モンハン勢がダンまち世界に迷い込むのは間違っているだろうか 作:H-13
「双剣握るの久しぶりだけど、エイナの忠告聞いといて良かったな」
刀身に血糊が付かない違和感にも慣れてきた頃、同じ様にダンジョン特有の圧迫感にも慣れてきた。
素直に忠告は聞いて損は無い。何度口に出しても良い。血気盛んな新人にもちゃんと教えたい。そういやあの教官は元気かな。
初心者の頃は良くお世話になっていた堅物の訓練場の教官を思い出しながら壁から湧き上がるヘルハウンドを切り捨てる。
最終的には下着姿で上位のジンオウガをブチ殺したり、ソロでアルバトリオンに挑んで居るヤマトにもちゃんと初心者の頃はあったのだ。
「ん~、ソロだと片手剣がマストか?」
ランスやガンランスでは太刀よりも嵩張ることが確定な為、防御も最低限出来ながら手馴れた刃物を扱えるモノを頭の中で選択していく。
回避が出来る所が豊富な狩場とは違い一本道の様なダンジョンでは攻撃一辺倒の双剣は些かこの先不安か…。
撫で切りでミノタウロスすらサクサクとサイコロカットを成し遂げているヤマトであるが考え自体は真剣である。
慣れない環境に慢心は無く、いくら村クエのアオアシラレベルしか出て来なくとも既知では無いのだから。
闇夜剣【昏冥】
頭の中でコレクションをひっくり返しながら出てきた現状で使い勝手が良さそうなナルガクルガの片手剣である。
お手軽な切れ味に会心率が高く低めな攻撃力は装備でカバー出来ている。そんなに苦労せずとも作れる為コスパも良い武器の一つ。
まだ一回も使ってなかったけど帰ったら引っ張りだそうかな。
最終的に何も考えなければ煌黒剣アルスタでごり押すのも悪くは無いのだが…それではコレクションの意味が無い。
「必要に応じて使い分けてこその狩人である」
漆黒爪【終焉】ばっかり使ってたヤツが何言っとるんだとは聞かない。だってマラソン大変なんだもん。
ダンジョンアタック初日だとも思えぬスピードで17層まで来てしまった。えーと、あれが嘆きの大壁か。
折角ならゴライアスともやりたかったけれど、エイナからは「フレイヤ・ファミリア」の一人が1週間前に討伐したとの情報が入っていた。
また一週間後。折角だから一回は戦いたい。そう思いながら18階層の迷宮の楽園へと脚を進めた。
胡散臭いコトが書いてあったで御座る。
元々長々と居る気は無いのだ。観光の様な気分でリヴィラに入ろうとすると入口には「大歓迎」的な文字。そんなフレンドリーな謳い文句を一瞬で吹き飛ばす物価の暴力。
ゼニーなら山ほどあるがこっちの金銭は手持ちで1万程度。ヤマトはバックパックすら買えない冷やかし客でしか無かった。
然し、周りから見ればそれどころでは無い。白銀に輝く全身鎧を着た然程有名でも無い男が一人。二つ名すら付かないのならばレベル1は確定。
どうやってここまで来たかは関係無い。目敏い者には双剣に描かれた「ヘファイストス」の文字が見えてしまっていた。
法?モラル?そんなモノは此処で屯っている者達にはあってないようなもの。ヘファイストス・ファミリア製の武器など裏に持っていけば買い手は幾らでも付く。
ゆっくりと、レベル2を中心とした山賊ならぬダンジョン賊が徒党を組んで行く。リヴィラの中はダメだ。殺るならば…17.16層辺り。どうとでも言い訳が出来るように。悪意が動き出していた。
今から狩ろうとしている者が龍すら恐れず食い物にしているイカれた狩人だとは知らぬ儘に。
名も無き第三級冒険者達の死亡フラグが立ちました