先生の居ないアーカイブ   作:ヒオルカ

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時系列ちょっとズレます。



シロコと銀行とドローン

 

 

平和で閑散とした街路の空を、ドローンが巡る。

 

紹介しましょう私の可愛いドローンちゃんです。

 

 

銃火器は付いてないけど、その代わり機動性と耐久性は市販のドローンとは比べ物にならない優れもの。

操作は基本的にシッテムの箱を使っている。タブレットを操作し、移動とカメラやスキャンなど各種機能の利用を行うのだ。

 

このタブレット......『シッテムの箱』は相変わらず何も言ってくれない。画面の左上には仮認証モード起動中という表示が流れ続けている。

普通のタブレットと違う所といえば、クラフトチェンバー謹製のドローンを操作できることと、サンクトゥムタワーの管理(手動プログラム)ができることくらいだ。後者はもう何も分からないのであれ以来弄ってないです。

そのくせ容量の単位はEB(エクサバイト)。何に使えば良いんだこのハイスペックノーマルタブレット。

 

そんなことを考えながら、今はセリカちゃんとのアルバイトを終えた後ドローンの練習をしながら帰路についている所だ。

 

一応このドローン、自動操縦も付いてはいるが戦闘となると精度が低い。ワカモちゃんと戦った時のすごい機動はきっとアロナちゃんが手伝ってくれたのだろうけど......

 

とにかく、このドローンは私の唯一の戦闘能力だと言っても良い。銃を使えない私にとっては、この戦乱に溢れるキヴォトスで身を守る大事な技能。頑張って練習しましょう。

 

 

 

そうしてドローンを操作しながら歩いていると、近くの無人ビルの屋上に音声センサーが反応を示す。

 

『午前三時ジャスト。警備が厳しいけど......警備員が交代するときには死角も——』

 

とっても美しく癒される声だ...!ってシロコちゃんの声だねこれ。

 

気になって私もそのビルの屋上に上がると、彼女はどこかを見ながらメモ帳にびっしりと情報を書き込んでいる最中だった。

 

 

「あのー、シロコちゃん?」

「......!?」

 

彼女の視線の先には、地域の銀行が建っていた。

あー......こりゃ銀行強盗の下見ですね、はい。

 

「これはその、なんて言ったらいいか......」

「......」

 

どうしよう。先生代理としては止めなきゃいけないのだけど......いかんせん一回やっちまった身である。というか先生だってやったじゃん!銀行を襲うよって言ってたじゃん!よく堂々と止められますね!?

 

「特に理由もなく銀行を襲うのは...いけないと思うよ。うん」

「その、これは襲おうとか思ってたわけじゃなくて、趣味というか...」

 

まあ流石に、ほんとに何もなしに銀行を襲うような子だとは思っていない。趣味で下見をしてて襲う気はないというのも本当だろう。

 

...ならいいか。後は先生に任せます!

 

「それにしてもそのメモ、すごい書き込みだね...」

 

シロコちゃんが先程まで書いていた手帳には、銀行内部やその周辺の地図、警備員の巡回ルートや時間、現金輸送車のルートなどが綺麗にまとめられていた。先日はこれのおかげで、銀行強盗がすごいスムーズでした。

 

「ん...見る?例えばここのビルとビルの間からは17番道路が通っているから、狙撃の支援があれば現金輸送車の襲撃に有効で―」

 

普段のちょっと寡黙なシロコちゃんとは打って変わって情報の波が押し寄せてくる。なんだかシロコちゃんの銀行強盗センサーを作動させてしまったみたいだ...

 

なんだ銀行強盗センサーって。

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「ん...ありがとう、シルベ。」

「え?」

「ここまでこの話を聞いてくれたのはシルベが初めて。」

「そ、そう...?それは良かったけど...でもやっちゃダメだよシロコちゃん?」

「うん、分かってる。」

 

シロコちゃんと二人、視察していたビルからアビドスに帰る。気づけばもう夕焼けだ。

 

「...シルベが来てからすごい助かってる。弾薬とかの補給もそうだけど、シルベは私たちがずっと私たちだけで取り組んできた問題を、一緒に考えてくれるから。」

「そんな...戦闘とかじゃ、やっぱり足引っ張っちゃうし、考えることくらいは頑張るよ。」

 

シロコちゃんは微笑む。あまり表情の動かない子ではあるが、その内でいろんな感情を動かしていることが、伝わってくる。

 

「シルベも、もっと自信を持てばいい。ドローンもきっとそれに応えてくれる。」

「そうかな...?」

「うん。ドローンは良い。撹乱、偵察、攻撃...なんでもできるから。」

「銀行強盗とかね。」

「うん。...あ、これは違くて。」

「ふふっ...」

 

こうして、私とシロコちゃんは...思いがけずに、楽しい帰り道を過ごしたのだった。銀行強盗の下見だってことは置いといて。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「シロコちゃんあっち向いてホイしよ。」

 

「ん...?何で?」

「最初はグー。」

「...ジャンケンぽい。あっち向いてホイ。勝った。...いや、何で?」

「もっかいやろ。」

「ん...うん...」

 

キヴォトスに来たらやりたいことその2、『シロコちゃんとあっち向いてホイをする』も達成した。

 

先生も早く到着して、シロコちゃんとあっち向いてホイしてあげてね。

 

 





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