青年と少女たちの日常   作:柊真夜

4 / 40
お楽しみください。


4 アッサムよりもブルーマウンテン

 世間的には今日は日曜日。だが僕はバイトが入っていた。午前中だけだが憂鬱に感じてしまう。だが昨日は十分な1日だったのだから、午前中ぐらいは奮起できる。気がする。

 

 受付で客を待っていると、スタジオから集団で少女たちが出てきた。

 

「この後どこいく?」

 

「つぐみんちで課題かなー」

 

「さんせ〜い」

 

 出てきたのはAfterglowというバンドの面々。常連だからか、顔も名前も一致する。赤のメッシュを入れているのが、ギターボーカル美竹蘭。銀髪のゆるゆるしているギター青葉モカ。このバンドのリーダーのベース上原ひまり。背の高い男勝りのドラム宇田川巴。ショートカットのキーボード羽沢つぐみ。

 常連だからだけではなく、共通の知り合いに紹介してもらった。受付で自己紹介するから、びっくりしてしまった。

 

「お兄さん、お会計お願いします」

 

 なぜか知らんが、お兄さんと呼ばれている。確かに年上だが、年齢も伝えてないし、呼んでくれと言った覚えもない。

 レジで手を進める。 

 

「ねぇねぇ、おにーさん」

 

「ん?どうしたんですか、モカさん?」

 

「おにーさんはどう?」

 

「どうって?」

 

「つぐみんちに一緒に行きませんか?」

 

 どうして互いのことを知らない者同士が、カフェに一緒に行かなきゃならんのだ。

 ちなみに名字で分かる通り、羽沢つぐみはあの羽沢珈琲店の娘さんだ。大体手伝いをしている。

 

「部外者が行ってもその場が冷めるだけでしょう。メンバーで行ってきたらどうでしょうか?」

 

「実はモカちゃんはあなたのことを知っているのですよ」

 

 それは大問題だ。どこまで知っているのか。僕の個人情報はどうなっているのか。過去のことを知られると非常にまずい。それは僕個人の問題ではなく、知った人にとっても足枷になってしまう。

 

「……どこまで知っているんですか」

 

「リサさんから聞いたことだけですけど」

 

 安心、なのか?リサもそこまでは知らないだろう。

 

「とりあえず、はいこれお釣りです。それでも関係ない人が行くのはまずいと思うんですが」

 

「まあまあ〜、そこは置いといて」

 

「……わかりました。まだバイトなので、先に行っといてください」

 

「絶対来てくださいよ〜」

 

 てか、他のメンバーの許可もとれよ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 午前中の仕事も終わり、羽沢珈琲店に向かう。

 リサはどこまで知っているのだろうか。もし知っても他人に言ったりするのだろうか。そんな疑問が頭の中をグルグル回っている。

 着いたので、木目の縁のドアを開けた。

 

「あっ、やっと来た」

 

「遅くなりました」

 

 遅くなりましたもおかしいと思うのは僕だけだろうか。

 モカさんが手招きしていた席を見ると、アフロ(長いのでそう呼んでいる)のメンバーしかいなかった。なんでこんな空間に一人男なんだ。席に座った。

 

「それでどれだけ知っているんですか」

 

「年上なんだから、敬語はいいですよ」

 

 宇田川がいった。なんで知っているんだ。

 

「あたしが教えました〜。花咲川の2年B組山崎彗太さん?」

 

 何教えてんだよ、リサ。学校はまだしも、クラスは教えなくていいじゃないか。                                               

 

「クラスメイトに燐子さんと紗夜さんがいるなんて、豪華ですな〜」

 

 ほら、こんな奴が出てくるんだ。氷川にはあらゆることに突っ込まれているのに。

 

「えっ、そうなんですか?!」

 

「……本当だよ。羽沢。豪華ではないけどな」

 

 豪華ではないことは確かだ。気持ちを紛らわすためにコーヒーを頼もうとした。

 

「あっ、私が淹れてきますよ」

 

 羽沢が言った。そうか、ここの娘だもんな。

 

「……学校での紗夜さんってどうなんですか」

 

「気になるのか、美竹」

 

「別に……」

 

「学校では風紀委員長で馬鹿みたいに服装やら規則に厳しいよ。部活も弓道部に入っている」

 

 この際だから氷川のことを暴露しよう。ちょうどリサと同じバンドだし(?)。

 

 学校でのことを話していると羽沢がコーヒーを持ってきてくれた。

 

「はい、どうぞ」

 

「ありがとう」

 

 軽くコーヒーを飲んでみる。

 

「うん、美味しい」

 

 美味しいのは確かだろう。しかしいつもと何かが違う。もしかして

 

「これ、羽沢が淹れたのか?」

 

「っ!やっぱり不味かったかな……?」

 

「ううん、少し違うけどめちゃくちゃ美味しい」

 

「えへへ、良かった♪」

 

 少し違うが、その違いがさらなる美味しさを生み出している。

 

「なんか仲良さげだな」

 

「……そうだね」

 

「夫婦みたいですな〜」

 

「っ////ちょっとモカちゃん//」

 

 いきなり言い出したと思えば、何を言い出すんだ。よし、乗ってやろう。

 

「羽沢はいい奥さんになりそうだな」

 

「ちょっとお兄さんまで///」

 

「はは、冗談だよ」

 

「もう//」

 

 そんな話をだらだらと続けながら、時間は過ぎていった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「そういえば課題をやるとか言ってなかったか?」

 

「はっ!忘れてた!お兄さん、手伝って!」

 

「ええー……」

 

 日常は平和に続く。




お読みいただきありがとうございます。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。