シャーレ所属顧問、サオリ先生   作:ベレッタM92F

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閑話集
閑話―日常


「………ん、んん………」

 

私は机に突っ伏していた体を起こす。

いつの間にか、寝てしまっていたようだ。

目の前には付けたままのパソコンが、その横にはパソコンをギリギリ超えない量の書類の束があった。

 

「………」

 

ゆっくりとそれから目を逸らし、パソコンの画面を見る。

そこにはネットショッピングサイトが映し出されていた。

それを見て私はだんだんと昨日の記憶を思い出した。

シャーレで活動するにあたって、やるべき書類があったため、それを処理していた。

が、半分を過ぎたあたりから嫌になり、気分転換にチラッとだけ見ようとこのサイトを開いた。

それで、寝落ちしてしまった、というわけか……ん?

私は画面に映る文字が目に入った。

 

《購入完了しました》

 

……そうして一か月コッペパン生活が始まった。

 

 

 

たかだか数千、高くても一万までならそこまで問題もなかった。

だが映るのは『見せられないよ!』という数字。

何を買ったんだと過去の自分を尋問しながら、購入した商品のページを見る。

CDX(コンプリートデラックス)仮面ファイター最終回バージョンベルト》

……ああ、これか。

特撮物を見なかった私が唯一見た作品の主役のベルトだ。

先生に勧められて見てみたが、意外と面白くて少しハマっていたんだ。

世界を無茶苦茶にしようとする悪の組織の部下だった主人公がいろいろな出会いや経験を通して成長していき、最後には悪の組織を倒すというストーリーが私には響いたんだ。

そしてこの最終回バージョンはボロボロになりながらも、立ち向かう主人公に、悪の組織に所属していたころからの仲間三人の力を合わせて出来た幻のフォームで―

 

―不味い、誰かに伝えるわけでもないのに語ってしまった……

面倒なオタクは嫌われると先生は言っていたな。

ユウカに正座しながら。

 

ともかく、おいしいご飯が食べられないのはつらいが、悪い買い物ではなかったんだ。

気にしないことにしよう。

そういうことで嫌々ながらも書類を進めていくことにした私は、日が落ちるまで終わることはなかった。

 

 

 

あれから数日後、来る日も来る日も書類を処理していると、インターホンが鳴った。

誰だと思いながら見てみると、意外にもユウカが立っていた。

 

『先生こんにちは。上がってもいいですか?』

「ああ、どうぞ」

 

何の用事だろうと入ってきたユウカに用件を聞く。

 

「何か用か?問題が発生したなら、解決の手伝いをするぞ」

「いや、そういうわけではないんですが……どちらかというと、先生の方が手伝いが必要そうですけど」

 

私の後ろにある書類を見ながら、そんなことを言ってくる。

 

「う……ま、まあそれはいいだろう?で、どうしたんだ?」

「えっとですね、シャーレは部員を募集している、という噂を聞いたので、事実なら、良ければ私も入部しようかな~なんて……」

「本当か!?」

「きゃっ!」

 

私は近づき、手を取る。

 

「ユウカがとても優秀というのは良く知っている。入ってくれるなら、歓迎しよう」

「せ、せんせ、ち、ちか……!?」

「ん?地下……?あ、近いか、申し訳ない。つい、嬉しくてな……」

 

すぐに手を放し、距離を取る。

ユウカは「あっ……」という声を発し、何故か眉が下がる。

 

「……んん、それでですね、この通り入部したいんですけど、どうすれば扱いになりますか?」

「少し待ってくれ、簡単な書類を書くだけだ。確かここら辺に……おっと」

 

目的とは違う書類を落としてしまう。

ひらひらとそれはユウカの足元に落ちてしまう。

それをユウカは手に取った。

 

「すまない、渡してくれるか?……ユウカ?」

 

しかし、ユウカはピクリとも動かない。

 

「……」

「……おい、ユウカ?」

「これ、何ですか……?」

 

そう言いながら落ちた書類を見せてきた。

そこには一枚の請求書が。

私はゆっくりと目を逸らし、自分の机へ向かい、財布や身分証など、必要最低限の荷物を持つ。

だがそれはいつの間にか近くに寄ってきていたユウカによって阻まれてしまった。

 

「どういうことか、説明してくれますよね?」

「……はい……」

 

私は頷くことしかできなかった。

 

 

 

三十分後、こってりと絞られた私はユウカと一緒にレシートと書類の整理をしていた。

レシートは他に高い買い物をしていないか、そしてわたしがほとんどまとめていないため、家計簿を付けてくれていた。

書類はついでに手伝ってくれるらしい。

思えば、元の世界でも先生と共に力を借りっぱなしだった。

少々口うるさいが優秀で、意外と優しい。

改めて思うと

 

「私(達)はユウカがいないと駄目だな……」

「ふぇ!?な、何言ってるんですか!これからは、自分でできるようにしてください!」

「分かっている」

 

こうして、ユウカがシャーレの一員になった。

 

 

 

 

 

用事があったため、私はゲヘナに寄っていた。

爆破、銃弾、爆破、爆破、銃弾、叫び声……

平和だな……(目逸らし)

争いは多いが、殺しは絶対にしない。

大丈夫、だろう。

多分。

そんなところの川が見える道を歩いていると、一人の少女がベンチに座っていた。

あれは……

 

「空崎、ヒナ?」

「っ、誰……?」

 

ゲヘナの風紀委員長、空崎ヒナ。

かつて、敵同士だった、その一人だ。

 

 

 

「……シャーレ、ね」

「ああ、何でも屋、みたいに思ってくれていい。便利屋とも」

「便利屋は、嫌だけど……まぁいいや、先生は何でここに?」

「あー……知り合いに会いに、かな。会えなかったが」

「へぇ、残念だったね」

「いや、会えなくて正解だった」

「……?」

 

私はヒナの横に座り、お喋りをしていた。

他愛ない会話だが、それでいいだろう。

キヴォトスの中でも、トップクラスの戦闘能力。

子どもをそんな風には見たくないが、もし奴らがいるとしたら、必要だ。

縁というものはとても大事と、先生も言っていた。

 

「そういうヒナは、何をしていたんだ?」

「……見回り、その休憩」

「そうか、大事だ。適度な休憩は」

 

しかし、結構気難しそうな子だが、よく先生は仲良くできたものだ。

……いつも同じようなことを言っている気が。

 

「……風が」

 

少し強い風が吹いてきた。

ふと横からいい匂いがした。

 

「……?花か?」

「どうしたの?」

「突然いい匂いが……ん、にしては近いな……」

 

目を閉じ、鼻をすんすんとしながら匂いを辿る。

 

「せ、せんせい……?ちょっと……」

「ん……近いな……」

「……っ、先生!」

「おっ!?…と……ヒナ?」

 

目を開けると、そこにはヒナがすぐそこにいた。

……なるほど。

 

「ヒナはいい匂いだったんだな」

「ま、真顔で何言ってるの!……もしかして、先生って変人?」

「……?まともの方だと思うが」

「…やっぱり変人」

 

先生ほどではないはず。

少し不名誉だ。

 

「……そろそろ、行かなきゃ。先生、これ」

 

ヒナは立ち上がり、一枚の紙を渡してきた。

 

「これは?」

「私のモモトークのID。良かったら、登録しておいて。あと、私がここにいたのは内緒にしておいて。先生のことも内緒にしてあげるから」

「そうか、ありがとう。じゃあ、またな」

「うん………楽しかったよ」

 

そう言ってヒナは去っていった。

今日は収穫無しかと思ったが、良かった。

 

 

……さて、この時期はここら辺の探索をしていたはずだが……痕跡すらない、か。

どこにいるんだ、アリウススクワッド。

 

 

 

 

 

とある昼、シャーレのオフィスにいた頃。

休憩でソファの上で横になり、休んでいた。

 

「……ん……」

 

毎日頑張っているんだ、これくらい許されるだろう……なんて考えながらうつらうつらしていると―

 

 

ドガアアアァァァン!!!

 

 

―天井が爆発した。

 

「……っ!誰だ!」

 

すぐさまソファから飛び降り、カバーの体制に入る。

土煙が晴れるとそこにいたのは―

 

「あなたが、私のご主人様ですか?」

 

―メイドだった。

えぇ……?

 

 

 

とりあえず、謎のメイド、アカネと協力して部屋を片付けた。

粗方片付けが完了した後、ソファに二人を座らす。

 

「お掃除楽しかったねー!」

「ああ、アカネが爆弾を取り出したときはどうなることかと思ったが……」

「ふふっ、シャーレに御呼ばれしたとき、少しドキドキしてしまいまして。いわゆる、照れ隠しです」

「そうか……

ところで何でここに来たんだ?あともう一人はいつの間にいたんだ?」

 

色々なことを経験したが、今はその中でも一番の恐怖を感じている。

何故天井を?

一人だけだったはずなのに何故二人もいるんだ?

 

「改めまして、私はC&Cのアカネです。ご主人様にご奉仕させていただくため、こちらに参りました」

「私はアスナだよ!私もC&Cなの!ここに来たのは……なんでだっけ?」

 

C&C、ミレニアムのメイドの姿をしたエージェント達。

話は聞いたことがある。

元の世界でも関わりはあったが、ほぼシャーレの掃除をしてくれたり、仕事の手伝いをしてくれたりぐらいの……

……お世話になってるな。

 

「シャーレは現在、部員募集中とのことなので、入部をと」

「あっ、私もそんな気がする!何か面白そうだったし!」

「えっ……と、入部してくれるのはありがたいんだが、その、C&Cとしての活動とかは大丈夫なのか?」

「ええ、シャーレもC&Cと同じようにキヴォトスの問題事をお掃除するのですよね?なら、無問題です」

「………そう……か…?」

 

会話できているのか不安になってきたな。

ともかく、シャーレの部員が増えるのは嬉しいことだ。

書類を渡し、書いてもらう。

 

「では、早速ですが天井を直させていただきます」

「あー…ああ、ありがとう」

 

最初から入り口から来ればそんなことしなくてもいいんじゃないか……?

そんなことを考えながら、書類にハンコを押す。

 

「……よし、これで二人ともシャーレの部員だ。また、暇な時に来てくれれば……」

「ご主人様」

「どうした?アスナ」

「……何か、隠してる?」

「………どうして、そう思うんだ?」

「なんとなく」

「……そうか……アカネと気を付けて帰るんだぞ」

 

アスナははーいと言って、天井を直したアカネと一緒に帰っていった。

……理論ではなく、直感、か。

 

 

 

 

 

激動の一か月だった……

起こった出来事は少ない方だが、内容が濃かった。

ユウカに怒られたり、ヒナと縁が出来たり、C&Cの二人がシャーレの一員になったり……

……本当になぜC&Cが来たんだ?

ともかく、今日もいい時間だ。

明日に備えて寝よう。

向かわなければいけない学校があるからな。

そういうことでシャーレのソファに寝転がる。

未だにベッドより、ソファの方が寝やすい。

昔に比べたら、それでも豪華だが。

 

「よいしょっと……」

 

………ふぅ。

 

「ここには私達しかいない。出てきたらどうだ?」

「……流石ですね、先生♡」

 

そうして出てきたのは脱獄犯、ワカモだった。

 

「何か用か?私の命は差し出せないが、お茶くらいなら出そう」

「だ、出してくれるんですか!?」

「別に驚くことでもないだろう」

 

そう言いながら電気を付けて、二人分のお茶を注ぐ。

 

「はい、緑茶だが、いいか?」

「あ、ありがとうございます……♡」

「別に立ったままじゃなくていい。座ったらどうだ」

「……優しいのですね♡」

「別に、客人に茶を出すのは当たり前だろう」

 

そう言って私は一口飲む。

 

「そうは言いますが、これでもわたくし―」

「それでも、関係ない。お前は私の生徒だ。別に人を殺したわけでもない。なら、離す必要もないだろう」

「先生……♡」

「しかし、悪いことは叱らせてもらう。お前のため、なんて言っても信じてくれないかもしれないが」

「あなた様が仰るのなら、このワカモ、従いますわ」

 

……謎に、聞き分けがいいな。

まあいい、ワカモがいい子というのは、先生も耳が痛くなるほど言っていた。

 

「そうか、それは良かった。……少し話をしよう。何故、悪い子にはなってはいけないか知っているか?」

「人に迷惑を掛けないようにするため、でしょうか。陳腐ですが」

「いや、違う。悪い子ほど、悪い大人に騙されるからだ。お前達には、そうなってほしくない」

 

切に願う。

もうこれ以上、子ども達には傷ついてほしくない。

だが、ワカモは微笑んで、それを拒否する。

 

「それは、約束出来ませんわ」

「何故だ?」

「もしあなた様が悪い人になってしまったら、ついていけなくなってしまいますから」

「……何故、そこまで私を。お前が気にするほどの者でもないだろう」

「一目惚れ、です」

「一目惚れ?」

「はい。あなたの瞳に。きっとあなた様は、辛い過去があった。しかしそれを乗り越えて今のあなた様がいます。優しく、強い光が込められた瞳を持つあなたが。わたくしには、その瞳と、その瞳を持つあなた様がとても愛おしく感じるのです」

 

………瞳か。

ワカモが私に一目惚れするとは、想像つかなかったな。

 

「ふふっ、そうか。お前もまた、なかなかの変わり者なんだな。……良かったら、シャーレに入部しないか?」

「良いのですか!?でも、わたくしが入っては……」

「別に公表しなければ大丈夫だろう。で、どうする?」

「もちろん、喜んで、ですわ!」

 

そういうことで、ワカモがシャーレの一員となった。

 

 

 

さて、もう寝なければ。

アビドス高等学校に向けて、一休みだ。

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