錬金術師で改造人間だけど何か質問ある?   作:カラグリヤッホイ

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絶唱

 立花!と出そうになる声を咄嗟に飲み込む。なんでまだ避難してないんだ!?いや、もうそれはいい。こんな戦場のど真ん中、しかもノイズの群れに囲まれた状態で生き残っているなんて幸運を越えて運命じみたものすら感じてしまう。背中に炎の剣を仕舞い、影響を抑える為に水の星霊力を周りに纏わせる。使ってる時にやったら攻撃できないが、一時的にしまうだけならこれで対処可能だ。

 

 刻罪の剣を抜いて槍状になって迫ってくるノイズをカウンターで次々切り捨てていく。全く今日は運がない、立花の言う通り呪われていたのかもしれないが……大事な後輩だしそれでなくても俺の血族の守護の対象だ。守らないとな。地を蹴り、立花に一足飛びに近づくが、クソ!ノイズの方が早い!攻め続けてくるノイズを対処しながら立花に近づくのは時間が足りない!

 

 俺が立花に近づききる前に、ノイズを切り捨てて立花の前に立ちふさがったのは天羽奏だった。ノイズの一斉集中攻撃を槍を回転させて盾にして防ぐ。まずい、大型ノイズまで攻撃を加え始めた!大型ノイズが吐き出す液体状の攻撃を耐える天羽奏を援護するために俺は今一度炎の剣を背中から抜いて射線上のノイズに炎の斬撃を飛ばして燃やし切ってやる。まるでビームのような紅炎が無人の客席まで貫通して溶かしてした。

 

 「覇道滅封!」

 

 それでも一歩遅かったのか。本当に呪われて運がなかったのか……天羽奏の鎧が破損し、飛び散った破片がちょうど、ちょうど立ち上がって逃げようとした立花の胸に突き刺さった。思わず斬撃に力がこもる、守れなかった……!いや!まだ助ける方法はある!まだ、立花は生きている!

 

「目を開けてくれ!生きるのを諦めるな!」

 

 炎の赤の中により目立つ鮮血を胸からこぼして倒れる立花に駆け寄る天羽奏がそう叫ぶ。朧げに意識があるのだろうか、立花はうつろな表情ではあるが、わずかに顔を動かして声のした方向に顔を向ける。そこで俺がやっとその場に着くことが出来た。錬金術で6属性全ての星霊力を練り上げて術を構成する。駆け寄ってきた鉄仮面の男を信じてくれるか分からないが、俺は天羽奏に向かって叫ぶ。

 

 「俺が助ける!信じてくれ!」

 

 「……ああ、分かった。頼むよ……!」

 

 「すまない。命を照らす光よ、ここに来たれ!ハートレスサークル!」

 

 一瞬、逡巡した彼女ではあったが、自分ではどうすることもできないというのを理解していたのだろう。唇を噛んで立花を俺に預けてくれた。俺は立花を抱き起して、詠唱を済ませた治癒術を行使する。

 

 抱き起こした立花を中心にして治癒術を展開する。止血と体力の補填だ。完治させることもできなくはないが、鎧の破片は立花を貫通せずにそのまま胸の中で残ってしまっている。これを取り除くのは錬金術でも相応の設備が必要だ、今この場ではできない。死なないように、命の雫をこぼさないように……!

 

 展開した治癒術は焼け焦げた俺の両腕と擦り傷切り傷が目立つ天羽奏の傷も癒していく。それを見た彼女は意を決したように取り落とした半壊状態の槍を拾い上げて、ノイズに向き直る。風鳴翼がいまだに歌い、刀を振るっている戦場に向き直って、苦笑するように顔を歪めた。

 

 「……ごめん、翼」

 

 口にした謝罪の言葉。迫りくるノイズを前にして先ほどまでの苛烈な攻めを見せていたものとは思えないほどの凪いでいて、悟ったような口調に立花の治療を終えた俺が顔を向ける。鉄仮面越しに見る彼女の後姿はまるで……まるで死を覚悟したかのような……ご先祖の記憶にある、殿を務めて死地に向かう兵士のそれだった。

 

 「……Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl……」

 

 「……また、歌……?」

 

 鎧が発する旋律は、ない。だが今まで口ずさんでいたものではなくまるで神へ祈りを捧げるほど厳かで静かな聖歌のようなそれ。異変に気付いたのは彼女が歌い始めた直後にまるで爆発するかのようにフォニックゲインが高まっていくのを感じる。錬金術で改造された俺の肉体が感覚的にとらえたそれは指数関数的に高まり、彼女の持つ今にも砕けそうな槍に収束していく。

 

 「それを歌ってはダメっ!!奏!!」

 

 風鳴翼が叫ぶ。同感だ、この歌はいけない。こんな量のフォニックゲインを俺のような改造を受けていないであろう生身の身体で放てば……よくて重症、悪くて死だ。そして、今の天羽奏のコンディションが最高潮かと言えばとてもそうは思えない。死ぬ気だ、この人は……!

 

 「歌うな!死ぬぞ!」

 

 「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl……!」

 

 ちらりと彼女が横顔だけ振り返る。その口の端から喉を逆走してきたのであろう血が零れ落ちる。歌いきってしまった、もう、止められない。穂先に集められたエネルギーが空間を歪ませるほどに高まり、そして一気に開放される。全てを消し飛ばす衝撃波が彼女を中心に炸裂しノイズを消し飛ばしていく。俺は刻罪の剣を地面に突きさして結界を展開する。守護方陣と呼ばれるそれは俺と立花を守って、その役目を終えて消えた。

 

 ノイズを全て消し飛ばし、会場を半壊からほぼ全壊に変えたその一撃を放ち終えた天羽奏の槍が崩壊し、彼女の身体がぐらりと揺れる。くそ、死なせるものか!天羽奏、アンタの歌はこれからの世界に必要なものだ。何で戦えるとか、どうしてそこまでしてノイズと戦っているかは知らんが、死ぬ理由にはならねえだろ!

 

 「始まりと終わりを知らず、時の狭間に遊べ!ストップフロウ!」

 

 詠唱、行使。火、水、風、地の4属性の星霊力、人の体を構成する星霊力に干渉して彼女の時間を止める。まともな状態なら効かなかっただろうが、今の状態はまともじゃない。うまく効いてくれてよかった。倒れる状態のまま動きを止めた彼女と必死にこちらに駆け寄る風鳴翼が刀を構えて俺に振り下ろした。激情で混乱しているのだろう、振り下ろされる刀を刻罪の剣で受ける

 

 「奏に何をした!」

 

 「肉体の時間を止めた。このままだと死ぬぞ……!まだ助けられる、俺なら!」

 

 「なんだと……!?」

 

 「このままにしておけば、彼女は確実に死ぬ。今纏ってる鎧ごと砕け散るぞ。……殺したいわけじゃないだろ」

 

 「当たり前でしょ!?……本当に……奏は助かるの?」

 

 「……命を助けることはできる。だが、確実に戦えなくなる、また歌えるかどうかは彼女次第だ。恨み言は後でまとめて聞こう」

 

 「……お願いします……!奏を、助けてください……!」

 

 そこまで言ってようやく刀を取り落とした風鳴翼は崩れ落ちる。天羽奏の命の灯火を繋ぐ、今俺にある全てを使って!レナス=アルマから星霊力を引き出し、活性の治癒術を詠唱する。死んでしまえばいくら先史の知識を持つ俺でもどうにもできないが、死ぬ前に止められてよかった。これならまだ手はある!

 

 「聖光を号し、再誕願い奉る。レイズデッド!心気を癒し整えよ、万象活性!キュア!」

 

 ほぼ蘇生とも言える回復術が天羽奏の損傷部位を癒していく。これだけでは足りない、失った生命力を補填しなければ彼女を死から救えない。レナス=アルマではダメだ、彼女を死の淵まで落としたものを逆利用して彼女の生命力を補填する。概念ごと否定する必要がある。どうせこのまま放っていたら塵になるものだ、再利用してやる。

 

 錬金術のテンプレートが足元に展開される、分解と再構成、崩れつつある鎧をエネルギーに変えて彼女に注ぎ込む。中を見てわかったが、この鎧は聖遺物の欠片を利用したもののようだ。中核の聖遺物は既に崩れていて修理は望めないだろう、鎧の形に変わったその欠片、とはいえ流石は俺のレナス=アルマと同類の物体だ。分解してあふれ出るエネルギーはあれだけのフォニックゲインを放った後でも大量、彼女を助け出すに十分なものだった。

 

 錬成の途中で彼女が全裸になってしまうと気づいた俺が、慌ててマントを錬成して彼女に被せる。ストップフロウも解けて、意識を失った彼女がゆっくりと横たわる。その体が崩れ落ちることは、ない。再錬成は完璧に成功した。呼吸で規則正しく上下する胸が、彼女の生存を如実に物語っていた。

 

 「ああ、ああ……!奏……よかった……!」

 

 眠る天羽奏に縋り付いた風鳴翼が嗚咽をこぼす。俺ももう、これでお役御免だ。初陣にして少々はっちゃけすぎた。事態が収束したのを理解したのだろうか拳銃を構えた黒服の男女がなだれ込んでくる。その中心に居るのはグラマラスなメガネの美女と、まるで獅子のような鍛え上げられた肉体の男性。

 

 「協力、感謝する。話を聞きたいので同行してくれるとありがたい」

 

 「断る。そちらのノイズへの対抗手段を一つ失くしてしまったことは謝罪するが、俺がそちらに同行する理由はそちらの都合でしかない」

 

 担架に乗せられて運ばれる立花を見て一安心した俺に獅子のような男が声をかけてくる。今の今まで潜っていたところを見るとこの男も黒服たちもノイズへの対抗手段があるわけではないようだ。炎の剣を消し、背中に刻罪の剣を背負う。戦闘する気はないことが分かったのであろうが、駆け寄ってきた茶髪の男が拳銃を構える。獅子のような男がそれに待ったをかけた。

 

 「俺は特異災害対策機動部二課の司令官、風鳴弦十郎だ。こっちが櫻井了子、君が分解したものの開発者だ。君の名前を聞かせて欲しい」

 

 「二課?特異災害対策起動部一課だけじゃないのか?名前なんて好きに呼んでくれ、これから会う予定もないからな」

 

 「……君がノイズと戦う限り、俺たちとはまた会うだろう。なぜ今、このタイミングで君が現れたのかは不思議だがな」

 

 「……俺がこの件の犯人だと?」

 

 言外に言われたお前を疑っているぞ、という言葉。はっきり言って心外だが、彼らという組織がなぜ、ノイズへ対抗できる兵器を持ち、さらにその適合者ともいえる人間を纏めて歌手活動させてるのかは知らないがこんな大規模ならライブの裏で何をしていたか、こちらも疑っている。流石に国の機関が人体実験をしてるとは思いたくないが、現実はそう甘くないのはご先祖が証明してる。同行してやるわけにはいかない。

 

 踵を変えす。周りの黒服も纏めて銃を構える。拳銃弾ごとき、ノイズに比べれば何でもない。一斉射されても俺は無傷でいられる。俺が去ろうとしているのが分かったのだろう、風鳴弦十郎の気配が膨れ上がっていくのを感じる、ただの人間相手に力を使うなんて論外だ。さっさと帰ろう。彼の隣にいる茶髪の男が腕を振って銃弾を発射した、どうやってるのか銃弾の起動は曲がり、俺の影へ向かっていく。

 

 カァン、と高い音を立てて刻罪の剣の剣先で銃弾を弾いて上空へ跳ね上げた。こんな人外じみた真似をしたにもかかわらず、風鳴弦十郎は驚きもしない。茶髪の男は軽く目を見開いているが、櫻井了子と呼ばれた女は完全に納得している様子だ。

 

 「今のは、なかったことにしておく」

 

 「わかった。ここまでだ、君を相手にするには、少々被害が大きすぎるだろう。最後に一つ、いいか?」

 

 「……」

 

 無言で先を促す。どうやら今は見逃してくれるらしい。顔を鉄仮面で覆い、時代錯誤な服装、声も変えているから俺という個人を特定することはできないだろう。俺の使命は、ノイズを滅し、人を助け、レナス=アルマを正しく使うことだ。人と争っても百害あって一利なし、ごめんだね。

 

 「なぜ、彼女を助けた」

 

 「……一つは、俺の一族の宿命。先史から続く使命を果たすため」

 

 「そうか「もう一つは」」

 

 「ファンなんだ、ツヴァイウイングの」

 

 それだけ言って俺は風の星霊力を使って跳躍する。上空、雲を突き抜けた俺はこちらに来たときと同じようにイノーフボトルを取り出して、栓を開けて中の薬液を揮発させる。開いた次元の狭間に潜り込んで自分の家に戻った。

 

 

 

 

 

 「……何とか、出来たな」 

 

 独り言を呟いて、鉄仮面を放り出しベッドに倒れ込む。置いていった携帯には、父さんと母さんからのメッセージが入っていた。内容は、今回の特異災害の件で病院へ応援に行くこと。体を冷やさずに飯を一杯食って寝ろという親らしい言葉だった。苦笑して言われた通り、風呂でも入ろうかと立ち上がるとこんこん、と窓がノックされる。

 

 「フルルか?」

 

 「フルッ!フルッフ~!」

 

 窓の外にいたのは真っ白で真ん丸の目をしたフクロウ、正確にはダナフクロウと呼ばれている種類の子供、フルルだ。見れば口には手紙が咥えられている。肩に止まったフルルからそれを受け取り、ご褒美の餌をやって撫でてやる。受け取った手紙、中身を確認すると……父さんの字だ。急いで書いたのだろう、字が多少歪んではいるが、今回のノイズとの戦闘を終えたことを父さんは別のダナフクロウを通して見ていたのだろう。労いの言葉がつづられていた。俺はそれを読んでも、やるせない喪失感が拭えないのだった




 奏さん生存!奏さん生存!早く原作軸まで物語を進めたいですがまったりゆっくりと行こうと思いますのでお付き合いください
 
 主人公君の名前は焔樹(えんじゅ)篝矢(かがや)といいます。ルビを振るのを忘れてましたごめんなさい

 ではでは次回もお楽しみに。感想評価よろしくお願いいたします。
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