先生の居ないアーカイブ   作:ヒオルカ

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一年半ぶりに更新した前話で、はちゃめちゃに沢山のお声をいただきまして横転しております。(最新表現)
待っててくれた神様たちよ、ありがとう...




アリウス・スクワッド

 

乱入者の始末はバルバラに任せ、迷宮のように入り組んだ地下を迷うことなく移動する。

 

「邪魔が入りましたが...このバシリカにいる限り、私から逃れることなどできません。」

 

先程は儀式や一色シルベに集中していて七囚人の接近に気付きませんでしたが、追うとなれば簡単なもの。

 

あの2人は聖歌隊室で息を潜めているようです。

 

一色シルベの反転...観察してみたくはありましたが、それでロイヤルブラッドを逃してしまっては本末転倒です。

あれに大した戦闘能力はありませんし、次は一捻りで殺してしまいましょうか。

 

 

ドアを開けると、身を寄せる2人の逃亡者の姿。

 

 

「ベアトリーチェ...!ユスティナ聖徒会も...!?」

「くぅ...っ!」

 

もはやこの力も私の意のまま。一瞬にして数十体ほどのユスティナ聖徒会が聖歌隊室を埋める。

 

「さあ、鬼ごっこは終いです。あなたたちの生には何の意味も無く、ただ虚しいだけ...そうでしょう?」

 

 

 

──────────────────

 

 

 

広い聖歌隊室で、数十体のユスティナ聖徒会に囲まれる。

その向こう側で嗤う、邪悪な大人...ベアトリーチェ。

 

「...どうして。」

「はい?」

 

何故、こんな大人が。

 

「どうしてあなたは、そんな大人になったの?子供を利用し、騙し、使い捨てるような...そんな大人に...!」

 

「...くだらない質問過ぎて、欠伸が出てしまいます。逆に、これほどまでに利用しやすく、騙しやすく、使い捨てやすい存在があるというのに...何故使わないのですか?」

 

心底理解できないといったような眼で私たちを見下ろす彼女。

 

...私は。

 

もし、私が先生と出会っていなかったら。

 

私もあんな眼をするような大人になっていただろうか。

それとも、とっくに打ち捨てられて...

 

「まあ、あなたのような子供には分からぬことです。何せあなたは使われる側ですから。」

「っ...あなたのような大人が居るから、子供たちの未来が暗くなる...!」

 

いつのまにか、私の手に力が籠る。

 

「子供の未来など必要ありません。子供という存在は等しく、大人に使われるだけのモノ。あなたも含めて、私の供物になるための存在なのです。」

「違う!そんな考えじゃ世界は回らない!次の世代に、何も残らない!」

 

あと、少し...

 

「子供が世界の未来など考える必要はありません。」

「さっきから子供、子供って...!私は...!」

 

合図が。

 

 

 

 

「私はとっくに二十代だよ!!!」

 

 

「...は?」

 

 

 

 

 

「今だ!」

「っ!?」

 

惚けたベアトリーチェの頭上から、三つの影が襲いかかった。

 

 

 

 

─────────────────

 

 

 

 

数分前のこと。

 

「これ。」

「これは...無線機?」

 

アツコちゃんに渡されたのは、無線機だ。

もしかするとこれはアリウススクワッドの?

 

「さっきからノイズがブレてる。これは近くの通信対象があるって証拠。」

「...!つまり...スクワッドの誰かが?」

 

彼女たちが近くに来ているってことだ。

...当然か。あの子達が生きているのなら、アツコちゃんを諦めるなんてことはしない。

 

「私を...私たちスクワッドを信じてくれるなら、お願い。」

「...うん。」

 

気配がする。アイツが来る。

 

「私たちと一緒に、戦って...!」

 

 

 

──────────────────

 

 

 

「なっ!?」

 

ドアを蹴破り、聖徒会の集団へ背後からサーモバリック爆弾を直撃させる。

 

「まさか、サオリ...!」

「私だけではない!」

 

爆風から逃れた聖徒会が私に銃を向け、しかしその引き金が引かれる前にそれぞれ強襲を受けた。

 

間違いない、ヒヨリとミサキだ。

 

「ま、間に合いましたねぇ...」

「まったく...姫もリーダーも、無茶するね。」

 

二人ともボロボロだが...しかし、こうして集まった。

バシリカの奥深くへ潜るにつれて姫の無線が繋がるようになり、同時に二人とも連絡が取れるようになった。

 

皆...姫の元へ向かっていたのだ。

 

「姫!」

「サッちゃん...みんな...」

 

聖徒会を蹴散らし、姫へと駆け寄る。

 

「小癪な!」

 

「リーダー!後ろ!」

「ッ!?」

 

マダムが再び呼び出した聖徒会が、私の後頭部へと銃を向けた。

 

「よっ!」

 

その銃口を、ドローンが横から弾き飛ばした。

 

「...一色シルベ。」

「助けてくれてありがとう。サオリさん。」

 

目の前で微笑みかけてくる彼女。

出血が酷い。誰が見たって、立っているのが奇跡のような状態だ。

 

その傷のうち、一体幾つが...私の付けたものだ?

 

「っ...有象無象が集まろうと、無意味なことです!」

 

ベアトリーチェが腕を振るうと、そこから湧き出たのは...

 

「バルバラ...!?さ、三体目...っ!」

 

...あの怪物。

私たちが束になっても敵わなかった...大型火器を携えたシスターが、構築されていく。

 

 

一色シルベと...ようやく正面を向いて、話す。

 

 

「一色シルベ。無線であなたの話を、聴いていた。」

「...うん。」

 

彼女は私と真っ直ぐ向き合って、話を聞いてくれる。

よくもまあそんな勇気があるものだ。自分を撃った相手に対して。

 

「私はこれまで...間違い続けてきた。スクワッドの皆を導くこともできず、あなたにまで引き金を引いた。」

「サオリさん...」

 

こんな私に救いなど無い。あってはならないと...そう思っていた。

 

「やり直せると、あなたは言った。本当に...これほどまでに罪を重ねた私でも...そう思うか?」

「うん。」

 

一瞬のためらいもなく、彼女は頷く。

 

「サオリさん。あなたは悪い大人や育った環境...色んな原因で沢山の間違いをしたかもしれない。でもね。」

「......」

 

 

「あなたはアリウススクワッドのみんなを守りたいって気持ちを、ずっと抱きしめて走ってきたんだ。」

「...っ」

 

「その気持ちは...それだけは、絶対間違いなんかじゃない!あなたの存在を否定なんて、私が誰にもさせたりしない!!」

「...そう、か。」

 

目の前の、先生代理らしい少女は私の手を取る。

弱々しいその手は、しかしあまりにも...頼もしい。

 

先生、か。

先の道を生きる...長く生きているだけなら、マダムとて同じだ。私の知っている大人などそれしかない。

 

何が違う?私たちに未来があると、そう断言する彼女のことが知りたい。私の未来のことも、みんなの未来のことも知りたい...!

 

私はここで、諦めたくない...!

 

 

███せ███!

 

 

「...っ...すまない...一色シルベ...こんな私でも、未来があるというなら...私は...!」

 

自然と涙が出る。泣く資格などありはしないのに...彼女の暖かさは、私の足に力を込めさせるのに十分だった。

 

 

『シ██せ███!

 

 

その手を握り返す。

そして。

 

打ち倒す未来も見えない怪物へと、それでも向き直った。

 

 

「頼む...私を導いてくれ!『先生』!」

 

 

 

『シルベ先生っ!!!』

 

 

 

──────────────────

 

 

 

『エラー発生。対象εが情報流入を完全に拒絶。【多次元解釈によって観測された、先生を殺し得る人物】の対象がζのみとなりました。』

 

『外界からの介入が多く遮断されたため、儀式の完成が加速します。同時に、世界の定義指向が反転します。』

 

銀髪の少女は、無表情に床を見つめる。

 

『先生の居ない世界で、“先生”が誕生しました。』

 

 

 

───────────────────

 

 

 

「何ですか、この力は...!?」

 

バルバラを、常識を逸した軌道のドローンが翻弄する。

尋常ではない速度で振るわれる腕を軽やかに躱し、照準を定める隙を正確に削り取る。

 

「くらえッ!」

 

スクワッドに向けられる銃口の悉くを弾き飛ばすドローンの機動は、全てが計算されているように見える。

 

 

「これは...」

 

この正確さ。ドローンが思い通りに動くこの感覚。

ずっと前に覚えがある。このドローンを手にした直後のことだ。これは...!

 

 

「アロナちゃん!」

『先生!』

 

 

シッテムの箱から、無機質なメッセージが消失する。

代わりに現れたのは...ああ、あまりにも長く待ち望んだ少女の姿。

 

 

『シルベ先生は、私が守ります!』

 

 

ドローンをなんとかすり抜けて私に放たれた銃弾。

それは異常な軌道であらぬ方向へと逸れていった。

 

「...!」

 

懐のカードが、眩く光る。

 

取り出したそれは...見るものに不安を与える禍々しい色。

それが少しずつ剥がれていく。

 

「...っ!」

 

暖かい光。

 

ああ、そっか。私...

思えばこの世界で沢山の人たちに、先生って言って貰えたね。

 

「...ありがとう、みんな。」

 

認めて貰えたとか、資格を得たとか、そういったものじゃない。

ただこれからも、生徒に恥ずかしくない背中を見せられるようにっていう...エールなんだ!

 

目の前で暴れ狂う怪物へと、向き直る。

 

「今だよ!」

「一斉射撃!」

 

ドローンに翻弄され体勢を崩したバルバラに、総攻撃が加えられる。

煙が晴れた後...聖女はいとも容易く空中へと溶けていった。

 

「くっ...!三体のバルバラは...まだ来ないのですか!?こうなったら...!」

 

 

ベアトリーチェが天に掌を翳す。

すると、彼女の体が大きく変質し...

 

 

「な、なんですか!?あれは!」

「マダム、あなたは...!」

 

私たちの数倍もある巨躯。

枝のように大きく伸びた4本の手。

背後に浮かぶ赤く大きな『輪』。

頭部は開いた花のように開き、不気味な眼がこちらを捉える。

 

 

原作で見せた、ベアトリーチェが怪物と化した姿だ。

 

 

「サオリ!シルベ!貴様たちを新しい生贄として捧げましょう!」

「...マダム。」

 

怪物はおぞましい叫び声を上げる。

 

ゲマトリアは基本的に戦う術を持たない。その理由を私はよく知らないが、それ故におそらくその姿はキヴォトスで手に入れたものだろう。

その証拠が、彼女の背後に浮かんでいる。

 

「いくら一色シルベが不可解な力を使おうと、満身創痍のスクワッドで私を倒すことなどできません!潔く私に...!」

「スクワッドでは倒せない?」

 

無線で聞いた、最後の手段。

 

「マダム。あなたは一つ間違いをしている。」

「今すぐその口を閉じて、貴様らを生贄に───!」

 

 

 

 

「アリウススクワッドは、四人だけじゃない。」

 

 

 

 

その刹那。

天井から純白の天使が降り立ち。

 

「さようなら、マダム。」

 

ヘイロー破壊爆弾が、怪物の背後で炸裂した。

 

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