なお本日最後の投稿になりますので、どうか最後までお楽しみください。
追記
2018.11.15 修正
駒王町に左遷の形で派遣された礼司さんの破門すら覚悟したご厚意によって、エクスカリバーは無事真聖剣として再誕する事ができた。そこで礼司さんとその覚悟を知って愕然としたイリナを安心させる為にカリスを紹介する事にしたのだが、そこから武藤三兄弟の為に作った専用武器の作り方に話が及んだ事で、僕は礼司さんの為に作っていた新しい剣を仕上げる所を実際に見せる事にした。早速皆と一緒に教会の外に出ると、僕は改めて封時結界を展開する。そして、ミスリル銀をメインの素材としてゼテギネアで古代高等竜人が記したという古文書から学んだ武具製作技術とクロノ君から教わった魔導科学をふんだんに盛り込んだ、一本のブロードソードを取り出した。
「カリス、最終工程である聖なる力と能力の付与を任せる。僕はその前処理として、天空の力をこの無色の剣に与えるよ」
僕はカリスに指示を出しながら、ある
「イッセー。それは了解したけど、天空の力って何さ?」
カリスは僕の言った内容の一部が理解できていなかった様で、僕に質問をしてきた。そこで、逆に僕の方がカリスに問い掛ける。
「カリス、天空には何がある?」
「えっ? そりゃあ、まず空があって、そこに雲もあって、それから雲を運ぶ風もあって。……あっ!」
僕の問い掛けに対して、カリスは天空にある物を列挙していき、そこで気付いた様だ。
「そういう事。だから、
僕が描いた魔法陣。それは風の魔法陣と水の魔法陣を重ね合わせた、おそらく全く新しい魔法陣だった。そして、僕は
「ジーク・ルー・フリーズ……。出でよ、スーパーシュトルムカイザー!」
最初に「護り」を司る風の神の弓を強化した、双弓型のスーパーシュトルムカイザーを召喚する。
「ジーク・サラ・フリーズ……。出でよ、スーパーウェーブカイザー!」
次に「力の回復」を司る水の神の銛を強化した、十字槍の刃を持つスーパーウェーブカイザーを召喚する。すると、他の皆は僕の呼び出した二つの神の武器を見て完全に固まってしまった。
「ちょっと、イッセー! 何で強化版の方を二つも召喚しているのさ!」
一方、カリスは僕が強化版の方を召喚した事に驚いているが、これにはちゃんとした理由があるのでそれをカリスに伝える。
「風と水で天空を表すには、通常の物では純粋に力が足りないんだ」
因みに、スーパーエルディカイザーは強化前の地と炎の力に加えて光の力も宿っている為、解釈によっては単独で太陽を表現できる。形状がゾーラブレードに酷似しているのはその為だと推測されるし、出力も他の二つの強化版を足し合わせてなお上回るのだから、太陽王の冠であるゾーラクラウンの力が如何に強大であるかが窺い知れる。
「それじゃ、前処理の仕上げと行こうか」
僕はそう言うと、風と水の魔法陣が重なった、いわば天空の魔法陣の上に無色の剣と二つの神の強化武器を置いた。そして、光の呪文の詠唱を始める。
「ドーマ・キサ・ラムーン」
ゾーラブレードを錬成した四年前に比べて、僕の魔動力が大幅に強化されているからだろう。強化武器にも関わらず、神の武器の融合は一回目の詠唱で開始した。
「ドーマ・キサ・ラムーン……、ドーマ・キサ・ラムーン……」
その後も詠唱を重ねていく内に、二つの神の武器が緑と青の光となって無色の剣に溶け込んでいく。二つの神の武器を形成していた風と水の魔動力が無色の剣に馴染んだ所で仕上げに入った。魔動力を一気に注ぎ込んで二つの力を完全に融合・固定化する。同時にこの新たな剣の名前もここで名付ける。
「ドーマ・キサ・ラムーン! 光、出でよ! 汝、オラシオン!」
この詠唱と共に注ぎ込まれた魔動力によって、無色の剣は眩いばかりの光を一瞬だけ放つ。そして光が納まると、そこには僕が「祈り」という意味の言葉であるオラシオンと名付けた、純白に染まる一本の剣があった。
「カリス」
「了解!
カリスは僕の呼び掛けに応じて、その場で
「これで、天に祈りを捧げる事で祝福を得られる天祈剣、銘はオラシオンの完成さ。……それにしても相変わらず見事だねぇ、イッセー。イウサールとラエドの時にはシュトルムカイザーの風と雷の力をそれぞれ分割するし、イグニスの時はエルディカイザーの地と炎の力を丸ごと融合させてマグマの力にしたし、閻水の時は、確かウェーブカイザーの水と氷の力に水の精霊が司る「力の回復」も組み込んだよね。一つの武器に宿った属性とその力をこれだけ正確に取捨選択できるのって、多分イッセーだけじゃないかなぁ?」
カリスは新たな聖剣の完成を伝えると共に、僕が作り上げてきた武器の作り方を口にし出した。……しかし、正直に言えば僕のやった事はそこまで難しい事ではない。
「確かに魔動力を使えるのは僕だけだから、ああいう力任せの強引な作り方になっちゃうんだけど、魔動力を魔導に変えてしまえば、一定以上の実力者なら僕と同じ事ができるんじゃないかな?」
僕は僕の思う所をカリスに伝えたのだが、カリスは深い溜息を吐くと何とも酷い事を言い出した。
「……あのさ。イッセーの常識が必ずしも皆の常識に当てはまる訳じゃないって思うの、オイラだけかな?」
すると、皆はカリスの言葉に揃って頷く。
「そこまで常識外れな事をやっている訳じゃないんだけどなぁ……」
自分の常識が他とはズレていると言われた僕は、一人で途方に暮れていた。
Interlude
後に、一誠と出逢う事になる様々な人物達が一誠独自の武器錬成法を聞いた際、反応こそ大きく分かれた。
「これが常識外れじゃないだと? バカを言え! お前にとっては常識の範疇でもな、俺達にとっては十分規格外な非常識なんだよ! ……コイツ、やっぱりド天然だ。普通に神の武器としても十分通じるモンをポンポン作っといて、コレだからな」
「やっぱり凄いです。今までの魔導師の常識ではそんな事できませんから。これは何としてでも、魔法や魔術の真髄である「魔を動かす力」を教わらなくては……」
ただ、一誠の成した事が規格外な非常識である点では全員一致していたという。
Interlude end
そんなこんなで、僕は新しく錬成した天祈剣を礼司さんに渡した。
「一誠君、ありがとうございます。この天祈剣、大切に使わせて頂きましょう」
礼司さんは天祈剣を快く受け取ってくれたが、続く言葉に少々悩んでしまった。
「ただ一誠君。この様な素晴らしい剣を頂いておきながら更に強請る様で申し訳ありませんが、イリナ君の分もお願いできませんか?」
礼司さんの頼みではあったが、幾つか問題があるので、それを礼司さんに伝える。
「今、流石に力を宿す為の媒体がないんですよ。オラシオンを作る為に持ってきた無色の剣も、素材探しから初めてそれなりの日数をかけて作った物なんです。元々は仕上げてからお渡ししようと思っていた所に、今回の移住話が上がったので……」
「予定を繰り上げて、今日ここで仕上げる事にした。……という訳ですか」
僕の言葉を聞いた礼司さんは、どうやら理解してくれた様だった。何も今日のこの場で一から作り上げた訳ではないのだ、と。
「だから、今日はとりあえずイリナの手を見せてもらって、どのような物を作ればいいのかを突き詰めていこうかと」
今日できるのは、せいぜいこれだけだろう。そう判断して、僕はまずイリナの適性などを見ていこうと思っていた。
「えっと。……これでいいの?」
僕に手を見せて欲しいと言われたイリナは、戸惑い半分と気恥ずかしさ半分といった感じで僕に自分の掌を見せてくれた。僕は掌を見せてくれたイリナに感謝の意を伝える。
「ウン、それでいいよ。ありがとう、イリナ。……これは」
僕としては、あくまで今日は武器を作る為の前準備のつもりだった。しかし、イリナに秘められた大いなる可能性に触れた事で気が変わった。
……これは急いで「力」を持たせる必要がある。
そう判断した僕は早速行動に移る。
「……イリナ、予定変更だ。君の剣は、今から一気に完成まで持っていく。おそらくはさっき作ったばかりのオラシオンに匹敵、あるいはそれ以上の傑作になると思う」
イリナにそう伝えてから、光の魔法陣を描き始める。一分ほどで光の魔法陣を描き終えた所で、僕は呪文の詠唱を始める。
「ジーク・ガイ・フリーズ……。出でよ、スーパーエルディカイザー!」
詠唱しながら手印を切り、両手に集まった光を前面に放つと、地面から天に向かって一条の光が立ち上った。そして光が立ち上る地面の穴からは、一本の剣が静かに浮かび上がってくる。
白に染まり赤で縁取られた柄が十字を形成する様に四方にせり出しており、刃はその内に光を宿したかの様な金色。……その圧倒的な力と神々しさは、先程僕が呼び出した二つの神の武器をも凌駕している。地の神の剣に光の力が加わった事で太陽王の剣であるゾーラブレードに最も近付いた神の武器、スーパーエルディカイザーだ。
イリナがスーパーエルディカイザーに見入っている中、僕はそれを先程描いた光の魔法陣の中央に置き、更に地の神獣を召喚する為の呪文を唱え始める。
「ゼーマ・ガイ・ドルーガ……。魔動力、ガイアドラゴン!」
そして、その声に応える様に地面を割って現れたのは。
「マグマの、ドラゴン?」
無意識の内に口から零れたのだろう。イリナが今言った通り、全身をマグマで形成したドラゴンだった。久しぶりに呼び出したガイアドラゴンを維持しつつ、僕は更に光の呪文を重ねる。
「ドーマ・キサ・ラムーン」
それと同時に風と水の魔動力を高めて、ガイアドラゴンに送り込んでいく。すると、地と風と水の魔動力が融合した事でマグマのドラゴンは身を捻ってマグマを振り落とした。そうして現れたのは、神々しい光で全身を形成したドラゴンだった。あえて名付けるのであれば、太陽龍ゾーラドラゴンだろうか? その光は、唯浴びているだけで心が洗われていくようで、術者である僕にとってもとても心地良い物だった。
「光の、ドラゴン……!」
イリナがゾーラドラゴンに見入っている中、僕は更に言葉を重ねていく。
「世界を覆う光の化身よ。地と炎と光を宿す神の剣に宿りて、悪を懲らしめ邪を祓い清める力となれ! ドーマ・キサ・ラムーン! 光、出でよ! 汝、レイヴェルト!」
オラシオンを作った時と同じ様な文言を唱える事で、ゾーラドラゴンを光の魔法陣の中にあったスーパーエルディカイザーへと飛び込ませる。そして、光の魔法陣の力によってスーパーエルディカイザーからオラシオンの時以上の強烈な光が放たれた。その場にいた僕以外の皆は慌てて腕で光を遮っているが、光は未だに放たれている。そうして一分程腕で光を遮っていた所で光が収まっていくのを感じ取ったイリナ達は、腕で遮るのを止めて光の魔法陣のある方向を向いた。
「……完成だ」
……そこには、神聖な雰囲気と共に穏やかな白金の光を淡く放つ一本の聖剣があった。柄の形は通常の物と同様に左右に広がる形に変化していて、華美な装飾は殆どなかった。僕はイリナに今回錬成した聖剣について説明していく。
「イリナ。これが闇を祓い、悪を懲らしめる浄化の力を持つ光の龍を宿した聖剣、煌龍剣。名前は、光溢れる世界という意味を持たせたレイヴェルト。……人間なら誰もが持ち得る想いの力、魔動力の高い素養があるイリナの手を見て作った、イリナだけの聖剣だよ」
しかし、イリナにとってはそれ以上に気になる言葉が出てきた為か、僕に問い返して来た。
「……マドーリキ?」
イリナどうやら疑問に思った事をつい口に出してしまった様な感じであったが、僕はこの際なので魔動力について説明することにした。
「魔動力。「魔を動かす力」と書く。勘違いしないで欲しいけど、あくまで魔力を以て扱う魔法や魔術の上位体系にしてその根源となる力の事で、悪魔の扱う魔力とは全く無関係だから。それに魔動力は魂の位階が人間以下の生命にしか扱えないんだ。つまり、天使や悪魔、堕天使に妖怪はおろか、魂の位階は人間より上の猫や狐すら魔動力は使えない。だから、言葉を悪くすれば「野蛮な存在だけが扱える原始的な力」なんだ。尤も、だからこそ魔動力は純粋な想いに応えて覚醒するし、またその力を理論上は無限に高めていけるんだけどね」
イリナに魔動力についてかなり端折る形で説明した所で、僕は本題に入る。
「それで本題に入るけど、イリナはその天真爛漫な性格の為か魔動力の素養と適応性がかなり高いから、この聖剣を普段は魔動力の形で体の中に収めておくことができるんだ。イリナ、早速だけどレイヴェルトを持ってもらえるかな?」
そうしてイリナにレイヴェルトを持つように頼んだ所、イリナは早速それに応じてくれた。すると、レイヴェルトは形を失って光となり、イリナの中へと入っていく。……どうやら、レイヴェルトもイリナを認めてくれた様だった。
「これで後は、実際にイリナの魔動力と融合したレイヴェルトの実体化を教えるだけだね。とりあえずコレを参考にして、後は自分でどうするのか考えたらいいよ」
僕はレイヴェルトの実体化の参考として、ドライグのオーラを剣状に集束させて取り出すオーラブレイドを実演する。左手の掌を鞘に収められた剣の鐔に見立て、握り拳を作った右手の親指側を左手の掌に当てる。そして、剣を引き抜く様にしてオーラブレイドを形成していくのだ。オーラブレイドを形成し終わってから、イリナの方を向いて実演終了と実体化のコツを伝える。
「まぁ大体こんな感じだよ。イメージとしては、体の何処かに剣を収める鞘があって、そこから剣を抜く感じかな?」
すると、イリナはさっき僕がやったオーラブレイドの形成方法をそのまま実行していた。
「……一誠君、こんな感じかな?」
ただ、流石に一発で成功するのは無理だったらしく、存在がかなり曖昧で輪郭が所々ぼやけていた。
「初めてにしては上出来だと思う。後は、練習あるのみかな?」
僕はイリナに要練習である事を伝えた所、イリナからはとてもいい返事が返ってきた。
「ウン! 折角一誠君が作ってくれた物だもの! 必ず使いこなせる様になるからね!」
このイリナの様子なら余り心配はいらないかなと、僕は安堵した。
20XX年3月xx日
(略)
もう、アレって一体何なの! 一誠君がカリス君と何やら会話をしながらよく解らない魔方陣を描いたかと思ったら、魔力はおろか天使様のお力とも違う魔動力という根源的な力を高め出すし、今まで聞いた事のない呪文を唱えたら、とんでもない力と神々しさを兼ね備えた弓と銛がそれぞれ空からの竜巻と地面から噴き出す水に乗ってやって来ちゃった! それだけでも凄いのに、その二つの武器と予め用意していた銀色の剣(ぱっと見だけど多分ミスリル銀の筈)を先に描いた魔方陣の上に乗せてからこれまた今まで聞いた事のない呪文をひたすら唱えると、呼び出された二つの武器がそれぞれ緑と青の光になって銀色の剣に解け込んで行って、最後には眩しいくらいの光を放って真っ白な剣になっちゃうんだもの! それでその後、カリス君がその剣に触れて「セイバー・リメイク!」って言ったら、途端に祝福の聖剣と同じ位の聖なるオーラを放ち始めちゃうし! もうビックリしっぱなしよ! これで天祈剣オラシオンの完成だって言っていたけど、何がどうなってそうなったのか、今でもさっぱり解らない。
……でも、これだけは言える。一誠君、実は私なんかじゃ到底及びもつかない位に凄い人だったんだって。
(中略)
今日は本当にいろんな事があったけど、たぶん一生忘れないと思う。だって、一誠君が私の為にも聖剣を作ってくれたんだから! その名も、光溢れる世界という意味の名を持ち、浄化の力を宿した煌龍剣レイヴェルト!
何でも、一誠君の魔動力で呼び出した大地の龍を闇を祓い、悪を懲らしめる浄化の力を持つ光の龍に変えて、これまた一誠君の魔動力で作り上げた地と炎と光の力を宿した神の剣に融合させた、私の為だけの聖剣とのこと。確かに装飾はそこまで華美な物じゃなかったけど、レイヴェルトから感じる凛とした印象が何処か一誠君を彷彿とさせるから、凄く気に入っちゃった。しかも、私も一誠君と同様に魔動力の素質と適応性があった事で、普段は魔動力の形で私の中に収めておき、必要に応じて即座に実体化が可能。
……魔動力は純粋な想いが根源となる力。魔動力の結晶であるレイヴェルトは、言ってみれば一誠君の想いの結晶。そんな剣の所持者に私が認められた。
まるで、一誠君が私の好意を受け入れてくれた様で凄く嬉しい。
そして実体化の手順は、一誠君が参考にと見せてくれたオーラブレイドの引き出し方をそのまま採用。だって、これがまた凄くカッコ良かったんだから!
それに万が一何かあっても、教会に取り上げられるなんて事がないし、もうサイコーよ! 一誠君が作ってくれたこの聖剣さえあれば、私は十年、いえ二十年、それどころか百年だって戦える! もう教会が持っているパチモンのエクスカリバーなんて、全く以てお呼びじゃないわ!
一誠君、本当にありがとう。大好きだよ、一誠君。
紫藤イリナの日記より抜粋
いかがだったでしょうか?
本日投稿した三話は一誠の高校進学直前の時間帯の話です。
次第に近づきつつある、兵藤一誠の運命の時。
しかし、そこに至るまでを記した序章はまだまだ続きますので、もう少しだけお付き合い下さい。