赤き覇を超えて   作:h995

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前話における補完話となります。
どうか最後までお付き合い下さい。

追記
2018.11.14 修正


第十話 祝福の風 無窮の光

Overview

 

 八神はやてが兵藤家の養子となり、兵藤はやてとなったその日の夜。

 

「……それじゃあ、始めるよ」

 

 一誠は、はやての体を蝕む物の解呪を始めた。この為に一誠は自身の事について「魔法使い」としてはやてに教えると共に他言無用である事を伝え、はやても実演込みで説明されたこともあって他言無用を必ず守ると約束した。

 そして一誠は、はやての体を蝕み、そして孤独に陥らせた物に目を向ける。はやてが抱きかかえているそれは、幼い時に気が付いたらはやての側にあり、何度か捨てようとしてもいつの間にか戻って来ていたという正に曰くつきの本だった。この本は真っ黒な装丁で百科事典程の大きさをしており、その表紙にはドイツ語らしき言語で「闇の書(Buch der Dunkelheit)」と書かれてあった。鎖で厳重に封印されていたが、見る者が見ればかなり禍々しい気配を放っているのは明らかだった。

 

「月の光よ。ここに集いて心を鎮め、魔を祓う希望となれ」

 

 その詠唱と共に両手を下からすくい上げる様に胸の前まで持って行くと、そこに光が集まってくる。そうして集めた光を両掌ですり合わせる様にしてから、そのまま右掌を前へと伸ばすと、とても優しく温かな月の光が放たれた。

 

「フルムーンレクト」

 

 満月の力を持つ光を放つ事で荒れ果てた心に安らぎと優しさを与え、更に対象を蝕むあらゆる力を祓う鎮静浄化魔法、フルムーンレクト。

 もし悪霊に取りつかれていた場合には、その悪霊を追い出すだけでなく怨念を浄化して昇天させてしまう事も可能だった。

 闇の書という題名の本に宿った幾多もの怨念がはやてを苦しめる一因を為していると見た一誠は、まずははやてと闇の書の両方にフルムーンレクトを使用する事ではやてからの過剰な魔力吸収を抑えようとしたのだ。なお、それでも駄目だった場合には、エクスカリバーの最大威力を更に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の最大倍率で強化した一撃を用いて闇の書を消し飛ばす事になっている。

 

 ……ここで、闇の書の事を知る者であれば想定外にも程がある事態が発生した。

 

 フルムーンレクトには、実はモチーフとした光の巨人の能力とは別に、対象の状態を万全の状態に回帰させるという特性がある。その特性によって救われたのが、現在は電脳世界の守護者として活躍するアルカディモン、正確にはその前世である怨霊達だ。そして、それが術式をプログラム化して使用する様な魔導文明の産物に使用されたのである。

 

 一つ、質問をしよう。この場に一台のPCがある。しかしメインプログラムにバグが発生し、プログラムの修復も困難な場合、最善の状態に戻すにはどうすればいいだろうか?

 

 ……その答えが、闇の書に対して行われていた。

 

「何や? 本の題名が変わったんか? ……アカン。さっきと同じドイツ語みたいやから、わたしにはとても読めへん。なぁ、アンちゃん。これ、なんて書いてあるんや?」

 

 はやてはそう言って、サジを投げてしまった。しかし、ロシウの薫陶を受けた関係でオカルトに関係の深い言語は一通りできる一誠には多少のスペルの違いこそあったが意味を読み取る事はできた。

 

「夜天の書(Buch der Nachthimmel)……?」

 

 ここで、一つの昔話をしよう。

 

 かつて、こことは異なる次元世界にベルカという王朝が存在していた。この国の魔法は武器を媒体として使用するものが多く、また制限時間こそあるが己の魔力を爆発的に増幅させるという秘儀もあった。そうした背景から個人戦闘、特に一対一の戦闘に強さを発揮した魔法使い達は「騎士」と呼ばれた。やがて、この王朝が次元世界を巡る戦乱の世に飲み込まれていく中、一人の魔導師が一つの魔導書を作り上げた。

 

 その魔導書の名は「夜天の書」。

 

 この魔導書は本来、様々な場所における優れた魔法を記録する使命を負い、その為に所持者に相応しい魔導師の元に現れるという、いわば「旅する魔導書」だった。そしてより利用しやすいようにと、この魔導書は歴代の所持者によって本来なかった機能が増設されていった。過去の人物を元に構成した魔法生命体を一種の使い魔として自身を守らせる守護騎士システム「雲の騎士(ヴォルケンリッター)」もその一つである。しかし、記された知識を悪用しようとした所持者が更なる力を得ようとして改竄した結果、魔力を貪り、魔力を満たされた後は所持者を取り込んで暴走、あらゆる物を破壊しながら自滅し、次の所持者の元へ向かうという最悪の魔導書となった。こうして魔導書に関わる者全てに害しか齎さない事から、闇の書と呼ばれる様になったのだ。

 

 ……ここで今一度、同じ質問をしよう。メインプログラムにバグが発生し、修復も困難な場合、最善の状態に持って行くにはどうすればいいだろうか?

 

 その答えは「バグを孕んだ現在のプログラムを完全に消去した後に、予めバックアップを取っておいたバグ発生前のプログラムを再インストールする」である。そして、闇の書も元はと言えば夜天の書の魔導プログラムが致命的なバグを起こした物だ。

 

 ……もう、答えは出ただろう。

 

 闇の書はフルムーンレクトの特性によってバグ発生以前の状態に戻され、本来の姿である夜天の書へと戻ったのだ。

 

 やがて、本来の姿に戻った夜天の書は正常に起動し始めた。はやての胸から光球が現れるとそのまま本の中へと入っていき、眩い光が放たれた。光が収まると、そこには一組の男女が跪いていた。まずは黒い衣服を身に纏った二十歳前後の銀髪の女性から話し始める。

 

「……夜天の書の起動を確認。魔力波長を登録、新たなる夜天の王として兵藤はやてを認定、完了。主、初めまして。私は夜天の書の管制プログラムです」

 

 管制プログラムを名乗った少女に続いて、漆黒の全身鎧(プレートメイル)と赤い外套(マント)を身に纏った、二十代後半で黒髪を刈り上げた長身の青年が名乗りを上げる。

 

「私は夜天の書の防衛プログラムです。夜天の王と魔導書、そして魔導書に収められた無数の叡智の守護を使命としております。主上、宜しくお願いいたします」

 

 しかし、余りに想定外な出来事に一誠とはやては揃って思考が停止していた。そして、はやては混乱の余りに気を失ってしまった。この状況を一刻も早く把握したかった一誠は失神したはやてを一旦ベッドに寝かせると、この二人から詳しい話を聞く事にした。

 ……そこで語られたのは、人間の浅ましい欲望によって弄ばれてしまった一冊の魔導書の哀しい物語だった。

 

Overview end

 

 

 

 夜天の書という魔導具(アーティファクト)から現れた男女から話を聞いた僕は、ただ言葉を失っていた。本来なら偉大な先達達の叡智を蓄え後世に伝える為の記録書が、人間の欲望によって全てを破壊する呪われた魔導書になってしまったのだから。

 

「そして、夜天の書に記された魔法の中でも特に強大なものを扱う為には、管制プログラムの他に防衛プログラムの許可も必要だった。それを邪魔に思った悪意ある所持者が彼を排除してより扱い易い雲の騎士に挿げ替えようと企てたものの、その結果として最終防衛機能が働いてその所持者を排除した。そこで終わっていれば何も問題がなかった訳だけど、強引な改竄の影響によって最終防衛機能を解除できる彼が雲の騎士に取って代わられてしまい、結果として最終防衛機能が止められなくなり以後の所持者を排除し続けた。そうして何度も所持者の排除を繰り返した事で殺された所持者の怨念を蓄えていき、やがて周りにある全てを破壊する呪われた魔導書である闇の書へと変貌していった。……大体こんな所で合っているかな?」

 

 二人の説明を聞いて、概要をまとめた僕は二人に確認を取る。それを肯定したのは管制プログラムだった。

 

「怨念といったオカルトはともかく、他の点はそれでほぼ間違いありません。そして貴方の使った魔法のお陰で、夜天の書は改竄される前の本来の形に戻る事ができました。ただ、悪しき主の手先となって破壊と殺戮を繰り返して来た報いなのか、雲の騎士達を無間地獄から救い出す事ができなかったのは大変残念ですが……」

 

 彼女はそう言ってから、気落ちしてしまった。彼女に続いて、防衛プログラムもまた雲の騎士に対して意見を述べていく。

 

「私自身、彼女達のモチーフとなったベルカの古き騎士達とは面識がある。皆、心身共に強い騎士達で好ましく思っていた上に、その内の一人は私の剣の弟子でもあった。だからこそ、魔力蒐集の名の元に破壊と殺戮を繰り返していた事に対して、私は強い憤りを感じている。その様な非道な事をさせない為の防衛プログラムであり、私という存在だったはずなのだ。ならば、私の後を引き継ぐ形となった彼女達には防衛プログラムとしての使命を果たして欲しかった。……己の欲望のままに夜天の叡智を利用する為に作られたのが雲の騎士であり、その為に人格が搭載されていなかった事は私も承知しているのだが……」

 

 彼は雲の騎士達が闇の書と呼ばれる様になる程に人々を虐げ、様々な物を破壊してきた事に憤ると同時に、止められなかった自身の不甲斐なさを悔やんでいる様だった。……できればそっとしておいてやりたかったが、どうしても確認しなければならない事があった。

 

「過去を悔やむのは未来で過ちを繰り返さない為に必要だけど、今は一先ず置いておいて欲しい。それで、本来の姿に戻ったことではやてちゃんの体はどうなるんだ?」

 

 この僕の問いに、管制プログラムは暫く目を閉じて何かを確認した後で答えを返して来た。

 

「……今、主の状態を確認しました。魔力の生成機関への侵食が無くなった事で、身体機能は全て回復しています。ただし、今まで使われていなかった事で下半身が衰弱し切っていますので、こればかりは時間を掛けて少しずつ健全な状態へと戻していくしかありません」

 

 その答えを聞いた僕は、全てを理解した。

 

「つまり、長期間に渡るリハビリこそ必要だけど、はやてちゃんは自由に歩けるようになる。そういう事かな?」

 

 僕の確認に対して、管制プログラムはただ頷く事で肯定した。

 

「そうか、解った。……良かったね、はやてちゃん。これからのリハビリはかなり大変だけど、頑張ればちゃんと歩けるようになるよ」

 

 僕はそう言いながら、未だベッドの上で横になったままのはやてちゃんの頭を優しく撫でると、はやてちゃんは気持ち良さそうに身を捩じらせていた。

 ……結果として、最初の目的であるはやてちゃんの半身不随の治療は達成できたのだ。如何に義理とはいえ、兄としてこれ以上の喜びはなかった。しかしここで、防衛プログラムが僕に問いを投げかけて来た。

 

「主兄殿、一つお尋ねする。貴公は一体何者だ?……確かに主上を通じて、お話は聞かせて頂いた。しかし我々が扱うものとは余りにもかけ離れた魔法といい、その身に秘めた強大な力といい、私にはただそれだけとはどうしても思えない」

 

 ……やはり来たか。

 

 僕が必ず問われると思っていた事に対して、管制プログラムも防衛プログラムに便乗してきた。

 

「それは私も考えていました。魔法使いの話自体が正直に言って眉唾物でしたが、実際にこうして救われた以上は信じさせて頂きます。しかし、貴方にはそれ以上の何かを私達は感じているのです。……どうか、お教え頂けないでしょうか?」

 

 ……二人して、随分と勘がいい。尤も、勘とは経験則に基づく刹那の考察であるという説を何処かで聞いた事がある。それに、永きに渡って夜天の書と共にあった事で積み上げてきた膨大な経験に基づく二人の勘だ、その精度は馬鹿にならないものがあるだろう。

 

 そこまで考えてから、僕は()()に説明する事を伝える。

 

「……解った、説明しよう。そこで狸寝入りしている可愛らしい子狸も交えてね」

 

「可愛らしいはともかく、誰が子狸やねん! ……あっ」

 

 実は寝たふりしてこっそり僕達の話を聞いていたはやてちゃんを見事に釣り上げた僕は、暫く笑いが止まらなかった。

 

「むぅ。物の見事に釣られてしもうた。アンちゃんにはホンマに敵わんなぁ」

 

 そんなはやてちゃんの拗ねた表情がまた子狸みたいで可愛らしかったことは、きっと言わない方がいいだろう。

 

 一頻り笑った後で、僕はドライグやロシウ老師から教わった事を三人に説明していった。

 この世界には神話の存在や魔法や魔術などの神秘が実在する事。天使、堕天使、悪魔の三竦みの争いがあり、現在は冷戦状態である事。そして、人間またはその血を引く者のみに与えられた神秘の力、神器(セイクリッド・ギア)の事。

 

 それ等を踏まえた事で僕自身の事を話し始めた。

 

 神魔を凌駕する二頭のドラゴン、二天龍。その一頭である赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)、ドライグ。その魂を宿す神器で、所持者の力を十秒ごとに倍加し続ける赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)。神すら滅ぼすとされる神滅具(ロンギヌス)と言われるそれを宿す者、赤龍帝。

 

 以上の事を説明し終えた時点で、防衛プログラムが口を挟んで来た。

 

「……この世界が、実は相当に危険な場所である事は理解した。だがそれ故に腑に落ちないのは、赤龍帝の話を何故取り上げたのかという事だが、もしや主兄殿は」

 

 防衛プログラムの表情から、彼は半ば確信しているであろう事は見て取れた。だから、僕の素性を特に隠すこと無く教える事にした。

 

「その推測で合っているよ。そう、僕が今代の赤龍帝だ。証拠はこの通り。赤龍帝の籠手!」

 

 そう言って、僕は赤龍帝の籠手を発現させる。しかし、防衛プログラムはそれだけでは納得してくれなかった。

 

「……成る程。しかし、それだけでは主兄殿から感じられる唯ならぬ王器とは繋がらない。主兄殿、貴公は他に何を持っておられるのだ?」

 

 しかも、僕が「王」に繋がる物を持っている事すら見抜いている様だ。彼は主の見極めをも使命としている以上、人物鑑定眼もまた只ならぬものがあるのだろう。その意味では、むしろ流石というべきかもしれない。そして、僕は赤龍帝以上に秘するべきである、もう一つの力について語っていく事になった。

 

「……成る程。これで納得致した。確かにそういう事であれば、主兄殿の王器にも合点がいくというもの」

 

 少々長くなったが二代目騎士王(セカンド・ナイト・オーナー)に関する説明も終わり、防衛プログラムはようやく納得してくれた。

 

「でも、何でわたしにまで教えてくれたんや?」

 

 一方、はやてちゃんが自分にまで話をした事に疑問を持ったが、管制プログラムが説明していた。

 

「主。それは今後、主が様々な理由で狙われる事になるからです。今までは闇の書が過剰に魔力を吸収していた事で、主の魔力が表に出て来ることはありませんでした。しかし、夜天の書として正常に機能している今、主の魔力はその手の者には察知される事でしょう。しかも、主の魔力量は歴代でも最高とも言える程に膨大なのです。その為、そう遠くない将来、主が神話の存在に目を付けられるのは間違いありません。ましてや、主は義理とはいえ赤龍帝なる伝説の存在にして別の伝説に語られる騎士達を統べる王の妹。そうなれば、利用価値など幾らでも出てくるのです。だからこそ、そういったものに注意を払えるように、兄上殿はあえてご自身の事をお話しになったのでしょう」

 

 管制プログラムの説明を聞いたはやては、それで納得したようだった。そして僕の話は、赤龍帝に課せられた宿命について語る事で終わりを告げた。

 

 僕の宿命を知った二人は頭を下げて謝って来た。

 

「……兄上殿、申し訳ございません。本当ならば、無間地獄から救って頂いたご恩をお返しする為、私達は貴方と共に戦うべきなのですが」

 

「我々はあくまで夜天の書に属する者。故に、主上の元を離れるわけにはゆかぬのです。……せめて雲の騎士達が健在であれば、彼女達に人格を搭載した後、防衛プログラムの使命を正式に彼女達に移譲し、夜天の書から私を切り離した上で主兄殿と守護騎士の契約を結ぶという選択肢もあったのですが」

 

 ……確かに、異なる次元世界の魔導文明の遺産とはいえ、もはや伝説級の力を持つこの二人が僕に協力してくれればかなり心強いだろう。特に王と魔導書の守護を使命とする防衛プログラムの力量は、管制プログラムより数段上だと思われた。しかし、それ以上に二人にはやってもらわないといけない事がある。

 

「いや、それについては心配無用だ。むしろ、二人がはやてちゃんの側にいれば、僕は後ろを気にする必要がなくなる。だから、僕に恩義を感じてくれるなら僕の妹であるはやてちゃん、……いや、はやてを守り抜く事で返してほしい。それで僕は十分だ」

 

 僕のその言葉を聞いた二人は暫くお互いを見合わせると、同時に頷いて跪いた。

 

「では、我々が赤き龍の帝王にして数多在る騎士達を統べる王たる兄上殿のご信任を得た証として、名のない我々に新たな名をお授け下さい」

 

「その名に誓って、必ずや妹君であらせられる主上をお守り致しましょう」

 

 ……それは、騎士と称される魔導師の決意表明だった。それに対して、はやてはすぐに反応した。

 

「アンちゃん。名前がないなら、わたし達でつけてあげなあかんよ。いつまでも管制プログラムや防衛プログラムなんて呼んどったら、その内に心もなくなってしまうで?」

 

 そのはやての言葉に僕も同意した。

 

「解った。だったら、この二人の主であるはやてが付けようか。それで、何か考えはあるのかな?」

 

 僕の振りに対して、はやては驚きを隠せなかった。しかし、即座に意識を切り替えると、まずは管制プログラムの名前の案を出してきた。

 

「えぇっ! いきなりかいな! ……そうやな。管制プログラムのお姉さんやけど、こんなんはどうや? 強く支える者、幸運の追い風、祝福のエール。その名もリインフォース!」

 

 はやての案を聞いた僕は中々だと思ったので、次に防衛プログラムの名前について尋ねた。

 

「うん、良いと思う。それで防衛プログラムの方は?」

 

 しかし、管制プログラムについては名前が浮かんだものの、防衛プログラムについてはかなり難航している様で、はやては唸り声を上げながら頭を捻っている。

 

「……う~ん。こっちの防衛プログラムのお兄さんはちょっと思い浮かばんなぁ。アンちゃんには何か案はないの?」

 

 そして、とうとう煮詰まってしまったのだろう、はやては僕に何か案がないかを確認して来た。そこで、僕は二人の在り方に因んで考えた名前を由来を含めてはやてに伝える。

 

「……管制プログラムには「夜」という意味のドイツ語と北欧神話に出て来る誓いの女神の名前から取って、「ナハトヴァール」という名前を考えていたんだ。どうもベルカの言語はドイツ語に近いみたいだからね。因みに名前の意味は、夜天の書に因んで「夜天の誓約」と言ったところかな?」

 

 まずは管制プログラムについて伝えると、続けて防衛プログラムの方も伝える。

 

「そして防衛プログラムの方は夜天の書、つまり本の付属である事を踏まえて、ドイツ語で「光」を意味する名と「不朽」を意味する姓を持つ「リヒト・ツァイトローゼ」を考えていたよ。彼は表に出られなくても、王と魔導書を守るといる使命と騎士としての誇りを見失う事がなかった。だから、名前に「無窮の光」を転じて、闇夜にあってもなお存在する自然の光である「夜天光」の意味を持たせてみたんだ。それではやて、僕の考えを聞いた感想は?」

 

 僕ははやてに僕の出した案について確認すると、はやては感嘆の表情を浮かべながら賛同してきた。

 

「アンちゃん、それ頂きや。……という事は、防衛プログラムのお兄さんはその心にけして消えない光を宿した「夜天光の騎士」って訳やな。アンちゃん、ホンマに頭えぇなぁ。私の頭じゃ、それ以上良い名前なんて浮かんで来んもん」

 

「でも、管制プログラムの為に考えた「リインフォース」はどうするのかな? 折角はやてが考えたのに」

 

 僕がその様に問うと、はやては複雑な表情を浮かべた。……やはり、自分が考えた名前を使いたいという想いもあるのだろう。

 

「それを言われると、ちょっと悔しいなぁ。でも、どうせならお姉さんにも良い名前を受け取って欲しいし……」

 

 はやてがジレンマに苦しんでいるので、僕ははやての考えた名前も活かす為の意見を出してみた。

 

「よし、こうしよう。「ナハトヴァール」は夜天の王に仕える騎士の称号という扱いにすればいい。意味が「夜天の誓約」だから、二人に共通した在り方も示していると思うしね。つまり、管制プログラムは夜天の誓約によりて王に祝福を齎す叡智の風、「リインフォース・フォン・ナハトヴァール」。一方、防衛プログラムは夜天の誓約の元に王と魔導書の叡智を守護する夜天光の騎士、「リヒト・ツァイトローゼ・フォン・ナハトヴァール」と言ったところかな? ……ちょっとカッコつけ過ぎたかも」

 

 僕はそこまで言ってから少々照れ臭くなったものの、はやての方はまるで雷に打たれた様な反応だった。

 

「……完璧や。もう文句の付け様が全くあらへん。それじゃ、二人の名前はお姉さんが「リインフォース・フォン・ナハトヴァール」。お兄さんが「リヒト・ツァイトローゼ・フォン・ナハトヴァール」で決定や!」

 

 このはやての宣言で、二人の命名が終了した。

 

「新名称「リインフォース・フォン・ナハトヴァール」、登録完了。主。我等は今後、貴女方と運命を共にいたします」

 

「新名称「リヒト・ツァイトローゼ・フォン・ナハトヴァール」、登録完了。そして主兄殿のご信任と「夜天光の騎士」の称号に懸けて、主上の身の上を守り抜いてご覧に入れましょう」

 

 はやてから新しい名前を受け取った二人は改めてはやてにつき従う事を申し出る。

 

「リインフォース、リヒト! これからよろしく頼むで!」

 

 はやては、輝く様な笑顔で二人を受け入れていた。

 

 

 

Postscript

 

 その後、二人はどうしているかと言えば、一誠の指示で普段は夜天の書の中に待機しており、一誠とはやて以外に誰もいない時やはやての身に危険が生じた時に実体化するという形を取った。

 また、はやては一誠に内緒でリヒトの承認の元、リインフォースから様々な系統の魔法を少しずつ教わる様になり、単に攻撃系統だけでなく治癒系や強化系などの補助系統に魔力防壁や結界術などの防御及び補助系統も修得していった。なお、その最中ではやてはリインフォースの事をリインという愛称で呼ぶようになり、リヒトもまた主に従う形で愛称を呼ぶ事になっている。

 ……結局、一年後に海鳴市で発生した次元災害への対処の際に魔法を修得していたことが一誠にバレてしまったが、これによって一誠とロシウから直接魔法を教わる事ができるようになった。

 やがて、夜天の書の復活から三年の後に一誠が運命の時を迎えた時には、歴代最高にして最強の夜天の王として魔導関係では一誠を凌ぐ実力者となっており、義兄同様にその名を神話の存在に知らしめていく事となる。

 

Postscript end

 




いかがだったでしょうか?

夜天光の騎士「リヒト・ツァイトローゼ・フォン・ナハトヴァール」。
もし防衛プログラムが完全な自我を持ち、夜天の書の良心と言える存在だったならと思い、作り上げたキャラです。

彼の存在については、あくまでリリカルなのはとは別の世界であるとして笑って見逃して下さい。

では、本日はここまで。
次のお話しをお待ち下さい。
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