北米管区第七艦隊、巡洋戦艦2、巡洋艦1、駆逐艦1。
役目を果たし、冥王星沖合を去る。
入れ替わり、冥王星から300万宇宙キロ地点に展開中のEURO管区の
陽電子単装狙撃砲を擁する第十三任務部隊が、
追撃しようとする敵駆逐艦に対して砲撃、
右弦艦首から左舷艦尾を過貫通させ爆沈。
第七艦隊を援護する。
狙撃砲には3基のユニット型核融合炉が取り付けられ、
砲身、炉心には星間物質を取り込む形式の
冷却装置が幾重にも搭載されている。
無論、精度は抜群であり、
300万宇宙キロから敵艦を狙撃できる。
元来、広大な宇宙空間で回避行動をとられると、単装では当たらないが、
狙撃砲は各任務部隊に9基配備され、
敵の予測される進路に対して9基全門で斉射、
確実に撃破するのである。
砲身長は50メートル、口径は380ミリ。
毎分2発で艦艇よりも強力だが、防御性能は皆無。
あくまでも極東管区艦隊突撃に合わせての攻撃であり、
目的は北米艦隊の撤退支援である。
これは、滅亡に瀕した地球が、
民間の発電所を徴発し、ユニット化した結果の代物。
現に地球では電力不足が多発し、飢餓が加速している。
しかし、そうでもしなければ勝てない戦いだ。
今は、そういう時代なのだ……
────
敵艦隊は未知の新手に戸惑いを隠せていなかった。
突如として次元跳躍を実現させた地球艦隊と、一撃必殺だが数が少なく
装填に異常に時間が掛かると踏んでいた陽電子砲を、
8秒間隔で撃ち続ける戦艦が出現し、
記録にある形状の艦艇は此方のビームを弾くのである。
太陽系攻略を任ぜられた、ヴァルケ・シュルツは旗艦シュバリエルから
この異常事態に冷や汗が止まらなかった。
「つい最近までワープすらできなかったテロンが、何故……ッ!」
副官のガンツは、纏めた資料をホログラム投影する。
「ワープ自体はそこまで難しい理論は必要としないようです。
ただ、膨大なエネルギーを生成できる主機が無ければ不可能なはず」
「現に奴らはワープしている、臨機応変に対応するべきだ。
今の状態では我々は基地も艦隊も失ってしまうぞ」
敵は此方の主砲を軽々弾いて突進してくる。
まるで、今は小マゼラン方面に居るであろう、
あのお方の座上艦を彷彿とさせるような艦だった。
ガンツが平静を取り繕いつつ、
「一度、本艦と直掩艦だけでもプラードへ戻りましょう」
「戻ったところで何がある……」
シュルツは視線を下げ、考える。
プラード(冥王星)には、小惑星を加熱する為の大口径照射砲があった。
奴らは確かそれに似たようなモノを使って、
木星沖海戦にて我が艦隊を狙撃していた事があったのである。
現に突出した一部味方艦隊は、主力と分断され、
狙撃されているという報告も入っていた。
「いや、ガンツの言う通り一度撤退しよう」
「何か妙案でも浮かんだのですか?」
「ああ、奴らよりも上手くやる手法があるのだ」
──有名な反射衛星砲を用いた戦術である、が。
ガンツは殿の艦隊を残し、冥王星へと進路を取る。
短距離の次元跳躍で一気に冥王星南極へ。
「シュルツ司令、これは……」
「な、なんてことだ……」
テロンの艦隊が冥王星から、
20万宇宙キロの地点から砲撃を加えていたのである。
さらに艦載機が地上を攻撃しており、
遮蔽していたはずであった南極の司令基地が露出し、
多数が炎上、滑走路はズタボロにされているのだ。
「敵の数はッ!」
「戦艦3、巡洋艦6、駆逐艦12です!」
「物の数ではない、踏み潰せ!」
「待ってください!」
ガンツが珍しく食い下がる。
「敵はここにゲシュタムジャンプした奴らです。
機関出力は今までの奴らとは確実に違うはず」
シュルツはハッとした。
副官の助言に感謝しつつも、プラードへの攻撃は許せない。
「全艦、射程圏内に入り次第攻撃!
だが、戦列を維持し、無理な攻撃はするな!」
ガイデロール級の機関が唸りを上げる。
シュバリエルを先頭に、デストリア級3隻、
ケルカピア級5隻、クリピテラ級7隻が続く。
「敵弾接近!!」
「回避に集中しつつ、中央の戦艦級を狙えッ!」
巧みな操艦でロールするシュバリエル。
青白い光が艦底を眩く照らす。
「デストリアが食われましたッ!」
「敵駆逐艦、高速で接近中ッ!」
こちらの動きを察知していたと確信できるタイミングだった。
敵駆逐艦が尋常ではない加速をし、青白い光を放つと、
瞬時にデストリア級の上甲板を引き裂いた。
上下左右、計12隻の敵駆逐艦は囲い込むような進路を取り、
一瞬にしてデストリア級2隻を戦闘不能に追い込む。
「速いぞ奴ら!」
「背後につかれた、誰かッ!誰かッ!」
後部の133ミリ速射砲は跳弾、
クリピテラ級が追い回され、砲撃で一突きにされる。
(このままでは食い荒らされてしまう)
「ヤレトラー参謀より通信」
「開け!」
顎髭を蓄え、鍛え上げられた肉体のこの男こそ、
地球への遊星爆弾攻撃を立案した、ヴォル・ヤレトラーである。
「北極付近の基地はまだ生きているとのこと!
そちらへ一度向かいましょう」
ヤレトラーは見た目に反して知的であり、優秀な男であった。
そしてその男をシュルツも信頼していた。
無言でうなずくと、
シュルツと直掩艦隊は加速しつつ軌道を冥王星北極へ。
地球艦は追ってきてはいなかった。