闇と光がそなわり最強に見える   作:恒例行事

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第十二話 ケツ持ちしてくれる大人のありがたみ

 

 一度お手洗いに行くというので案内をメイドに任せて、俺は残った師と話をしていた。

 

 相変わらず背中を向けたままではあるが、うん。

 ちょっと項垂れてるよね。

 

「で、師。流石にキリキリ吐いて欲しいんですけど」

「…………さあ、一体何の話だ?」

「惚けなくていいですよ。もう大体察してるので」

 

 師の古馴染みが犯人とか、そういうパターンでしょこれ。

 

 もしくは、その『薬』とやらを知ってるのか。

 

 師が直接関わっていないにしろ、ディーがどのようにして生活し、どのようにして生まれたのかを知っている筈だ。

 

「『薬』、そんでもって親代わりのおばさん、自分以外は皆いなくなった。最終的な目的は俺、ないしは父上を殺害する事。ほほお、これは大変ですね。父上に言っちゃおうかな」

「…………その程度は簡単か」

「当たってました? それは良かった」

「半ば確信していた癖によく言う」

 

 バレてーら。

 でも俺がほぼほぼ理解してる事がわかって、師もようやく話す決断をしてくれたのか、身体をこちらに向ける。

 

「…………私が知っていることはそう多くはない。だが、彼女の与えられている『薬』とやら。これには心当たりがある」

 

 でしょうね。

 

「15年前に流行りました?」

「……お前は本当に面倒な子供になったよ」

「褒め言葉として受け取っておきますね」

 

 はぁ、と溜息を吐いた師。

 いやだってわかりやすいし……

 そんなんほぼ自白してるようなもんでしょ。

 

「私が使用したわけではないが……当時、あれは魔薬(・・)だった。魔力を増幅し魔法を精密に操作出来るようになる代償として、脳と精神に異常を齎す魔の薬品」

「魔薬……」

「察している通り、15年前の内乱で初めて服用されたものになる。具体的な効果で言えば、そうだな……」

 

 一度顎に手を当てて考えてから、師は改めて口にする。

 

「金剛級が白金級に迫ると言えばわかりやすいか」

「2段すっ飛ばして実力を底上げできるってことですか……」

「勿論、単純に戦闘力が上がる訳ではない。魔力と魔法が如何に強くなっても、それを扱う人間の頭が残念では宝の持ち腐れとなる。ゆえに死兵同然の者しか服用せず、一度でも飲み込んでしまうと中毒で狂ってしまうという話だったが……」

 

 ほう? 

 でもディーは狂ってるようには見えない。

 

「ああ。改良を重ねたのか、彼女が特別なのか。どちらかは定かではないが、何かしら深い問題に繋がるだろう」

「知り合いだったりしないんですか」

「さて、な。彼女の言う『おばさん』が何者なのか、まあ、推測できない事はない」

 

 でもそれは確かな情報ではない、と。

 

 なるほどねぇ……

 全部鵜呑みにする訳ではないけど少なくとも15年前の師はそういうのにも関わっていた。んでこっち側──要するに正規軍──についたからこそ、戦った相手の状況とかは覚えてる感じだな。

 

 ふむ。

 これ子供が一人でどうこう出来る問題ではないね。

 どうしようかなマジで……

 

「でも師、ディーとの交友は続けても構わないって言ってましたよね」

「…………先程お前は薬を要求したな?」

「ちょっと話すり替えるのずるいですよ。要求しましたけど」

「その理由はなんだ。言っておくが、私は服用など認めないぞ」

 

 露骨に話逸らしてきやがった……

 

 まあいいけどさ。

 今は裏で繋がってないけど、なんとなく思惑は把握してるんだと思う。

 それならそれでいい。

 師が父上と敵対してる訳では無いのがなんとなくわかったから、やっぱ信頼に足る人だなって確信を抱いた。

 

「でも奥の手ってカッコよくないですか?」

「お前……」

 

 いや考えてみて欲しい。

 異世界ファンタジー、魔法。

 闇魔法。

 思わぬ強敵。

 なすすべなく倒れる仲間。

 その姿を見て覚醒できる気──全くしねぇ! 

 主人公の器ではないのかもしれない。

 感情に振れ幅が特に大きい闇魔法使いだが、俺が同様にそういうムーブできるかと問われると不安が募る。

 

 なのでいざって時の切り札としてその薬が欲しいな~って。

 

 ダメ? 

 

「ダメだ」

「ですよね~……でもサンプルとして手に入れる分には問題ないですよね」

「その後渡してもらうがな」

 

 ニコリといい笑顔で微笑まれた。

 美人だな。

 美人の笑顔は時として威圧になる。

 いや怖い。

 初めて会った時を思い出す。

 

「まあ……彼女の言うアッシュを殺す時、それを聞き出しておけ。それから考えよう」

「おお、つまりヤバかったら助けてくれるんですね」

「当然だ。お前は私の弟子だからな」

 

 嬉しい事言ってくれるぜ。

 

 要するに、『マジでやばかったら手を出すからお前なりに色々やってみろ』ってことだろ。

 

 俺に成長の機会を与えてくれてるのか? 

 父上の息子として実績を積み上げるチャンスをくれてるのかな。

 さっすが師! 

 よくわかってるじゃないか。

 アッシュ・レオフォードはただ強くなるだけでは許されない。

 父上の息子に相応しい人間にならないといけないからな。ディーの事を放っておくなんて選択肢はやはり存在しない。

 

「好きにやれ。尻拭いは私がしてやる」

「俺、久しぶりに師のこと尊敬してるかもしれません」

「……庭に行くか。少しばかり手解きしてやる」

「あえ」

 

 この後、トイレから戻ってきたディーに慰められる程度には師にボコボコにされた。

 

 大人げないし卑怯。

 でも師に勝ち目はないので、俺は必死になって抗うしか無かった。

 

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