闇と光がそなわり最強に見える   作:恒例行事

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第四話 明らかになんか重要そうな少女の一言一句に推測する転生者

 

 ディーと名乗る黒髪の少女に声をかけられて10分。

 本来の目的である魔法演習をやるわけにもいかず、二人でのんびりガラス張りの下を見ながら話している。

 

「ディーはこの街長いのか?」

「どうしてそう思ったの?」

「どうして……って言われてもな。単に世間話の範疇だけど」

「そう。今日来たばっかり」

 

 あ、そうですか。

 数分の付き合いでしかないが、なんとなくこのディーという少女のことを理解してきた。

 

 まず一つ、淡白なように見えて思いのほか会話に興味を持っていること。

 会話の引き出しが「そう」「なんで」「わかった」「違う」の基本4パターンしかないが、別に冷たい性格だからそう言ってるわけじゃなく、興味があることはその理由を聞きたいから「なんで」と聞いてるだけで、肯定だから「そう」。違うことは「違う」、理解したことは「わかった」。

 それを理解してしまえばあとは早い。

 悪意があんまりない、というかな。

 純粋。

 エレーナですらもうちょいドロドロした感情に包まれてるというのに……

 

 脳内の銀髪美少女がサムズアップして俺を睨んだ。

 

「俺のことを知ってたのは?」

「おばさんが言っていたの。次世代の英雄がいるって」

「えぇ…………」

 

 なんの話だよマジで。

 まずおばさんって誰。

 

「おばさんはおばさん」

「そっか……」

 

 エレーナのおかげで麻痺していたが、まだ10歳くらいだからな。こんな感じの個性的な子が普通にいてもおかしくはない。いやかなり自由な子だけども。

 

「それよりも、アッシュ・レオフォード。あなた、なんで闇魔法を使ってるの」

「えっ……と、それは、哲学的な話?」

「てつがく……? 理由を知りたいだけ」

「闇魔法しか使えないから、だけど」

 

 ふむ。

 やはりディーは不思議ちゃんだ。

 どこが不思議ちゃんかと言うと、やはりこう、聞きたいことと言いたいことがはっきりしてるところ。

 

 でも他人の意見を遮るつもりはないらしく、話を聞いた上で改めて聞いてくる。なんか、なんだろう。子供らしくないけど、年齢相応っていうか……難しいな。

 

「闇魔法しか使えない……」

「昔は光と雷使ってたけど、事故で適性無くしちゃってさ。それ以来闇魔法しか使ってないんだ」

「……ふーん、なるほど」

「ディーは魔法使うのか?」

「使うよ。光と雷」

 

 おお。

 混ざる前の俺と一緒じゃん。

 ちょっとだけ親近感湧いたな。

 俺は【金剛級】だからさ、ちょっと同い年に本気出すのは容赦なさすぎるから手加減してやるよ……ククク。あ、でも待てよ。ディーは魔力がかなり濃いんだよね。

 

「ちなみに【黒金級】」

「なんなりとお申し付けください、ディーお嬢様」

「急になに?」

 

 特に感慨なく呟かれた言葉に敗北してしまったので平伏することを選んだ。

 親近感なくなっちゃったな。

 俺より強いやつに会いたくない。

 さっさと頂点に立って適度に威光を保ちつつ楽して生きていきたいよぉ……っ

 

「でも、そっか。闇しか使えないんだ」

「そうなんだよ。だから結構苦労して──」

「──それじゃあ、会いにきた意味がない」

 

 ────ん〜……

 

 ディーの瞳を見る。

 これまでと何一つ変わらない。

 そこには侮蔑も何もない、ただ現実を見てるというか、考えていることをそのまま口にしているように思えた。

 

「俺に会いにここに来たのか」

「そう。あなたを倒すために来た」

「それは、どうして?」

「実験のため」

「…………実験?」

「そう」

 

 おばさん、実験、ディーという名前。

 考えすぎかな。

 異世界だし、ディーって名前はたまにあり得るだろう。だからそこまで露骨なものじゃないとは、思うんだよなぁ。

 

「無駄足になった」

 

 そう言いながら、別に移動するわけでもなく、下で模擬戦をやってる大人の魔法に目を向けているディー。

 

 ……なんとも言えない空気のまま、1分経過した。

 ディーは口を開かない。

 えっこれ、俺がどうにかしなくちゃいけない感じの空気ですか。興味が尽きたとか? でも聞いたらなんでも教えてくれそうなんだよな、この子。純粋っぽいし。

 

 あ、そうだ。

 気になることといえば、魔力についてだ。

 正直、めちゃくちゃビビるくらいには濃い。近寄ればわかる。逆に今肩が触れ合うくらいの距離感だから余計にわかるんだけど、めっっっっちゃ濃い。マジで師と遜色ないくらい。

 それなのに【黒金級】? 

 もっと高くてもおかしくないだろ。

 

「おばさんが、『それくらいがちょうどいい』って」

 

 ……へぇ〜。

 なんか、うん。

 同年代の伏兵って感じがするぜ。

 具体的にいえば隠された実力者枠。

 ああ、この香りは……ペロッ! 間違いない、これは中盤になって参戦する実力者だ! そして正ヒロインの立場も掻っ攫っていくタイプの人気キャラ! 

 

 久しぶりにオタク日本人が役に立ったな。褒美をやるよ、饅頭買って帰るから今日は楽しもう。

 

「アッシュ・レオフォードはどうして【金剛級】なの?」

「単に実力不足だよ」

 

 早く昔の俺に追い付きたいんだけどな〜! 

 残念なことに実力が非常に足りていない。

 確かに格上殺し(ジャイアント・キリング)がしやすい魔法しか使ってないんだけど、だからと言って魔法技能が高いわけじゃない。体操でいえば難易度の高い技だけ使いまくってる基礎のなってない競技者だからね。

 使用してる魔法の危険性と難易度から鑑みて【金剛級】まで引き上げてくれたけど、ここからは本当に俺の努力次第だ。

 

 エレーナにもすぐ追いつかれそうだなぁ……

 

「天才じゃなかったんだ」

「それは昔の話。事故に遭うまでは天才だったよ」

「そう。その頃のアッシュ・レオフォードに会ってみたかった」

「あー……会わない方がいいよ、多分」

「どうして?」

「性格悪かったから」

 

 そう言うと、ディーは下に向けていた視線を少しだけずらして俺のことを横目で見た。

 

「と言うか……フルネームじゃなくていいよ」

「……?」

「呼び方。アッシュでもレオフォードでもいいけど、言いにくいだろ」

「特には。でも、それならアッシュって呼ぶよ」

 

 素直だね。

 

「アッシュ」

「なに?」

「……また、明日」

 

 そう言うと、ディーは軽い足取りで後ろに歩いて行った。

 

 ……なんだったんだ、いやマジで。

 俺に会いに来たって言ってたけど、明るい理由じゃなかったしなぁ。

 オタク日本人的には「これは新たなイベントだ!」と喜んでいるが、アッシュ・レオフォードとしては微妙な顔をせざるを得ない。だってあきらかに人には話せない感じの理由ありそうな空気出てるじゃん。

 

 ディー。

 

 不思議な少女のディー。

 俺よりも上の【黒金級】で、俺よりも上の魔力を持っていて、なぜか俺のことを一人じゃない(・・・・・・)と言う少女。

 

 そんな子がなぜか、実験のために俺と戦いにきた、と。

 

「…………師にそれとなく聞いてみるか……」

 

 また明日(・・・・)ってことは、目的はあるけどそれとは別に会う理由もあるってことだ。

 

 今日解決できる話ではなさそうだし、まあ、仕方ないな。

 

「……さて! 今日も模擬戦やってくかー」

 

 気分を切り替えていく。

 元々戦うためにここに来てるからな。

 

 名簿に記帳されている白金級の男性が模擬戦を終えたのをみて、そっちに駆け寄った。

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