錬金術師で改造人間だけど何か質問ある?   作:カラグリヤッホイ

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戦い終えて

 「それで、何かわかったか?了子君」

 

 「ええ、分かったわ。何も分からない、ということがね」

 

 特異災害対策機動部二課、認定特異災害ノイズが出現した際に出動する政府機関。その本部は私立リディアン音楽院の地下深くに位置している。なぜこの位置に、というのは様々複雑に入り混じった事情がある。その本部の一室、シンフォギア開発者である才女櫻井了子の研究室にて二人の人物が話し合っていた。

 

 一人は当然この部屋の主である櫻井了子、そしてもう一人はこの特異災害対策機動部二課の司令官である風鳴弦十郎であった。まだ湯気が昇る飲みかけのコーヒーを挟んで話し合う二人、その話題は先日のツヴァイウイングのライブと同時並行で行われた完全聖遺物「ネフシュタン」の起動実験と同時に発生したノイズの襲撃の件であった。

 

 被害の規模は現在確認中だが10万人規模の他に類を見ない大規模なもの、そして二課としても無視できない被害を被った。シンフォギアシステム・ガングニールの消失と適合者である天羽奏の戦力喪失である。ライブ会場襲撃の際、絶唱を放った天羽奏、LiNKERによる適合率の底上げをせず、本来の絶唱とは違う形で放たれたそれはバックファイアによる負荷で天羽奏の命を奪う寸前までいった。

 

 だが、彼女は助かった。絶唱にて崩壊するシンフォギアの鎧を分解したエネルギーを生命力に変え、その身に注がれたことによって。そして現在の議題は天羽奏の命をすくった人物である、鉄仮面の少年の話題であった。

 

 「ノイズ襲撃と同時に出現し、触れられないはずノイズを物理攻撃で倒し、雷や水、風に炎と言った属性による攻撃……さらには」

 

 「人の肉体を治す技術……まるで魔法使いね。あの鉄仮面の男のコ、私たちとは違う異端技術(ブラックアート)の使い手よ。それも私たち以上の」

 

 「出来れば、話だけでも聞きたいのだが……」

 

 「仮にそれが出来たら、私たち二課の異端技術は飛躍的に向上するでしょうね」

 

 鉄仮面の少年、物々しいヘッドギアで顔をかくし、ぶかぶかの手袋に時代錯誤な戦闘服、そして騎士が握るようなロングソードを携えた人物。通常の物理攻撃を無効化するノイズに対し効果的に攻撃することが可能なシンフォギアシステム以外のノイズ対抗策を身に着けたであろう人物。二課としてもノイズの対抗策は是が非でも欲しい、それが適合者によらずにできるものなら、自分が戦場に出るとすら風鳴弦十郎は考えているが故に、彼の動向は現在最重要事項になっている。

 

 「年の頃は10代前半だろうな。二課を知らなかったことから少なくとも国の関係者ではない。だが、あの戦闘力……特にノイズへの攻撃手段は知っておきたい」

 

 「そうね、私が作ったシンフォギアシステムは別世界に跨るノイズの存在を現実に固定するものだけど……彼はまた違うアプローチでノイズを殲滅したわ」

 

 「どういうことだ?」

 

 「そこにある別位相全てを、攻撃したのよ。そうじゃなければ調律されてないノイズを攻撃出来るわけがない。思いっきり力業で、シンプルな答えね。そしてこの戦闘技術……」

 

 「ああ、これをするには相当な技量がいる。だからこそ不自然だ、10代の少年のものではない。まるで戦い慣れた老練の騎士だ」

 

 二人の前に映された映像はノイズが槍状に迫ってくる中、手にした長剣で的確にカウンターを叩き込んで炭の塊に変えていく鉄仮面の少年の姿。驚くことに解析してみればただの物理攻撃だ。ノイズは攻撃の際に一時的に完全に現世に実体化する。その隙を突けば直接触れない限り一般人でもノイズの打倒は可能である。だが、銃弾並みの速度で迫るノイズを正確に見切ってすべてにカウンターを返すなど並みの所業ではない。

 

 「そして、これ。彼の身体から発されてたものよ」

 

 「未知のアウフヴァッヘン波形……彼は聖遺物を持っている」

 

 「ええ、しかも起動状態の完全聖遺物。世界のどこにも記録がない、ね。興味そそられるじゃな~い」

 

 冗談めかして笑う了子、彼女自体も興味を惹かれているようではあるが弦十郎も事態を重く見ていた。起動状態の完全聖遺物の個人所有のこともそうだが、もっと根本的な部分、戦っているのが子供であるというところだ。現状二課の戦力は自らの姪である風鳴翼、10代の少女のみ。戦力であった天羽奏ですらそうだった。

 

 「……話してみたところ。子供で間違いないだろう、身長が低いだけの大人ではない」

 

 「その心は?」

 

 「了子君も分かるだろう。駆け引きを知らない話術、思ったことを口に出していた。隠すことを覚えた大人にゃ、あんな話し方はできないさ。だからこそ、歯がゆい。なぜ子供ばかり……」

 

 弦十郎の大きな拳が握りしめられる。戦うべきは彼ら子供より長く生きている自分たち大人であるべきなのに、子供におんぶにだっこの状態というのがやるせないのだ。完全聖遺物は起動者以外でも、適合者でなくてもその力を振るうことが出来る。もし仮に鉄仮面の少年の力がその聖遺物によるものであるならば、自分が戦うこともできるかもしれない。

 

 大人というものは子供を守るものだ。たとえその子供たちが自分より強かったとしても。人生の先達として義務がある。それを果たすための弦十郎と了子の会議は予定の時刻を超過してもなお、続いていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「魔神剣!」

 

 手にした木刀から衝撃波が発され、目標の木の幹に深い傷を抉った。初陣からもうすでに3日経った。どうやら俺の母が立花の最終的な治療を執刀したらしく、経過を含めて状態は良好だが、心臓部に傷と現代医療では取り除けなかったあの聖遺物を鎧にしたものの破片が残ってしまったのだそうだ。まさか人の目がある病院で錬金術を行使するわけにもいかず、人体の心臓部の再錬成……つまり一旦殺して生き返らせるに等しい行為を本人の許可なくするわけにもいかず、現代医療でできることをしたと母さんは言っていた。

 

 彼女はいまだに昏睡状態、命の危機は脱したが目が覚めない。小日向にも立花の家族から同様の説明を受けたらしく、昨日は目に見えて意気消沈していた。立花の目が覚めて面会謝絶が解けたら見舞いに行こうと励ましたが……私が響を誘わなければと泣く彼女にそんなことはない、ノイズは特異災害だ。災害を予測できれば誰も苦労しない。絶対にお前のせいではないと励ましたものの、俺の言葉は届いてないようだった。

 

 もっと俺に力があれば……否、継いだ知識と経験をもっと上手に運用できてれば立花はあの場であんな怪我をしなくて済んだかもしれない。助ける為に戦場に立ち、守れなかったなど何という生き恥だ。そう考えるといてもたってもいられず俺は近くの山の中腹で体を動かしていた。

 

 レナス=アルマに刻まれたご先祖の戦闘経験、術、技、そして記憶……初陣でもノイズ相手にあれだけ大立ち回りを繰り広げることが出来た以上、そこは十分すぎるほどの力なのだろう。問題なのは、俺自身だ。戦士としての心構えが全く足りないじゃないか。借り物の使命だけで偉そうに振舞った結果がこれでは目も当てられない。

 

 俺自身の戦う理由を見つける必要がある。うだうだ考えている体力があるからこんな雑念が浮かんで気持ちが沈んでいくんだ。限界まで体を動かして考える余裕をなくしてみてからだ。そこまで体を追い込めば何かが浮かんでくるだろう。

 

 「瞬迅剣!飛燕刃!昇竜刹!陽炎!」

 

 飛び込み突き、2連撃、切り上げ、落下突き……仮想敵であるノイズの動きははっきり言って鈍い。人さえ殺せればいいという単調な動きには技がない、知性もない。一発まともに食らえば終了ということを除けば対処は容易いのだ。レナス=アルマの星霊力を纏わせた術か技ではなく今使っているただの剣技ではカウンターでしか殺せないが、レナス=アルマを使って聖遺物の波動を探知されるわけにはいかない。

 

 連撃が加速していく。木刀の切っ先が音を越えて加速し、発される衝撃波が落ち葉を動かし木の葉を弾けさせる。大上段の振り下ろしをすると同時に、ビシッと音がして木刀が真っ二つに折れ、俺の動きが止まる。折れた木刀の先が木の幹にめり込んで派手な音を立てる。

 

 やってしまった。見れば柄も強く握りすぎたのか亀裂が走っている。如何せん、まだ改造された体のコントロールが上手く行ってない。レナス=アルマを使った強化を行わなくてもこれだ……つくづく人間を辞めたということを実感する。錬金術師というやつはみな目的に素直だ。人格者として有名な父さん母さんですらそうだから、まだ見ぬ他の錬金術師もそうに違いない。

 

 完全聖遺物であるレナス=アルマを使えるようにする……父さんは俺を改造せずに記憶と記録、そしてレナス=アルマを継承するという手段もあっただろうが、父さんの心音でフォニックゲインを溜め切り覚醒したレナス=アルマは容赦なく胸の内にあるだけで父さんの身体を傷つけた。

 

 父さんはレナス=アルマといういまだ人の手に余る物体を後世に、人がきちんと使えるようになるまで継承していかないといけない。だが息子である俺に継承すれば俺の寿命は削れていく。さらに覚醒した以上ノイズとも戦わなければならない……だから、改造した。先史の時代にレナス=アルマの力を振るった「王」と呼ばれた人物たちと同じように、継承された知識を使って。

 

 相当激しく動いたのに息一つ乱れないことに改造大成功だな、と雑念まみれの考えを結局捨てきれず……木の幹にめり込んだ木刀を引き抜き、柄と強引に合わせて錬金術で新品同様に修復する。錬金術に使うエネルギーにはいろいろあるけど、基本は生命力だ。俺の場合レナス=アルマを使える場合はそっちを使うがそうじゃなければ生命力を使う。使ってもレナス=アルマが補填してくれるからあまり関係ないし。他にも錬金術のエネルギーは様々あり、代わりどころでは「思い出」……つまり記憶を焼却するものもあるのだとか。補填が効かない分高出力なのが特徴らしい。

 

 「素晴らしい剣技なワケダ。記憶、記録の継承に人体改造……興味を惹かれる。ゾクゾクするワケダ」

 

 「プレちゃん?」

 

 「その呼称はやめろ!毎度毎度、ワタシはお前より年上なワケダ!」

 

 「いやまあ、それは知ってるけどなんかこうつい癖で。久しぶり、1年くらい?……錬金術師だったんだ」

 

 ぱちぱち、と拍手をしながら俺に話しかけてきたのは眼鏡でおさげな髪形、カエルのぬいぐるみを抱っこした小柄な少女だった。俺はこの人を知っている、名はプレラーティ。俺が物心ついた時から、俺の家に時たまやってきては俺の両親と部屋にこもって何かやっているのは知っていたが……錬金術師だったのか。というか今ならわかる、俺の継承した錬金術……言ってしまえば時代遅れで古臭い錬金術ではなく彼女はもっと洗練された現代の錬金術師なのだろう。カエルのぬいぐるみも錬金された道具だ。哲学兵装かもしれない。

 

 「隠すのは面倒だったワケダ。お前の両親から今後錬金術のことはお前に言えと言われた。既に焔樹家の当代はお前、私は商談を持ってきたワケダ」

 

 「錬金術のこと……ああ!これとか?」

 

 「そう、要はアイテムを売って欲しいワケダ。悔しいが焔樹家の錬金術でしか作れない物だから、こうしてわざわざ出張ってるワケダ」

 

 ああ、と俺が帰り用に持っていたイノーフボトルを見せるとプレちゃんはうんうんと頷いた。そうなのか……確かに便利道具が多い気がするが錬金術としても古すぎてロストしたものだったのか、なるほどね。いやしかしこれ売っていいのか?父さんから話聞いたりとかしたほうがいいのでは?

 

 「ああ、それと届け物なワケダ」

 

 「フルルッ!」

 

 そうプレちゃんが言うとプレちゃんの帽子の下からフルルが姿を現した。え?なんでお前そんなところに入ってるの?は?カエルに押し込められそうになったからこっちに潜った?フルルがまた手紙を咥えていたのでそれを読むと……父さんから錬金関係のアイテムの売買なども任せるというお言葉が。参考価格として父さんの値段も併記されているが……えっ!?高!?なにこれマジで!?

 

 「こんなたけーの?イノーフボトル」

 

 「演算もなしに任意の場所にワープゲートを開ける魔道具が安価であるはずないワケダ。ワタシたちが使うテレポートジェムより高性能なワケダ、古いくせに」

 

 「すげーなご先祖様……わかった、じゃあうちで話そうかプレちゃん」

 

 「だからそれを辞めるワケダ!」

 

 弄りすぎたのかぷりぷり怒るプレちゃんの頭の上に乗ったフルルが実に機嫌よさそうに歌っている対比が何となく面白かったが、それはそれとして俺はイノーフボトルで自宅へのゲートを開いてプレちゃんと其処をくぐった。

 

 なお、プレちゃんと呼びすぎたのか彼女は本気で値下げ交渉を挑んできて、俺はギリギリまで搾り取られるのだった。いや別にいいんだけどさぁ。おまけでアップルグミとかミラクルグミまで持ってくのはどうよ?医薬品だぞ一応、美味しいワケダじゃないんだよ確かに意外と癖になる味だけど。ちゃんと薬として使ってくださーい。

 

 

 

 

 




プレちゃん プレラーティ、かわいい(重要)元男(最重要)。某結社のTSメガネカエルぬいぐるみロリけん玉錬金術師。性癖のデパート。ファウストローブ纏っても大きくならない。一部の適合者は歓喜したとか、知らんけど。

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