闇と光がそなわり最強に見える   作:恒例行事

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第十三話 闇に堕ちたからといって光を全て失ったわけではない

 

「流石、【聖銀級】は強いね」

 

 そうだろうそうだろう。

 なんてったって俺の師だからな。

 この国で有数の闇魔法使いで、なんなら頂点と言ってもいいレベルだ。いや〜誇らしいな〜本当、光の剣聖の息子で聖銀級魔法使いの弟子! もうハイブリッドすぎて驚いちゃう。

 

「アッシュは弱いけど」

「マジで許せないんだけど、俺を怒らせたいのか?」

「怒っても弱いし」

 

 カァ〜〜〜〜ッッ!! 

 こ、このガキ……!! 

 淡々と告げるその姿は「何を当然のことを」と言わんばかりの冷淡さを秘めている。いやマジで許せないけど。怒りのあまり魔力が増幅してしまいました〜〜! 

 

「おお、すごい振れ幅」

「フゥ〜〜〜っ……まあ、俺は大人だからな。子供の言うことに目くじらを立てるほど弱くないんだ」

「わたしには勝てないけどね」

 

 ピキピキ。

 あったまってきたな。

 

 そしてディーは興味なさそうに本棚を物色している。

 

 庭で師にボコされた後、晩飯にはまだ早いと言うことで俺の部屋に缶詰状態にされたのだ。別に文句はない。ディーと話していたかったし、師と話したいことも大体話終わった。

 他人に訊かれたくない内容でもある。

 ディーとの会話はあまり他人に訊かせたくない。

 

 メンヘラのメスガキに煽られるのは慣れているが、俺がそれを許容していると使用人に知られればますますエレーナが増長する。それを危惧しての行動だった。(勿論使用人はみんな理解しているのでとっくに手遅れだがアッシュは気がついていない)

 

「対戦ありがとうございましたってやつだな」

「……? よくわからないけど、多分負け惜しみ」

 

 おばさ〜〜ん! 

 この娘さん生意気です! 

 薬で人体実験してる暇があったら人格矯正してください! 清廉潔白でお兄様と親しんでくる子が好みです! 同い年のメスガキしか周りにいないんだけど! 

 

 どうせ人道から外れるんだったらもっとお嬢様っていうか、無感情ってタイプにして欲しかったぜ。

 

「アッシュはあの人みたいになりたいの?」

「あの人……師のことか」

「そう。すごく強い」

 

 魔力だけなら匹敵するかもしれないけど、実力で隔絶した差がある。

 

 ディーもそれは感じ取ったんだろう。

 今の俺は【金剛級】で、その俺をボコボコにするディー。

 そのディーを遥かに上回るであろうヴィクトーリヤ師のパワーバランスはなかなか無視できたものではない。

 

「ん〜……なりたいけど、後継者にはならないよ。それはエレーナのやることだし」

「でもとにかく強くなりたいなら、後をなぞるほうが早い」

「よく知ってるな……」

「わたしも似たようなタイプ? らしいから」

 

 へぇ。

 あの光と雷の感じ、確かになんか覚えがある。

 でも具体的な人物は出てこないな……

 3歳の頃の記憶とかだいぶ薄れてきたししょうがない部分はある。

 

「でも……アッシュの魔法は、それだけじゃない気がするよ」

 

 鋭いなぁ。

 実のことを言うと、師からもそれは伝えられていた。

 

 曰く、俺の魔法は『普通ではない』らしい。

 

 なんでも闇魔法特有の精神汚染がウンタラカンタラとかなり興奮した様子で語っていた。まあ実際に死んだ人間が思い出して撃ってるんだからそうもなりますよねと納得しつつ、そんなことは言えないので「いや〜なんでだろうなナハハ」と誤魔化した。

 結果、やはり俺は闇魔法の天才だという扱いを受けた。

 ちゃうねん。

 本当はただ死んだから適性があるだけやねん。

 別に魔法の天才じゃ無いねん。

 死というものがあまりにも馴染み深いだけなんです。

 

 俺が普段使ってる魔法はあくまで他者に深い害をもたらさないように調整したものだ。ちゃあんと精神的なダメージが残らないようにしてあるし、物理的な威力も高くない。【黒蝕】に打ち負けるレベル。

 

 でも師と戦う時だけは全力だ。

 そうでもしないと勝ち目がないし、向こうも成長を実感出来ないのだから。

 流石に戦争や殺し合いを経験してる師は精神的にも強く、多少俺の闇に飲まれた程度では屈しない。うほ〜、精神的に強い銀髪美人最高! メンヘラの娘さんをどうにかしてくれませんか? 

 だめですかそうですか。

 

「本当はもっと強い。そうでしょ?」

「さてな。少なくとも、ディーにそうすることは無いと思う」

 

 初めて師が食らった時とかやばかったもん。

 

 本人が「忘れてくれ」と多少恥じらいながら言ってくれた思い出は墓場まで持っていく。銀髪美人の赤面顔、たまらんね。あ、エレーナの赤面? どうでもええわ。

 

「……そうなの?」

「え、うん」

「なんで? わたし、殺しに来たんだよ」

 

 えぇ〜〜……

 

 ディー、お前もやっぱり面倒臭いな。

 

 ただの純真無垢な子供じゃない。

 ちゃんと情緒があって、それを押し殺せる精神性があって、うーん、これだと自分の立場も理解してそうだな。

 

 ……………………フゥ〜……

 

 一度乗りかかった船だ。

 ここまできてはいサヨウナラとはしない。

 アッシュ・レオフォードは英雄の息子だからな。

 肩を並べるとまではいかなくても、影くらいは踏んでおかなくちゃあならん。

 

 ディーに出会ってからこうやって言い訳してばかりだ。

 

 それもこれも全部父上とそれを取り巻く因縁が悪い。今度家に帰ったら少しは愚痴を吐いてやらんと気が済まん。それくらい面倒事がこちらへやってきております。

 

 あ〜あ、姉上が恋しいわ。

 また彼氏が浮気したとかそういう話聞いて慰めたりとかそういう普通の会話してぇ〜! 

 

「言っただろ? 俺はディーと仲良くしたいって」

「……でもそれは、殺しに来るまでって」

「その後はその後だ。俺が殺されないで、ディーのことを奪っちまえばいい」

 

 ディーは目を見開いた。

 

「俺に接触してきたのが間違いだったな。闇に堕ちても俺は【光の剣聖】の息子だぜ」

 

 そう簡単に諦めると思わないで欲しい。

 そうじゃなきゃ、あんなふうにエレーナに命を賭けたりするものかよ。

 

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