2188年3月から始まった、未知の敵との戦い。
当初は実体弾やミサイル、高圧増幅光線砲なども一応は
有効な打撃力として機能していた。
しかし敵は素早く強靭であり、同年9月時点で発生した大規模な戦い、
木星沖海戦において、国連総軍は大打撃を被り、
極東管区もまた金剛型戦艦5隻を失ったのである。
2190年1月、遊星爆弾が突如として北米管区ワシントン周辺に落着。
観測されたデータによれば、敵がエッジワースカイパーベルトを
駆逐艦で牽引、何らかの方法で再加熱して地球へ送り込んできたのである。
対策として遊星爆弾は軌道判明後、
EURO管区開発の150cm超大口径高圧増幅掃射衛星砲を用いて、
月面軌道から処理をしていたのだが、敵は次元跳躍によりこの施設を破壊。
同年11月時点ではこれだけの施設を作る前に、EURO管区も大損害を受け、
地下居住区に逃れることになったのだ。
そして2190年の時期は不明なれども、
極東管区は"波動エンジン"の技術と交流したのである。
時は流れ2199年1月10日。
極東管区の大艦隊は、メ号作戦完遂の為に出撃した。
遅ればせながらその陣容を紹介する。
本艦隊は3つの艦隊から構成された連合艦隊であり、
前衛の極東管区第一艦隊は
・金剛型戦艦3隻
・村雨型巡洋艦6隻
・磯風型突撃宇宙駆逐艦12隻
中央に司令直掩艦隊
・超弩級宇宙戦艦1
・村雨型巡洋艦3
・磯風型突撃宇宙駆逐艦8
そして後衛が第一航空打撃艦隊
・蒼龍型航空母艦2
・村雨型4/改村雨型4
・磯風型突撃宇宙駆逐艦15
総数54隻で構成された極東管区第一連合艦隊である。
また、全艦が主機を次元波動エンジンに換装し、
次元跳躍力を持っており、
機動力に優れ、波動防壁による艦体防御性能も著しく向上した。
主砲についても陽電子衝撃砲を搭載し、敵の帯磁性特殊加工も容易に貫く。
この艦隊は6年かけて地下ドックで建造され、
この日を待っていたのである。
「これより、敵遊星爆弾製造基地破壊を目的としたメ号作戦を開始する!
全艦トランスワープ準備!」
沖田十三司令長官の号令一下、司令直掩艦隊全艦の操縦系統がヤマトへ。
操縦桿を握る島は緊張を隠さない。
「島君といったな、訓練通りにすればいい」
「は、ハイッ!」
沖田の声により強く操縦桿を握り締める。
古代もまた今の島に声をかける事はしない、いや、出来なかった。
「各艦の操縦系統の同期確認、ワープ準備完了」
「各自ベルト着用」
「空間軸、および時間軸共に歪みナシ!」
空間軸と時間軸、二つの線が重なり合うタイミングを見計らう。
これに失敗すると宇宙の根本原理を破壊しかねないのである。
司令直掩艦隊所属の11隻全艦が準備完了を示す緑表示へ。
「ワープ準備完了!」
「トランスワープッ!」
島復唱し「トランスワープ!」
ヤマトは一気に加速する。
星の光も火星の風景も、光が後ろへ集まっていく。
そして目の前に出現した漆黒の空間に飛び込んでいくのだ。
──異次元、とも呼べるその空間には様々な宇宙が広がっている。
多元宇宙を示すが如く、恐竜、原始人、そして未知の生き物から、
車、そして機関車まで。
時間と時空がクタクタに煮込まれた、そんな空間を、
ヤマトを中心とした司令直掩艦隊12隻は進んでいる。
ヤマト艦内は静けさに包まれる。
慣性制御が効いているにもかかわらず、謎の浮遊感があるのだ。
真田氏曰く、空間軸が曖昧になる為、三次元の位置座標が意味を成さず、
人間の感覚器官では把握できないのだという。
そして、ギギギギギッ、という音が突如として艦全体に響き渡る。
これはウラシマ効果を相殺するための装置、
次元エナーシャルキャンセラーが起動した音だ。
体感時間は数分ほど、この音がしたという事は、
一気に通常空間へと戻るという事だ。
漆黒の穴に再び突入。
体が椅子を感知した。
通常次元へと戻ってきたのである。
「全艦波動防壁展開!全兵装起動!」
古代は兵装起動レバーを一気に前に倒す。
起動音と同時に、滝のごとく全ての武装が[Active]と表示される。
「正面28万宇宙キロに敵大艦隊、数174!」
森雪の報告に、沖田はベルトを即座に外し、身を乗り出して指揮を執る。
「正面突破だ、食い破る」
ヤマトは他艦を振り切り、一気に速度を上げる。
「撃ち方始めッ!」
「てーッ!」
48サンチ主砲正面2基6門が激しく発光、
青白い6本の奔流が薙ぎ払うように駆逐艦から戦艦に至るまでを両断。
瞬く間に6つの爆発。
慌てる敵艦隊は各個バラバラに砲撃を浴びせるも、
ほとんどは見当違いの場所へ飛び、ラッキーショットは見事に弾き逸らす。
「煙突ミサイル、短魚雷、全弾発射!」
側面、上部双方から煙が上がり、
24本のミサイルが、各個ターゲットを追い回す。
「シマカゼ、ユキカゼ、シラヌイ、ハツシマ先行します!」
ヤマト両舷を一気に追い抜き、
ミサイルのごとく敵艦隊へ突入する磯風型突撃宇宙駆逐艦4隻。
さらに上下左右に4隻が展開、村雨型は北米管区第七艦隊の援護に回る。
「ヒリュウ、ソウリュウより通信、第一次攻撃隊を発艦させたとの事!」
相原の報告に沖田は頷く。
島はヤマトを巧みに操り、古代は的確に攻撃目標を狙い、撃破する。
コスモレーダーを監視する森雪も、敵を意味する表示がポツ、ポツ、と
消えていく速度に驚きを隠せていなかった。
戦況は敵艦隊の油断により一気に変化した。
北米管区を主力と侮っていた敵艦隊は、
自らの主砲が突如として通用しない艦隊の出現に際して、
逃げの一択という苦渋の選択をしたのだ。
無論、全艦が陽電子ビーム砲に対して無敵というわけではない。
耐圧限界内であれば、の話である。
だがこの状況下においては、敵からは無敵艦隊に見えたのだろう。
磯風型はとにかく素早い上に、機動力は当初から敵と同等であった。
だが、波動エンジンに換装した本艦は、最早手が付けられないレベルである。
高機動力を以てして、敵駆逐艦を追い回し、
127ミリ三連装陽電子衝撃砲で斬り付ける。
艦首の新型魚雷を打ち放し、重巡洋艦に無視できない損害を与えるのだ。
その運用はまるで歩兵を襲う騎馬隊の様である。
速力に劣る敵艦隊は、脆い艦尾を晒して串刺しに。
今まで通り装甲に頼ろうとした重巡洋艦は、
48サンチの主砲が容赦なく吹き飛ばす。
2空母の航空隊も殺到し、3次元の戦場は瞬く間に狩場と化した。
「前衛第一艦隊より報告、冥王星南部の基地を攻撃中との事!」
「山南がやったか!ヨシ、そのまま続けろと伝えろ!」
「了解!」
直掩艦隊は食い破る。
メ号作戦の前段階はまだ始まったばかりである。