青年と少女たちの日常   作:柊真夜

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それではどうぞ。


6 マスコットは仕事が多い 上

 今日はバイトはないが、委員会の活動がある。部活はやっていないので、終わったら帰れる。だから文句は言いながらも仕事はする。

 僕の所属している委員会は美化委員会。なんか学校をより美しくするとか埃ひとつ残さないとかいろいろ目標はあるものの、活動は放課後の掃除と見回りだけだ。これで何ができるというのだろう。

 そんなことを思いながら、割り振られた教室で清掃をしていると

 

「山崎さん、遅くなりました……」

 

 そうやってきたのは、なぜか疲れた様子の後輩、奥沢美咲だった。同じ美化委員でよく担当が一緒になったので話していた。普通を愛する女子だ。

 部活はこれが終わった後のはずだが、どうして疲れているのだろうか。

 

「なんか疲れてるな。なんかあったのか」

 

「いやちょっと、友達に振り回されて……」

 

 まだ終礼が終わってちょっとのはずだが、この短時間で人を疲れさせるほどのことをしたということか。そんな体力があったら、分けて欲しい。

 

「まぁ、大変だったな。じゃあ掃除手伝ってくれ」

 

「わかりました……」

 

 僕たちは清掃を始めた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「山崎さん」

 

 突然奥沢が話しかけてきた。

 

「作曲ってやったことありますか」

 

「どうしたんだ、突然」

 

「いや、理由は聞かないで欲しいです」

 

 なんか怪しくなってきた。どうして作曲のことなんか聞きたがるんだろうか。彼女は普通のことが好きなのに。

 

「やったことあるぞ」

 

「えっ、本当ですか!?」

 

 奥沢が飛び出してきそうな勢いで聞き返してきた。そんなに作曲がしたかったのか。

 

「そんなに作曲のことが気になるのか?」

 

「いやそうではないんですけど……。それよりも、できるんですよね?作曲」

 

「まぁ、できるけど」

 

「作曲、教えてくれませんか!?」

 

 教えるって言ったて何を教えればいいんだ。

 

「とにかく使うものやらを教えてください!」

 

 そんなに必死ならば仕方がない。

 

「わかった、教えるから声を抑えてくれ」

 

「あっ、ごめんなさい……」

 

「場所はどうするんだ。どっちかの家じゃ不安だろ」

 

「いや、場所は大丈夫です。確保してあります」

 

 随分用意周到なようだった。わかっていたのか、それともいろんな人に声をかけていたのか。

 

「じゃあ今日の放課後にな」

 

「わかりました」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 今僕は戦慄していた。なぜか奥沢が電話したら、すぐに黒塗りの高級車がきて、その中から出てくるサングラスをかけた黒いスーツの人。アメリカの映画みたいな人が出てきた。

 

「奥沢様、お迎えにあがりました」

 

「あー、ありがとうございます」

 

 奥沢も普通に接している。

 

「奥沢ってなんか裏取引とかやってんの?臓器とか売ってるの?」

 

「そんなわけないじゃないですか。さぁ乗りますよ」

 

 なんでそんなに遠慮なく乗り込めるんだ。後、行き着く先も僕は知らない。誘拐ってことで大丈夫なのか。

 

「山崎様、お乗りください」

 

 この圧力に勝てるほど、僕の度胸は強くなかった。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 車から降りるとそこは豪邸だった。視界に見切れるほどの敷地が広がっていた。門の表札を見ると『弦巻』と書かれていた。弦巻とは聞いたことがある。しかしニュースで見るくらいだった。

 

「じゃあ山崎さん、行きますよ」

 

 だからなんでそんなに飄々と歩いていけるんだ。

 

「ここどこなの?」

 

「あー、友達の家です。あのさっき言ってた振り回された友達」

 

 お嬢様っておしとやかなイメージがあるが、やっぱりおてんばお嬢様も世の中にはいるんだな。

 

「奥沢様、山崎様、ご案内いたします」

 

 そう言って黒服さんの歩く後をついていった。

 

 

「ここでございます。必要なものがありましたら、お申し付けください」

 

 黒服さんは扉を開けた。そこには

 

 

 

 

「えっ!?」

 

 なんかみたことがある人が一人と

 

「おっと、子犬くんがここに迷い込んだようだね。ああ、なんて儚いんだ」

 

 紫色の髪をした、演技派の人が一人と

 

「みーくんが男の人を連れてきた!新メンバーかなぁ?」

 

 勘違いしている背が低い子が一人と

 

「美咲が連れてきたということは、その人には笑顔が足りていないのね!」

 

 ネジが一本外れてそうな金髪の子が一人。

 メンツが濃すぎるんだよ。どうやったらこのメンバーが集まるんだ。

 そっと奥沢の方を見ると、めんどくさそうな目をしていた。どんな感情なんだそれ。

 

「あー、違う違う。この人はミッシェルの友達なんだよ」

 

 ミッシェルって誰だ。聞いたこともない。

 

「美咲ちゃん、その人は」

 

「お久しぶりです。名前は知らないけど」

 

 迷子になっていた人だ。花咲川の制服をしているということは、同じ学校なのだろう。まぁみたこともないけど。

 

「ん?花音はその人を知ってるの?」

 

「えっとね、この前迷子になった時に案内してくれた人なんだよ、こころちゃん」

 

「じゃあ、花音の恩人ね♪恩返しをしないとだわ!何か案はあるかしら、薫」

 

「やはり私の演劇に招待しようかな。きてくれるかな、子犬くん?」

 

 このテンポについていけなかった。どうやら別世界に迷い込んでしまったらしい。

 隣で奥沢がニヤついていた。はめられたんだ。くそっ。

 

 まだまだ続く。




お読みいただきありがとうございます。
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