世間的には今日は日曜日。だが僕はバイトが入っていた。午前中だけだが憂鬱に感じてしまう。だが昨日は十分な1日だったのだから、午前中ぐらいは奮起できる。気がする。
受付で客を待っていると、スタジオから集団で少女たちが出てきた。
「この後どこいく?」
「つぐみんちで課題かなー」
「さんせ〜い」
出てきたのはAfterglowというバンドの面々。常連だからか、顔も名前も一致する。赤のメッシュを入れているのが、ギターボーカル美竹蘭。銀髪のゆるゆるしているギター青葉モカ。このバンドのリーダーのベース上原ひまり。背の高い男勝りのドラム宇田川巴。ショートカットのキーボード羽沢つぐみ。
常連だからだけではなく、共通の知り合いに紹介してもらった。受付で自己紹介するから、びっくりしてしまった。
「お兄さん、お会計お願いします」
なぜか知らんが、お兄さんと呼ばれている。確かに年上だが、年齢も伝えてないし、呼んでくれと言った覚えもない。
レジで手を進める。
「ねぇねぇ、おにーさん」
「ん?どうしたんですか、モカさん?」
「おにーさんはどう?」
「どうって?」
「つぐみんちに一緒に行きませんか?」
どうして互いのことを知らない者同士が、カフェに一緒に行かなきゃならんのだ。
ちなみに名字で分かる通り、羽沢つぐみはあの羽沢珈琲店の娘さんだ。大体手伝いをしている。
「部外者が行ってもその場が冷めるだけでしょう。メンバーで行ってきたらどうでしょうか?」
「実はモカちゃんはあなたのことを知っているのですよ」
それは大問題だ。どこまで知っているのか。僕の個人情報はどうなっているのか。過去のことを知られると非常にまずい。それは僕個人の問題ではなく、知った人にとっても足枷になってしまう。
「……どこまで知っているんですか」
「リサさんから聞いたことだけですけど」
安心、なのか?リサもそこまでは知らないだろう。
「とりあえず、はいこれお釣りです。それでも関係ない人が行くのはまずいと思うんですが」
「まあまあ〜、そこは置いといて」
「……わかりました。まだバイトなので、先に行っといてください」
「絶対来てくださいよ〜」
てか、他のメンバーの許可もとれよ。
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午前中の仕事も終わり、羽沢珈琲店に向かう。
リサはどこまで知っているのだろうか。もし知っても他人に言ったりするのだろうか。そんな疑問が頭の中をグルグル回っている。
着いたので、木目の縁のドアを開けた。
「あっ、やっと来た」
「遅くなりました」
遅くなりましたもおかしいと思うのは僕だけだろうか。
モカさんが手招きしていた席を見ると、アフロ(長いのでそう呼んでいる)のメンバーしかいなかった。なんでこんな空間に一人男なんだ。席に座った。
「それでどれだけ知っているんですか」
「年上なんだから、敬語はいいですよ」
宇田川がいった。なんで知っているんだ。
「あたしが教えました〜。花咲川の2年B組山崎彗太さん?」
何教えてんだよ、リサ。学校はまだしも、クラスは教えなくていいじゃないか。
「クラスメイトに燐子さんと紗夜さんがいるなんて、豪華ですな〜」
ほら、こんな奴が出てくるんだ。氷川にはあらゆることに突っ込まれているのに。
「えっ、そうなんですか?!」
「……本当だよ。羽沢。豪華ではないけどな」
豪華ではないことは確かだ。気持ちを紛らわすためにコーヒーを頼もうとした。
「あっ、私が淹れてきますよ」
羽沢が言った。そうか、ここの娘だもんな。
「……学校での紗夜さんってどうなんですか」
「気になるのか、美竹」
「別に……」
「学校では風紀委員長で馬鹿みたいに服装やら規則に厳しいよ。部活も弓道部に入っている」
この際だから氷川のことを暴露しよう。ちょうどリサと同じバンドだし(?)。
学校でのことを話していると羽沢がコーヒーを持ってきてくれた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
軽くコーヒーを飲んでみる。
「うん、美味しい」
美味しいのは確かだろう。しかしいつもと何かが違う。もしかして
「これ、羽沢が淹れたのか?」
「っ!やっぱり不味かったかな……?」
「ううん、少し違うけどめちゃくちゃ美味しい」
「えへへ、良かった♪」
少し違うが、その違いがさらなる美味しさを生み出している。
「なんか仲良さげだな」
「……そうだね」
「夫婦みたいですな〜」
「っ////ちょっとモカちゃん//」
いきなり言い出したと思えば、何を言い出すんだ。よし、乗ってやろう。
「羽沢はいい奥さんになりそうだな」
「ちょっとお兄さんまで///」
「はは、冗談だよ」
「もう//」
そんな話をだらだらと続けながら、時間は過ぎていった。
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「そういえば課題をやるとか言ってなかったか?」
「はっ!忘れてた!お兄さん、手伝って!」
「ええー……」
日常は平和に続く。
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