──【闇一揆】。
闇魔法使いが稀に引き起こすことのある大規模な暴動の事を指す。
首魁となるのは総じて優れた魔法使いであり、歴史上通算で5回起きている。
第1回。
遥か太古の時代。
国を導く両雄として崇められていた片割れが突如として乱心し引き起こした災い。その際に生まれ落ちた災禍は、今も尚地の底に封印されている。
第2回。
これもまた、太古の時代。
敗北し、捉えられた筈の魔法使いが脱獄し、およそ四半世紀の時を経て再臨。
不意打ちのような形で突如出現したため対応が遅れ、王都が吹き飛ぶほどの苛烈な戦いの末、裏切りの魔法使いが死亡。闇魔法使いに対する弾圧が始まった。
第3回。
第2回から数えておよそ1500年。
闇魔法使いに対する弾圧が徐々に減っていき、一時期は国の総力を挙げて狩られる立場だった闇魔法も少しずつ元の状況へと復権していたのにも関わらず、再発。1回、2回と全く関連性のない女性が首魁として煽動。
旧知の人物であった、【黄金級】の光魔法使いが相打ちする形となって終結。
ここまで読んで思った感想としては、『この国の闇魔法使いヤバすぎ』という話である。
え、冷静に考えてヤバすぎない?
なんで?
なんでそんなに反乱しとるん。
ほとぼり冷める頃になってまたやってるのがもうやばいでしょ。なんでこうなってるんだ……?
【闇一揆】と称される、闇魔法使いが筆頭となって起きる大規模なクーデター。目的は不明、首魁となった人物は皆狂気的な何かに取り憑かれており、人を殺害することを最優先している……
怖っ。
気が狂った人がたまたま起こした、とは考えにくいよなこれ。
何かしらの法則性があるし、それを研究してないとは思えない。国もそれを認知している……いや、認知してるのならそもそも未然に防ぐはず。計5回起きてるそうだし、残った分も見てみよう。
第4回。
現代より2000年前。
およそ7000年近く起きてなかった反抗が発生した。
主犯格は国創立以来の天才と呼ばれた伝説級の魔法使いが、火・水・雷・光を修め最後に残った闇魔法研究に手を付けてから一年。錯乱と共に魔法を放ち、弟子入りしていた者達を皆殺し、国の土地半分を消滅させた後に、発狂し自殺。
……………………。
第5回。
今からおよそ15年前。
闇魔法を研究するグループ、【
半年後、卒業を間近に控えたタイミングで学園に現れ【闇一揆】を宣言。
隣国をも巻き込んだ泥沼の戦争に発展し、一年間続いた戦いはレオパルド・レオフォードによって終焉を迎えた。
概要だけでこんなもんか。
一息吐いて、本を閉じる。
「……15年前の戦争。その原因がそもそも闇魔法使いかよ」
そりゃそういう風潮にもなるし、これだけ回数起きてるのに許されてる理由はなんだ? これなんかおかしいな、絶対何かある。地の底に封印されてる災禍ってなんだよ。ぜぇ~~ったいロクでもない奴じゃん。
よく父上許してくれたな……
闇以外の適性があったら、闇だけは止めろって言われたかもしれん。
それしか残ってないから苦肉の策って気がする。
父上の因縁ってここから始まりだったのか。
そうなるとつまり、隣国も巻き込んでる気がするんだが?
この国だけの問題じゃないような気がするんだけど?
オイオイ犯人の特定とか絶対出来ねーだろこれ。
どうしたもんかな~……
父上の事を知りたかったんだが、それ以上に藪蛇を見つけてしまった感じが否めない。
闇魔法全体に対するあの空気感の正体はこれだったか。
いや、払拭するの無理だよ。
俺がどうこうじゃない。
一個人がどうにか出来る話じゃない。
国が出来た当初からず~~っと定期的に起きてるんだから、そりゃあ闇魔法使いに問題があると思われるのは当然。
しかもこの話を鵜吞みにするなら、他の魔法も完璧に使える様な天才ですら闇魔法に触れたら気が狂っちまったんだろ? よく途絶えなかったな、闇魔法……
「…………15年前、なにが起きたのか。知った方がいいなこれ」
恐らくだけど。
父上と師の何らかの関係もここにある。
だって二人とも、年齢一緒だし。
同い年だよ同い年。
んで、師は闇魔法使いだけど、国に認められた【聖銀級】魔法使い。
あやし~~~い!
怪しいと思います、師!
とは言えだ。
大まかに何があったのかを理解できたし、とりあえずこの本はここまででいいだろう。
えーと、今のが闇一揆についてだな。
一つの事象じゃなく、これ、地続きだ。
問題がずっと折り重なって起きてるんだと思う。
ディー、闇一揆とやら、そんでもって15年前の戦争。
……多分一番手っ取り早いのは、師に直接聞く事だ。あの様子だから、知ってる事も多いだろう。
でもその前に自分なりに答えを探しておくべきだ。
ディーは今すぐ俺を殺しに来た訳でもないし。
もう一冊の本──『災禍の獣について』を、手に取った。