。変な術をかけたり、色彩に触れさせるとか...
「私は大丈夫。それよりあなたの方が酷い怪我よ。今すぐ私を置いて逃げた方がいい。」
「このくらい...大したことないよ、平気平気。」
私が気絶している時間はどのくらいだったんだろう。
サオリちゃんたちがアツコちゃんを諦めることはないだろうけど、そもそも先生無しで追っ手から逃れられるかどうか...
とにかく誰かの手は借りたいけど、現状何故か居たワカモちゃん以外に頼れる人がこのカタコンベに足を踏み入れているかも分からない。
「ちょっと休憩したら、出口を探そうか。なんとか地上へ...」
「...無理だと思う。彼女はここの全てを把握しているから。」
それは...確かにそうだ。ベアトリーチェは原作でも、裏道から侵入したスクワッドを把握していた。
「何か...何か方法はあるよ...!きっと...っ!」
「ねぇ、シルベさん。」
焦る私の手を、アツコちゃんがギュッと握った。
「私たち、あなたに酷いことをしたよ。いや、あなたにだけじゃない。トリニティに...ゲヘナに...キヴォトスにとって、私たちは許されない存在。」
手に伝わる熱が、強まる。
「何度も諦めた。その度にサッちゃんたちに手を引かれて...そして今、あなたが私の手を取っている。」
その純朴な瞳が問う。
「ここまで来ても、あなたは...あなたたちは、私に未来があるって言うの?」
未来?
────────────────
『何?急にいい子ちゃんぶってさ。今からお勉強したってFランしか行けねーよ。』
未来。
『だから言ったじゃないか。まあ滑り止めは受かったみたいだし、進学率は平気だな...』
将来。
『寝不足?なんでもいいけどちゃんと働いてよね、給料貰ってんだから...』
夢。
『うーん...ちょっとこのまま試験は厳しいかもしれないな。できればもう少し勉強時間を取って──』
未来の私。
あの人の背中を追いかけて、それで。
いつか手が届く?
─────────────────
「あるよ、未来。」
「......」
あるとも。
彼女の細い手を強く握り返す。
「子供の頃にどんな過ちを犯したって。」
バカなことをして、取り返しがつかなくなって、後悔して。
暗雲の中で駆けずり回っていたとしても。
「目指すべき背中さえあれば、いつだってやり直せる。」
ああ、ミカちゃんの言葉を借りるならば。
彼女たちに未来がないとすれば、私の未来もない事が証明されるのだ。
だから───
「なら...まだ私たちを、スクワッドを信じてくれる?」
「...!」
すみませんでした!!!
約一年半です。この間にニートになり、また有職者になり...天地のひっくり返る日々でした。
多くの方の期待に添えず、更新があんまりにも長く止まってしまったことを、再度お詫びさせていただきます。
そして気まぐれにもこれを開いてくださった方、もしくはノアのように完全記憶能力をお持ちでこの小説のことを頭の片隅に置いてくださった方に大いなる感謝を。
残念ながらこれからもそこまで定期的に更新できるかというと微妙ではありますが、それでもエタで終わることだけはしない方針でございます。
更新できていない間も、返信は出来ていませんが応援の感想をいただきました。全てあまりにも身に染みております。泣きます。
ここまで読んでくださっている寛大なるお方、これからも良ければこのアホに付き合っていただけると非常にありがたいです。
また、文字書きを再開するにあたってリハビリとして書き上げた二作に関しても、よろしければ読んでやってください。完結済みです。
公安局長 合歓垣フブキ 全15話
https://syosetu.org/novel/352118/
私はノア 短編 (ちょっと閲覧注意)
https://syosetu.org/novel/357622/
長々とすみませんでした。
今後とも、どうかよろしくお願い致します...