アザゼルさんから和平の話が切り出されたのを皮切りに、散在していた反抗勢力が集結して既に一大勢力と化している事が伝えられた。それについては、昨日僕がそれに関する懸念の有無を確認した時にミカエルさんが浮かべた表情から薄々感じ取っていた。だから、元士郎の
そうして、アザゼルさんが「例の件」という言葉を口にすると、サーゼクス様がそれに関してアザゼルさんとミカエルさんに意志を確認すると二人ともそれに同意したのだが、当事者三人とセラフォルー様以外には全く話が見えて来なかった。そこで、僕が皆を代表する形でおそらくは「例の件」というものを提示したであろうサーゼクス様に確認を取る。
「あの、サーゼクス様。話が見えてこないのですが」
すると、予想外にも程がある言葉が飛び出して来た。
「あぁ。実は以前から二人にはある事を申し入れていたんだが、それがたった今、承諾されたんだ。三大勢力の友好の懸け橋として、君を三大勢力共通の親善大使とする事をね」
「えっ?」
三大勢力共通の親善大使に、僕が?
サーゼクス様から余りに大き過ぎる事柄を初めて聞かされた事で、僕は戸惑いの色を隠せずについ尋ねてしまう。
「失礼ですが、一体どういった経緯でその様な話に?」
すると、サーゼクス様は事の経緯について説明を始めた。
「事の始まりは、君がネビロス総監察官と面会したその翌日の事だ。総監察官が私の元に訪ねてきて、ある事を提案してきたんだ。……もし近い内に開催される首脳会談を機に協調体制へと移行、つまり君の提唱した聖魔和合を目指すつもりなら、提唱者の君をその象徴とするべきだとね」
……ネビロス総監察官。
一度は全てを奪われる事になった僕にとって、余りに意外過ぎる名前が出てきた。僕がその事に大きな疑問を感じる中、サーゼクス様の説明は続く。
「そして、その為にまずは三大勢力の友好の懸け橋である三大勢力共通の親善大使、いわば聖魔和合親善大使に就かせる様に進言してきたんだ。先日、君の家に泊まった時にも言ったね。ネビロス総監察官からの申し出を聞いた直後は余りに突飛過ぎると思ったと。それはこの事だったんだよ。私はあの場では検討する余地が大いにあると言ったのだが、実はあの時既にこの提案を受け入れた上で天界と
ここで、アザゼルさんが別の視点での補足説明を入れて来た。
「それだけじゃないぞ、イッセー。これには、お前に対しての警戒意識を和らげる効果もあるんだ。俺達堕天使がお前の事を警戒した一番の理由は、お前が敵対勢力の悪魔陣営に所属しているからだ。天界の方もほぼ同じ理由だろう。だから、天敵であるお前を何としてでも排除しようとする動きが活発となり、一触即発の状況に陥った。だが、ここで和平が成立した上でお前が親善大使として味方となったのなら、話が全く変わってくる。何せ自分達が脅威と考えていた存在が敵でなくなり、それどころか味方になるんだ。そうなれば、一触即発の状況はひとまず収まる。その後、お前がしっかりと信用を勝ち取っていく事で強い警戒心はやがて頼もしさへと引っ繰り返るだろう。ちょうど今、サーゼクスの妹がそこのトンヌラって奴を恐ろしい敵にするくらいなら心強い味方にしようって考えている様にな。そうなったら、後はトントン拍子で事は解決するさ」
アザゼルさんの補足説明が終わった後、今度はミカエルさんがネビロス総監察官から始まった提案を受け入れる為に必要だった事を話し始める。
「こちらは天界と教会との間に認識のズレがありますので、堕天使達ほど簡単にはいかないかもしれません。ですが、それでも現状を改善する切っ掛けとするには十分でしょう。ただ、その為にはどうしても貴方の為人を知る必要がありました。首脳会談を悪魔の領地である駒王学園で開催する事を承諾する際の条件として、私もアザゼルも貴方と直接面談する事を挙げましたが、今思えば正解でした。信用するに十分な物を得られたのですから」
……つまり、僕はまた総監察官の思惑通りに事を運ばされたという事か。僕は少なからず敗北感を抱いてしまったが気になる事が二つあったので、それを一先ず棚に上げてサーゼクス様に確認する。
「二つ、気になる事があります。最初に、「まずは」とはどういう意味でしょうか?」
僕の問い掛けに対して、サーゼクス様はまるで出来の良い生徒を褒める様にしてから答えを返し始めた。
「いい所に気づいたね。そう、親善大使はあくまで第一段階なんだよ。まずは聖魔和合親善大使として、三大勢力の主だった面々と顔を会わせながら実務をこなしていく。そうして信用と信頼を積み上げて確固たる基盤をそれぞれの勢力に築き上げた所で、三大勢力全てに対する特例監察官に就任させて各勢力における組織運営の健全化を図るというのが、ネビロス総監察官が提案した新時代の構想なのだよ。その意味では、あらゆる面で中立の立場に立つ事のできる君こそが適任だとね。……本当に凄い方だよ。おそらくは悪魔の中で誰よりも君の事を深く理解した上で、これから君や我々が為すべき事の道標を立ち所に作り上げてしまったのだから。しかも、聡い上に勘も鋭い君に悟られない様に細心の注意を払いつつ、この一件が三大勢力に受け入れられる様に様々な形で精力的に差配したのもあの方だ」
……総監察官が僕に大きな期待を寄せているのは、よく解った。
「総監察官、貴方は一体……?」
それなら、どうして数日前にはあの様な事をしたのか。僕は総監察官の真意をどうしても読み取れずにいた。しかしここで思い悩んでも仕方がないので、僕はもう一つの気になった事を尋ねてみる。
「もう一つ、宜しいでしょうか? リアス部長やソーナ会長には失礼ですが、未だ成熟していない悪魔の眷属に過ぎない僕にその様な大役を任じるなど、別の神話体系から見て本当に大丈夫なんですか?」
そう、これが大きな問題なのだ。どれだけ敵を打ち破る強い力を持っていても、身内ならまだしも外部勢力へ働きかける場合にはその裏付けとなるものがどうしても必要になって来る。その最たるものが、所属勢力や組織における地位や序列だ。また、悪魔の場合は眷属悪魔というだけで問題外とされる事が多い。確かに何らかの形で契約者が不利益を被った時、眷属悪魔では対処し切れない場合が殆どである以上、最初から独立した悪魔と関わりを持った方が色々と都合がいい。その意味では、僕の現在の地位では親善大使という重要な役職を務めるには相応しくない。
僕がそう考えていると、サーゼクス様が僕の質問に関する返答をし始めた。
「それについてだが、一つ案がある。爵位を持つ家に君が養子として入り、正式に次期当主としての指名を受けるというものだ。これによって、爵位持ちの次期当主となった者が別の家の次期当主の眷属という訳にはいかなくなるので、君の上級悪魔への昇格と
……余りに突飛過ぎて、現実感が全くなかった。僕はその前提条件となる「眷属悪魔を次期当主として養子に迎え入れようとしている爵位持ちの名家」が存在するのか、サーゼクス様に尋ねてみた。
「その様な物好きな方なんて、本当にいらっしゃるんですか?」
すると、サーゼクス様から逆に尋ねられてしまった。
「イッセー君。君は先日ここを訪れたネビロス総監察官から話を聞いていないのか?」
何故そこで総監察官が出て来るのかが解らなかったが、僕はやや婉曲的に総監察官と何を話したのかをサーゼクス様に伝える。
「総監察官は親善大使の件やそれに繋がりそうな話は特になされていません。……それどころか、僕が
そこで、サーゼクス様はようやく納得した様な表情を浮かべると共に僕に対して今の話を忘れる様に言って来た。
「そうか。そういう事だったのか。イッセー君。済まないが、どうやら私の勘違いだった様だ。今の話は忘れてくれたまえ。……イッセー君の事を話す様子からは、その様な事をなさっていたとは到底思えないのだが。これは私が少々先走ってしまったか。だがそうなると、親善大使を眷属契約の解約対象とするしかないな。しかし、それでは「余りにも贔屓が過ぎる」と身内からの不満が噴出してしまい、今後の活動に差し障りが……」
そして、サーゼクス様はどうするべきかを考え込んでしまった。それを見かねたセラフォルー様が、サーゼクス様にある制度の適用を提案する。
「ねぇ、サーゼクスちゃん。それなら、イッセー君に代務者特例を適用するのはどう?」
このセラフォルー様の提案を聞いたサーゼクス様は、悩みが晴れたと喜んだ。
「成る程、その手があったか! 確かに、今後の三大勢力の在り方を左右する事になる聖魔和合親善大使なら、「本来魔王が従事するべき職務を代行して行う者には、在任中に限り魔王直属としての地位と権限が与えられる」この制度を適用できる。流石に上級悪魔に即時昇格という訳にはいかないが、魔王の代務者であれば眷属悪魔でも外に対する面目は立つ。後はイッセー君が功績を積み重ねて、自力で上級悪魔に昇格するのを待てばいい。それで、悪魔勢力におけるイッセー君の立場が盤石となる」
そして、セラフォルー様が僕の今後に関する話を始めた。
「これで、イッセー君の疑問は全て解消だね☆ ……という事で、今後のイッセー君は外交に深く関わるお仕事に携わる事になるから、私達悪魔勢力では外交担当の私が直接の上司になるの☆ 監察官に就いたら政治担当であるサーゼクスちゃんの直属に異動になるけど、それまでは一緒に頑張ろうね☆」
セラフォルー様が悪魔勢力における僕の立ち位置を説明し終えると、今度はアザゼルさんが堕天使勢力における僕の立ち位置を説明し始めた。
「こっちは俺の直属だな。まぁお前の知識を少しばかり披露するだけで、大半がお前の味方になるだろう。現に、お前の
アザゼルさんの説明が終わると、最後にミカエルさんが天界での立ち位置を説明する。
「天界に関しては、ガブリエルが貴方の上司となります。穏和な彼女であれば特に問題はないでしょうし、既に将来を誓い合っている女性はおろか子供までいるとなれば、嫉妬の類も比較的少ないでしょう」
ここで、アザゼルさんから待ったが掛かった。
「……ちょっと待て、ミカエル。今、あり得ない言葉を耳にしたんだが。ヴァーリから将来を誓い合っている女がいる事はさっき聞いたんだが、子供だと? イッセーはまだ高校生だぞ。いくら何でも流石にあり得ねぇだろ」
確かに、常識から考えるとアザゼルさんの言う通りだった。しかし、アウラに会っているミカエルさんはアザゼルさんの言い分に首を傾げ、逆にアザゼルさんに尋ね返した。
「おや? 貴方は知らなかったのですか、アザゼル? 兵藤君には、アウラという名の子供がいるのですよ。その身に宿した「魔」から生まれたとの事で、兵藤君に良く似た可愛い女の子でした」
ミカエルさんがアウラの事について言及すると、サーゼクス様がそれに続く様にアザゼルさんとの面談の時の事を話し始めた。
「そう言えば、イッセー君は一昨日に行った面談の直前までギャスパー・ヴラディ君の指導をしていたから、アウラちゃんはお父さんであるイッセー君の邪魔にならない様に精神世界の外へは出ていなかった様だな。だから、アザゼルはアウラちゃんと会う事ができなかった訳か」
そして、セラフォルー様が追い打ちをかける様にアウラと親しい間柄である事をアザゼルさんに伝える。
「アウラちゃん、プライベートでは私の事を「レヴィアたん」って呼んでくれるのよ☆ しかも魔法少女としての私に憧れてくれるんだもの☆ もうほんっと可愛いんだから☆」
お三方のこうした話を体を震わせながら聞いていたアザゼルさんは、とうとう感情を爆発させた。
「ウガァァァァッ! 何てこった! イッセーにまで先を越されていたのか、俺は! ……おい、イッセー! この際だ、俺にもそのアウラって娘に会わせろ! コイツ等は知っているのに、俺だけ知らないってのは不公平だろう!」
アザゼルさんから出された場違い過ぎる要求に、僕はそれで本当にいいのかを確認する。
「いいんですか? 確かにアウラは僕がコカビエルと戦っている間、僕の「魔」に関するサポートをしていましたから、コカビエルが「神の不在」を暴露した時には僕を通じて聞いていますけど」
すると、アザゼルさんは大胆にも許可を出し、お三方にも確認を取ってきた。
「あぁ、構わねぇよ。一番大事な事については既に俺達の間で同意を得ている。それでいいな、サーゼクス、セラフォルー、ミカエル?」
「私は構わないが、セラフォルーは?」
「私も問題ないよ☆」
「……まぁいいでしょう。流石にこれ以上アザゼルを仲間外れにするのも酷だと思いますし」
最後のミカエルさんの言い分こそかなり酷い物があったが、結局はお三方の同意が得られた事で僕はアウラを呼び出す。
「解りました。アウラ、出ておいで」
僕の声に応じてアウラが20 cm後半程の大きさで現れると、僕に本当にここにいていいのか尋ねてきた。
「ねぇパパ。出てきたのはいいけど、あたしがここにいて本当にいいのかなぁ?」
その不安げな表情を見た僕は、アウラに問題がない事を伝えると共にアザゼルさんにご挨拶をする様に促す。
「偉い人達から許可を貰ったから、大丈夫だよ。それに後で問題になったら、親である僕が責任を取るだけだから。それよりも、アウラ。アザゼルさんにご挨拶しようか」
僕に促されたアウラはアザゼルさんに自己紹介を始めた。ただ、僕が「アザゼルさん」と呼んでいたのにつられてしまったのか、アウラはアザゼルさんを「アザゼル総督」ではなく「アザゼル小父ちゃん」と呼んでしまった。
「ウン! 初めまして、アザゼル小父ちゃん! あたし、兵藤一誠の娘でアウラと言います! パパ、元々物作りが大好きなんだけど、そっちで話の合う人が余りいなかったから、アザゼル小父ちゃんと知り合いになれたのを凄く喜んでます! だから、これからもパパと仲良くして下さい!」
しかし、そこは大人のアザゼルさん。「小父ちゃん」呼ばわりを軽く受け流して、アウラに優しく話しかける。
「オウ。なかなか元気のいい、それでいて利口なお嬢ちゃんだ。初めまして、俺がアザゼルだ。実はな、俺の方もここまで話の合う奴がいなかったんだ。だからアウラ、お前のパパとはこれから仲良くさせてもらうから安心しな」
アザゼルさんから僕と仲良くするという言質を取れたからなのか、アウラはアザゼルさんに笑顔で感謝の言葉を告げた。
「ありがとう、アザゼル小父ちゃん!」
そのアウラの笑顔を微笑ましく見やりながら、アザゼルさんはポツリと呟いた。
「アザゼル小父ちゃん、か。最後にそんな風に呼んでもらったのは、確かあの時か。……随分と久々に聞いたな」
感慨深げにそう呟いたアザゼルさんの言葉を聞いてしまった僕は、その視線が朱乃さんの方を向いているのに気付いた。……どうやら、アザゼルさんと朱乃さんは単に顔見知りというだけではなかったらしい。
こうしてアザゼルさんの顔合わせが終わったアウラを僕の肩の上に座らせると、アザゼルさんは話題を別の物へと変えて来た。
「さて、こうして三大勢力の和平、もっと言えば聖魔和合に向けてある程度の道筋を作ってきた訳だが、そろそろ俺達以外に世界に影響を及ぼしそうな奴等に意見を訊いてみるか。まずはヴァーリ。白龍皇を超えていこうとするお前は、これから世界をどうしたい?」
この話の振り方で、僕はアザゼルさんの言う「世界に影響を及ぼしそうな奴等」とは誰の事なのかを察した。神をも殺せる可能性を秘めた神器、
「俺は強い奴と戦えればいいさ。……以前なら、そう言っていたんだろうな」
「ホウ? じゃあ、今はどうなんだ?」
自分の予想とは少し違ったヴァーリの答えを聞いたアザゼルさんが改めて尋ねると、ヴァーリは現在の心境を語り始める。
「ただ強いだけの奴には、もう興味なんて殆どないよ。どうせ戦うなら、俺が俺の全てを懸けて戦うに相応しいと思える様な相手じゃないとな。……そう。お前の事だよ、兵藤一誠。お前と真っ向からの真剣勝負ができるのなら、俺はそれで十分だ」
ヴァーリがそう語ると、アザゼルさんは納得の表情を浮かべた。
「成る程。確かに今のお前なら、そう答えるだろうな。それじゃ、次はそっちに訊いてみようか。神滅具でも特に上位と謳われる
そういえば、レオは一人で旅をしている間、何度も堕天使や悪魔に襲われている。だから、アザゼルさんがレオが魔獣創造の保有者である事を知っているのは当然だ。悪魔側の出席者の多くが驚いている中、レオは自分の気持ちを正直に語り始めた。
「はっきり言うと、イッセー兄ちゃんや瑞貴兄ちゃん以外は別に堕天使や悪魔がどうなろうと僕は何とも思わないよ。一年前までは「将来の禍根になる」だの「眷属になれ」だの言われて襲われ続けた訳だし。まぁ戦いが無くなって、イッセー兄ちゃん達や
このレオの答えを受けて、アザゼルさんは意外な行動に出た。……レオに対し、頭を下げて謝罪したのだ。そして、レオに関する当時の堕天使側の内情を話し始める。
「それについては、謝らせてもらう。本当にすまなかった。ただ誤解のない様に言っておくが、俺はお前さんに関しては途中から手厚く保護する様に命令を変更していたんだ。何せお前さんの元に向かった堕天使達は全員返り討ちにあったが、誰も死んでいないし怪我も大した事はなかったからな。これなら神器の悪用はないだろうって事で命令を変更したんだ。だが、お前さん達に返り討ちにされたのを根に持って、俺の命令を無視する馬鹿が余りにも多くてな。終いには特に酷い奴等を何人か見せしめに処刑する事で、俺が本気である事をはっきりさせる必要があったくらいだ。そうして組織の引き締めが一通り済んだ所で、今度こそ間違いがない様にシェムハザかバラキエルをお前さんの元へと向かわせる予定だったんだが、そこの武藤礼司に先を越されたって訳だ。……やっぱり、お前さんに対しても最初から俺が直接出向くべきだったな。そうしたら、イッセーにも辿り着いていたかもしれねぇ」
昨日ミカエルさんから話を聞いた通り、やはり堕天使勢力は中堅層がゴッソリ抜けている事で、上意下達が上手くいっていないらしい。何処の勢力も少なからず問題を抱えている事を僕が改めて感じ取っている中、レオはアザゼルさんにもしもの可能性について語ってみせた。
「ご愁傷様、堕天使の総督さん。確かに僕を迎え入れていたら、イッセー兄ちゃんもそっちについていたかもね。アウラちゃんの話している感じからして、イッセー兄ちゃんと一番相性が良さそうなのは総督さんみたいだし」
このレオの発言を聞いたアザゼルさんは深い溜息を一つ吐いた。
「何だか、未練が募る様な事実が続々と解って来るな。それじゃ、最後にイッセー。……なんだが、何か聞くまでもねぇ様な気もするな。何せ、聖魔和合を立ち上げた張本人だからな」
アザゼルさんは最後に僕に対して問い掛けをしてきた。この際だから、僕は聖魔和合を立ち上げた一番の理由について明かす事にする。確かに、ここで建前だけを話したら、かえって信用してもらえなくなるという理に基づく判断もある。だが、それ以上に個人的な情に基づく判断の方が大きかった。……最初は、それこそ首脳陣には一番の理由なんて話せないと思っていたが、どうやらこの人達の前で建前だけを語るのが嫌になったらしい。
「確かに、僕にとっては三大勢力の和平は通過点に過ぎません。ただ、その目的については聖人君子よろしく「世界平和の為」なんて事ではなく、酷く個人的なものなんです。まず逸脱者である僕がこの世界で堂々と生きていける様にするには、聖魔和合が必要不可欠。その上で、世界で一番大切な女の子と添い遂げて、可愛い娘と三人で一緒に暮らせる様にする。それが僕にとっての聖魔和合の最大の目的です。……結局の所、聖魔和合で一番得をするのは提唱者である僕なんですよ。そのオマケで僕の周りにいる大切な人達も、そして僕の知らない何処かの誰かも、何らかの形で少しずつ得をするってだけなんです。ただ、そこからまた別の誰かが新しい何かを始めてから皆に働きかけて、そして皆がほんの少しだけ得をする。それをずっと繰り返していく為の切っ掛けになれば、聖魔和合は世界にとっての成功なんじゃないかなって、僕は思うんです」
僕が聖魔和合に対する本音を語ると、アザゼルさんとミカエルさんは意外そうな表情を見せる。
「まさか、イッセーがここまで本音を語って来るとは少々意外だった。だが、私欲なんてない様な素振りをしている奴よりは余程好感が持てるぜ。そういう奴ほど、体面を気にして変な嘘を吐き始めるモンだからな」
「そうですね、アザゼル。それに兵藤君が望んでいるのは、生きとし生けるものなら誰もが望むものです。これなら、聖魔和合親善大使は問題なく行けそうですね」
ただ、僕の本音を受け入れてもらえた様で少し安心した。そして、三大勢力が和平を結ぶ事についてのヴァーリの意見を聞いた事である事を思いついていた僕は、思い切ってヴァーリにそれを提案する。
「ところでヴァーリ、一つ提案がある。この首脳会談が終わって無事に三大勢力の間で和平が成立したら、僕と一度戦ってみないか?」
「……ハッ?」
完全に虚を突かれたからか、僕の提案を受けたヴァーリの表情は少し間の抜けたものだった。
いかがだったでしょうか?
なお、活動報告でもお伝えしていますが、投稿通算百話記念としてリヒトを主人公としたスピンオフ作品「赤き覇を超えて外伝 夜天光の騎士」の連載を開始しました。拙作と合わせてお楽しみ下さい。
では、また次の話でお会いしましょう。