青年と少女たちの日常   作:柊真夜

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ではどうぞ


5 オタクは恥でも役に立つ

 放課後、いつもどおりバイトで受付をしていると、まりなさんからこう言われた。

 

「受付は私がやっておくから、機材を見てくれないかな。ほら、山崎くん音楽の機材のことをいじれるって言ってたじゃない?麻弥ちゃんもやってくれるっていうから、一緒にやってくれないかな」

 

 願ってもない依頼がきた。好きなことをしていたら、お金がもらえるなんていいもんだな。でも、趣味がお金になった途端つまらなくなったって言っている人も少なくない。それも鑑みると、好きなことを仕事にするというのも考えものなのかもしれない。

 

「それはいいですけど、麻弥ちゃんって誰ですか」

 

「まぁそれは行ってみたら分かるよ」

 

 そうして僕は機材の置いてあるスタジオへ向かった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 スタジオのドアを開けると、アンプの前にタンクトップの女の子が座っていた。

 

「あのーすみません。もしかして麻弥さんでしょうか?」

 

「はいっ?!え、あ、もしかしてまりなさんが言ってた山崎さんでしょうか?」

 

「そうです。麻弥さんって大和麻弥さんのことだったんですね」

 

「えっ、なんで苗字まで……」

 

「だってテレビ出てたじゃないですか」

 

 彼女はパステルパレット(通称パスパレ)のドラム、大和麻弥さんだ。正真正銘のアイドルなのだ。

 

「ジブンもうアイドルなんですね。フヘヘ」

 

「今日はこのアンプを見ればいいんですか?」

 

「はいっ、そう聞いています」

 

「じゃあ始めちゃいましょう」

 

 僕らはアンプを修理し始めた。

 

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「山崎さんは何歳なんですか?」

 

「17歳です。高校2年生です」

 

「じゃあ同い年っスね。敬語はいらないです!高校はどちらなんですか?羽丘ではなさそうですけど……」

 

 敬語を嫌がる人がここらへんは多いんだな。みんな敬語嫌がってるじゃん。

 

「花咲川だよ」

 

「じゃあ千聖さんと同じなんですね」

 

 そうだったのか。自分でも分かる女優の名前が出てきた。そんな人が同じ学校にいるんだな。他のクラスはおろか自分のクラスの人ですら怪しいからな。覚えられるわけない。

 

 僕らは手を動かしながら話をする。

 

「それにしても山崎さん。随分手慣れてますね。もしかしてなんか音楽やってたんですか?」

 

「昔にちょっとだけやっただけだよ。遊びだったけどバンドも組んだりしたよ」

 

 本当に遊びだった。だけど楽しくなかったと言ったら嘘になる。

 

「それでも機材はいじらないんじゃないですか?」

 

「いや、とにかく小遣いの範囲でやりくりしなきゃならなかったから、安い機材を長く使うために、自分で修理とかしてた。メーカーに依頼するのにもお金がかかるしね」

 

「わかりますよ!自分でいじるのは節約にもなるし、何より面白いんですよね〜」

 

「そう、いつしか修理も楽しくなってくるんだよな」

 

「フヘヘ、ジブンたち、似てますね!」

 

 本当にそうなのだろう。最近の研究では馬が合う人は脳の動きとかも似ていると言っていた。

 ふと麻弥さんの方を見るとメガネをしているものの懸命になっている姿はとても魅力的だった。

 

 

 

 

「かわいい……」

 

「へっ!?///」

 

 つい口に出していってしまった。でも本音だった。

 

 

 

 

 

「ごめん、なんでもない」

 

「あ、そ、そうっスか……//」

 

 そのあとは二人、黙々と作業を続けた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「今日は本当に二人ともありがとう!山崎くんはもう今日は上がりでいいよ!」

 

「わかりました」

 

 やっと不具合が治り、まりなさんに報告した。

 

「今日は手伝ってくれてありがとう、麻弥さん」

 

「いえ、自分は言われたことをやったまでですので」

 

 そう言ってエントランスで彼女と別れる時に

 

 

 

 

 

「山崎さん!」

 

 

 

 

 僕の方に振り向き、

 

 

 

「また二人でお話ししましょうね////」

 

 

 

 眼鏡を外して誘う姿は、少しドキッとしてしまった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

(緊張したっス//こんなドキドキすること、これまでなかったのに。でも山崎さんとまたお話しできたらいいなぁ。ていうかジブン、山崎さんの名前と連絡先知らない……。聞いておけばよかったぁ……)

 

 

 

 

 

「何かあったの、山崎くん♪」

 

「べつに何にも無いですよ、まりなさん」

 

「あの麻弥ちゃんが、ねぇ。これは何か起こりそう♪」

 

 日常は今日も過ぎていく。




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