「大きなイチモツを下さい……誰もが二度見をするような、大きなイチモツを……私に……下さい」
転生する際に何か一つだけ才能を与えようと神が言ったとき、無色透明な眼差しでその男は言い切った。
神は混乱した。
「いや何言ってんのお主?」
「つまりチン「言い直さんでいいわい」……どうかお願いします神様」
「こんなあからさまにデカいチ○コ頼まれたのわし初めて何じゃが」
神様の呆れ顔に男は生前でもしたことないような綺麗な所作で土下座をした。
「神様……私は生前、所謂粗末なイチモツを装備していた人間でした。皮を被った小さなイチモツに私は自信が持てず、女性との性行為自体も金銭でのやり取りでしか行った事がございません」
「……それで?」
「私は恋愛も結婚も自分の小さなイチモツを馬鹿にされるんじゃないか……と、イチモツの大きさに反比例するように肥大した内心の恐怖で始めるきっかけの一歩すら踏み出せませんでした……故に欲しいのです」
大きなイチモツが……男の言葉一つ一つに悲哀が籠もっている。
神はこういった死んだ人間の転生をサポートした経験があるが、最近これ程まで謙虚に願いをいった人間は久しぶりで、男からは真剣さだけはよく伝わってきた。
「最強の肉体とか古今無双の剣の才能とかいらんのか?」
「願いが一つだけでなければ生涯無病息災でありたいです。性病とか怖いので」
「ならば何人もの生娘の美女と交わえる天命でも良かろう」
「それも心惹かれますが、願いが一つだけでその時に自分のイチモツが小さかったら自分が許せません。やはり確実に大きなイチモツを持って生まれ変わりたい」
「何というか凄い執念じゃな」
「神様にとって馬鹿らしい願いだとわかっております。ですかそのような天下を問える才能や天命などを全うできる器が自分にあると思えません……イチモツが小さいからではなくそれができる自分が想像できないのです」
「謙虚と言えばいいのか肝が小さいと言えばいいのか」
「文字通り肝っ玉が小さかったので後者でしょう」
「自分で言ってて悲しくならないそれ?」
「すでに死んだ身ですから。死線を越えたので自分がえらくはっちゃけてる自覚はあります」
体という柵から解き放たれた人は自分の本心を発露するのに躊躇いが無くなるというが、男の今の状態がそれだった。
だからこそ神は男の馬鹿馬鹿しい純真さに呆れたが、こうゆう気持ちいい馬鹿に少しだけ報いてやろうと思った。
「ならばこうしよう。お前さんを人類史の中で巨根として記録が残ってる人物に転生させてやる……その上でお前さんの願いの無病息災をつけるのはどうじゃ?」
「なんと……そんな事が出来るのですか?」
「所謂平行世界と言うやつじゃな……歴史に残るというからには何らかの事件や大きな出来事に関わった人物と言えるが、好きに生きたらええ。巨根で歴史に残るなど大層なイチモツの持ち主じゃろうしどうじゃ」
「それでお願いします」
涙を流さんばかりに男は歓喜した。
「まあ転生先は巨根と歴史に残る人物の誰かになるが、生涯無病息災じゃし病気とか毒とかじゃ死なんから頑張るのじゃぞ、じゃあの」
「ありがとうございます神様! この御恩一生忘れません」
そう言って深く頭を下げる男を見送った神は、あの男が誰に転生したのかを見届けるとびっくりする。
転生先の名前は嫪毐(ろうあい)
ここに平行世界のせいか漫画のキングダムっぽい感じの古代中国の嫪毐に転生した男が爆誕したのだった。
因みに本人は将来車裂きの刑なんてものを受けることは知らない模様。
主人公……キングダムにて嫪毐に転生した人。
神様から生涯無病息災というチートを貰った。
普通なら病気に罹らず毒にも強くなるという能力だったが、将来車裂きの刑を受ける原作の因果のせいで“車裂きすら耐える頑強な体”という副次効果も得た。
もしこれがラスプーチンだった場合、青酸カリも銃弾も効かない超人が生まれていた可能性がある。