シャーレ所属顧問、サオリ先生   作:ベレッタM92F

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プロローグ
プロローグ―1


「んぅ……」

 

陽気な朝日に包まれながら、私は背伸びをする。

シャーレの前でそんなことをしていたためか、通りすがりの生徒に見られる。

 

「また徹夜?おはよ先生」

「ああ、良くないことは分かっているが……おはよう」

 

軽く挨拶したあと、手を振って別れる。

私も自身の職場に行かねばと、横に置いていた鞄を持ってシャーレに入っていった。

 

私は錠前サオリ。元アリウススクワッドにして現シャーレ所属、並びに顧問として働いている。

私がまだ子どもとしてここにいた時にはキヴォトスの外から来た大人がここで先生をしていたが、今は私が代表としてここにいる。

 

シャーレのオフィスに入ると、山盛りの書類や落書きだらけのホワイトボード、雑に散らかして何があるか分からない机と、見慣れた光景が目に入った。

書類が目に入らないように移動しながら自身の机に向かい、鞄を置く。

そこから仕事に使う道具を出していると、奥から人影が出てきた。

 

「おはようございます、サオリ先生!」

「おはよう、アロナ先生」

 

出てきたのは、透き通る水色の髪に、空と雲のようなカラーリングのセーラー服を着た少女、アロナ先生。

元は先生が持っていたシッテムの箱のOS……らしいが、詳しいことは知らない。

紆余曲折あって体を手に入れ、今はシャーレ所属、正確な役職名は無いが実質的に私の上司に当たる人だ。

今でも書類整理や一日の予定管理など、手を借りっぱなしで頭が上がらない。

 

「ふふ、いつも言っていますが先生はいりませんよ」

「しかし、シャーレ所属で、先輩で……」

「変に真面目ですよね、サオリ先生は」

 

変に……?褒められているのか、それは?

少しモヤモヤとした気持ちになりながら、仕事の準備を進める。

私も準備をしなきゃ、と言いながらアロナ先生は出掛ける格好をしていた。

 

「どこか行くのか?」

「はい、先生が必要な書類を忘れたとのことなので、ミレニアムまでちょっと」

「なるほど、なら急がないといけないな。先生がユウカに怒られる前に」

「あー…それは…おっと、すいません、少し電話が。もしも『アロナ早くしてぇ!殺されるぅ!』……分かりました。すぐ行くので待っててください」

「……もう手遅れみたいだな」

「ですね。では、行ってきます!」

 

いってらっしゃいと言って見送る。

 

私の前に顧問としていた先生は 私に顧問としての役職を渡しながらも、シャーレ所属として活動している。

渡す相手が私で良いのかと思ったが、前よりも楽しそうに活動していて、良かったと今はそう感じている。

 

「もう、どれくらい経ったんだか……」

 

まだそう遠く無いはずなのに、学生でいた頃が懐かしく感じる。

戻りたいかと言われると、そういうわけではない。

アリウスの皆とはもちろん、シャーレで出会った者達とも仲良くしている。

聖園ミカとも。

それだけでなく、キヴォトスの学園にいる子ども達も、とても愛おしく感じる。

昔の私ではとても考えられなかった生活だろう。

 

「ああ、先生に出会って、先生になって、本当に、良かった……」

 

よし、そろそろやるか。

そうしてパソコンを立ち上げ、貯めに貯めた書類を減らそうと立ち上がった。

 

 

その瞬間、パソコンから光が溢れだした。

 

「な、なん――」

 

光はだんだん強くなり、私を包み込むほど大きくなると―私はそこで気を失った。

 

 

 

「忘れ物、忘れ物、っと~……あれ?サオリ先生?」

 

 

 

 

 

「……い」

 

なんだ?誰かの声が聞こえる。

聞いたことのあるような……

 

「……先生、起きてください」

 

二回目に聞こえた声で、私が目を瞑っていることに気が付いた。

ゆっくりと目を開けると、そこにいたのは―

 

「……」

 

―連邦生徒会の七神リンだった。

 

「……は?」

「少々待っていてくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。なかなか起きないほど熟睡されるとは」

 

間違いない、見た目、声からしてリンそのものだったが……私の記憶より若く見えるような……

そんな困惑中の私に気づいていないのか、そのまま話を進めるリン。

 

「夢でも見られていたようですね、ちゃんと目を覚まして、集中してください」

 

今の状態が夢のように感じられるんだが……この感じ、やはりリンで間違いない。

しかし、提出すべき書類を先生と一緒にすっぽかして怒られたのはつい最近のはず、どうしてこうも他人行儀なのか……

まるで、今始めて会ったみたいだ。

 

「もう一度、改めて今の状況をお伝えします。私は七神リン、学園都市キヴォトスの連邦生徒会所属の幹部です」

「そんなことは知っている…はずだ」

「では、ちゃんと起きていてください」

 

おかしい、やはり何かが……

そういえばと、私は図書館の知り合いに借りた本に平行世界を題材にした本を読んだことをふと思い出した。

 

「平行世界…?」

「どうしました?」

「……いや、すまない、寝ぼけていたみたいだ。もう一度今の状況を教えてくれ、リン」

 

兎にも角にも今の状況を把握しなければいけない。

寝ぼけていたことにして、話を促す。

 

「分かりました。先ほども言った通り、私は七神リンです。そしてあなたはおそらく、私達がここに呼び出した先生……のようですが」

「よう?まるで分からないみたいな言い方だな」

「ええ、その通りです。私も先生がここに来た経緯を詳しく知らないからです」

 

言葉が詰まる。

さっきまでいた所こそ、夢なんじゃないかとさえ思い始めてきた。

しかし、それにしてはしっかりと記憶がある。

じゃあどうしてここにいるのか。

 

「……混乱されてますよね、分かります」

 

私の様子を見てか、そう同情してくれるリン。

 

「こんな状況になってしまったこと、遺憾に思います。でも今はとりあえず、私についてきてください。どうしても、先生にやっていただかなくてはいけない事があります」

「……ああ、分かった」

 

きっとそれは、必ずしなければいけない事だと、本能がそう囁いた。

そうして私はリンの後ろをついていった。

 

途中でエレベーターに乗る。

ガラス張りになっていて、外の景色が見える状態になっていた。

それは、何度か見たことがあり、見たことのない景色だった。

 

「キヴォトスへようこそ、先生」

 

……逆に、キヴォトスから出たことがないんだが、なんて、頓珍漢なことを考えてしまった。

 

 

 

うすうすだが、感づいていた。

もしかしてこれは、平行世界の先生の立場になっているのではないか。

道中で先生呼び、エレベーターの中で簡単に説明されたことで疑問を持った。

 

連邦生徒会長が選んだとされること。

 

昔少し、先生からそんなことを聞いた覚えがある。

だとしたら、私はその立場になっているということだが……

とりあえず、今はそれを考えている暇はない。

目の前の四人を見ながらそう考える。

リンを含めた五人の会話を聞きながら状況を整理する。

 

数千もの学園自治区が混乱に陥り、大変なことになっている。

連邦矯正局にいた停学中の生徒達が一部脱出。

スケバンのような不良生徒の暴行頻度が上がった。

出所の分からない武器の不法流通が2000%以上増加etc…

 

そして、連邦生徒会長の失踪。

 

………うむ。

 

よくこんな状態から持ち直したな!?

しかもさらに多くの問題も発生したと聞いた……私達が起こしたのもあるが。

これまで以上の尊敬の念が先生に送られる。

届くかは分からないが。

 

「――それでは、今は方法があるということですか、首席行政官?」

 

一人で整理していると、いつの間にか話は纏まりかけていたようだ。

 

「はい。この先生こそが、フィクサーとなってくれるはずです」

 

疑問は確信となった。

やはり……私が先生になったようだ。

 

「ちょっと待って、そういえばこの先生は一体どなた?どうしてここにいるの?」

「キヴォトスでないところから来た方のようですが……先生だったのですね」

 

……そういえば、私にはヘイローがあるはず、なのに何故キヴォトスでないところなんて……

まさかと思い近くのガラスを見る。

 

ない。

 

次々といろんなことが起きたためか、驚くことさえなかった。

まさに謎が謎を呼ぶ状態だ。

そんな確認をしている間にも、話は続いている。

 

「はい。こちらの錠前先生は、これからキヴォトスで働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」

「行方不明になった連邦生徒会長が指名?ますますこんがらがってきたじゃないの……」

 

セミナーの会計担当、ユウカが頭を抱える。

過去でも未来でも、いつも頭を悩ませているな……いつもお世話になります。

というか、生徒会長か……会ったことのない人物に指名されるとは、先生もそうだったのだろうか?

とりあえず、皆の視線がこちらに集まっているので、挨拶をしておく。

 

「錠前サオリだ。よろしく、ユウカ」

「こ、こんにちは、先生。私はミレニアムサイエンススクールの……って、い、いや、今は挨拶はどうでもよくて……!」

「そのうるさい方は気にしなくていいです。続けますと……」

「誰がうるさいって!?わ、私は早瀬……え?何で名前を……」

 

あ。

 

「そ、そう呼ばれたのを聞いたんだ!」

「ああ、そうでしたか。でも私、名前呼ばれたかしら……

 

あ、危ない……今私のことを深く話すのは危険だろう。

注意しなければ……

私達のやり取りを聞いていたリンは、それを遮るように話を続ける。

 

「先生は元々連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の担当顧問としてこちらに来ることになりました。

連邦捜査部、シャーレ。

単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在するすべての学園の生徒達を、制限なく加入させることすらも可能で、各学園の自治区で、制約無しに戦闘活動を行うことも可能です」

 

やはりというかなんというか、私がシャーレに、か……

今思えば、それは先生だからこそできたことじゃないか?

私には、あの人ほど、まとめあげれる気がしない。

だが、逃げることはできない。

 

いや、したくない。

 

知り合いにそっくりとはいえ、今のこの子達は私という大人が守らなければならない子どもだ。

間違いなく、あの悪い大人達はいる。

そして、私達も。

傲慢だろうが、やらなければ、救い出さなければいけないんだ。

 

「シャーレの部室はここから約30㎞離れた外郭地区にあります。今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に『とある物』を持ち込んでいます。先生を、そこにお連れしなければなりません

モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど……」

『シャーレの部室?……ああ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?』

 

……何か、嫌な予感がする。

 

「大騒ぎ……?」

『矯正局を脱出した停学中の生徒が問題を起こしたの。そこは今戦場になってるよ』

「……うん?」

『連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良達を先頭に、周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れてきたみたいだよ?』

 

まるで私には関係ないと言うかのように軽い調子で状況を説明するモモカ。

いや、お前の職務では……?

 

『それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに何か大事なものでもあるみたいな動きだけど?』

「……」

『まあでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから、別に大した事な……あっ、先輩、お昼ごはんのデリバリーが来たから、また連絡するね!』

 

ブツッという音を出して通信は終わった。

リンの顔には黒い影が。

……なんというか、お疲れ様です。

 

「……っ」

「大丈夫か?深呼吸でもするか?」

「だ、大丈夫です。……少々問題が発生しましたが、大したことではありません」

 

そうは聞こえなかったが。

落ち着いた(ように見せている)リンは、私ではない何かを見つめる。

目線の先には、四人の子どもが。

 

「……?」

「な、何?どうして私達を見つめてるの?」

「丁度ここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです」

 

あ、ついに暇そうって言ったな。

 

「……えっ?」

「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう」

「ちょ、ちょっと待って!?どこに行くのよ!?」

 

スタスタと歩くリンを追いかけるユウカをさらに追いかけるように、私達はついていった。




錠前先生
錠前サオリ・大人の姿。
社会や物事を学び、無事先生になった。
目元や雰囲気が柔らかくなり、子どもという存在を大切にしている。
シャーレの先生を手本としているため、元の身体能力なども合わさって時折突飛な行動をする。
生徒からは人気。

ストーリーはvolごとに進める?それとも実装順に進める?

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