闇と光がそなわり最強に見える   作:恒例行事

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ノベコンが終わったので初投稿です


第二章 闇の英雄編
第一話 闇夜黎明


 

 早朝、まだ日も昇りきらない時間帯。

 寝ぼけた瞳をゴシゴシと手で擦って無理矢理視界を覚醒させて、起き上がり窓を開く事で朝焼けの冷たい空気を身体全体に浴びる。

 

 その切ない寒さと不思議な爽快感を十分に取り込み、眠気を押し殺してゆっくりと部屋の外に出た。

 

 廊下はまだ寒い。

 まあでも慣れたもんだよ。

 異世界生活はかれこれ……5年(・・)になる。朝ストーブで家全体を温めるとか出来ないから。不便です。

 

「おはよー……」

「おはよう」

 

 しょぼしょぼ目を擦りながらエレーナがやってきた。

 

 彼女は闇魔法使いらしく(?)朝に弱い。

 いや全く関係ないけど。

 でもイメージ的にそれっぽくない? 俺にトラウマ抱いてた4年前(・・・)も陽の光から避けてたし、闇といえば日光に弱いイメージあるわ。

 

 そのまま二人で寒さに身を縮こませつつ、大広間まで足をすすめた。

 

 すでに使用人の人達は朝の清掃や準備を始めているので、その邪魔にならないよう適度に挨拶しつつ玄関を抜けた。

 

 朝焼けの空に、突き刺さるような冷気。

 はぁ、と息を吐くと、白い吐息となって目に見える形で排出される。このなんともいえない冬空の下で行う動作が、日本と変わらないもので、ノスタルジーを彷彿とさせてしまう。

 

 お刺身が恋しい。

 寿司食べたい。

 マグロ〜、チンアナゴ〜、さかな〜。

 

「……なにしてんの?」

「え? さかなの真似」

「そう……」

 

 日本で若いヤングにバカウケだったからな。

 類に漏れず試して遊んでいたが、ふむ。

 ダメみたいだ。

 やっぱあれは美少女がやるからいいんだな。

 

 すっかりエレーナは俺に慣れてくれたらしく、たまに転生者特有の奇行をしても突っ込んでくれるし反応してくれるようになった。優しいねえエレーナは、おじさん泣いちゃうよ。

 これで「将来アッシュと結婚する!」くらい言ってくれるともっと嬉しいんだけど。

 

 10歳(・・・)になり少しずつ幼女から女の子に成長してきたエレーナは、美少女の片鱗がところどころ見え隠れしている。

 

 師に似て美人になるんだろうなぁ……

 

 未来の展望を予想してうんうんと後方腕組み保護者面していると、眠気覚ましを兼ねた柔軟を終えたエレーナが両手を上にあげて、そのまま身体の前に倒した。

 

「……さ、さかな?」

「さかなだ……」

 

 ま、まさか……お前も転生者だったのか!? 

 そう思いたくなるほどに綺麗なさかなだった。まさかリコ○コの記憶でも持ってるのかと疑いたくなる程だったが、エレーナが現地生まれ現地人なのはとっくの昔に理解しているので全て冗談である。

 

「東京タワー」

「……??」

「あ、うん。ごめん調子乗った」

「いつも通りだね」

 

 そして微妙に辛辣である。

 銀髪美幼女から辛辣銀髪美少女に進化しつつあるので油断ならない。隙あらば俺を罵倒してくるし馬鹿にしてくる。でも心の底から言ってるわけじゃないのがわかってるから、俺と彼女の居心地のいい距離感、というやつだ。

 

「変なアッシュ」

「いつも変だって言いたいのか?」

「否定しないでしょ?」

 

 そりゃまあな。

 あえてそういう風に振る舞ってるってのもある。

 まともなメンタルで現実だけ見てると病みそうだし、ほどよくふざけたほうがいいって学んだもん。これが精神年齢40歳近くの身体年齢12歳が誇る人生観だ。ふっ……怖いものはなにもないぜ。

 

 誇らしげにする俺に嘆息しながら、エレーナは足を進めて行く。

 

「今日のルールは?」

「体術禁止、魔法限定、合図あり」

「ん、わかった」

 

 10歳とは思えない賢さを身につけたエレーナが、およそ10歩程の距離の場所で振り返る。

 

 銀色の髪をセミロングの長さまで伸ばしており、その後頭部付近で一つ結びで動きやすいようにまとめあげている。今日は自分でやってこれたらしい。たまに全然起きてこない時があるから、そういう時は俺が身支度整えてる。

 これじゃ弟弟子というより世話係なんだよな。

 それに文句はないけど。

 美少女の髪の毛だぜ。  

 役得だろ。

 少なくとも俺はそう思う。

 

「────【黒蝕】」

 

 朝焼けの日差しが後光として差し込む中、エレーナは堂々と魔法を発動した。

 

 その名を呼べば半径10m(・・・・・)を覆う漆黒が彼女の影を起点に現出し、やがてそれらは不安定な形から徐々に姿を変えていく。

 

 黒く蝕む影。

 闇魔法の中でも汎用的で扱いやすいと評判のそれを、剣や槍に。

 鋭く、相手を貫くための武器。

 かつて俺の肩を貫いた時よりもオリジナリティが多分に含められた、【翠玉級(・・・)】魔法使い、エレーナ・パトリオットの代名詞。

 

 俺の足先に触れるくらいの距離にあるからね。

 

 いやもう本当に頼もしくなったな……

 簡単な光魔法程度じゃ揺らがないぐらい、エレーナの闇は濃くなった。

 それがいいことなのか悪いことなのかはわからんけど、師曰く、「闇魔法使いとしてスタート地点にようやく立った」らしい。彼女は微妙な顔でその賛辞か皮肉かわからない言葉を受け取っていた。

 

「やろう、アッシュ」

 

 これはただの手合わせである。

 師の本格的な修行を日中に行うため、体調も回復したであろう朝に一緒にやろうとエレーナから提案してきた。

 俺としても成長を実感できたし、なにを詰めていけばいいのか理解しやすかったからとてもありがたいんだが──どうにもこの娘は、俺に勝ちたいという欲求が強いらしい。

 

 それが変に捻じ曲がらなかったのは、エレーナ自身の強さのおかげかな。

 

「おうよ。今日も俺が勝つからな、姉弟子」

「油断大敵。今日こそ私が勝つよ、弟弟子」

 

 身体中に張り巡らせた魔力をごちゃ混ぜにして、両の手を合わせた中心から変質させていく。

 

 師に学んだわけでもない、俺が独学で数年かけてようやく形にした俺だけの魔法。

 

「────【死淵(アビス)】」

 

 アッシュ・レオフォードと現代を生きた日本人の魂が混ざり合ってから5年。

 

 齢10歳を迎える歳になり、俺はかつてのアッシュ・レオフォードの影を踏んだ。

 

金剛級(・・・)】。

 俺が保有する階級であり、5歳のアッシュが到達した【黒金級】の一つ下である。

 つまるところ、俺は5年間と日本人男性30年分の経験を活かしてようやく天才の足下に辿り着いたのだった。

 




改めてノベルピアコンテストが終了し無事死亡したため、向こうで更新してた分をハメにも順次載っけていきます〜

全部で80話分積み重なったので、毎日こっちで更新していきますがもし先に読みたいって方がいたら申し訳ないですがピアの方で見てくれると助かります。
ハメでも毎日更新していくので、そのうち追いつくと思います。

重ねて、拙作を読みに来てくださった皆様、応援ありがとうございました。
まだまだ闇光は続きます。
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