闇と光がそなわり最強に見える   作:恒例行事

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第二十三話 師弟和気藹々

 

 エレーナと共同で修行を始めて一週間────

 

 とても順調だった。

 俺は魔力の操作をマスターし続け、師から「『金剛』程度なら取れるだろう」とお墨付きを受け。エレーナは強力になった魔法を操作するために魔力操作から学び直し、俺より数段早い速度で魔力操作を身につけた。

 姉弟子、さすがだぜ。

 もう俺より強いな。

 いや、元々今の俺よりは強いんだけど。

 だから頼み事があるんだが、この触手をしまってはくれまいか? 

 

「やだ」

 

 やだって……おま。

 

 宙にぶらんと逆さまにされている俺は、エレーナのことをじっと見つめた。

 

 師は苦笑いしている。

 おい師、止めろよ。

 愛弟子があんたの娘にいじめられてんだぞ。どうにかしろ。「前に同じことお前やったからいいだろ」だって? それを言われちゃあおしまいよ! 

 

 事の発端は極めて単純だ。

 

 俺との蟠りは多少改善されたとはいえ、やはりエレーナは陽の光が少し怖いらしく、外に出たはいいが本調子ではなさそうだった。中庭でやった方が物とか壊さなくていいしね。

 んで、俺が謝りまくった時同様にぎゅっと手を握って大丈夫だよって言ってたら──こうなった。

 

 なぜ? 

 

「は、恥ずかしいから。お母さんの前でそういうことしないで」

「えぇ……そういう問題なのか」

「そういう問題なのっ」

 

 銀髪幼女が顔を赤くしている。

 いや……幼女だからな。

 俺そういう趣味ないから、「将来美人になるんだろうな」って感想しか出てこない。

 

「エレーナ、それくらいにしておけ」

「うっ……でもお母さん」

「言いたいことはわかる。こいつはそういうやつだ」

 

 親子揃ってひどくねぇ〜? 

 

 俺の足を掴んでいた触手がゆっくりと地面に下ろしてくれる。ううっ、エレーナは理不尽だけどお前は優しいな、エレーナの触手……

 

 触手はゆらゆら揺らいだ後にその姿を消した。

 

「でもあれじゃん、エレーナ陽の光の下でも普通に魔法使えてるな」

「……あっ」

 

 気がついてなかった感じ? 

 ふっ、また俺がファインプレーで一つ問題を解決してしまったか……流石アッシュ・レオフォード。剣聖の息子なだけはある。父親譲りの何かが悪さをしていると定期的に師に呆れられるんだが、一体どういう部分なのか皆目見当もつかないぜ。

 

「よかったな!」

「う、うん」

「流石は俺の姉弟子だ」

「! そ、そうだね! 私姉弟子だから!」

 

 へっ、チョロいぜ。

 所詮トラウマ持ちと言っても善性が根本にある異世界銀髪幼女、現代日本でありとあらゆるサブカルチャーに浅く触れて特に深く吸収してこなかった俺からすれば指先一つでコントロールできちまう。

 

 やれやれ、転生者の辛いところってね。

 

 なんの役にも立たない現代知識しかねーけどな! 

 

 メンタルケアとかには一切役に立ちません。

 

「では弟弟子のお前はもっと頑張らねばんらんな」

「うっ」

「自覚していると思うが……アッシュ。お前は魔力に関する才能は乏しい」

 

 で、ですよね〜……

 

 いやわかってますよ。

 それくらいは。

 ロストしてることくらいはわかっております。

 

「だからこそ、その闇魔法適性が際立っている。初見で【深淵(アビス)】を発動できたのは、後にも先にもお前だけだ」

「えっ……」

 

 エレーナは目を見開いて俺を見てくる。

 

 お、おい師。

 その情報今必要だったか……

 拗らせないか、それ。

 

「全体的なセンスはエレーナが、闇そのものに対するセンスはアッシュが──なんとも歪な弟子どもだ」

「なんか嬉しそうですね」

「教え甲斐がある、というものだ。出来の悪い弟子ほどかわいいとは、よく言ったものだと噛み締めている」

 

 へへっ、てれるぜ。

 むくれたり嬉しそうにしたりとエレーナは忙しそうだが、俺は転生者が故の精神力を持つからな。

 この程度で絆されたりしないぜ。

 

「ニヤニヤするんじゃない」

「はい、すみません」

「まだまだ足りてないのはお前の方だからな、アッシュ」

「はい、すみません」

 

 ひんひん。

 そんないじめなくてもいいじゃん。

 精神年齢三十路でも泣く時は泣くんだぞ。終いには泣くぞ。泣くときは泣いてやるぞ。

 

「ふっ……わたしの勝ち」

「ぐ……まあ? 今は譲ってやるよ。知らんのかエレーナ、世の中最後に立ってるやつが勝者なんだよ」

「じゃあアッシュくんはもうだめだね」

 

 は、は〜〜〜〜!? 

 確かに光も雷も失ったけどまだまだ負ける気ないが!? 才能ないし無力だけど闇魔法極めるが!? が、ガキが……また叩きのめすぞ! 

 

 魔力をうねらせ掌にちっぽけな宇宙を生み出す。

 これが俺の(カオス)

 深淵(アビス)とやらを継ぐのも面白いが、それはエレーナに譲ろう。

 俺は誰かの後を歩いていくだけの趣味はないぜ。

 せっかく異世界きたんだし現代知識で新たな魔法とか作りたいよな! 

 

「あは、小さい」

「ま、まだまだこれからだから。成長期アッシュだし」

 

 今は苦渋をなめてやろうではないか。

 だが。

 だが!! 

 学園とかに入ってから見返してやるからな! 

 アッシュ・レオフォードは終わったって下馬評も何もかも覆して、光と雷から闇に堕ちた新進気鋭の魔法使いとして名を馳せてやる。

 

 そして戦争が起きても後方支援。

 国家錬金術師みたいな扱いは勘弁で。

 父上のような活躍をするのはちょっと……こっちに剣振ってくる化け物がいるってことは、敵にもいるってことだし。

 

 俺やだよ、音速で飛来する人型の化け物と殺し合うの。

 

「…………」

「……師? なんですか」

「あ、ああいや。やはりお前を引き入れて間違いなかったと、改めて思っただけだ」

 

 ウホッ。

 銀髪美人にそう言われると嬉しいね。

 エレーナ? 

 エレーナは別に……幼女は守備範囲外だし。

 

「……むぅ」

 

 そう言ってむくれるエレーナの感情は、俺には想像も出来なかった。

 

 

 

 

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