モンハン勢がダンまち世界に迷い込むのは間違っているだろうか 作:H-13
「戦いの野」で行われている洗礼の一時中断とオッタルとヤマトの決闘の如き模擬戦。このふたつの情報はフレイヤ・ファミリア内を駆け巡った。
この知らせの大元はフレイヤでありソレに従わない団員は居なかった。
その結果として、数多のフレイヤ・ファミリアの団員が見物へとその闘技場の様な場所に詰め掛けているのも致し方ないことであろう。
「ルールは…そうね。死なないなら何しても良いわ?オッタルは手加減してあげて?」
コレである。あれ程忠告したというのに、手加減とは。
目の前の猪人から感じる圧は…自分の知る最上位には及ばない。知性はある為駆け引きもあるだろうが…ソレは自分が知る竜も一緒であった。
自分が防具にしているリオレウス希少種はリオレイア希少種、所謂番が危険な時は危機を顧みずに自らが盾となって護るような行動を良く行っていた。
【終焉】を両手で構える。モンスターを狩る為の武器を今初めて明確にヒトに向けようとしていた。ここに辿り着くまでにそれなりに悩み、吹っ切れた。未知への渇望と自らの歩みを邪魔する神フレイヤは───敵だ。
・オッタルが勝った場合ヘスティア・ファミリアはフレイヤ・ファミリアの傘下となる。ヤマトはヘスティアの眷属となる。
・ヤマトが勝った場合フレイヤは何でも言う事を聞く。
以上がヘスティアとフレイヤが決めた勝敗の景品であった。無理やりヤマトをヘスティアから引き剥がした場合フレイヤは天界に帰ることになると直感で理解したが為に、最低限の妥協はしっかりとしたのだ。
「来い、猪。突進は得意だろ?」
対人戦。不慣れながらもヤマトは本質を掴んでいた。モンスターも、ヒトも変わりはしない。言葉が通じるか通じないか程度であろう。
取り敢えず煽る。意味もなく煽る。
「先手はくれてやるから精々頑張ってくれや。盲信野郎」
ヤマトの得意な形を行動では無く口で作り出す。【終焉】を肩に担ぎ右脚に体重を掛けて踵をベッタリとつける。顔が見えなくとも、明らかに分かる其の舐めプの見本。
「【銀月の慈悲、黄金の原野──────】」
「【ヒルディス・ヴィー二】」
「ウオオオオオオオオオオオオオッ゛!!」
黄金が弾けた。そうとしか捉えられぬオッタルの魔法。貯め無しの超強化。純粋たる暴力が解き放たれ───────…オッタルの持つ無骨な大剣ごとオッタルの両腕が手首より少し下から切り離されて宙を飛ぶ。
ヤマトの得意な型は後の先。今のはオッタルの振り下ろしに合わせるように体を横にズラし刃をその進行方向に「置いた」だけ。バチリと赤黒い雷が走ったと思えばレベル7の防御力など関係無しにするりと刃が肉に入り、骨まで容易に断ち切って見せた。
「そら、愚鈍。その図体は飾りか?」
コレが「最強」だとヘファイストスに聞いた。それが「恩恵」などという外付けの装置有り無しでモノを判断した時には落胆を覚えたものだった。
そう、なにかのIFなのだろう。ヤマトが居た世界は「神」が居なかったからこそ技術を伸ばした。人類もゆっくりと進化し、何れ龍を淘汰する到達点へと辿り着くために。この世界は「異物」である神が降りてきてしまったからこそ「恩恵」が強さに直結するという前提が蔓延してしまった。その差なのだろう。
神フレイヤに出来なかったことをオッタルに行う。ヤマトは優しくは無いのだ。ただ、普段その意識がコレクション集めに費やされているだけで本質は「ハンター」なのだ。癖が1つ2つあるのは当たり前であろう。
両腕が使えなくなっても懲りずに突っ込んでくるオッタルの脚を片方ずつ膝下から切り飛ばし、付したソレの首筋に刃を突き付ける。早くしないと出血死でもするぞ?とフレイヤ自身に突きつければ漸く降参を申し出てくれた。
いや、良かった。マジで。人殺しになる為に業磨いてるわけじゃないんだよなほんと。まぁ綺麗に切り飛ばしたから綺麗にくっ付くと思うよ?多分。Maybe。
あんどふりーむにる…うん、腕のいいヒーラーが居るんだねぇ。
・フレイヤ・ファミリアはヘファイストスに3000万ヴァリスを支払う事(武具の立て替え)
・フレイヤ・ファミリアはヘスティア・ファミリアに2000万ヴァリスを支払う事
・神フレイヤ個人はヤマトの後ろ盾になる事。裏切った場合は問答無用で送還する。
この三つがヘスティアが、と云うよりもヤマトからフレイヤに提示し、受け入れられた契約の内容であった。
その代わり、「最強」の座はオッタルにあること、この決闘を口外しない事が双方に確認された。
オッタル以外誰も損してない良い契約であったとヤマトはホクホクであった。
この2000万はホームの作成費用に割り当てようと神ヘスティアと話し合い妄想を膨らませていたヤマトであった。
次回、漸くステイタスを刻みます。