青年と少女たちの日常   作:柊真夜

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6 マスコットは仕事が多い 下

 奥沢にはめられたとわかったその後、あの3人を置いて迷子の人と奥沢を連れて別の部屋にやってきた。この部屋は豪華絢爛なわけではなく、シンプルで質素な雰囲気になっている。

 黒服の人にパソコンと五線譜の紙を持ってきてもらって、準備はできた。

 

「やる前に、迷子の人の名前を聞いてもいいですか」

 

「あっ、すいません……。松原花音って言います。花咲川の2年です」

 

「同級生じゃないですか。何組なんですか?」

 

「A組です。同級生なので敬語はいいですよ」

 

 本当にここには敬語を嫌がる人が多すぎるんだよ。どうしてそんなに敬語を嫌がるんだ。

 

「わかった。後もう一つ聞くけど、この集まりはなんだ?」

 

「えっと、話せば長くなるんですけど……」

 

 そう言って奥沢は話し出した。

 

 

「そんなことがあったのか。それにしても行動力がすごいな、弦巻こころって」

 

「すごすぎるのも、どうかと思いますけどね……」

 

「あはは………」

 

 いろいろ苦労しているらしい。

 

「じゃあそのバンドの曲を作りたいんだな?」

 

「そうです」

 

 どうやら編成は変則的だが、バンドをやるので曲を作りたいということだった。

 

「じゃあやるか」

 

 そうして僕は教え始めた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「ちょっと休憩しよう」

 

「はいぃ……」

 

 ちょっと詰め込み過ぎた。でも飲み込みが早い。これなら今日中に終わりそうだ。もう日が落ちかけているので、早く帰りたいところだ。

 松原は3人のいる部屋に帰った。例の3人はまだ元気らしい。

 

「それにしても、なんで作曲なんてできるんですか?」

 

「昔いろいろあったんだよ」

 

「もしかして、アーティスト志望だったりしてたんですか?」

 

「そうじゃなかったけど、そうでもあるかな」

 

「なんですかそれ……」

 

 今度はこっちから質問してみる。

 

「強引にって言ってたけどその後断ればよかったんじゃないのか。物にやりたいわけでもなかったんだろ、バンド」

 

「いや、それは……そう、ですけど……」

 

「ですけど?」

 

「自分でもよくわからないんです。今でも抜けたいって思うんですけど、なんか、なんだかんだ現状になっています」

 

 やはり人とは弱いものだ。何か役目を与えられると、それに縛られ、視野も狭まってしまう。

 しかし奥沢の場合は違うと感じた。

 

「僕はいいと思うけどな。このバンド」

 

「えっ?」

 

「演奏は聞いたことないからわからんけど、何より個性が爆発している。強みだと思う。だから流されてもいいと思うけどな」

 

 自分でも随分無責任な言葉だったと感じる。だが思ったことを言った。

 

「何より奥沢、可愛いし」

 

「えっ///」

 

 そう言った瞬間、彼女は顔を出さないことを思い出した。彼女は『ミッシェル』としてステージに上がるのだ。

 

「それはその……嬉しいですけど///」

 

「ごめん、顔出さないんだったな。話を聞いてなかった」

 

「っ………//そ、それよりも、早く再開しましょう。暗くなっちゃいますから!」

 

 そうして僕は再び教え始めた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「今日はありがとうございました」

 

 黒服さんが送ってくれている車の中で、奥沢にお礼を言われた。もう辺りは暗かった。

 

「いいよ、僕も楽しかったし」

 

「またお願いできますか?」

 

「いつでもいってくれ」

 

「じゃあ連絡先交換しませんか?」

 

 まさか親以外に女性の連絡先を知ることになるとは思わなかった。

 

「これで……よし」

 

 ここで奥沢の家についた。

 

「じゃあまた、今日はありがとうございました」

 

 奥沢はおりていく。

 完全に降りきってドアが閉まる。そしてまた車は走り出す。

 バックミラーを見ると玄関の前でまだこっちをみている奥沢の姿があった。律儀だと思った。なぜそこまでするのか。僕にはわからなかった。そして角を曲がって奥沢が見えなくなると、僕の中に虚しさが残っていた。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 その後、

 

「なんで教えてないのに、僕の家知ってるんですか?」

 

 相変わらずの非常識さに、可笑しくなって笑いそうになった。

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