シャーレ所属顧問、サオリ先生 作:ベレッタM92F
対策委員会―1
荷物の最終確認をする。
食料、水、あとはシッテムの箱。
アロナ先生から食料は多めに持っておけと言われたが、何故だろうか?
まぁおとなしく従っておこう、間違いではないはず。
これから向かう場所はアビドス高等学校。
アビドスは現在とても大変な状態になっているらしい。
それも地域の暴力組織による攻撃で。
勿論見過ごすわけもなく、行くのは間違いないのだが……
その騒動には、あの
『勿論、私達がいた世界とは違う可能性はありますが……』
とアロナ先生は言う。
可能性とはいえ、ほっとけるわけがない。
ということで向かうことになった。
の、だが。
アビドスの自治区に着いた所までは良かった。
「学校が、見つからないだと……?」
遭難してしまった。
学校の場所は事前に調べたはずなんだが……全くと言っていいほど見つからない。
何日も迷い続け、ついには水と食料は尽きてしまった。
多めに持ってきたはずだが、それでも足りなかったか……
『だからもう少し持って行った方がいいって言ったじゃないですか!」
「あれ以上持ってしまうと、逆に体力を消費してしまう。今よりもっと悪くなっていただろう」
『むむむ……』
感じる渇きを無視するために、アロナ先生と会話する。
しかし……人の気配がない。
家は多くあるように見えるが……
先生から少し聞いたことがある。
アビドスは過去大きな事件があり、それで人が多く去っていったと……
元の世界では、諦めなかったことや、他校との協力もあって少しずつだが戻ってきているらしい。
だがここは違う、絶賛大ピンチ中だ。
誰か通りかかるのを期待して塀を背にして倒れていると、何かが近づく音が聞こえてきた。
「……ん?」
顔を上げると、そこにいたのは、自転車に乗った一人の女の子だった。
「……」
「……」
「……あの……大丈夫?」
「……助けてほしい」
本当に、切実に。
「あ、生きてた。倒れてたから、死んでるのかと」
「いや、空腹と喉の渇きで倒れていた……あまりこういうことを言うべきではないが、何か、持ってないか?」
「……ホームレス?」
「……」
結構ショックを受けた。
思えば昔は似たような感じだったな……いや、働いていたから違うと思いたい。
少なくとも食を求めたことはなかった。
先生はよく奢ってくれたが。
とりあえず、簡単に説明をして、私の状況を理解してもらう。
「用事があって数日前この町に来たけど、お店が一軒もなくて脱水と空腹で力尽きた、と」
「ああ……」
シロコと名乗った女の子は私の言ったことを反復して状況を整理する。
アビドス所属のシロコ。
私も元の世界で会ったことがある。
つかみどころがないような奴で、先生によく会いに来ていた。
よくあっち向いてホイをせがんでいたな。
「ただの遭難者だったんだね」
「今更なんだが陸地で遭難者になるのはかなり珍しいと思う」
「ん、でもここら辺だとよくあること。ここは元々そういう所だから。食べ物がある店なんか、とっくに無くなってるよ」
何があったのか、それは知らないが……少し悲しげに見える。
先生から聞いておけば、と思ったが、部外者がおいそれと聞くわけにはいかない、か。
「ここに来るのは初めてで、土地勘が無いんだ」
「そうなんだ」
正確には来たことはあるが、いつも連れられてだから気にしたことがなかった。
……ん?
遭難者で、そうなんだ。
「……んふふっ」
「ん?どうしたの?」
「い、いや、気にしないでく、ふふ、れ……」
「?、まあいいや、ちょっと待って」
そう言ってシロコは鞄を漁り始めた。
そして取り出したのは、飲料容器だった。
「はい、これ、エナジードリンク。ライディング用なんだけど……今はそれくらいしか持ってなくて。でも、お腹の足しにはなると思う」
「本当か?助かる」
「えっと、コップは……」
私はそれを受け取り、そのまま口を付けて飲む。
仕事の時にしか飲まない、対して美味しくない飲み物だと思っていたが、空腹時は何でも美味しく感じるな。
勢いよく飲み、すべて飲み干してしまった。
しまった、飲みすぎた。
シロコに謝ろうと顔を合わせると、何故か顔を赤くしていた。
まさか、怒らせてしまったか。
「すまない、飲み切ってしまった。またお礼を……」
「う、ううん、気にしないで」
「気にするなと言われてもな……ともかく、本当に助かった。ありがとう」
微笑むと、顔を逸らされてしまった。
やっぱり、怒っている……?
そんな私の不安をよそに、シロコは話しかけてくる。
「そういえば、見た感じ、連邦生徒会から来た人みたいだけど……」
「ああ、正確にはシャーレとしてなんだが……」
「!、もしかして、アビドスに?」
その問いに頷きで返す。
「……そっか、久しぶりのお客様だ。それじゃあ、私が案内してあげる。すぐそこだから」
「……その、実は、お腹がすいて、動けないんだが」
昔はこの状態でも動けたんだが……ヘイローが無くなったせいにしておこう。
それも関係しているのはあるだろう。
私の言葉に困ったように首を傾げるシロコ。
「うーん、どうしよう……」
「……その自転車に乗せてもらうというのは」
「えっと、これ一人用だから……」
「……だろうな」
私でも二人乗りを見つけたら注意する。
危ないからな。
それならどうしたものか……
……そういえば、彼女はキヴォトスでも運動ができる方と聞いたことがある。
自転車に乗って一日で何十キロも走るとかなんとか。
なら背負ってもらうのはどうだろうか。
早速そのことを伝えてみる。
「……うーん、まあ、その方がいいか。ロードバイクはここに止めて、と……それじゃ、はい」
「すまない、助かる」
「……あ、待って」
「?、どうした?」
「えっと……さっきまでロードバイクに乗ってたから……そこまで汗だくってわけじゃないけど、その……普段は学校のシャワー室を使うの。予備の服もそこにあるし……」
「……それが、どうした?」
「だから、その、ちょっと匂いが……」
「匂い?そういえば、いい匂いがするなと思ったが、シロコからするな。いや、今は関係なかったか。それで、匂いがどうした?」
「……///い、いや、気にしないで」
シロコはそう言って顔を背けた。
さっきからよく顔を背けるが、私は知らぬ間に何かやらかしたか?
考えても分からない。
頭をひねっているうちにシロコが近づいてきていた。
「それじゃ、改めて……はい」
「じゃあ、失礼して」
「ん、しっかり掴まってて」
私はシロコの背中にしっかりとしがみつき、落ちないようにする。
そうしてやっとアビドスに向かうことができたのだった。
ちなみに思いのほか速くて驚いた。
「ただいま」
「おかえり、シロコせんぱ…い?……うわっ!何っ!?そのおんぶしてるの誰!?」
「わあ、シロコちゃんが大人を拉致してきました!」
シロコに背負われながら、アビドスの教室に入ると、三人の少女がいた。
その中の一人が純粋に驚き、一人は笑顔でシロコが拉致をしたと言う。
笑顔で言うことか?
「拉致!?もしかして死体!?シロコ先輩がついに犯罪に手を……!!」
「皆落ち着いて、速やかに死体を隠す場所を探すわよ!体育倉庫にシャベルとツルハシがあるから、それを……」
「……」
このまま放っておくと、生き埋めにされかねん。
シロコから降り、声を掛ける。
「死体じゃなく、普通に生きている人間だ。アビドスに用があって来た」
「えっ?死体じゃ、なかったんですか……?」
「拉致したんじゃなくて、お客さん?」
シロコ、散々な言われ様だが、大丈夫なのか?
「そうみたい」
「わぁ、びっくりしました。お客様がいらっしゃるなんて、とっても久しぶりですね」
「そ、それもそうですね……でも来客の予定なんてありましたっけ」
「シャーレの顧問先生の、錠前だ。よろしく」
「「「!?」」」
「え、ええっ!?まさか!?」
「連邦捜査部シャーレの先生!?」
「わあ☆支援要請が受理されたんですね!良かったですね、アヤネちゃん!」
「はい!これで…弾薬や補給品の援助が受けられます」
そう喜ぶ三人の名はアヤネ、セリカ、ノノミ。
この三人もあまり関わってなかったが……いや、そういえばこの子ら……
シャーレの先生になってからは、アビドスで仕事をするときにたびたび世話になったな。
「あ、ホシノ先輩にも知らせてあげないと……あれ?ホシノ先輩は?」
「委員長は隣の部屋で寝てるよ。私、起こしてくる」
ダダダダダッ!!!
そんな会話が聞こえた次の瞬間、銃声が聞こえた。
「じゅ、銃声!?」
「!!」
部室の窓から校庭の方を見てみると、そこには十数人程度の不良らしき子達がいた。
あれは……
「わわっ!?武装集団が学校に接近しています!カタカタヘルメット団のようです!」
「あいつら……!性懲りもなく!」
「ホシノ先輩を連れてきたよ!先輩!寝ぼけてないで、起きて!」
「むにゃ……まだ起きる時間じゃないよ~」
セリカに連れられてきたのは周りに対して小さめの少女、ホシノ。
こう見えてかなりの知恵や戦闘力があるのは知っている。
先生もよく頼りにしていたな。
「ホシノ先輩!ヘルメット団が再び襲撃を!ああっと、こちらの方はシャーレの先生です」
「錠前だ。よろしく」
「……あ、先生?よろしくー、むにゃ……」
……本当に大丈夫か?
今もセリカに頬をぺちぺち叩かれてるが……いや、私は生徒のことを信じると決めたんだ、疑ってどうする。
やるときはやるだろう、多分。
「ふぁあ……もー、これじゃおちおち昼寝もできないじゃないかー、ヘルメット団めー」
「すぐにでも出るよ。……ん、そういえば、先生。弾薬や補給品は?」
おっと、危ない、忘れるところだった。
すぐにシッテムの箱を取り出し、何度かタップする。
すると、教室に多くの箱が現れる。
「先生、これは……!?」
「わぁ、こんなにたくさん、どこからですか?」
「……所謂、秘密道具、という奴だ。さ、呆けてる暇はない、返り討ちにするぞ」
「ん、先生の言う通り。皆、行くよ」
「はーい、皆で出撃です☆」
各々弾薬や補給品を回収し、颯爽と飛び出す。
「私がオペレーターを担当します。先生はこちらでサポートをお願いします!」
「分かった。全員、気を付けて」
端的に言えば、戦闘は早くに終わった。
それもそうだ、今まで苦戦していたのは補給が絶たれていたからだ。
各々の戦闘能力は高く、雑兵ばかりしかいなかった。
ならば、こうなるのは当たり前、と言えるだろう。
「カタカタヘルメット団残党、郊外エリアに撤退中」
アヤネの残党の状態を皆に報告しているのを聞きながら、次の手を考えていた。
通信の先からは喜びの声が。
……しかし、アロナ先生が言うにはこれはまだ序章に過ぎないと言う。
誰も犠牲にならないよう、私は立ち回れるだろうか……そんな風につい弱音になる。
先生は、いつもこんなプレッシャーを感じながら戦っていたんだな。
それでも弱音を吐かなかったのは、全て子ども達のため……
今なら、よく理解できる。
校庭の方を見れば、戦場に出ていた子達が帰ってきている。
とりあえず、今は労わろう。
「いやぁ~まさか勝っちゃうなんてね。ヘルメット団もかなりの覚悟で仕掛けてきたみたいだったけど」
「まさか勝っちゃうなんて、じゃありませんよ、ホシノ先輩……勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか」
「先生の指揮がよかったね。私達だけの時とは全然違った」
「いや、私は全然だ。お前たちが強かったからだ。ほら、お茶だ」
指揮なんて行うよりもされることの方が多かった。
アリウススクワッドとして活動していたんだから勿論やっていたが……
先生には大きく劣る。
私は全員に飲み物を手渡す。
シロコはありがと、と言って一口飲んだ後、私の言葉を否定した。
「そんなことない。どこに敵がいるか、どこに何かあるか、私達のできることや銃の弾数を覚えてたり、凄いやりやすかった。これが大人の力。凄い量の資源と装備、それに戦闘の指揮まで。大人って凄い」
「今まで寂しかったんだね、シロコちゃん。パパが帰ってきてくれたおかげで、ママはぐっすり眠れまちゅ」
「……えっ、シロコはホシノの娘だったのか……!?」
「いやいや、そんなわけないじゃん、どう考えてみてもおかしいでしょ!委員長も変な冗談やめて!それにその辺でいつもしょっちゅう寝てるでしょ!」
なんだ、違うのか。
危うく騙されるところだった。
「あはは……少し遅れちゃいましたけど、改めてご挨拶します。私達は、アビドス対策委員会です。私は、委員会で書記とオペレーターを担当している一年のアヤネ……こちらは同じく一年のセリカちゃん」
「どうも」
「二年のノノミ先輩とシロコ先輩」
「よろしくお願いします、先生~」
「改めてよろしく」
「そして、こちらは委員長の、三年のホシノ先輩です」
「いやぁ~よろしく、先生ー」
「ああ、皆よろしく」
知ってはいたが、どうやらこの学校にはこの五人しかいないみたいだ。
他に人の気配がしない。
「さて、ご覧になった通り、我が校は現在危機にさらされています。そのためシャーレに支援を要請し、先生がいらしてくれたことで、その危機を乗り越えることができました。先生がいなかったら、さっきの人達に学校を乗っ取られてしまったかもしれませんし、感謝してもしきれません……」
「感謝はいらない。子どもを助けるのが私の使命だからな。ところで、対策委員会というのは何だ?」
私が聞くと、細やかに教えてくれた。
曰く、アビドスを蘇らせるために集った五人しかいない全校生徒で構成される、校内唯一の部活。
他の生徒は転校や退学で町を出ていったらしい。
そんな学校だからか、住民もほとんどいなくなり、三流のチンピラに狙われるようになった。
そろそろ限界も近く、少しでもシャーレの支援が遅ければ……とのこと。
その説明を終わらせた後、困ったようにアヤネが呟く。
「こんな消耗戦を、いつまで続けなきゃいけないのでしょうか……ヘルメット団以外にもたくさん問題を抱えているというのに……」
「そういうわけで、ちょっと計画を練ってみたんだー」
「本当か、ホシノ?」
「えっ!?ホシノ先輩が!?」
「うそっ……!?」
「本当か、ホシノ…?」
「いやぁ~その反応はいくら私でも、ちょーっと傷ついちゃうかなー。ほら先生も二回も聞いてきたよ?」
「で、どんな計画?」
「ヘルメット団は、数日もすればまた攻撃してくるはず。ここんとこずっとそういうサイクルが続いているからねー」
なるほど、そういうことか。
逆に言えば、数日は襲ってこない、つまり相手も補給をしている。
「こっちから仕掛けるわけか。最も一番消耗しているだろう今に」
「うへ、おじさんの説明取られちゃった。ま、先生の言う通りだよー」
「い、今からですか?」
「そう。今なら先生もいるし、補給とか面倒なことも解決できるし」
「なるほど、ヘルメット団の前哨基地はここから三十キロくらいだし、今から出発しよっか」
「良いと思います。あちらも、まさか今から反撃されるなんて、夢にも思っていないでしょうし」
シロコとノノミはかなり乗り気だ。
うすうす感じていたが、この二人、特にシロコは意外と好戦的だな。
「そ、それはそうですが……先生はいかがですか?」
そんな二人を見て、困惑しているアヤネは私の意見を聞いてくる。
「私も良いと思う。……少々、気になることもあるしな」
「気になること、ですか?」
「ああ、と言っても、そんな重要なことじゃない」
今はまだ。
「よっしゃ、先生のお墨付きももらったことだし、この勢いでいっちょやっちゃいますかー」
「善は急げってことだね」
「ええ、今までの恨み、たっぷり晴らしましょ!」
「それでは、しゅっぱーつ!」
そうして私達は反撃に移ることになった。
実は晄輪大祭くらいから始め、まだ一章(二月十二日現在)もクリアしていないことをここに告白します。
この罪深き私にどうか許しを。
覚悟で過酷するから。おねがい。
ストーリーはvolごとに進める?それとも実装順に進める?
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volで
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実装順で