闇と光がそなわり最強に見える   作:恒例行事

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第七話 もしかして父上の因縁来てる?

 

 火急的速やかにやらねばならないことがある。

 

 魔法を磨く?

 違う。

 ディーを告発する?

 これも違う。

 では一体何を今やらねばならないのかと言うとーーーー父上のことだ。

 

 あの人かなり因縁に塗れてるっぽい。

 なんとなくそれがわかった。

 ディーとの会話はそれだけで十分意義のあるものに変化した。だって【光の剣聖】の息子としての俺を殺しにきたっぽいしな。

 

 自分の因縁を一つ解放したと思ったら今度は父上からの因縁が襲いかかってきました〜〜! 殺すぞ〜〜! 卓上調味料があったら全て吹っ飛ばしてるところだった。

 

「うーむ……」

 

 師が仕事中の書斎に勝手に入る。

 ジロリと見られたが邪魔をしてこないとわかった師はそのまま仕事に戻った。目の前で小踊りしたら【黒蝕】でぶん殴られた。痛いです師。

 

「あ、あがが……」

「お前は歳を重ねてやかましくなったな」

「大人になったと言っていただきたい」

「正反対だたわけめ」

 

 そう言いながらも師の口元は薄く弧を描いている。

 

「出会った頃のお前は年齢にそぐわない態度と思想が目立ったが、今は違う。良くも悪くも成長した」

「まあ俺は師のこと大好きですからね」

「……………………そうか」

 

 ため息を吐かれた。

 

 えっなんで。

 銀髪美人だぞ。

 妙齢の銀髪美人を好きじゃないわけがないけど。

 エレーナ?

 あいつはダメダメ!

 まだまだ子供だもん。

 銀髪巨乳美人のヴィクトーリヤ師に勝てるわけがねえだろうがよい!

 

「それで、何の用だ」

「父上のことを調べようと思いまして、なんか資料があるかなと」

「レオパルド卿の? ……少し待て」

 

 そう言うと、師は怪訝な顔をしながらも立ち上がり本棚へと手を向ける。

 

 二冊ほど取り出すと、そのまま俺に手渡してきた。

 

「これは?」

「レオパルド卿……と言うより、もっと漠然とした内容にはなるが、お前ならそれで理解出来るはずだ」

「はあ」

「歴史の続きだ。近代史はもうやったな?」

「人並みには」

 

 師の詰め込めしき授業のおかげで自己学習でもかなりのペースで進んでいる。学園に通ってるエレーナの三歩先を常に行ってると言えばその過酷さがわかるかな。

 

「では、励むといい」

「はいはい」

「『はい』は一回だ」

「はい」

 

 そのまま書斎から出ていく。

 

 ふ〜む。

 まあ師が父上と何かしらの過去があるのはわかってるんだが、それはそれとしてまあアレだよな。

 師はそれなりに『いい大人』であろうとしてくれる。

 俺の感情……と言うより目的を汲み取ってヒールになってもくれた。

 エレーナの一件がいい例だ。

 あの時師の中ではやらなくていいという判断もあっただろう。

 だが、俺のやりたいように仕向けてくれた。

 俺が簡単に許されることを目的としているわけではないと悟ったから。ただの子供相手によく気を向けてくれたよ本当。

 

 感謝してもしきれない恩を抱いている。

 

「出来れば仲良くして欲しいところだけど」

 

 無理だろうな。

 闇と光は水と油だ。

 混ざり合うことは決してない。

 最終的に俺はなんとも言えない微妙な立場に着くんだろう。

 

 闇と光の両方をルーツに持つ、中途半端な人間。

 父上を知る者からは「闇を選ぶとは」、師を知る者からすれば「闇に堕ちた剣聖の息子」ってトコか。

 

 それ自体に文句はない。

 どの道選択肢なんて無いしな。

 俺は現状に満足はしてないが、進むべき道を間違えたとは思ってない。俺にはもう闇しかない。ディーのような暗殺者が来ることも想定してなかったわけじゃないし、戦争が起きるような治安で父上の威光に頼りきりで生き残れると思ったことはないさ。

 

 だから、才能がないこと以外は何も気にしてないぜ。

 

 本当本当。

 アッシュ嘘つかない。

 

 与えられた自室に到着した。

 すでに5年近く暮らしているのでもう慣れたもんだよね。

 たまにエレーナがプレゼントをくれるのでそう言うのがちょびちょび増えていくばかりで、俺が自分から積極的に増やしたものはほとんど無い。

 

 机の上に本を一冊置いてから、俺はベッドに座り込んだ。

 

 師は何も聞いてこなかった。

 ディーのことを何かしら知っているであろう反応で、殺しに来たであろうことも知ってるのか?

 わからない。

 ただ、ディーと呼ばれる黒髪の少女。

 彼女が俺を殺しに来たとして、それを師も知っているとして。

 なぜ止めない。

 俺の成長に利用できると考えた?

 リスクが高すぎる。

 軽く見積もって【聖銀級】レベルの魔力を持つのが相手だ。

 断言してもいい。

 3秒も持たずに殺される自信がある。

 情けない自信だがこれが事実だ。

 現実はそう簡単に覆らない。

 だからこそ俺は徹底して過去の因縁を解消するために動いていた。

 俺に復讐することだけを考えて10年過ごした人間の悪意を、そう簡単に跳ね返せるとは思えないから。

 

 さて、ではこの場合。

 俺ではなく、おそらく対象は父上だ。

 父上が過去に何かしらの関係を持った人間が、息子である俺を殺害することで損害を与えようとしている。

 何年間その恨みを積み続けた?

 少女一人の人生をぐちゃぐちゃにすることで、如何にして。

 

「ふー…………」

 

 ああ、また面倒ごとだったなぁ。

 でもディーは悪い子じゃない。

 殺したいわけでもないと言っていた。

 他に殺したやつがいるなら、少し危ないけど。

 俺を殺しに来てるんなら、ああ、死にたくねぇなぁ。

 

「殺したくはないが……」

 

 殺すつもりはない。

 でも、もしも俺を殺しに来ると言うのなら。

「おばさん」とやらのやり口は卑怯でずるい、最低な行いだ。

 

「まずは父上のことを知らねば」

 

 まだ見ぬ黒幕に恨みを重ねてもしょうがないので、本を手に取る。

 

 タイトルは【災禍の獣について】と、【闇一揆】とやらだ。

 

 さてさて、一体どんな内容なのか……

 お前ならば理解できる、ってのもなあ。

 歪んだ愛情っていうかさ、よくわからん矢印の信頼だよね。

 向けられて悪い気はしないけど、それに応える俺の気持ちにもなってほしいぜ。

 

 手に取った本を、開いた。

 

 

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