赤き覇を超えて   作:h995

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少々悩みましたが、連続投稿することにしました。

なお、本日はもう一話投稿しますので、感想はそれを読んだ上でお願いします。

追記
2018.11.16 加筆修正


第二話 二度目の転生 ― 新たなる理の始まり ―

Side:リアス・グレモリー

 

「それで、僕はどうしたらいいのでしょうか?」

 

 ソーナと共に尾行していた少年、兵藤一誠君は覚悟を決めた様な表情でこちらの指示を仰いできた。あの目は、こちらの言い分を無条件で全て飲むつもりの様だ。

 ……下手な事は言えない。もし仮にここで死になさい等と言えば、彼は迷うことなく実行するだろう。天界に行って天使達を皆殺しにしろと言えば、その場で一人天界に攻め入ってしまうだろう。

 だから、訳が解らなかった。彼の中では、私達の言葉に対して絶対服従の四文字しかない。交渉や拒絶、抵抗といったものが全く存在していないのだ。本来ならば最初にお互いの条件を出し合い、それらを擦り合わせていく事で落とし所を決めていく。少なくとも、私はそのつもりだった。多分ソーナもそうだろう。ソーナはかなり前から時間を掛けて、兵藤君の為人(ひととなり)を見極めようとしていた。本当は最優秀生徒なんて呼ばれ、同学年である祐斗すらも人品と頭脳は別格と認める程の逸材を私も勧誘したかったけど、先に接触する形になったソーナの方に優先権があったから今まで接触する事ができなかった。そして今、兵藤君は私の想像を遥かに上回る存在であった事を私達にまざまざと見せつけた。さてどうやって私達をも上回る強さを持つだろう彼を味方に引き込もうかを考えていた時にこの発言だった為、私達は完全に思考が硬直してしまった。しかし、一瞬早く立ち直ったソーナは兵藤君に質問した。

 

「兵藤君、その言い方では貴方は私達の言い分を無条件で受け入れると言っている様な物ですよ? それなら、私達が貴方の死を望めば」

 

 ―― 実際に死ぬのですか?

 

 ソーナはそう言おうとしたのでしょうけど、それは最悪の一手だ。

 

「待ちなさい、兵藤君!」

 

 間髪入れずに行った私の制止が間に合ったのか、気が付いたら先程見せた剣状のオーラで心臓を刺し貫こうとしていた。……初動が全く見えなかったし、躊躇いも一切なかった。もう一瞬私の制止が遅かったら、彼は間違いなく死んでいた。

 

「ソーナ! 彼との交渉には貴女に優先権があるけど、お願いだから今は黙っていて! 今のこの子には、私達の言葉に対して絶対服従の四文字しかないわ! 兵藤君、教えなさい! 一体、何が貴方をそこまでさせるの!」

 

 私はあえて彼の考えを語る様に命令した。これで彼は自分の考えを教えてくれるだろう。一方、自分の不用意な言葉で危うく兵藤君を自害させかけたソーナは顔面蒼白だ。そして、私の命令を受けた兵藤君は自身の現状について語り始めた。

 

「……駒王学園に現在在籍している悪魔のトップである貴女達に僕の力を目撃されてしまいました。妹のはやてについては自力で撃退したみたいですが、既に僕の父を人質に取られているので今の僕に貴女達に対する拒否権はありません。両親やはやてを始めとする親しい人達を自分の手で殺せとでも求められない限り、僕は自害する事も受け入れます」

 

 ……兵藤君から飛び出した、余りにも想定外な言葉に私は思わず激昂した。

 

「貴方、私達を馬鹿にしているの! そんなこと、グレモリーの名に懸けて」

 

 ―― 絶対にしない!

 

 そう言おうと思ったけど、さっきの私がそうした様に今度はソーナが遮ってきた。

 

「リアス、待ちなさい! ……兵藤君、今貴方は()()()()()()()()()()()()()()()()()()と断言しましたね? どういう意味ですか?」

 

 そのソーナの質問に私はハッとなった。そして、兵藤君の答えに私は愕然とした。

 

「言葉通りの意味です。僕は精霊魔法を使えます。そして、風の精霊から既に使い魔と下級の悪魔達が僕の両親の周りを密かに囲んでいる事を伝えられました。家にいる母さんは愛犬の銀が守り抜いてくれそうですが、まだ会社にいる父さんを守る術がありません。今、はやてが父さんの元に急行していますが既に包囲されているので、父さんを人質とされて動けなくなるでしょう。……だから、僕にはもう選択肢がないんですよ」

 

 その言葉を聞いた私は、慌ててチラシ配りをしていた使い魔に様子を見に行くように指示しようとした。しかし、既にソーナが確認を取っていた。

 

「……申し訳ありません、兵藤君。さっき質問をした時点で、偶々兵藤君の家の近くにいた私の使い魔に確認する様に指示を出しました。確かに貴方の言った通りです。既に貴方のお母様は多数の下級悪魔と使い魔によって包囲され、監視下にあります。この分ではお父様も同様でしょう。下級も下級で悪霊とそう変わらないレベルの者達なので、私達でも転移の発動を捕捉できなかったのでしょう」

 

 ソーナの言った事が本当なら、この土地の管理者である私を完全に無視した行為である。

 

「ふざけているわ。誰がそんな事を」

 

 私は憤っていたけど、次の瞬間に全てを理解してしまった。

 

 この様な事を行っても何ら問題の無い立場にある者が行ったとすれば。そして、平然とこの様な手に出る者と言えば。

 

「……私達、密かに監視されていたのね。冥界を取り仕切る上層部の方達に」

 

 そして同時に、兵藤君に対して申し訳が立たなくなってしまった。上層部が直に動いている以上、私達が幾ら兵藤君の両親を解放しろと言っても受け入れられないだろう。そうなれば、兵藤君には人質に直接的な危害が加えられない限り、一切の拒否権が存在しなくなる。

 ……いいえ、一つだけ手はある。確かにこの様な状態でこの様な事を申し出ても、それは全く以てフェアじゃない。何よりも私自身の誇りが許さない。でも、このまま行けば兵藤君は上層部によって間違いなく使い潰される。彼等は基本的に純粋種の悪魔以外を全て下等と見下している。だから、兵藤君を使い潰す事に良心の呵責など一切感じないだろう。だったら、私個人の誇りなど犬にでも喰わせてやる。見るとソーナも決意したようだ、一つ頷いて同意を示した。

 

「……ソーナ、私から言うわ。兵藤君との付き合いがある貴女からは言い辛いでしょう?」

 

 私はそう提案したのだけど、ソーナは譲らない。

 

「いいえ、リアス。言うのは私からよ。私が兵藤君を尾行などしなければ、この様な事にはならなかったのだから」

 

 そして、ソーナはその言葉を口にした。

 

「兵藤君、提案があります。……私かリアス、どちらかの眷属として悪魔に転生して下さい。ご両親を人質に取った上に人間を止めて私達に従えなど、恥知らずにも程がある提案である事は百も承知です。ですが、もうこれ以外に貴方と貴方の家族を守る術がないのです」

 

 でも、兵藤君はそれを断った。

 

「支取会長、グレモリー先輩。ありがとうございます。ですが、それは無理です」

 

「どうして!」

 

 ソーナが強い口調で問い質した。正直な話、私もソーナと同じ思いだ。でも、それに対する兵藤君の答えが、私の中にあった疑問を全て氷解させた。

 

 ……何故、上層部がここまで拙速とも言える様な強行を以て強硬手段を取って来たのか。そして、魔王である私の兄やソーナの姉がそれを黙認しているのか。

 

 全てはこの答えに集約されていた。

 

「僕が所持している神器(セイクリッド・ギア)は、神をも滅ぼせると謳われた十三種の神滅具(ロンギヌス)の一つである赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)。二天龍の一角、赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)の魂が封じ込められている神器です。……つまり、僕は今代の赤龍帝なんですよ。しかも既に赤龍帝の籠手を発現させた上に赤い龍の意識をも覚醒させている僕を、悪魔としてはまだ成熟していないであろうお二人が眷属化できると思いますか?」

 

 ……現実は、どこまでも非情だった。

 

 もし兵藤君が単に赤龍帝の籠手を宿しているだけでまだ発現していなければ、兵士(ポーン)の駒を全て残している私ならあるいは眷属化できる可能性もあっただろう。でも、兵藤君は神器を発現させた上に封印されている赤い龍の意識も覚醒させる等、ある程度赤龍帝として成長している上に、オーラを剣状に収束、更には羽状にして高速機動の空中戦をこなすなど、赤龍帝の戦い方としてはまるで聞いた事もない様な戦い方すらできるのだ。この時点で既に私達を上回っていると思われるのに、私達が悪魔である事を見抜く程の眼力を持ち合わせ、更に使い手が極めて少ない精霊魔法さえも行使できる兵藤君を転生させるのは、未だ成熟していない私達ではまず無理だ。下手をすると、魔王である私の兄でどうにかといったところかもしれない。

 

 ……せめて、変異の駒(ミューテーション・ピース)をソーナが所持していれば。

 

 そう思わずにはいられなかった。だから、ソーナもついこの様な事を口にしてしまったのだろう。

 

「今回ばかりは、変異の駒を得られなかった自分の不運が恨めしくなりますね。せめてリアスの全ての兵士に私の残った兵士を足し合わせる事ができれば、可能性があるのかもしれないのに……!」

 

 でも、現実としてその様な事は無理だった。

 

 悪魔の駒(イーヴィル・ピース)女王(クィーン)一個・戦車(ルーク)僧侶(ビショップ)騎士(ナイト)各二個、そして兵士八個の合計十五個で一セットになっていて、異なる持ち主で合わせて使用する事ができないようになっている。ソーナもそれは十分に解っている筈だったのに、それでも言わずにはいられなかったのだろう。

 ……しかし、それに待ったをかけた存在がいた。

 

『それじゃ!』

 

 兵藤君のいる方から聞こえて来たけど、声は明らかに老年の男性の物だった。

 

「ロシウ老師、一体何を?」

 

 兵藤君は手の甲が僅かに光っている左手を顔の高さにまで上げると、どういう事かを確認してきた。すると、老年の男性の声が左手の甲から聞こえてくる。

 

『儀式魔法の術式の中に、二名の術師の魔力を量、質、波長の全てを完全に同調させる事で、魔力量を単に上乗せするより遥かに出力を向上させるものがある。それを応用すれば、駒に同じ主の物と誤認させて上乗せできるようになり、一誠の眷属化が可能となるはずじゃ! ただし、その場合にはおそらくお嬢さん方共有の眷属になるであろうの』

 

 ……それは考えた事がなかった。

 

 突飛なアイデアを聞かされて驚く私を尻目に、説明は続けられる。

 

『しかし、魔力の同調は技術としては非常に難しい物じゃ。イメージとしては、水と油を無理矢理混ぜ合わせる様なものじゃからな。じゃからそこの紅髪のお嬢さん、魔力の同調はお主が主体となった方が良かろうて。黒髪のお嬢さんはともかく紅髪のお嬢さんは質が特殊過ぎて、誰かに合わせるのはまず無理じゃろう』

 

 確かに私の魔力には「滅び」の特性がある。ソーナが得手とする「水」と比べても余りにも特殊だ。だからソーナが私に合わせる事はできても、私がソーナに合わせるのは難しいだろう。でも、私の魔力の質を一目で見破るとは、この老人は一体何者なのだろうか? 私は密かに疑問を抱いていたけど、それについては一先ず棚に上げた。老人の提案が上手く行くのかが、余りに未知数だったからだ。しかしその時、問題解決の鍵を兵藤君が出して来た。

 

「……ロシウ老師。水と油を混ぜるなら、界面活性剤があればいいのでは?」

 

『一誠、どういう意味じゃ?』

 

 老年の男性の声でそう尋ねられた兵藤君は、早速説明を始める。

 

「赤い龍のオーラを同調の媒体とすれば、二人の魔力を同調させる難度がかなり下がると思います。幸いグレモリー先輩の魔力光は紅色の様なのでドライグの赤いオーラに近い波長で同調し易いはずですし、一方でドライグはそもそもウェ-ルズ地方の水の神でもありますから、支取会長の「水」の魔力とも相性がいいはずです。オーラと魔力の融合については、僕なら十分可能ですし」

 

 兵藤君の説明を聞いた私は、魔力やオーラって、そんなに混ぜ合わせる事ができる物なのだっただろうかと、今まで得てきた知識や経験を総動員して確認していた。いえ、それ以前に使う所を見せてもいないソーナの魔力の特性をどうやって見抜いたというの? ……私の疑問は尽きる事がなかったけど、老年の男性は兵藤君の意見を聞いて成功できると確信したようだ。

 

『ドライグのオーラを収束して剣にする事といい、収束したオーラの羽と風の精霊魔法の融合による飛翔術といい、お主は相変わらず儂等の想像の斜め上を往くのう? 流石にその考えは儂の頭にもなかったわい。……じゃが、これならいけそうじゃな』

 

 そして、老年の男性は私達に語りかけてきた。

 

『お嬢さん方、転生の儀式の準備を頼む。如何に人間の魔導を極めたとはいえ、流石に悪魔の秘伝までは儂も知らんのじゃ』

 

 老年の男性の言葉に従って、まずは魔方陣を展開する。

 

『成る程の。魔具である駒と魔方陣の併用による儀式で転生する訳じゃな。では、手順を説明する。まずは魔方陣に儂がドライグのオーラを流して下地を作る。その後で魔方陣にお主達の魔力を全く同じ量で流すのじゃ。ただし、ドライグのオーラとの相性から流す魔力の質を変更して、紅髪のお嬢さんが純粋魔力、黒髪のお嬢さんが「水」の魔力じゃ。そうせんと、ドライグのオーラとは上手く混ざらんからの。そして、一誠がドライグのオーラを媒介としてお主達の魔力を同調融合させ、一つの「力」とする。同調融合が完了したら、お主達の持っておる全ての兵士の駒を一誠に使うのじゃ!』

 

 何もかもが初めてのケース。しかし、何故か上手くいく気がした。早速、指示通りに兵藤君の転生の儀式を進めていく。私とソーナの魔力が兵藤君から供給された赤い龍のオーラと混じり合う光景は何処か神秘的で、これならと成功への期待に胸が膨らんだ。

 

 ……でも本当に大変だったのは、むしろここからだった。兵藤君が兵士の駒を取り込んでから暫くした後、異変が起こった。

 

「グッ、アァァァァッッッッ!」

 

 突如、兵藤君が苦痛の声を上げ出したのだ。同時に、兵藤君からは上級悪魔である私から見ても恐怖を感じるほどの膨大な聖なるオーラが溢れ出した。そして、それを押し退け、更には喰い潰そうと悪魔の魔力とドラゴンのオーラが融合した力が激しく衝突している。その力と力の衝突によって、兵藤君は酷く苦しめられている様だ。そして、事態の急変を悟った老年の男性の声は明らかに焦り始めた。

 

『しもうた! あ奴は神の中でも最上たる星の意思に愛されておる! ならば、あ奴の中にある聖なる力が敵対する魔の力を受け入れる筈がないではないか! 儂とした事が何たる不覚!」

 

 この事態を想定し損ねていた事を激しく悔んだ後、老年の男性は暫く無言となってから兵藤君にある決断を迫る。

 

「一誠! 酷な事を言う様じゃが、お主が持っている聖なる力を捨てよ! このままでは、お主の魂が文字通り消し飛んでしまうぞ!』

 

 それは、余りにも酷過ぎる二者択一だった。

 

Side end

 

 

 

 ……こうなる事は覚悟していた。

 

 ドライグのオーラが混ざった事で強化された魔の力が僕の中に存在するエクスカリバーの力と対消滅を起こし、それによって僕の肉体や魂が激しく傷ついて最悪は死に至る事を。

 

「イッセー! もういい! エクスカリバー、いやオイラとの誓約を破棄するんだ! そうすれば、イッセーは間違いなく助かる!」

 

 精神世界に入り込んだ僕に、カリスはそう言って自分との繋がりを絶つように勧めてくる。

 

 ……しかし、僕はそれを認められなかった。

 

 カリスは、僕と出逢った事を凄く喜んでくれた。付き合いはドライグとアリスに次いで長いし、まるで可愛い弟の様にも感じていた。そんなカリスとの誓約を破棄してしまったら、カリスをまた一人ぼっちにさせてしまう。

 

 ……認める訳には、いかなかった。

 

 

 

Side:リアス・グレモリー

 

 聖なる力と魔の力、そしてドラゴンのオーラが同一の存在の中にあって激しく傷つけているという異常事態の最中、事態を好転させたのはやはり彼だった。

 

「……僕は、けして捨てない! 聖なる力と共に歩んできた今までの歩みも、これから魔に属する者として歩む事になる未来も! その為ならば、無理を通して道理を蹴り飛ばし、そこに新たな道を敷く! それが、僕の意志で選び、僕自身が切り開く、僕の生きていく道だ!」

 

 兵藤君がそう吠えたのに応えるかの様に、体に取り込まれた私とソーナの兵士の駒が再び外に出ると、彼の胸の前に集まって浮遊し始めた。それと同時に、彼の両手を赤い龍のオーラが覆うと右手には聖なる力、左手には魔の力が集束し始める。

 

「右に集うは、星の意思に連なる聖にして光の力。左に集うは、終焉へと連なる魔にして闇の力」

 

 聖なる力と魔の力の集束が終わると、赤い龍のオーラが二つの力と兵士の駒を覆っていく。

 

「汝等、生命の頂点たる龍の仲裁を受け入れ、永久(とこしえ)の諍いをここに止めよ。そして、和を以て我が身に合わさりて、一つの答えを示せ」

 

 やがて、赤い龍のオーラが聖なる力と魔の力を覆い尽くす。

 

「……今こそ新たなる理、聖魔和合を始める時!」

 

 それを確認した兵藤君はそう言うと、胸の前に浮いていた駒に向かってその二つの力を叩き込んだ。その瞬間、目を焼く程に激しい閃光が辺り一面に広がる。閃光の激しさに私とソーナは思わず目を腕で庇ってしまった。……しばらくしてその閃光が治まったから、私は目を庇っていた腕を下ろす。

 

「ギリギリの賭けだったけど、どうやら上手くいったみたいだ」

 

 中央と一番外側にやや大きめで赤いドラゴンの羽を三枚。

 

『相棒。今日ほど、お前をデタラメな存在だと思った事は無いぞ』

 

 左側には悪魔の黒い羽を四枚。

 

『儂もじゃよ、ドライグ。これは流石に、儂の脳裏を掠りもせなんだわ』

 

 そして、右側には天使の白い翼を四枚、背中に生やした兵藤君の姿がそこにあった。

 

『何せ、ドラゴンの力を仲介として、相反する「聖」と「魔」の力を共存させてしまったのじゃからなぁ。お陰でお主は、人間を核として天使と悪魔、そしてドラゴンという神話の三種族の力と特徴を併せ持つ、全く新しい存在へと変革してしまった訳じゃ。……しかし、これで世界は相当に荒れるぞ?』

 

 確かに、これは全く新しい理の始まりだった。そして、間違いなく世界で唯一無二の存在となった兵藤君を見て、私はこう思った。

 

 ……一体、どんな報告書を挙げたらいいの?

 

 こうして、史上初の二体の悪魔が共有する眷属悪魔、と言うには完全に別の何かであるが、とにかく私達の新しい眷属が誕生した。なお、私達が連絡を入れた事で兵藤君の両親の監視を解除したのを精霊魔術で自ら確認した兵藤君が自宅に帰った後、ソーナと二人で優先権がどちらにあるか散々揉めたのは完全に余談である。

 

 ……私は全ての兵士の駒を使用しているし、ソーナには既に兵士が二人いるのだから、兵藤君以外に兵士がいない私の方に優先権があるのは当然よね?

 

 因みに、この件に関する報告書については、考えがあるといってソーナが自分から作成を引き受けてくれた。……確かにバカ正直に報告する訳にはいかないし、私はそういう方面には明らかに不向きだ。そんな厄介事をあえて引き受けてくれた幼馴染の親友に、私は心から感謝した。

 

Side end

 

 

 

Epilogue

 

 一誠が自宅に帰ると、今まで主人である一誠に対しては一度たりとも唸った事の無い銀が、その一誠に対して警戒の唸り声を上げていた。

 

「ウゥゥゥッ……!」

 

 それを見た一誠は、自分の隠行術を幾度も見破った銀の勘の良さを改めて認めていた。

 

「やっぱり、銀には解っちゃうか。ウン。僕は今日、人間を止めたんだ」

 

 その一誠の言葉を聞いた時、銀は明らかに動揺し、そして項垂れてしまった。

 

「クゥ~ン……」

 

 銀が何を考えているのかを理解した一誠は、銀の頭を撫でながら、そうではない事を伝えていく。

 

「違うよ、銀。銀が母さんを守り切れなかったからじゃない。きっと、これが僕の巡り合わせだったんだ。何より、それしかなかったとはいえ、僕自身が選んだ事だ。だから、銀が気に病む必要なんて何処にもないんだよ?」

 

 余りに優し過ぎ、そして強過ぎる主の心根を悟った銀は、決意の遠吠えを上げた。

 

「……アウォォォォン!」

 

 もう二度と、主の家族を危険に晒したりはしない。命に代えても、守り抜いてみせると。

 

「……ありがとう、銀」

 

 一誠は、強く賢い愛犬にただ感謝することしかできなかった。

 

 一方、自分達を襲ってきた悪魔達こそ撃退したものの、義父の護衛に関しては間に合わなかった夜天の主従は、ただただ自分達の不覚を悔んでいた。

 

「何でやの? 何でアンちゃんが人間をやめなアカンの!」

 

 夜天の王たる義妹は、心から慕う義兄に訪れた運命を受け入れる事ができなかった。

 

「主上、申し訳ございません。もう少し早く、私がお父上も狙われている事に気がついていれば」

 

 夜天光の騎士は、主の義父を護衛対象から外してしまった不手際を主に謝罪した。

 

「いえ、むしろはやてを優先する余りに大局を見誤った私にこそ落ち度が」

 

 祝福を齎す叡智の風は、主を優先する余りに不覚を取った事を深く悔む。

 

「……リヒト、リイン。それについてはわたしも同罪や。だからせめて、わたし達だけでも最期までアンちゃんの味方でいるつもりや。二人とも、それでえぇな?」

 

「はい」「承知」

 

 そして、夜天の主従は赤き龍の帝王にして騎士の王である義兄に最期まで付き従う事を決意する。

 

 ……そして。

 

「でもな、もしアンちゃんを虫けらの様に扱うんなら容赦はせぇへん。その時は覚悟しぃや、悪魔共」

 

 もし義兄の心身を踏み躙る様な事があれば、相手が誰であろうと必ず報復する事を。

 

Epilogue end

 




いかがだったでしょうか?

Q.一誠は最終的にどうなったの?

A.てんこ盛り。

転生の詳細については次回。
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