闇と光がそなわり最強に見える   作:恒例行事

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第五話 師曰く、「好きにしろ」

 

 朝にエレーナと戦って、昼に同格・格上の魔法使いと戦って。そうなると夜は何をするんだ、という話になるが──それは非常に簡単です。

 

 一日の振り返りを師と共にやってから、直接手解きをエレーナと一緒に受ける。

 

 もう毎日これ。

 三年以上同じルーティンだよ。

 毎日コツコツ10時間くらい魔法に触れてやっとエレーナに成長速度で勝れるので、まあうん、お察しの通りだよね。

 

 あ~、この生活が続くのもあと5年。

 5年間で同世代で最強になりたい。

 そうすれば俺の夢に一歩近づく。

 そう、不労所得。

 師は偉いけど仕事しまくってるが、俺はそんな責任を背負うつもりは毛頭ない。

 

 無職最高! 

 昼間から飲む酒も最高! 

 一日中寝てゆっくりする生活! これほど幸せな事があるか? 

 

「……そこまで。今日は終わりだ」

 

 適当な考え事と並行して魔法制御を行っていたのを、ゆっくりと魔力を解く事で終わらせる。基礎的な部分の鍛錬も自分でやってるけど、魔法が暴発する危険性のある『実践向け』の内容に関しては師がつきっきりでやってくれる。

 いや、マジで有難い。

 外から見て直すべきところ指摘してくれるし、自分一人だと気が付けない場所を言ってくれる。

 流石は【聖銀級】だぜ。

 

 魔法をただの魔力に戻して、魔力の熱で多少熱くなった頭をクールダウンさせていく。沢山魔法使うようになって理解したけど、魔力を使えば使う程肉体はちゃんと疲労するようになってる。流石に人体にあるものをノーリスクで使用する事は出来ないらしい。

 

「ふー……」

「おつかれ、アッシュ」

「お、ありがとう」

 

 エレーナが氷魔法で冷やした水をくれたので、ありがたく頂戴する。こいつあくまで闇魔法を鍛えたいだけで他の魔法も普通に使えるからな。えっと、水と闇が適正だっけか。

 

 ちなみに魔力操作に関してはエレーナの方がうまい。

 わかっている。

 皆まで言うな。

 基礎的な部分はカスなのだ。

 自覚はあるし毎日努力はしてるので許して欲しい。ただちょっとセンスがないだけだから。

 

 先程言った魔力操作による熱がうんたらかんたら、って言うのも魔力操作の精度に比例する。俺は上手じゃないから溜まり易くて、上手なら溜まりにくいって感じかな。師はセンスより努力派らしいから、そう言う点でも相性抜群で有難い。

 師曰く、「昔は苦労した」らしい。

 そんなの感じ取れないくらいにサクッと魔法使ってるけどね。

 俺も……そうなれるかな? 

 なりたいよねぇ。

 

「ふむ…………」

 

 そんな俺を見て師は何かを思案している。

 

 今後の予定かな? 

 模擬戦ではそこそこ格上を倒せているのだが、流石に師レベルには太刀打ちできない。半端な白金級──つまり、基礎をしっかり固めて特筆する強さを持たない平均的な奴、くらいなら喰えるようになった。

 逆にいえば、尖った要素を持つやつには全然勝てない。

 同格でも厳しいんじゃないかな。

 俺の【死淵(アビス)】って初見殺しの性質が強いし。

 

 尖った奴同士だと大味な戦いになるからなぁ……

 

「あ、そうだ。聞いてくださいよ師」

「なんだ?」

「今日ですね、不思議な少女に出会ったんですよ」

「不思議な少女……?」

 

 師は怪訝な表情をしている。

 

「はい。なんでも、俺を倒すためにこの街に来たって言ってました」

「────……」

「名前はディー。魔力がえらい濃い子でした」

 

 師の反応は──ああ、う〜ん。

 なんというか、微妙だな。

 知っているような、驚いているような。

 だめだな、推し測れん。

 

「ディー……そう名乗っていたのか」

「はい。黒髪でした」

「……かわいい?」

「かわいい方だったと思うけど……」

「ふ──ん」

 

 エレーナさん。

 どうして俺の腕を抓ってるんでしょうか。

 痛いです。

 

「そうやって自分のためにまた(・・)女の子引っ掛けたんだ」

「おまっ、言い方……」

「事実だし。ふーん、そうなんだ」

 

 なにやら不服だった様子。

 もしかして弟分の俺が新たな女の子にデレデレになると思った? おいおい、かわいいところあるじゃんかエレーナちゃんよ。

 

 俺の姉弟子があざとくてすまない。

 

「風評被害を受けたくないだけ」

 

 あ、はい。

 調子に乗ってすみません。

 ため息と共に呟かれた言葉には、ちょっと重い感情がこもっているような気がした。

 

 へへ、そうだよな。

 思い上がりは良くない。

 アッシュはイケメンだが、中身はオタク日本人混じりである。ちょっとキモかったかもしれない。猛省あるのみだ。

 

「で、師。心当たりありますか?」

「……さあ。全く」

 

 あ、これ嘘だな。

 俺から目を逸らして口元を手で押さえたまま適当にサラッと言う師の言葉を嘘だと断定する。知り合いとかじゃないにしろ、多少思い当たることはありそうだ。 

 

 でもまあ言わないってことは、別にそこまで大事なことじゃない……もしくは、自分で情報を精査できないんだろう。また追々教えてくれるはずだ。

 

「そうですか。師なら知ってると思ったんですが」

「なぜそう思った?」

「光と雷を使う前の俺を倒したかったらしく、闇魔法使いの俺に用はないと言いながら「また明日」って消えて行ったので」

「…………そうか」

 

 実験のため、って部分は濁しとくか。

 俺個人としては彼女に興味がある。

 なんか得体の知れない感じが特に。 

 そして俺の知らない場所で因縁が発生してそうなところも、特に。

 

 おばさん(・・・・)とやらが何者かわからんが、これ明らかに面倒ごとの気配してるからね。エレーナとのいざこざを解消して5年──なにもして無いはずなのに勝手になんか裏で進んでそうですごい嫌だ。

 

「まあ、悪いことはないだろう。これからも友好を結ぶといい」

「そうします。【黒金級(・・・)】らしいので、胸を借りるつもりで」

 

 多分戦ったらボコボコにされるんだろな、って感じがする。

 

 なんかむすっとしてるエレーナはともかくとして、師の許可が出たならいいか。問題があればそのうち教えてくれるだろうし。

 

「ディー……」

 

 D。

 まさかそんな安直名前ではないだろうな。

 新たな出会いを歓迎するのと同時に、また一つ踏み込んでいかなければならない出来事が起きそうで、ワクワクと不安が胸を交差した。

 

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